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日本でも45℃の夏が来る!? 「地獄への階段」を上る猛暑の時代を賢く、おトクに生き抜くヒント

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画像:Adobe Stock

いつのまにか、異常気象は「日常」になりつつあります。夏の暑さが長期化し、2025年には「二季」が新語・流行語大賞のトップ10に選ばれ、日本の観測史上最高気温となる41.8℃も記録されました。

エルニーニョ現象は、こうした異常気象につながるサインのひとつ。太平洋赤道域の海水温が変化するこの現象は、通常より勢力が強い「スーパーエルニーニョ」になることも増え、これまでの常識を超えた気候変動をもたらしています。

異常気象を専門とする立花義裕教授は、全世界で進む温暖化を「地獄への階段を上るよう」と表現します。スーパーエルニーニョが発生する可能性の高い、この夏は一体どうなってしまうのでしょう?

しかし、私たちにできることはただ絶望するだけではありません。立花教授は高温が常態化する時代に適応した、新たな考え方やライフスタイルも提唱しています。世界の気候変動の現在地と、猛暑が予想される今夏の過ごし方について聞きました。

立花先生プロフィール

立花 義裕(たちばな・よしひろ)

1961年北海道生まれ。北海道大学大学院理学研究科博士後期課程修了。博士(理学)。小学生のときに、雪の少ない地域や豪雪地域への引っ越しを経験し、気象に興味を持つ。「羽鳥慎一モーニングショー」を始め、ニュース番組にも多数出演し、異常気象や気候危機の情報を精力的に発信。北海道大学低温科学研究所、東海大学、ワシントン大学、海洋研究開発機構等を経て、現職。専門は気象学、異常気象、気候力学。2023年三重大学賞(研究分野)、2024年東海テレビ文化賞、日本気象学会理事、日本雪氷学会理事。2025年に新語・流行語大賞を「二季」でトップテン受賞。著書に『異常気象の未来予測』(2025年7月、ポプラ社)など。

これまでの常識が通じない「スーパーエルニーニョ」再び?

──2026年6月10日、気象庁がエルニーニョ現象の発生を発表しました。

エルニーニョ現象とは、太平洋の東側の海水温が平年よりも高くなり、西側の水温が下がる現象です。太平洋を東から西に吹く貿易風が弱まることで起き、数年に一度のサイクルで発生します。日本近海の海水温が下がるため、エルニーニョの年は、日本では冷夏・暖冬になりやすい傾向がありました。

エルニーニョ現象発生時における海水温のイメージ(画像:Adobe Stock)
エルニーニョ現象発生時における海水温のイメージ(画像:Adobe Stock)

ところが「スーパーエルニーニョ」になると話が変わります。西に溜まっていた暖かい水があまりにも大量なので、東に流れ出しても、まだ西に大量の暖かい水が残ったままになる。西も東も海水温が高い状態になると、太平洋全体で積乱雲が発生し、広い範囲に高気圧が形成されて、日本は猛暑に。これまでの「エルニーニョ=冷夏」という常識が通用しなくなります。

──もしスーパーエルニーニョになると、この夏はどうなるのでしょうか?

アメリカやヨーロッパの気象機関ではすでに、2026年はスーパーエルニーニョになることを見込んでいます。日本では昨年並み、あるいはそれ以上の猛暑になるかもしれません。2025年は観測史上一番の猛暑でしたし、残暑も10月頃まで続くことになるでしょう。豪雨も起きて、日本に近づく台風の勢力も強くなるはずです。

──台風にも影響するのですね。

貿易風が弱いため台風が西に流されにくく、日本に向かいやすくなります。また、台風が発生する海域が東側にずれることで、太平洋の上を長い時間かけて移動し、まるで充電するように勢力を増しながら近づいてくる。さらに偏西風の影響も受けにくくなるため速度も落ちて、台風が「来やすい・強い・ゆっくり」の三拍子が揃ってしまうんです。

──それは恐ろしい......。気温はどうなっていくのでしょうか?

