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「正しい」の押し付けが刃になる。無自覚なDV加害者が、暴力を手放し「変わる」ために必要なこと

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画像:Adobe Stock

「ロジックで相手を論破する」「よかれと思って『正解』を押し付ける」ーー。殴る、蹴るといった身体的暴力だけでなく、日常のコミュニケーションの延長線上に潜む、相手の感情や思考を否定する「見えない暴力」に悩む人が増えている。

自身も加害経験を持ち、現在はモラハラ・DV加害者のための自助会「GADHA(ガドハ)」代表の中川瑛さんは、「暴力を手放すには、加害者自身が自らの痛みに気づき、他者との関係性を学び続けることが不可欠」と語る。

「悪意のない加害者」たちは、どのようにして自身の加害性と向き合い、他者と対等な関係を築き直していくのか。当事者の変容をサポートする中川さんに、日常のなかの暴力に気づき、社会全体でケアの輪を広げていくためのヒントを聞いた。

「これが"DV"なら、自分も加害者かもしれない」

暴力の連鎖を断ち切るためには、加害者同士が自らの加害性に気づき、向き合うことが重要だ。しかし、DV問題に直面しているにもかかわらず当事者性に欠けていたり、誰にも言えないジレンマを抱えていたりする人は多い。そんな問題に取り組もうとしているのが、DV加害の経験を持つ中川瑛さんだ。

現在は加害者の自助会「GADHA(ガドハ)」を立ち上げ、加害者同士の学びの場を提供している。中川さんが自身の加害性に気がついたきっかけはなんだったのだろうか。

株式会社変容資源研究所代表
株式会社変容資源研究所代表、モラハラ・DV加害当事者団体GADHA主宰。加害者変容理論を元に、書籍や漫画原作の執筆、加害当事者会の運営、企業・自治体との連携などを行う

「ある時から、自分では普通に話しているつもりなのに、妻を泣かせてしまうことが続いたんです。なんでこうなるんだろうと、『夫婦喧嘩 理由』などで検索してみたら、DVという言葉に行き着いて。それから家庭内の暴力について学び始めたのですが、身体的な暴力だけでなく、相手の感情や思考を否定するようなコミュニケーションもDVなのであれば、かなりたくさんの人がやってしまっているんじゃないか、と思いました」

学んでいくうちに、暴力とは、他者との関係性を思い通りにコントロールするための手段だと思い至るようになる。暴力に頼らずに関係を築くための学びの場所として、2021年に「GADHA」を立ち上げた。

「関係は測定できない」と知ることからはじまる

自身の加害性に気づく以前の中川さんにとって、さまざまな関係性や、価値観はすべてロジックで説明できるものであり、正解が存在するものだった。

「私は正しい考え方や答えというものが存在し、みんなそれに従うべきであるという考えが強かった。その価値観を相手にも押しつけてしまっていました」

DV問題についての知識を得るうちに、日常会話のなかで曖昧さを許さず、「正解」を執拗に求めるコミュニケーション自体が暴力になる場合もあるのだと中川さんは知る。そして、こうした考え方をもとに中川さんはGADHAでの支援活動に取り組んでいる。

GADHAサイト内
GADHAサイト内の【関係の危機を迎えた「悪意のない加害者」が最初に読むページ】。これを読んでGADHAに参加を決める方もいる

GADHAに参加するAさんは、かつて妻(現在は離婚)に自分の考えを押しつけ、意見が合わないと無視をすることもあった。妻から子どもを連れて出ていくと告げられたのを機に、何かアクションを起こそうとGADHAへの参加を決めたという。

「私はイライラの感情を、よく元妻にぶつけてしまっていました。GADHAで対話を重ねる中で、イライラや怒りは自分が傷ついたり、満たされていなかったりする時に生まれる感情で、その背景にある自分自身の心の痛みに目を向けると本質的なコミュニケーションが取りやすくなると気づきました」

Aさんは自分の感情や行動に目を向け、自分のケアを他人に期待するのではなく、自ら行うようになった。その結果、妻だけでなく、子どもとのコミュニケーションも円滑になったと感じている。

画像:Adobe Stock
画像:Adobe Stock

GADHAがテーマにしているのは「相互のニーズを確かめ合いながら人間関係を築くこと」。しかし、テーマとはその時々で形を変え、とてもひとつの言葉では形容することができない。よって、学び終わるということはないと中川さんは話す。

「GADHAの活動に興味を持って『参加すれば、もう二度と人を傷つけないようになれますか?』と質問してくださる方がいるのですが、私たちは他者と生きる限り、暴力までいかないまでも、人を傷つけることは必ずあると思うんです。その時、どちらが正しいかという議論になるのではなく、お互いの分からなさを踏まえながらニーズを伝え合う。そういったことを、さまざまな関係性のなかで常に考えていければと思っています」

当事者以外にもDVの実態を知ってもらう重要性

近年、中川さんは、DV問題の対策について大きな課題を感じているのだという。

「DVにおいて、被害や抑圧を受けた人たち側が社会変革をしなければいけない状況になっていて、すごくアンフェアなことだと思うんです。同じことを繰り返さないためには、やはり加害者自身が学んでいくことが重要だと感じています」

また、中川さんは当事者だけでなく第三者にもDVの知識が広がることが、被害者を助けることにつながるという思いから、DVを題材にした漫画の原作者としても活動している。

「誰でも読みやすい漫画などで第三者にもDVの実態を知ってもらうことで、日常に潜む暴力に気づくきっかけが生まれる。そうやって、社会の中でケアの輪を広げていければ嬉しいです」

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