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豊かな未来のきっかけを届ける

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「すべての人たちに、移動の自由を届ける」トヨタがモバイルトイレをつくる意味

提供:トヨタ自動車

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行きたい場所に、トイレがない状況を想像したことはありますか?

人は1日に平均5回から7回ほどトイレに行くと言われている中、外出先にトイレがなかったら、外出しづらく、外出先でやりたいことが実現しづらい状況が生まれます。そんな状況が日常的に起こっていたら、人生の選択肢は想像する以上に、限られてしまいます。

実際に、車いすで生活を送っていたり、障がいを抱えていたり、高齢で介護を必要としている人たちは、トイレが理由で行きたい場所でやりたいことができない、だからやる前に諦めてしまうことが少なくないのです。

そういった方々に思いを馳せ、移動の自由、選択の自由をもたらそうと、移動式のバリアフリートイレをつくろうと動いたのが、トヨタの社会貢献推進部

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トヨタは、「移動」がチャレンジするための障がいではなく、夢を叶えるための可能性になってほしいという願いを込め、「Mobility for ALL(すべての人に移動の自由を)」の言葉を掲げています。

自動車会社からモビリティ・カンパニーへの変革を掲げて以降、
この言葉がトヨタの新たなチャレンジにおける指針となってきました。

モバイルトイレプロジェクトを主導する社会貢献推進部の内山田はるかさんにお話を聞いていくと、トヨタのモバイルトイレは、目に映りづらいけどたしかに不自由を抱えている人たちに光を当て、社の掲げるMobility for ALLを体現していく取り組みであることがわかりました。

「トイレ」と「移動の自由」の関係性、そして、すべての人が移動の自由を享受できる社会がどのように暮らしやすい社会へとつながっていくのか。トヨタのモバイルトイレプロジェクトから紐解いていきます。

「トイレがない」ことで「移動の自由がな い、選択肢がない」人がいる

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── モビリティカンパニーへの変革を進める中、どんな背景からモバイルトイレプロジェクトは始まったのでしょう?

トヨタの社会貢献推進部が、車両製作を伴っての移動課題の解決へと動き出したのは、このモバイルトイレプロジェクトが初めてなんです。Mobility for ALL(すべての人に移動の自由を)を会社全体として掲げながらも、これまでは環境保全活動や交通安全の取り組みといった車づくり以外の分野で社会のニーズに応えてきました。なぜなら、車づくりで移動課題を解決することはトヨタが企業のビジネスとして取り組める分野だと考えられていたからなんです。

そんな中、世の中的にも、企業が持つ強みを生かしてこそ効果的かつサスティナブルな課題解決ができるという考え方が浸透してきて、社会貢献推進部の中でも「もっとトヨタの強みであるモビリティを活かして社会に役立つことに取り組んでいいんじゃないか」という議論が起こるようになりました。

そこから「移動課題を抱えている人たちは車いすで生活する方々では?」と仮説を立てヒアリングをしていったところ、「出先で使えるトイレがないから外出できない」という声に辿り着いたんです。

── 世の中には、車いす利用者だけでなく、高齢者や障がいを抱える人、小さな子ども連れの親など多様な人が利用できる多機能トイレが普及してきた印象があるのですが、それでも「外出先で使えるトイレがない」というのは、どういうことなのでしょうか?

ヒアリングを重ねていくと、いろんな側面から「多機能トイレがあっても、使えない」という問題があることがわかりました。たとえば、一番多かった声は、中が狭くて旋回できないというもの。ほかにも、動線を妨げるレイアウトになってしまっていることや、ユニバーサルシートなど排泄に必要な設備が揃っていないという課題もあります。

こういった物理的な課題だけでなく、利用想定者ではない方が使用したり、トイレ以外の目的で使用されたりといった課題も見えてきました。清掃や修理が追い付かないこともあり、多機能トイレの数はあっても、気持ちよく使える状態のものが少ないのが実態だとわかっていったのです。

── 多機能トイレはあるけど使えないケースが多いと知った中で、「トイレ自体が移動できるバリアフリートイレ」をつくったのには、社会貢献推進部としてどんな思いがあったのでしょうか。

ヒアリングを重ねていく中で、車いすを使用して生活する高校生の男の子と出会いました。現在は大学生の、鱒渕羽飛(ますぶちつばさ)さんという方です。鱒渕さんから、「トイレがないから決まったところにしか行けない」「もっと友だちと一緒に自由に遊びたい」という声を聞いて、「障がいがあっても、いろんなことを楽しみたいという思いは自分たちとなんら変わらないんだな。もっと自由に楽しめるためになにができるかな」と思いました。

