大人も子どもも、障がいがあっても楽しめる。今増えている「インクルーシブ公園」ってなに?

今、日本の公園が変わりつつある。

障がいの有無や年齢、性別、国籍などを問わず、すべての人が楽しく遊べることを目指したインクルーシブ公園が首都圏を中心にできはじめています。インクルーシブ公園とは具体的にどんな公園なのか、そして公園が変わることでまちはどう変わるのか。

インクルーシブな遊び場が整備されている公園の先駆けである東京都立砧公園「みんなのひろば」に関わる、一般社団法人TOKYO PLAYの神林俊一さんに話を聞きました。

インクルーシブ公園ってなに?

インクルーシブとは「みんなが含まれている」という意味。

インクルーシブ公園は、ときに「障がいのある子どもが遊べる遊具がある公園」という意味で誤解されがちですが、神林さんによると「障がいのあるなし、子どもか大人かにも関係なく、すべての人が利用できる公園というのがポイント」なのだそう。

これまでは、物理的・心理的バリアによって公園を利用しづらい人たちがいました。すべての子どもが歓迎され、地域の多様な人々が交流できる場となるため生まれたのが、インクルーシブ公園なのです。

インクルーシブとは「人と人の関係性」によりつくられる

神林さん

社会にある物理的・情報的・制度的なバリアを、デザインを使って解決し、心理的バリアもなくしていこうとするのがユニバーサルデザイン。インクルーシブとは、ユニバーサルデザインでは取り除けないバリアを含めて、周囲の人の意識やアクションで取り除いていくという考え方です。もしスロープがあったとしても、まわりの人から『お手伝いしましょうか?』と声をかけてもらったほうが安心してその場にいられますよね。

今、日本にできはじめているインクルーシブ公園は、「人との関わり合いによってつくられる、誰もが集える場所」を目指しています。

インクルーシブ公園と従来の公園とのちがい

  1. 公園のつくられ方がちがう
  2. これまでの公園は「行政により計画され、つくられるもの」でしたが、インクルーシブ公園は「公園を利用者とともに育てていく」という考えのもと、計画・設計の段階から積極的に公園利用者へのヒアリングや意見交換を行います。また、完成後も利用者のヒアリングを重ね、検証・改善を繰り返す「変化し続ける公園」であることも特徴です。

    遊具写真撮影:壬生真理子(arTeaTreaT)

    神林さん

    遊具について、ここで挙げている回転系遊具や円盤ブランコなどは、体幹が弱い人でも遊びやすいだけでなく、大人や子どもが混じり合って複数人で遊ぶことができるため、自然なコミュニケーションが生まれやすいのが特徴です。ただし、単にユニバーサルデザインの遊具を置いただけではインクルーシブ公園にはなりません。さまざまな特性の人々のニーズに合わせた空間構成や遊具などが求められ、木々などの自然、水道、休憩スペース、ユニバーサルトイレ、そして地域の理解や文化など、全体が絡み合ってデザインされます。

  3. 公園の運営がちがう

インクルーシブ公園では、公園利用者同士が自然と声をかけあったり、一緒に遊んだりする環境づくりをするために、コーディネーターやプレイワーカーなどを配置してコミュニケーションを促す土壌づくりが必要となります。その土壌が地域に継承され、最終的には地域の人により公園が育っていくのが理想となります。

日本のインクルーシブ公園の実例

砧公園写真撮影:壬生真理子(arTeaTreaT)、写真提供:品川区、藤沢市

ユニバーサルデザインの遊具を置いてある公園はこれまでもありましたが、「インクルーシブ公園」として全体がデザインされた公園ができはじめたのは最近のこと。この流れは現在、全国に広まりつつあります。

2018年東京都議会での提案をきっかけにオープン

日本では2006年にバリアフリー新法が施行され、公共施設のスロープやトイレなどの整備は進みましたが、公園や遊具は手つかずのままでした。2018年に東京都議会で提案がされたことをきっかけに、東京都でインクルーシブな遊び場の整備が進みました。

利用者の声

(2020年 砧公園「みんなのひろば」利用者へのヒアリング調査より)

私たちにできる3つのアクション

では、私たちは利用者として何ができるのでしょう?

神林さん

「まずは公園に遊びに来てほしいですね。公園を訪れる人すべてがこの3ステップをできるようになると、その公園は自然とどんどんインクルーシブになっていくと思います」

公園から、まちが変わる。未来が変わる。

「みんなが含まれている」ことを表すインクルーシブ。それはつまり、「みんな」に含まれている人とは誰なのか?を一人ひとりが考えていくことでもあります。

公園に多様な人が集まることで、多様な社会を目にするきっかけが生まれます。公園で育った「みんな」は、多様な人と生きていくことが当たり前になり、公園の外でもあたたかい眼差しを持ったり、人に手を貸したり借りたりできるようになるでしょう。

公園という小さな輪が少しずつ広がって、インクルーシブなまちへと変わっていく。それはつまり、「みんな」が安心して暮らせる未来を「みんな」でつくっていくということなのです。

\ さっそくアクションしよう /

ひとりでも多くの人に、地球環境や持続可能性について知ってもらうことが、豊かな未来をつくることにつながります。

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