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災害時SNS、支援を''つなぐ''可能性とデマ拡散の懸念 #災害に備える #SNSの功罪

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災害時のSNSはデマ拡散などの負の側面がある一方、物資や人の支援を"つなぐ"力も持つ。まもなく発生から2年となる能登半島地震では、SNSを起点に数日で仮設トイレが届き、民間拠点には1500人超のボランティアが集まった。SNSを通じて支援の輪を広げた当事者の声や、その活用法を発信する専門家の話から、災害復興におけるSNSの可能性と課題を探る。(取材・文:島田龍男/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)

SNSがつないだ仮設トイレ

石川県輪島市三井町で宿泊施設を運営する山本亮さんは、2024年1月1日の能登半島地震の発災時、東京に帰省していた。発災直後は、能登各地にいる知人たちが上げるフェイスブックの投稿やLINEグループでのメッセージが現地の状況を知る主な情報源だったという。

「電話はつながらないし、あまりかけないほうがいいとも思いました。相手の充電を減らすことにもなるので。それに、遠隔から何ができるかも見えてなかったので、こっちから積極的に連絡するってことはしてなかったですね。地域のグループの中の1組が、同じく帰省で能登を離れていたので、その方々と連絡を取り合って、帰ったらどうするか、どう戻るかみたいな話をしていました」

山本亮さん
山本亮さん

発災から1週間ほどしたタイミングで、現地に戻った仲間から「とにかく避難所のトイレの衛生状況がひどい」と悲痛な連絡が入る。仮設トイレすらなく、凝固剤で固める簡易トイレのみ。ゴミが回収されずに山積みとなり悪臭を放つことから、避難者のストレスは限界に達しており、電話の向こうでは怒号が飛び交うほどだったという。混乱する状況の中、行政からの支援もいつになるか不透明。山本さんは「みんな大変なのに、現地にいるわけでもない自分が声を上げていいのか」とためらいながらも、わらにもすがる思いでフェイスブックに「仮設トイレを必要としています」と投稿した。

「見つかるか全く分からなかったんですけど、本当に誰かに助けてほしいという気持ちでした」

投稿から数時間もしないうちに、数人から仮設トイレを設置できるかもしれないと申し出があった。直接会ったことはないSNS上の知人や、その投稿を見た人の紹介で支援の輪が広がっていった。実際、数日後には現地に4つの仮設トイレが届けられた。山本さんは「直接の知り合いだけでなく、その先のつながりで支援が届く。SNSの可能性を強く実感した」と振り返る。

設置された仮設トイレ
設置された仮設トイレ

"顔が見える発信"で集まるボランティア

この経験を機に、山本さんたちは、運営していた宿泊施設をボランティアの受け入れや宿泊の拠点とした民間ボランティアセンター「のと復耕ラボ」を立ち上げた。ボランティア募集で中心的な役割を果たしたのもフェイスブックとインスタグラムだった。2025年8月までにオンライン上のフォーム経由で受け入れたボランティアは1500人を超え、そのうち約4分の1がSNS経由での参加である。最も多かったのは口コミ(40%)だったが、その口コミの起点となっていたのもSNSでの発信だった。自分たちの発信に加えて、ボランティアに参加した人がSNSに発信することで、支援の輪が広がったという。

のと復耕ラボの活動の様子
のと復耕ラボの活動の様子

活動当初は、SNSを通じて物資の支援も受け付けていたが、こちらはすぐに中止した。

「必要と発信すれば、すぐに物資が届く。これはSNSの強みです。一方で数時間後には状況が変わることも多く、適切な差配の仕組み構築はそうしたロジスティクスを組むのが慣れていない私たちには難しいと感じました」と山本さんは話す。

善意で送られてくる物資と、刻一刻と変わる現地のニーズとの間にタイムラグが生まれ、ミスマッチが起きてしまうのだ。各地の災害で「善意で送られた雑巾やタオルが過剰に届き続けてしまう」という問題が起きるように、物資の差配の難しさを痛感し、ラボでは物資支援の中継は行わないと判断した。

救助要請はSNSに不向きか?

一方で、災害直後はデマが急増し、SNSが必ずしも有効に機能しないという現実もある。2016年の熊本地震で「動物園からライオンが逃げた」というウソ情報がX(当時はTwitter)で拡散されたことは大きな話題になり、投稿者は逮捕されている(後に起訴猶予処分)。能登半島地震では、住所付きで救助を求める投稿や、橋が崩落したとする加工画像など、様々なウソ情報が拡散された。

とりわけ救助要請の場面では、SNSの限界が顕著だ。Xでは、救助要請をする際に「#救助」というハッシュタグをつけることが推奨されていたが、東北大学災害科学国際研究所の佐藤翔輔准教授らによる2019年の論文では、2018年の西日本豪雨災害時、「#救助」のツイート2171件のうち、具体的な救助要請はわずか16.5%だった。大半が被災地外からの応援メッセージなど善意の投稿で、本当に救助を求める声が埋没し、検索を困難にしていた。(佐藤翔輔・今村文彦,2018年西日本豪雨災害における「#救助」ツイートの実態:2017年7月九州北部豪雨災害との比較分析,自然災害科学,2019,37巻,4号,p.383-396)

(佐藤翔輔・今村文彦,2018年西日本豪雨災害における「#救助」ツイートの実態:2017年7月九州北部豪雨災害との比較分析,自然災害科学,2019,37巻,4号,p.383-396 より引用)
(佐藤翔輔・今村文彦,2018年西日本豪雨災害における「#救助」ツイートの実態:2017年7月九州北部豪雨災害との比較分析,自然災害科学,2019,37巻,4号,p.383-396 より引用)

