''日本は必ず変われる。 時代にあったルールづくりを皆で #豊かな未来を創る人 ''
シリーズ「#豊かな未来を創る人」では、未来を創るために活動する人を紹介しています。今回から3回に渡ってこの国の未来を担う国会議員を紹介していきます。
規制改革にフォーカスする衆議院議員の小林史明さん(広島7区)。「テクノロジーの社会実装で、多様でフェアな社会を作る」という政治信条を掲げ、現在は自由民主党の副幹事長を務めています。
ルールを変えて、社会を変える
小林史明
自由民主党副幹事長。
「テクノロジーの社会実装で、多様でフェアな社会を実現する」を政治信条に、規制改革に注力。デジタル規制改革、情報通信改革、公務員制度改革、水産改革など、社会の発展を阻む古い規制の見直しに取り組んでいる。初当選以来の10年にわたる規制改革への取り組みから、規制改革を加速する必要性を強く認識し、デジタル臨時行政調査会の立ち上げを提案し、創設。デジタル副大臣兼内閣府副大臣として、規制改革、行政改革、個人情報保護、サイバーセキュリティ、PPP/PFIを担当しながら、デジタル臨調事務局長も務めた。菅内閣では内閣府大臣補佐官としてワクチン接種促進事業を担当し、VRSの開発運用を牽引。それ以前は、自民党第50代青年局長として全国組織のデジタル化をリードした。上智大学理工学部化学科卒。広島県福山市出身。
企業で働く中で「規制」による歯がゆさを感じたことが、小林さんを政治の道に駆り立てました。
「政治家を目指すきっかけとして一番大きかったのは、新卒でドコモに入社して、群馬支店で3年ほど法人営業をしていたときの経験です。良いソリューションや仕組みが合っても、ルール的な制限があって提案できずに、悔しい思いをしたことが何度もありました。何十年も前の社会環境を前提としたルールの中でビジネスを続ける限り、いつまで経っても同じような思いをする。そうであれば、ルールを変える、ルールを作る側に回りたいと感じたのが、政治に挑戦するきっかけでした。学生時代に地元の議員事務所で選挙を手伝う経験をしていたので、国家議員という選択肢が頭の片隅にあったのかもしれません」
実際に、国会議員になって11年目、小林さんは様々なルール作りに関わってきました。
「例えば、2018年に70年ぶりに改正された漁業法。魚の乱獲状態を是正するために規制を強化した一方で、養殖業への参入障壁が下がるような法整備を行いました。他にも、防衛省が持っていた電波の帯域を整理して民間事業者に開放した電波法の改正。これは、数年間で数兆円規模の設備投資が誘発されるような経済インパクトがありました。さらにコロナ禍でいえば、押印の廃止です。あらゆる行政手続きから押印をなくし、さらにアナログなルールを見直すような流れが生まれています。ルールを変えることで、産業や社会の構造が変わる。それで今を生きる私たちの仕事や生活がさらに自由に、前向きになるのであれば、意義のある仕事だと思っています」
ルール作りに求められる想像力
ルール作りは面白いと話す小林さん。政治家の醍醐味は、様々な人と関われることだと言います。
「政治が本当に面白いと思う一つは、あらゆる人と関わって、あらゆる人に関わる仕事ができることです。少し矛盾しているかもしれませんが、政治家にならないと規制を改革できないかというと、決してそうではありません。様々な立場の人の思いや意見を聞いて、一緒に新しいルールを作っているので、企業として提言することもできます。ただ、どの関係者と調整すればいいかわからないようなこともあります。政治家は、コーディネーター役として様々な人と調整していきます。これが難しい点でもありますが、多様な人が集まるほど、合意形成や調整が難しくなります。その分、その多様な人たちがどんな思いを持っているか実態を知れるし、その人たちと一緒に一つのことを成し遂げるのは喜びも大きいです」
様々な人に関わるからこそ、政治家には「想像力」が重要だと小林さんは続けます。
「政治家は世の中の全ての課題と向き合う仕事です。ですが、全ての課題を完璧に把握できません。だからこそ、あらゆることに対する想像力が必要です。『この分野ではこういう困っている人がいるんじゃないか』と想像できること。また、直接聞いた話でも、背景にもっと大きな課題を抱えている可能性や、見えている範囲の外にも何か課題があるかもしれない。そこまで想像してさらに問題提起をしたり、コミュニケーションしたりすることが、政治家の大切な役割だと思います」
「多様」であることの価値
小林さんは、企業がミッションを掲げるように、自身のミッションを掲げて活動しています。実践する中で、少しずつ自分の中で目指す社会像がクリアになってきたといいます。
「元々は『テクノロジーの社会実装で個人を自由に社会をフェアに』と言っていたのですが、途中から『多様で』という言葉を入れて、「テクノロジーの社会実装で、多様でフェアな社会を実現する」としました。
実際に様々なルール作りをする中で、痛烈に多様性の力を体感した経験があり、参画してくれた方たちには感謝しています。
例えば、ハンコ廃止のときには、様々な企業の総務や人事の人たちと、ビジネスチャット上でコミュニケーションしながら提言書を作りました。そのときは、同じ人事労務でも、大企業や外資系、スタートアップなどいろいろな視点が入ることの価値を感じました。また、ワクチンの接種記録システムを作ったときも、いろんな省庁から集まった官僚だけでなく、民間企業や自治体職員など、それぞれが見えている景色があるから想像力が働き、非常にスピーディーにシステムを構築できました、多様性がいかに重要かは常々実感しています」
