冷凍野菜は生野菜より栄養価が高い!? 技術進歩で味わいも向上 #食の現在地
物価高の中、市販の冷凍野菜の人気が高まっている。海外からの輸入額と、国内の工場からの出荷額を合計した金額は、10年間で約1.6倍。価格や供給が安定していることで生鮮品の代替となってきた側面が強いが、冷凍食品研究分野の第一人者である鈴木徹さんによると、「栄養価においても、店頭で購入した生鮮野菜より高いことが多い」という。日頃から冷凍野菜を活用している料理研究家、日本冷凍食品協会にも話を聞き、冷凍野菜ならではの特徴を探った。(取材・文:宮島麻衣/編集:小山内彩希、Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
この記事、ざっくりいうと?
- 「冷凍野菜=栄養が少ない」は誤解。市販の冷凍野菜は生鮮野菜より栄養価が高くなる傾向
- 製造技術の進化で味わいも向上。コスパやタイパがよく、忙しい社会人から支持される
- HACCPに則った生産工程でつくられるため安全性も高く、給食や介護施設でも重宝される
市場は右肩上がり。合計額は10年で約1.6倍
葉物、根菜ともに、冬場は野菜の価格高騰が起こりやすい。
農林水産省は、2025年11月末時点で、12月はトマト、たまねぎ等の価格は「平年を上回って推移」し、根菜類のさといもやにんじんも、「やや平年を上回って推移」すると見通していた。そして実際、12月1週目に報告された「食品価格動向調査」の結果では、主要8品目すべての野菜の価格が平年比を上回った。
野菜が高騰する中、需要が高まっているのが、冷凍野菜だ。
国内の市場に出回っている冷凍野菜の9割以上は輸入品。一般社団法人 日本冷凍食品協会が出した「令和6年(1~12月)冷凍食品の生産・消費について(速報)」によると、冷凍野菜の輸入量は2015年から2024年の間に約25万6000トン増加し、約1.3倍に伸びている。輸入額と国内工場からの出荷額の合計金額も、10年間で約1.6倍だ。
背景には何があるのだろうか。
冷凍食品協会の2025年4月の報告書によると、とくに女性で冷凍食品の利用頻度が増えており、その理由として「野菜など生鮮品の価格が上がったから」が前年より大幅に増加していた。中でも「冷凍野菜」が前年より伸び幅大とされている。
「冷凍野菜=栄養が少ない」は誤解。店頭に並ぶ生鮮野菜を上回る栄養価
一方で、食品の中でも繊細な野菜に対して、「冷凍すると野菜の栄養が失われるのでは?」「味は落ちないの?」といった声も聞かれる。
しかし、「栄養価においては、むしろ、店頭で購入する生鮮野菜よりも高いことが多い」と、日本の食品冷凍学の第一人者であり、一般社団法人食品冷凍技術推進機構 代表理事の鈴木徹さん(東京海洋大学名誉教授)は言う。
「まず、野菜の特徴から話すと、収穫された瞬間から酵素の働きによってビタミンなどの栄養素がどんどん失われていくんです。たとえば、生鮮野菜を常温で置いておいた場合、わずか半日でビタミンC量は半分程度まで減少してしまいます。それに対し、市販の冷凍野菜は収穫後、農場に併設された加工工場ですぐに"ブランチング"という処理を行い、その後、急速凍結をすることによって、収穫時点の栄養素を閉じ込めたまま保つことができます。そのため、店頭に並ぶまでに時間を要する生鮮野菜と比べると、栄養価が高くなる傾向にあるんです」(鈴木さん)
急速凍結の前に行われる「ブランチング」とは、収穫後すぐに短時間加熱処理をして、0度付近まで一気に冷ます工程のこと。
「特にブロッコリー、ほうれん草、いんげんなどの緑色野菜に豊富に含まれるビタミンCは、ほかの栄養素に比べて失われやすい成分のため、加工する優位性が際立ちます。ビタミンCは、その数値を計測することで、その他の栄養素も保存されているという指標になっているんです。また、ブランチングによって、基本的な栄養素だけでなく、GABAやポリフェノールなどの有効成分も保存されます」(同)
ブランチング技術の進歩で、色も食感も生鮮品と遜色ない品質に
さらに、鈴木さんらが「日本食品保蔵科学会誌(VOL.51)」で発表した最新の論文では、ブランチングの加熱処理によってビタミンC量は最初に少し減少するが、この処理を経てから凍結することで、数カ月から1年経っても変わらず栄養価が保持されることが示されている。
このことから言えるのは、季節によって収穫時の栄養価に大きな差がある野菜においては、栄養価が高い旬の期間に収穫し、すぐに冷凍加工をしておくことで、通年で栄養価の高い野菜を流通させることができる、ということである。
たとえば、冬が旬のほうれん草は、夏に収穫されたものと比べると約3倍ものビタミンCが含まれるため、冬に収穫して冷凍加工しておくメリットが大きい。このことは以前から知られてはいたが、最新の研究でより正確に示された形だ。
また近年、ブランチングの技術が進歩したことにより、冷凍野菜の味や食感も格段によくなっていると、鈴木さんは言う。