また、彼とは別の方に「外出時にどのような困りごとがありますか?」と聞いたときには、「そもそも外出しませんので」と言われたことも。行きたいと思ったところに自分自身が行ける人の枠に入っていないと感じて、外出する選択肢をそもそも持つことすらない。

「トイレが使えるかどうかを気にして外出できない」「外出先で清潔なトイレを使いたい」、そういった気持ちを抱えている人たちが、もっと自由にどこへでも行きたいところに行けるようになるため
に、トイレ自体を動かせる形にしました。

── 社会貢献推進部としては、外出先でのトイレの不便を解消したいだけではなく、そもそも外出できていない状況の人にも光を当てて、その人たちが外出先の選択肢を増やせるにはどうすればいいかと考えていったわけですね。

企業として事業を始めるとき、どんな企業でもまずはその事業を必要としている人、つまりマーケット規模を調査すると思います。ですが、「トイレが原因で外出できない人はどのくらいいるのか」という数字は、とても集めにくいんです。外出しようと思わない人たちは、私たちの目に映りにくいから

一方で、確たる数字こそありませんが、ヒアリングをしたほとんどすべての車いす利用者が外出時にトイレに困っていると答えたんです。小さい声や届きにくい声に 焦点を当てることが私たちの役目であり、それが社会貢献なんだという思いに賛同してくれる仲間を社内の各部署から少しずつ集めて、形にしていきました。

クルマの技術とパートナーシップの結晶、トヨタのモバイルトイレ3号車とは?

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1、2号車はモバイルトイレとは別に電源車が必要だったが、3号車からは牽引する車をPHVにすればそこから給電が可能になった

「トイレ」と「移動の自由」の関係性に着目したトヨタ・社会貢献推進部が移動型のバリアフリートイレを手がけた理由を伺っていくと、トヨタのモバイルトイレプロジェクトはまさに、Mobility for ALLの"for ALL"の範囲を目に映りにくいところまで広げて、その声を拾い上げようとする取り組みであることがわかりました。

2020年に試作の1号車、そして21年に2号車をつくり、今年に3号車が誕生。内山田さんが「1号車と2号車を経ての、結晶です」と語る、3号車の機能やこだわりを伺いました。

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車体正面にも、MOBILITY FOR ALLの文字が

3号車の最大の特徴は、大幅に小型・軽量化し、けん引免許不要で、普通車がミニバン1台分ほどの大きさのモバイルトイレを牽引して走行できる仕様になったこと。

「1号車は非常に大きく、走行するには牽引免許が必要でした。2号車は大型トラックで運搬する必要がありました。もっと気軽に様々なシーンで使ってもらいたいという想いで、1、2号車の快適性を残したまま小型化して普通免許で扱えるようになったのが、3号車なんです」

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普通自動車免許があり、普段から運転をしている方なら、モバイルトイレを移動する ハードルはそこまで高くない

しかし、小型化されたことで、ユーザーの使い勝手が悪くなってしまっては元も子もない。トヨタのモバイルトイレ3号車はどのように広さや快適さを実現しているのでしょうか。

中を覗くと、車両前方に縦横に広い折りたたみのユニバーサルシート、後方に節水型の真空式トイレが設置され、中央は車いすの方が360度、転回できる広々とした空間が確保されていました。

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大人用の介助シート(ユニバーサルシート)は特にニーズの高かった設備だという

「狭く限られた空間をどうやって広く快適に使うか、という自動車メーカーの知恵が詰まっています」と内山田さん。

手すりの形は、多くの多機能トイレのように直角ではなく角が外に開いている設計にし、車いすユーザーの細かな回転動作を可能にしました。また、通常はタイヤを収めているために使えない空間であるタイヤハウスを、エアコンなどを置く場所として効果的に使えるようにしたのです。

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そのほか、ヒアリングを重ねてきたユーザーの声は、開閉しやすい鍵や荷物フック、 カーテン、大小ふたつのゴミ箱、全身鏡の設置など、至るところに反映されている

3号車は目に見えない部分でも、トヨタのものづくりの真価を発揮しています。普通車で牽引できる重量バランスを追求するために、トレーラーのメーカーの知見を借り、トイレメーカーや架装メーカーなど異業種の企業と協力して設計してきました。それは、2018年に豊田章男社長が自社サイトにコメントを寄せた「ホーム&アウェイ」の精神に通じています。

私流に申し上げますと、「ホーム&アウェイ」の視点で、グループ全体の事業を再構築していくということになります。「ホーム」とは、「現地現物」で、自分たちで付加価値をつけることができ、競合と比較しても競争力で勝っている事業や地域のことであり、逆に「アウェイ」とは、専門性において、自分たちよりも相手の方が多くの優位性をもっている事業や地域を指します。