こうした状況を改善するため、人の目で情報を判別したり、SNS情報をAIで分析したりしてデマを排除し、位置情報を加えて救助要請を迅速に収集しようと試みる自治体の実証実験も行われている。しかし、「そもそもTwitter空間上の中に、状況把握のために対応資源を割くことは効果的でないとも言える」と、先の論文は指摘している。

「防災アクションガイド」を作成する一般社団法人FUKKO DESIGN理事の木村充慶さんは、SNSの最大の懸念はデマ情報であり、特に善意からの情報拡散が意図せず被害を拡大させる危険性があるため、「投稿内容には誤りがあったり、古い情報だったりする場合があります。誤った情報を拡散しないように、投稿の日時の確認や、添付画像の検索などをしながら、自治体や国など公的機関のウェブサイトやSNSを確認する習慣を身につけましょう」と話す。

災害時の効果的なSNSの使い方

FUKKO DESIGNでは、災害時にどのようなことをすべきかわかるように「防災アクションガイド」を開発し、情報を発信している。このガイドは、台風や地震などの災害発生直後に見てすぐに行動できることを簡潔にまとめながら、SNSで投稿しやすい4枚組みの画像形式を基本としている。気象や防災の専門家が監修することで信頼性を担保し、いざというときに本当に役立つ「行動ガイド」として設計されている。

FUKKO DESIGNは、災害時のSNSの活用法もまとめており、具体的な活用ポイントを以下のように提示している。

出所:FUKKO DESIGN (TwitterはXに名称変更)
出所:FUKKO DESIGN (TwitterはXに名称変更)

1. 平時から「信頼できる情報源」をフォローしておく

「デマに惑わされないための最も基本的な対策は、NHKや気象庁、住んでいる自治体などの公的なアカウントを平時からフォローしておくことです。災害が起きてから探すのは難しく、いざという時に信頼できる情報が自然とタイムラインに流れてくる環境を整えておくことが重要になります」(FUKKO DESIGN・木村さん)

2. 「顔の見えるSNS」で発信する

「フェイスブックやインスタグラムといった実名性が高く、普段からの関係性が見えるプラットフォームは、信頼や共感を得やすい傾向にあります。匿名性の高いSNSは情報が拡散しやすい一方、炎上のリスクもはらんでいます。支援を求める際も、呼びかける際も、『誰が』発信しているのかが見えることが安心や、継続的な関係にもつながります」(FUKKO DESIGN・木村さん)

出所:FUKKO DESIGN(RTはリポストに名称変更)
出所:FUKKO DESIGN(RTはリポストに名称変更)

3. 拡散する前に、まず確認する

「センセーショナルな情報に安易に飛びつくことはデマの拡散に加担するリスクがあります。しかし、それが事実であれば、多くの人に状況を知らせることにもつながるため、拡散自体を否定するべきではないと感じています。SNSの最大の強みは、情報を得るスピードの速さで、公的機関の情報を大前提としながらも『この道の今の状況は?』といったピンポイントでリアルタイムな情報を得ることもできます。大切なのは、一度立ち止まり、『誰が、いつ、何を根拠に』発信した情報かを確認するリテラシーを持つことです」(FUKKO DESIGN・木村さん)

出所:FUKKO DESIGN(LINE Payはサービス終了)
出所:FUKKO DESIGN(LINE Payはサービス終了)

「つながる共助」が復興を支える

FUKKO DESIGN理事の木村さんは、SNSを正しく活用することの先には「つながる共助」があると話す。

「これまで地域の支え合いは、町内会や自治会といった顔の見える関係が中心でしたが、近年、特に都市部では人間関係の希薄化により、その機能が弱まっている側面もあります。そうした中で生まれているのが、SNSを通じて場所や時間を超えてつながり、支え合う、新しい共助の形です」

さらにSNSでのつながりは、復興を長期的に支えるという。

「従来の災害ボランティアでは、被災者と直接話す機会が少なく、関係性が生まれにくい側面がありましたが、SNSでつながることで、その後も互いの状況をフォローし合う継続的な関係が生まれます。例えば、被災した農家が野菜作りを再開したと投稿すれば、『買いますよ』という直接的な支援が生まれる。こうした顔の見える関係が、復興を力強く支えると考えています」

FUKKO DESIGN理事の木村さん
FUKKO DESIGN理事の木村さん

「つながりのデジタル格差」を超えて情報を届ける

SNSには利点があっても、その恩恵を誰もが受けられているわけではない。被災地で見えてくるのは、「つながりのデジタル格差」だ。前出の輪島市の山本さんらは、デジタル上で情報を共有するために地域住民のLINEグループの運営を始めたが、1000人ほどの住民の中で参加者は140人程度で、特に高齢者の参加率には課題があるという。

操作への不安、詐欺への恐れ、視力や聴力の低下、通信費の負担、そして「今さら覚えなくても......」という心理的なハードルが複雑に重なり、スマートフォンやSNSの利用に積極的ではない人もいる。

自治体等が主催する高齢者向けのスマートフォン教室や、国が推進する「デジタル推進委員」のように、デジタルに詳しい住民が身近な相談相手になる仕組みもあるが、FUKKO DESIGNの木村さんは「すべての人がSNSを使えるようになるのはなかなか難しいので、SNSを使える地域の若い人が、高齢者に声がけをすることが大事だと思います。避難所では、若者がSNSの情報を紙の回覧板に書き出したり、困っている人の代理投稿をしたりと、デジタルとアナログの橋渡し役を担うケースも増えていると聞きます」。

また、パソコンで作成した文章をAIが音声に変換して、通報対象の登録者に自動で電話をかける仕組みを導入する自治体もある。SNSやメールを利用していない人や、防災無線の音声が届きづらい場所に住む人を取り残さないことを目指している。

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