多様な人が集まることは、想像できる範囲が広がるとも言えるかもしれません。そしてフェアであるかどうかが、小林さんの意思決定の基準になっています。
「最終的に、誰にとってもフェアな制度であるかを常に考えています。解釈によって違いが生まれないことも大事です。解釈が明確で、かつ誰にとっても機会が平等に提供されるルールづくりを意識しています」
行政のデジタル化でITをグローバル成長産業に
現在、デジタル庁が推進していますが、小林さんは初当選当時から、行政システムの改革、ガバメントクラウドのような政府システムの共通基盤づくりを訴えていました。
「ドコモ時代に1741の市町村がバラバラにシステムを調達していることを知り、共通化した方が良いと当時から思っていました。圧倒的に無駄を削減できます。実際、国会議員になって初めての予算委員会の分科会での質問は、このテーマでした」
10年前から、デジタル庁のような構想が小林さんの中ではあったということです。国が政府共通のクラウドサービスを用意することで、自治体の規模や予算額にかかわらず、同じクオリティ、同じセキュリティレベルのサービスが提供できるようになる。それは、住民が最適な行政サービスを受けられるようになるだけでなく、地方の企業やスタートアップ企業の事業機会にもつながるといいます。
「現在は、ある自治体向けに作ったシステムがあっても、別の自治体向けに作る場合にまたゼロから作る必要があります。そのため、実際には一定規模以上の資本と人員を備えている企業でないと、全国にシステムを提供することができませんでした。ガバメントクラウドとして全ての自治体に共通のインフラを国が用意すれば、企業はその基盤の上でアプリケーションを開発することで、全国に一斉に提供することができます。これは地方の事業者やスタートアップにとっては大きなチャンスですし、大企業にとっても今までのビジネスモデルを変革してグローバルに戦える事業者に変化する機会になります。これは、この国のIT産業の変革につながると考えています」
多くのサービスが提供されると、その分、国民の暮らしは便利になることが予想されます。
「デジタル庁では、全ての行政手続きが60秒の間にスマホ上で完結できる社会を掲げています。そのために法的な整備がもちろん必要です。個人情報の観点で規制が必要になるでしょうし、反対に緩和しなければならない規制もある。デジタル庁の面白いところは、システムだけでなく制度も一緒に整備することです。両方に関われるのが面白みだと思います」
さらに、スマホで全ての行政サービスに接続できるようになると、一人ひとりの意見をより反映しやすい社会になるといいます。
「行政サービスとスマホが接続されると、使ったサービスに対してのフィードバックを送れるようになります。今までは、政治家に会いに行ったり、役所の窓口に行ったり、提言書を作らないと、この国の制度作りに参画できなかった人たちが、使った制度に対してスマホでコメントすることで、この国の制度を良くしていくことに参画できるんです。多様なフィードバックがある方がサービスは良くなる。一人ひとりの意見が行政サービスのバージョンアップにつながるんです」
デジタルで変わる企業の商習慣
小林さんは、テクノロジーを活用した先に、どんな未来を残したいと考えているのでしょうか。
「一人ひとりが自分の価値を発揮できる社会であることが一番だと思っています。そのときに手助けになるのはテクノロジーです。オンラインミーティングもそうだし、ロボティクスを使うことで自分ができない仕事もロボットに任せることができて、より自身が発揮したい価値に集中できるようになる。そういう社会にすることが非常に重要だと思ってます」
全てのサービスがデジタルと接続するのか疑問に感じる人もいるかもしれませんが、小林さんが事務局長を務めていたデジタル臨時行政調査会では、この2年間でアナログ規制を全て見直すと目標を掲げています。
「この国は、1万の法令と3万の通知・通達・ガイドラインでルールが出来上がっていて、その中にアナログなルールが1万条項ほど見つかっています。対面で会わなければいけない、目視確認が必要、責任者が常駐しなければいけない、など。これを、2年間ですべて見直すことを決めました」
これが実現すると、2年間でビジネスのルールや仕事のやり方も大きく変わるといいます。
「日本は変わらないと諦めている人にも、ルールを変えられる、ルールを変えることで社会が変わる、ということを体感してもらいたいです。さらに、官僚や政治家だけでなく、新しい人たちが政策形成に関わるようになったり、自分たちのビジネスルールを根本から見直そうという動きが出てきたら、日本社会はもっと伸びていくと思うんです。
私は、この国の未来を悲観していません。先人たちのおかげで、豊かな社会の土台ができている。各地域に面白いものはあるし、ご飯もおいしい。だた、時代遅れのルールがものすごくたくさん残っていて、今を生きる私たちはどうも息苦しい。それでもまだまだ安全で、安定したインフラがあり、仕事があるということは、積み上げられた課題を解決していけば、必ず変われる。必ず、もっとよくなるのです。
そしてそんな未来のためにも多様性は特に重要だと考えています。私は現在、自民党改革も担当してますが、政治のダイバーシティをどう実現するか。まずは圧倒的に少ない女性議員をどう増やしていくかが任務です。女性はもちろん、多様な人材育成等の計画を今年中に作り、それらの人材があたり前に政治に参画できる環境を将来に向けて作っていきたいです」
3月の特集では小林さんの他にも「子育て支援」「サステナビリティ」というキーワードを掲げて奮闘する2名の議員をご紹介します。ぜひご覧ください。