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猛暑で外遊び減、発育への影響は? 優先したい熱中症対策と、できる工夫 #こどもをまもる

異常高温対策に取り組む神戸市の「東遊園地」(提供:URBAN PICNIC)

全国各地で最高気温が35度を超える猛暑日が相次ぎ、熱中症警戒アラートの発令も夏の日常となりつつある。SNSでは高機能な日傘や携帯冷却グッズが話題となるなか、「夏に子どもを遊ばせる場所がない」と悲鳴を上げる親たちの声も目立つ。小さな子どもほど熱中症リスクが高いという事実は軽視できない一方、外遊びの減少は運動機能の低下を招くと専門家は指摘する。厳しい暑さが続くなか、親子でできる外遊びの工夫とは──。(取材・文:宮島麻衣/編集:小山内彩希、Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)

猛暑による外遊び機会の減少に「イライラ」「不安」が募る親たち

出典:気象庁「全国の日最高気温35℃以上(猛暑日)の年間日数の経年変化(1910~2024年)」(2025年8月25日時点データ)
出典:気象庁「全国の日最高気温35℃以上(猛暑日)の年間日数の経年変化(1910~2024年)」(2025年8月25日時点データ)

気象庁のデータを見ると2020年前後から、猛暑日が増加傾向にある。

特に2025年は、7月30日には兵庫県丹波市で41.2度、8月5日には群馬県伊勢崎市で国内の観測史上最高気温となる41.8度を記録するなど、各地で"危険な暑さ"が続く。

猛暑により減っているのが、子どもの外遊びの機会だ。

神奈川県で4歳の子を育てる村上有香さん(仮名)は、夏の公園遊びの危険性を痛感しつつも、家のなかで子どもに付きっきりになっている状態に疲れをにじませる。

「遊具は熱したフライパン状態で、やけどが怖い。子どもは帽子や保冷グッズも嫌がって取ってしまうし、遊びに夢中になるとなかなか帰ってくれないので、日が高い時間にはとても連れ出せません。かといって家も賃貸で広くないので、足の踏み場がないほど散らかった部屋で『ママ、ママ』と呼ばれ続けていると、夕方にはいつもイライラしてしまいます......」(村上さん)

都内在住で2歳の子を持つ橋本未来さん(仮名)は、近所にある室内遊び場に足を運ぶも、「夏休みや週末は混雑し、小さい子どもは思うように体を動かすことができない。利用時間も30分〜1時間区切りで、料金も高額です」と嘆く。

自身の子ども時代と比較して窮屈さを感じると話すのは、長野県で2歳の子を育てる安田翔吾さん(仮名)。

「自分は自然の中で友だちとたくさん遊んで育ってきたからこそ、今の子どもを取り巻く環境は、発育に影響するのではと不安に感じます。夏の公園に子どもは少ないし、水道の利用が制限され水遊びができないところもある。子育ての価値観も多様化しているので、友だちを誘うにも気を使います」(安田さん)

「小さな子どもは熱中症対策をまず優先してほしい」と医師

出典:総務省消防庁「令和6年(5月~9月)の熱中症による救急搬送状況」より救急搬送人員総数の推移。2024年は9月の搬送人員数が多かった
出典:総務省消防庁「令和6年(5月~9月)の熱中症による救急搬送状況」より救急搬送人員総数の推移。2024年は9月の搬送人員数が多かった

外遊びをさせられないことに悩む親は少なくない一方、2024年の熱中症による救急搬送人員は9万7578人となり、2008年の調査開始以降最多を更新するなど、熱中症リスクは侮れない。

環境省と気象庁は2021年より「熱中症警戒アラート」の共同運用を開始し、注意喚起も行われている。

横浜市の緑園こどもクリニックで院長を務める山中龍宏さんは、小児科医の立場から、「子どもの運動不足や発育を心配する気持ちはわかりますが、まずは熱中症対策を優先してほしい」と強調する。