40℃超えはもう普通になってきましたよね。30℃以上の真夏日、35℃以上の猛暑日に加えて、最高気温が40℃以上の日を「酷暑日」と気象庁が名づけたのも、そうした現実の追認です。このまま進めば、10年後には日本でも45℃に達する可能性すらあります。

怖いのは温度だけではありません。日本は海に囲まれているので湿度が高い。私は熱帯地方で何度も40度超えを経験していますが、乾燥した45度より、湿度が高くジメジメした30度台の方がずっと辛いんです。今の40度超えは乾いた暑さがほとんどですが、いずれは湿度が高いまま超える日も出てくるでしょう。そうなれば、日本は熱帯よりも暑く感じる場所になるかもしれません。

スーパーエルニーニョと暖冬は「異常気象の時代」への入り口? 地球沸騰化がもたらす地球の未来

2024年に立花先生に取材した記事

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一度上がった気温は戻らない。地獄の門が近づいていく

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──スーパーエルニーニョは、世界の気象にどのように影響するのでしょうか?

エルニーニョ現象はこれまで5回に1回ほど"スーパー化"していましたが、近年はその確率が高まっています。温暖化によって熱帯全域の海水温が上がり、東に高温の海水が動いたとしても、西にはまだ大量の暖かい水が残るようになったからです。

さらに大きな問題があり、スーパーエルニーニョが起きるたび、世界の平均気温が階段状に上がってきているんです。そして一度上がった気温は、簡単には下がりません。

──なぜ気温が戻らないのでしょうか?

水は熱容量が大きく、温まりにくく冷めにくい性質があります。海水温もいったん上がると下がりにくい。2023年頃から世界中の海面水温が上昇しましたが、それ以来、高止まりが続いています。

CO2が増えると地球全体に熱が蓄積されますが、その熱は普段、海の深いところに溜め込まれています。だから通常の年は、温暖化していても気温はすぐには上がりません。しかし、スーパーエルニーニョになると、この溜め込まれた熱が一気に大気中に放出されて世界中にばらまかれてしまいます。

スーパーエルニーニョ自体は、大体1年ほどで終わりますが、その後も大気中のCO2濃度は変わりません。地球は引き続き熱を受け取り、また海に蓄積されていく。そして次のスーパーエルニーニョで、また一気に放出される。この繰り返しのたびに気温の「底」が一段ずつ上がっていく、階段状の変化が起こっています。

──これまでの常識が通じない、不可逆な変化が起きてしまうのですね。

気候科学者の中には「気温上昇が産業革命時から1.5度を超えたら、もう元には戻らない」と主張する人もいるのですが、2024年の世界平均気温がすでに超えました。2023年に国連事務総長が「人類は地獄の門を開けてしまった」と述べましたが、私たちはまさに、そうした大きな変化の最中にいます。

エルニーニョ現象は温暖化するほど"スーパー化"しやすくなり、スーパーエルニーニョになれば気温が上がる。この繰り返しで、昔はゆっくりだった「地獄への階段」の上がり方が、だんだん速くなっているんです。

──命の危険を感じるような暑い日も増え、地獄という言葉にリアリティを感じます。

日本国内でも、2024年に熱中症の死者数は2000人を超えました。身を守るために外に出られなくなれば、景気も回らない。温暖化はいいことが一つもないんですよ。世界中で戦争をやっている場合じゃない、と心の底から思います。

必要なのは、気象への関心が「おトク」になる仕組み?

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──気候変動の影響は、私たちの身近な生活にも及んでいますよね。

昨今の米不足と価格高騰の根本は、猛暑による収量の低下が大きな要因だと考えます。国内でも暑さに強い品種に切り替える動きはありますが、なかなか進みません。消費者が「慣れ親しんだ品種を食べたい」というマインドを持つ限り、収量が下がっても高値がつくので、生産者が新品種へ切り替える動機は薄い。消費者のマインドが変わらないと、生産者も行動に移せないんです。

──これまでの生活習慣が、経済的な選択にも影響しているのですね。私たちはどのように、温暖化の進む暮らしに順応していけば良いのでしょうか?