「野菜の冷凍技術は1940〜50年代にアメリカで発展・普及しました。当時もブランチング処理はあったのですが、近年になって、できるだけ短時間で加熱して一気に冷やすという技術がめざましく進化し、野菜の色合いや味、食感がよくなったと感じます。たとえば、昔の冷凍枝豆は色が悪くてふにゃふにゃしていましたが、今は色も変わらず食感もコリコリしていますよね。特に冬場は冷凍の枝豆を使っている飲食店も多いと思いますが、生鮮品と遜色ない品質になっていると感じます」(同)
近年は味わいも向上。加工商品の幅も増え、時短家事の救世主に
冷凍野菜の味については、「昔と比べて格段においしくなった」と料理研究家の服部みどりさんも太鼓判を押す。
「かつての冷凍野菜は水っぽかったり、食感が柔らかすぎたり、風味が足りないと感じたりして、使うのを敬遠していました。今の冷凍野菜は野菜の香りや風味までしっかり感じることができるものが多く、技術の進化を実感しています」(服部さん)
簡単・時短の家庭料理を都内の料理教室で教えながら、自身も市販の冷凍野菜を普段使いしている服部さん。"コスパ"や"タイパ"という面でも、メリットが大きいという。
「たとえば、大根を特売で1本買ったとして、数日間で使い切るためには計画的にレシピを考えなければいけません。使いきれず腐らせてしまうケースも多い。冷凍野菜であれば、好きな分量を好きなときに使うことができます。また、冷凍加工の際に野菜の繊維がほどよく崩れることによって、味が染み込みやすく、調理時間が短く済み、使用する油や調味料の量を減らせるという利点もあります」(同)
料理教室の参加者からも「忙しいときは冷凍野菜が気になる」という声も上がっているそうだ。
「なすは調理のときによく大量の油を使いますが、『冷凍揚げなす』は油を節約でき、揚げる手間も省くことができます。炒め物や煮浸しなどに使えるほか、冷凍の刻みネギと一緒におみそ汁に入れるだけでも食べ応えのある汁物になるのがいいですね。また、下準備が大変な根菜類は、さといもやレンコンなど数種類の野菜が入った『和風野菜ミックス』があれば、鶏肉を加えて白だしと煮るだけであっという間に煮物ができるので重宝しています。冬に価格が上がるキャベツは、少しずつ使える『みじん切りタイプ』が使い勝手がよくおすすめです」(同)
季節によって価格が高くなったり、手に入りにくかったりする野菜を、「冷凍で備えておくのも便利」だと続ける。
冬に手に入れづらい豆類について、手軽なレシピも教えてくれた。
「枝豆は夏が旬の野菜ですが、おつまみとして『冷凍の枝豆』を常備している方も多いと思います。そんな冷凍枝豆をレンジで解凍し、あったかいご飯にサッと混ぜ、上にとろろ昆布をのせれば、あっという間に、豆ごはんの完成です。簡単で、しっかりタンパク質も取れるので、寒い時期こそぜひ、試してみてください」(同)
物価高も追い風に。冷凍野菜の価格が常に安定している理由
日本冷凍食品協会の広報部長である三浦佳子さんは、収穫量によって価格が上下する生鮮野菜と違い、通年で価格が安定していることが、物価高の社会において支持されている理由だと見ている。
「市販の冷凍野菜は、旬の時期に大量に収穫し工場で加工された商品が倉庫に保管され、年単位で出荷量をコントロールしながら、売り場に並べられています。台風などで生鮮野菜が手に入りにくいときでも出荷するなどの調整ができるので、冷凍野菜はいつでも手に入りやすく、価格もほぼ安定しているのです」(三浦さん)
そのほかに、現代の家族構成も、冷凍野菜の需要を後押ししていると考える。
「日本では人口減少が続いていますが、単独世帯や核家族世帯が増えているため、世帯数は増加しています。少人数の家庭にとって小分けの冷凍野菜は使いやすく、調理の手間は皆さんの代わりに工場で担っているので、生の素材から調理するよりも効率が良い。『生鮮野菜は量や傷みを考えると手に取りにくいけれど、野菜は日常的に取りたい』という意識も、冷凍野菜の需要につながっていると思います。また種類が豊富になったのも大きいでしょう。ひと昔前の冷凍野菜といえば、ミックスベジタブルのイメージが強かったと思いますが、各メーカーが消費者ニーズをくみ、2000年代以降、さまざまな種類の冷凍野菜が商品化され、それに応じてスーパーの棚も拡大しています」(同)
冷凍野菜は国産・外国産を問わず、その生産工程は国際的な衛生管理手法であるHACCP(ハサップ)に則っており、厚生労働省による厳格な規格基準のもと、製造・保管・流通の全過程においては、原則として-18度以下で管理されている。
その高い安全性や栄養価から、赤ちゃんの離乳食や介護食として使うのもおすすめしたいと三浦さん。冷凍野菜が使われるシーンの、さらなる広がりを予想する。
「あまり知られていませんが、冷凍野菜は、その安全性と安定した供給の面から、学校給食や介護施設などの現場でも、重宝されています。冷凍野菜を使うことで予算や、献立も立てやすくなります。たとえば、突然の学級閉鎖となった場合でも、食品ロスを防ぐことができる。さらに言えば、冷凍野菜は加工の際に出た皮なども肥料などに再利用されていて、使うこと自体がサステナビリティに貢献できる食品なんです。今後、ますます広がっていく可能性があると思っています」(同)