出典:総務省消防庁「令和6年(5月~9月)の熱中症による救急搬送状況」より熱中症による救急搬送状況(令和6年)年齢区分別(構成比)総搬送人員。乳幼児は生後28日以上満7歳未満、少年は満7歳以上満18歳未満の者を指す
出典:総務省消防庁「令和6年(5月~9月)の熱中症による救急搬送状況」より熱中症による救急搬送状況(令和6年)年齢区分別(構成比)総搬送人員。乳幼児は生後28日以上満7歳未満、少年は満7歳以上満18歳未満の者を指す

消防庁のデータを見ると、熱中症で搬送された人の過半数が高齢者であり乳幼児は多くないが、「成人と比べて熱中症リスクはとても高い」と山中さん。

「特に小学校3年生以下の子どもは汗腺の機能が不十分で、大人に比べると適切に汗を出しづらいため、体の熱を発散しにくい。加えて体内の水分量が多いため、脱水症状も起こしやすいのです」(山中さん)

消費者庁・国民生活センターには医療機関から、「午前中に20分程度、外で写真撮影をしていたところ顔面蒼白となり救急車を要請した」という5歳の事例や、「公園で朝から昼過ぎまで休憩を入れながら3時間程度遊んだ。水分は摂取していたがぐったりしたため、スーパーの救護室で1時間休んだ後に帰宅。帰宅後30分ほど寝た後に嘔吐した」という3歳の事例などが報告されている。遊ぶ時間帯や休憩に気を配っていても熱中症の危険があることがうかがえる。

熱中症の初期サインは、「ボーッとしている状態」と山中さんは言う。

「小さい子どもは自分で不調を訴えることができないため、外にいるときは5〜10分おきくらいに声をかけて反応を見ることが大切です。ベビーカーに乗っている赤ちゃんも地面との距離が近く、親が顔色を確認していないことも多いので、移動の際にも観察や声かけに気を配ってください」(同)

「外遊びで身につく身体機能は、自分の安全を守ることにつながる」正しい姿勢が維持できない最近の子どもたち

子どもの熱中症リスクは成人に比べて高い一方、親からは、猛暑による外遊びの制限が続けば子どもの発育に影響が出るのではと、不安視する声も上がっていた。

外遊びの減少は子どもの発育にどのように影響するのだろうか。

「子どもの健全な成長のための外あそびを推進する会(外あそび推進の会)」の代表発起人である早稲田大学名誉教授で医学博士の前橋明さんも、「WBGT (暑さ指数)が 28 以上では活動を短時間に制限し、31 以上では外での運動あそびを中止することが望ましい」と語る一方、外遊びは体の基礎づくりに寄与する重要な活動だと言う。

「外遊びは運動能力の向上、骨の発育促進、近視の予防や自律神経の機能の発達などにつながります。でこぼこした地面や曲がりくねった木など、不規則な地形の中で遊ぶことで、自分の体や空間を認知する機能が育まれる。それが身の安全を守ることにつながるので、外遊びを通して幼児期に身につけてほしい力です。また、運動の基盤である歩数が減少すると、筋力や骨が育まれず、正しい姿勢を維持できなくなってしまいます。最近は、足の指が浮いていて踏ん張れずにバランスを崩して転んでしまう子や、膝も腕も上がらずペンギンのように走る子も目立ちます」(前橋さん)

出典:子どもの健全な成長のための外あそびを推進する会ウェブサイトより、「外あそび効能の一覧」
出典:子どもの健全な成長のための外あそびを推進する会ウェブサイトより、「外あそび効能の一覧」

外遊びも含めた「子どもが外で体を動かす機会の減少」については、交通の利便性が高まり幼稚園や保育園の送迎にバスや車を使うことが定着するなど、ライフスタイルが変化してきたことも影響していると言う。幼児の日中の歩数は1980年代には1日約1万2000歩だったが、1998年以降は5000歩台にまで減っているそうだ。