とはいえ努力を強いるような対策は続きません。意識が高い人だけがやって終わりになってしまう。私が大事だと思うのは「やること自体が面白くて、ちょっとおトクになるような仕組み」を考えることです。それを後押しするのが政治・行政の役割だと思います。

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一例として私が提案しているのが、ガソリン価格と最高気温の連動です。気温が高い日は価格が上がり、低い日は安くなる。そうすれば、気温が低いと嬉しくなるじゃないですか。「気温が高い日にガソリンが高いのは、車がCO2を排出しているからか」という自制にもつながります。

得をするために情報を求めるニーズが上がり、たとえば「気象予測YouTuber」が出てきて、日本中で予測合戦が起きるかもしれない。きっかけは金銭的なものだったとしても、気象への関心が高まれば、自然と温暖化への意識も変わっていくと思うんです。

──面白いアイデアですね!気温の変化に敏感になるし、自分の行動と経済のつながりも体感できます。

気象情報をしっかり見る人が、これからは勝ち組になるんですよ。異常気象を察知できれば、儲かるとは言いませんが、少なくとも損はしないはずです。

天気予報も、ただマークを並べるだけでなく、気圧配置の図を見て「なぜ今週は暑いのか」を理解できるような、一歩踏み込んだものを見てほしい。理屈がわかると納得感が違うし、自分なりの予測も立てられるようになります。そうした詳しい予報の利用者が増えれば、テレビ局やメディアもその枠を広げ、媒体側の収益も増えるという、おトクな好循環が生まれていきます。

──その場限りの気候ではなく、原因も含めた全体感が見えてくると、社会への解像度も上がりそうですね。

クマが里に降りてくるのも、猛暑で山の木の実が減り、里で食べ物を得られると学習してしまったのが一因ではないかと考えます。米の問題も、クマの問題も、根っこは同じ。こういったつながりを広く知ってもらうことが、まず第一歩です。その上で、すぐにでもCO2を減らそうという意識が社会全体に広がらなければ、今の状況が好転することはないでしょう。

身近なところから具体的なアクションを始めよう

──具体的に、この夏から始められることはありますか?

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断熱カーテンは室外の熱を伝わりにくくし、室温を一定に保つ効果がある(画像:Adobe Stock)

「断熱カーテン」を1枚追加するだけでエアコンの効率が上がり、電気代が減らせますよ。私も去年、自宅のブラインドを断熱タイプに変えたら、あれほどの猛暑にもかかわらず電気代が下がりました。数千円でできて、CO2も減らせる身近なアクションです。最近のエアコンは高性能で効率も良いので、古い機種からの買い替えもおすすめです。自治体によっては補助金も出ていますよ。

──経済的で、夏の対策にもなる。ぜひ見直したいポイントですね。屋外の移動や行事ではいかがでしょうか?

ちょっとした移動を自転車に変えるだけでも積み重ねになります。ただ、真夏は「命を守る」方針に社会全体で切り替えるべきでしょう。

すべての催しを中止するわけではなく、開催時期を前倒しや後ろ倒しにしたり、時間をずらしたりする対策もできますよね。日付に重要な意味や由緒のある行事でなければ、柔軟に対応できるはず。涼しい時期の方が経済効果も出るし、熱中症の対策をしながら苦心するより、多くの人が楽しめると思うんです。

──おっしゃる通りですね。個人の意識でも、今までの当たり前を、少しずつ変えていくことが必要なのだと思いました。

やはり温暖化には、いいことが一つもありません。それでも「気象をうまく知れば、おトクになる」くらいの感覚でポジティブに向き合ってほしいと思います。天気予報をちゃんと見る、断熱カーテンを買う、行事を涼しい季節にずらす。一つひとつは小さいアクションでも、気象を知って動く人が増えることが、温暖化への対処につながっていくはずです。

\ さっそくアクションしよう /

ひとりでも多くの人に、地球環境や持続可能性について知ってもらうことが、豊かな未来をつくることにつながります。

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