「自分たちが得意とする専門分野にしっかりと注力し、自分たちができないことには無理に手を出さず、それを得意とする仲間の力を借りていく」という考え方。

トヨタは培ってきた技術と耳を傾け続けてきた人々の声を、SDGs17の項目に掲げられている「パートナーシップで目標を達成しよう」にも通じる形で、この3号車に反映させました。

誰もが同じ機会を享受できる、共生社会へ

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2022年11月のWRCラリージャパンに出展した際は、車いすで観戦する人や子ども連れなどが実際に利用した

トヨタがモバイルトイレをつくったことで、実際にトイレが理由で移動の自由が制限されてきた人たちはどんなことを感じたのか。

1号車ができる以前からトヨタ・モバイルトイレプロジェクトに関わってきた鱒渕羽飛さんは、「海やキャンプ、人の混雑しているライブ会場に行くなど、車いすユーザーの人たちがあまり体験してこなかったこと、自分にはできないと思っていたことをやってみたいと思った」と言います。

そんな鱒渕さんは、自身のYouTubeチャンネルで、スポーツや動画編集などさまざまな挑戦をする様子を発信。

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モバイルトイレ2号車のユーザー評価会に参加した鱒渕さん(写真右端)

できないと思っていたことができると思えたときに、気持ちが前向きになって、性格も明るくなって、どんどんチャレンジしたいって気持ちになれたんです。トヨタのモバイルトイレプロジェクトは僕だけじゃなく、いろんな人の挑戦にもつながっていくものだと思っています」と挑戦できる人が増えていく期待感も口にしました。

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モバイルトイレ3号車を実際に体験する鱒渕さんの様子(動画:「社会貢献活動 | モバイルトイレ設置方法 | Toyota」より)

鱒渕さんの取材を経て、トイレの有無は、単に外出ができるかどうかだけでなく、人生の可能性を広げられるかどうかに大きく関わるものだという認識へと更新されました。

トヨタは今後、どのようにモバイルトイレを展開し、社会に実装していきたいと考えているのか。引き続き、内山田さんにお話を聞いていきます。

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── トヨタは今後、どのようにモバイルトイレを社会に実装していきたいと考えているのでしょうか。

完成してから5ヶ所のイベント等に出展させていただき、自治体の方からは「災害時にも使える」、街づくりのデベロッパー、障がい者就労に携わる社会福祉法人の方などからは「特別な免許が不要なのは扱いやすい」「デザイン性があり、街の中でも使いたい」「車いすユーザー以外やお年寄りにも使いやすそう」などの声をいただくことができました。今後としては、実証実験を行い、その需要に応じて製品化を検討していきたいと考えています。
花火大会やキャンプ、モータースポーツなど屋外に人が多く集まる場でトイレに困っているのは、車いす利用者だけでなく、実は女性やお年寄りなど大勢いると思うんです。社会に普及させ、今不自由を感じているすべての人に使っていただけるものにしたいです。

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テントのすぐ横にトイレを置いたキャンプでの実証実験では、車いす利用者も介助者も排泄を気にせず夜通し楽しんだ

── トヨタとしても、災害など有事の際にも使えるものにしていくことを考えていますか?

「フェーズフリー」と言って、災害などの有事の際と、イベントやお祭りなど平時の際のどちらでも使えるトイレを私たちは提唱しています。トイレの必要性というのは、日常の楽しみを増やすことや何かに挑戦するためだけではなく、いざというときに命を守るために欠かせないもの。災害など有事の際にも使えることで、普段からバリアフリートイレを必要としている方々の避難先の選択肢を増やすことができ、そこで必要な支援や情報などを受け取れると考えています。

また、プロジェクトを進めていく中で、障がいを抱えている人たちが農業を通じて社会に参画していく農福連携の文脈でも、モバイルトイレを展開していく必要があるのではないかと考えるようになりました。

そこでも一般的な仮設トイレがあるから足りているということはなく、やはり狭い空間が苦手だったり、においに敏感だったり、介助の方が必要だったりという課題があることがわかっていったのです。

── モバイルトイレが当たり前になれば、Mobility for ALLの実現へ大きく前進するように感じています。今よりも多くの方々が移動の自由を享受することが、どんな社会の豊かさにつながっていくと考えますか?

私の想像する範囲ですが、障がいの有無に関わらず誰もが行きたいと思ったところに行ける、挑戦したいと思うことに挑戦できる、つまり、誰もが同じ機会を享受できる社会になっていくんじゃないかと思います。

そうすれば街中にもっと、多様な人たちが増え、自然と交流する場が増えていく。そこで思いがけない出会いや発見があったり、今以上に楽しくなったりと、多くの可能性を秘めた社会になっていくのではないかと思っています。

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