前橋さんは、10〜15分おきの水分補給や、通気性・吸湿性の高い衣類の着用など基本的な対策が重要としつつ、「年間を通じての遊ぶ時間の見直し」を提案する。

「昨今の夏は、日中のうちに積極的に外に出られる気候ではないので、早朝や夕方に外遊びの時間をつくるのがいいでしょう。普段から外に出ない子どもほど体への負荷も大きくなり、逆に、普段から外遊びしている子ほど夏にバテにくい傾向があります。春や秋にできるだけたくさん外で過ごすようにするなど、一年の中でバランスを取りながら、外に出る時間をつくっていけたらいいと考えます」

また、外あそび推進の会のメンバーである石井浩子さんは、自宅で過ごす場合は、「日光を浴びながらの触れ合い遊び」を取り入れてほしいと言う。

「朝に日を浴びると自律神経が整いやすくなり、生活リズムが安定します。子どもとベランダ菜園をして朝の水やりを日課にしたり、部屋の窓際で遊んだりするくらいでも効果は得られます。親御さんが疲れてしまったら、窓際にごろんとうつぶせになって、子どもに背中を踏ませてマッサージしてもらいましょう。子どもにとっては背中から落ちないようにバランスをとる体操になります。家の中でも、なるべく親子が触れ合える遊びを取り入れられるといいと思います」

親が知っておきたい、暑さ対策になる「3つのいい日陰」とは

加えて最近は、街の猛暑対策も進んでいる。ヒートアイランド対策を中心に、暑さに強いまちづくりを研究する武蔵野大学の三坂育正さんに、熱中症に気をつけながら外遊びするための"環境づくり"について聞いた。

「屋外では日なたと日陰の違いを意識した行動が、重要な暑さ対策になります。『大きい日陰』『濃い日陰』『風通しのよさ』、この3つの特徴を踏まえた"いい日陰"のある環境を選んで遊ぶことが望ましいでしょう」(三坂さん)

例として、異常高温対策に取り組む神戸市の「東遊園地」や、東京都渋谷区の「駒テラス西参道」を挙げた。

「東遊園地には、木陰が連続している遊歩道ゾーンや、日が当たる天然芝の広場の近くには冷房つきのカフェが配置されています。公園を完全に日陰にするのは難しいですが、休憩所があるとシェルターの役割を果たしてくれます。熱中症対策は個人の問題として取り上げられることが多いですが、今はもう社会の問題として環境整備していく段階に来ていると感じます。駒テラスのような、高架下やアーケード商店街など既存の建物や場所を"日陰空間"として、うまく生かしていく視点も、街の機能を活用した暑さ対策として必要といえます」(同)

東遊園地には冷房つきのカフェ、木陰の遊歩道、噴水やミストなどが配置されている(提供:URBAN PICNIC)
東遊園地には冷房つきのカフェ、木陰の遊歩道、噴水やミストなどが配置されている(提供:URBAN PICNIC)

大きい日陰・濃い日陰・風通しのよさを効果的に遊び場所に取り入れるために、親は何を知っておくべきだろうか。

「大きい日陰といっても、建物の陰は建物自体が熱くなって輻射熱を受ける可能性があります。それに対して樹木は蒸散により温度が上がらない特性があるため、『大きな木の陰』が理想的です。濃い日陰というのは、日傘のように日光の遮光率が高い素材の陰のことを指しており、家の庭などで張るタープの素材を見直してみるのもいいでしょう。風通しのよさについては、言葉通りの意味ですが、最高気温が35度を超える猛暑日だと風から熱を受けてしまうので注意が必要で、よりこまめな水分補給を忘れないことが重要です」(同)

猛暑は今後も続いていくことが予想されるなか、親が熱中症への知識だけでなくその対策となる知識も身につけ、実行していくことの重要性を訴える。

「夏の間ずっと外に出られないというのは、大人にとっても機会損失となっており、イベントが実施できないことなどは経済的な打撃も与えます。ものすごく暑い日に外遊びをしても大丈夫と一概に言うことはできませんが、暑さ対策の知識を身につけることで、できる工夫も見えてくると思われます。たとえば、表面温度が上がりにくい地面として、天然芝の公園を選ぶというのもひとつの知識。大人が知識を身につけていくことで、いい判断ができるようになり、親子の選択肢が広がることにつながるのではないかと思います」(同)

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