小野真弓、犬猫10匹との暮らしと地域猫活動。「動物のために何かしたくて」
2000年代に消費者金融のCMに出演し、大ブレークした俳優・タレントの小野真弓さんは、愛犬との暮らしをきっかけに動物の福祉に関心を持ち、トリマーライセンスをはじめペット看護士、動物介護士、JKC愛犬飼育管理士などの資格を取得。現在暮らしている千葉県木更津市では地域住民と協力して地域猫活動を立ち上げ、現在も犬猫と暮らしながら支援を続けている。
小野さんに、犬猫との暮らしの工夫、保護・地域猫活動が直面する壁について聞いた。(取材・文:佐々木ののか/編集:株式会社Huuuu、Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部/撮影:番正しおり)
10匹の動物たちに囲まれた"犬猫ファースト"な暮らし
── 動物たちとはどのように暮らしているのでしょうか?
現在、家には合計10匹の動物がいます。犬が2匹、うちの猫が4匹、家族募集中の保護猫が4匹です。
一日の基本的な流れは、朝起きて猫たちにごはんをあげ、トイレを掃除してから、犬の散歩とごはん。投薬が必要な子がいれば、そのケアもします。夜も基本は同じ流れで、食事とトイレ、必要なケアをしていきます。今は腎臓の具合がよくない子がいて、夜に点滴をすることもあります。
あとは、コミュニケーションを取ったり、遊んだりする時間ですね。猫の場合、慣れていないうちはそっとしておきますが、距離が縮まってくると構ってほしい気持ちが強くなる。基本的に私一人で向き合っているので、全員と向き合う時間をつくろうとすると思った以上に時間がかかりますが、楽しいです。
── 猫がのびのび暮らすために意識されていることはありますか。
それぞれの性格に合わせて、できるだけ自由に過ごせるようにしています。うちには相性が合わない猫がいて、日中は扉を閉めてそれぞれが安心して過ごせるようにしていますが、少しでも慣れるきっかけになればと思い、夜は扉を開放して共存の可能性も探っているところです。
環境面では、高い所が好きな子が多いので登れる場所を増やしたり、隠れられる場所をあちこちに作ったりしています。
加えて、保護猫の中には猫エイズ(FIV)キャリアの子もいます。感染リスクは低いと言われていますが、けんかして出血するとリスクが高まるので、保護猫と先住猫の部屋は分けて、メッシュフェンス越しに顔を合わせられるようにしつつ、直接触れ合ったり、けんかになったりしないように気をつけています。
犬や猫と暮らしていると、家も自然と、彼らが居心地よく過ごせることを優先する"犬猫ファースト"になりますね。
「動物のために何かしたい」という思いからトリマーに
── 猫の福祉活動に関心を持ったきっかけを教えてください。
最初に関心を持ったのは、猫ではなく犬の福祉活動でした。当時、犬を2匹飼っていたのですが、2匹目を迎えたときに、ご近所に兄妹犬がいることがわかり、仲良くさせてもらっていたんです。
兄妹犬と会ううちに、「この子たちには他にもきょうだいがいたのかな?」と考えるようになりました。ルーツはわかりませんでしたが、犬を大切に育てるブリーダーがいる一方で、劣悪な環境で飼育するブリーダーもいる。そのことを知り、インターネットで情報に触れるほど、管理する"人"によって犬たちの幸せが大きく左右される現実に、居ても立ってもいられなくなったんです。
そこで何かできることはないかと考えるようになり、動物の引き取りや譲渡、啓発活動などを行う動物愛護センターを訪ねてみたいと思い立ちました。
一方で動物愛護センターは、一般の立場からすぐに手伝えることは限られていると感じました。そこで自分にできそうな関わり方はないか調べていくと、愛護センターへボランティアでトリミングに入っている団体があることを知り、「トリマーの資格を取って、仲間に入れてもらおう」と決めました。
そこから約1年かけて資格を取得し、ボランティアトリマーの一員として、動物愛護センターへの立ち入りを許可してもらいました。
── 動物愛護センターに行ってみて、どんなことを感じましたか?
一番強く記憶に残っているのは、殺処分に使われていた機械を見たことです。今は使われていないそうですが、捕獲されたあと引き取り手が見つからなければ、殺処分となる可能性がゼロではない。そうした場所に収容されている犬や猫を目の当たりにし、このままではいけないと強く感じました。
「地域の人との丁寧なコミュニケーションが必要」保護・地域猫活動の難しさ
── 現在は猫に関する福祉活動もされているそうですね。始めたきっかけを教えてください。
2019年に千葉県木更津市へ引っ越した頃、ご近所の方から「子猫が2匹鳴いている」と相談されたことがきっかけです。当時は犬の保護活動に関わり始めたばかりでしたが、まずは2匹を家に連れて帰り、つながりのあった保護団体に相談しながら必要な処置をしたうえで、最終的にうちの子として迎え入れました。
その後、地域には野良猫がたくさんいること、住民同士のトラブルが起きていること、子猫が生まれてはカラスにつつかれたり、車にひかれたりして亡くなってしまうことなど、さまざまな問題があることがわかってきました。とはいえ、うちですべての猫を迎え入れることはできません。
何とかしたいという思いで情報を集める中で、地域で暮らす猫の数が増えないように管理していく「地域猫活動」があることを知りました。一人でできることには限界がありますが、地域の人と協力すれば、できることも増えるかもしれない。そう考えて、地域の方々と一緒に地域猫活動の団体を立ち上げました。
現在はこうした活動のほか、トリマーによるボランティア団体「GOGO groomers」にも参加し、さまざまな動物支援に携わっています。また、私は1度だけですが、能登半島地震の際には被災犬のトリミング支援活動などにも参加しました。
── 地域猫活動では、具体的にどのようなことを行うのでしょうか?
猫の問題を「地域の環境問題」と捉え、飼い主のいない猫を捕獲して避妊・去勢手術を行ったうえで、地域に戻し管理する取り組みです。保護して新しい家族につなぐ「保護活動」とは目的や方法が異なります。
まずは、猫にまつわる困りごとの情報収集をして、住民説明会を開きます。地域住民の合意がなければ進められないため、「何のための活動なのか」「地域にどんなメリットがあるのか」を丁寧に説明していきます。
説明会を経て合意が得られると、次は地域で暮らす猫の調査を行います。初めて見かけた猫は写真を撮ってリスト化し、地域に何匹くらいいるのか、どのエリアにいるのかをチームで共有します。オス・メスまで把握できない場合もありますが、可能な範囲で情報を整理し、捕獲と手術のスケジュールを立てていきます。
捕獲日が決まったら、TNR(※)のお知らせのチラシを作り、ポスティングして、そのうえで捕獲を行い、避妊・去勢手術をして、元いた場所へ戻す。並行して、エサやりやトイレのルール確認など、地域での見守り体制も整えていくんです。1〜2年ほどは、地道な作業が続くため負担も大きいのですが、私の経験では2年ほどで猫が安心して暮らせるようになったり、繁殖しなくなったりして、住民トラブルも減る印象があります。
── 地域猫活動の難しさはどんなところにあると思いますか?
大きいのは費用面ですね。駆虫やワクチン、風邪の治療、避妊・去勢手術などは最低限必要になります。野良猫専門の病院で対応してもらえても、1匹あたり最低8千円ほどかかります。避妊・去勢手術については自治体の助成金のサポートがありますが、消耗品やその他費用について、どこから捻出するかを考える必要があります。
もう一つは、猫の問題には「地域の人との丁寧なコミュニケーションが必要」という点です。猫の飼い方にはいろんな考えの人がいる中で、活動の趣旨を理解していただくには対話が欠かせません。何度も足を運び、関係性を築きながら、適正な猫との関わり方を伝えていく必要があります。
犬は狂犬病予防法のもとで登録の義務がある一方、猫にはないため、飼い猫と野良猫の境界線もあいまいなことがあり、確認作業も必要です。それでも、地域の理解と協力が広がれば、猫も人も暮らしやすくなると思うんですよね。
実際に木更津市には15の地域猫活動団体が立ち上げられていて(2026年2月現在)、ここ2年で倍に増えました。地道な努力が実を結ぶという実感が、活動の原動力にもなっていますし、実際に活動している仲間からも「やってよかった!」との声が多いです。
生まれてきた"同じ命"が苦しむだけで終わるのは悲しい
── 小野さんは猫と暮らす中で、どのような瞬間に幸せを感じるのでしょうか?
のんびり寝ていたり、日なたぼっこをしていたりするのを見るだけで楽しいですし、ぼーっとしているときに膝の上に来てくれると、たまらなく幸せです。犬ももちろんかわいいんですけど、マイペースな猫たちが甘えに来てくれるのは特別な気がします。
特にボロボロの状態から保護して、当初は警戒されながらも信頼関係を築いて絆を深めていった子への思い入れはやはり深くなりますね。その子たちに新たな家族が決まって、幸せそうに暮らす近況を伝えてもらうと、本当に幸せな気持ちになります。
── 動物が誕生から死を迎えるまでの間、ストレスを最小限に抑えて健康的な生活ができるよう、快適な環境で管理する考え方を「アニマルウェルフェア」と呼びます。主に家畜を対象とした考え方ですが、小野さんは日頃から「アニマルウェルフェア」をどのように感じていますか?
私は犬も猫も、鳥も豚だって、この地球上で生きている「同じ命」だと感じています。人間は他の生き物の命をいただいて生きている側面もありますが、せっかく生まれてきた命が苦しいだけで終わってしまうのは悲しい。
だからこそ家畜の飼育環境の問題も含めて、苦しみはできるだけ少なくなるように考えることは大切ではないでしょうか。
ただ、私の中にもはっきりした"正解"があるわけではありません。だからこそ、動物たちがどんな状況に置かれているのかに目を向けながら、「動物の飼い方や扱い方など、当たり前だと思っていたこと」に対して、それは本当に当たり前なのかと、一度立ち止まって考えてみる。その姿勢が大事なのかなと思います。考えたうえで、一人ひとりが実践できることから始めていければいいと感じています。
小野真弓(おの・まゆみ)
千葉県出身。CM出演などをきっかけに大ブレーク。俳優・タレントとして幅広く活動する一方、動物との暮らしを軸にした取り組みも続けている。トリマーライセンスをはじめペット看護士、動物介護士、JKC愛犬飼育管理士などの資格を持ち、動物愛護センターでのボランティアトリミングや保護動物の支援に参加。トリマーチーム「GOGO groomers」の一員として、被災地での動物支援にも関わってきた。近年は木更津を拠点に、地域住民と協力しながら地域猫活動にも取り組み、犬猫と暮らしながら「できることから」の一歩を発信している。


