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微生物から生まれた洗剤が、海を守る。サラヤ発の第3の選択肢「ソホロ」が拓く未来

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ハンドソープや、食器や衣類を洗う洗剤、シャンプーやコンディショナーなどの洗髪料。

どれも私たちが清潔に過ごすために欠かせないものですが、使用後、川や海に流れていくものでもあります。日常使いする消耗品がもたらす環境への影響を、普段どのくらい意識して使っていますか?

「衛生」「環境」「健康」をキーワードに、70年以上にわたって「人」と「地球」の両方にやさしい製品・サービスを開発し続けてきたのが、サラヤ株式会社(以下、サラヤ)。

世界初となる、微生物が生成する天然洗浄成分「ソホロ(一般名称:ソホロースリピッド)」を開発し、"未来の洗浄剤"としてだけでなく、海洋保全や再生医療の細胞保存液に活用されるなど、様々な活用が期待されています。

ソホロが配合された商品
ソホロが配合された商品。左から3商品が「ハッピーエレファント」シリーズ、「アラウ. ベビー」シリーズの「泡全身ソープ」

ソホロの"生みの親"は、バイオケミカル研究所所長・平田善彦さん。

『サストモ』統括編集長の長谷川琢也が、「サラヤによる海のサステナビリティにつながる取り組み」を伺うと、平田さんは何十年も、資源枯渇や環境負荷を念頭に置いた「洗剤の第3の選択肢」に向き合ってきたことがわかりました。

写真左から、平田善彦さん、長谷川琢也
写真左から、平田善彦さん、長谷川琢也

マイクロプラスチックや藻場の消失などが社会問題として注目される昨今。

2025年の大阪・関西万博でも、海洋資源の活用と海洋生態系の保護をテーマとした「BLUE OCEAN DOME」(出展:ZERI JAPAN)が設置され、サラヤもパビリオンパートナーです。二人の対談を通じて、私たちの暮らしと海との関わり方を、一緒に考えましょう。

衛生・環境・(人々の)笑顔。創業からのDNAが「戦後日本の豊かな暮らし」を支えてきた

── 1952年に創業し、日本ではじめて薬用手洗い石けん液と、石けん液容器を開発したサラヤ。創業から現在まで大切にされてきた「ものづくりの姿勢」を、まずはお聞きしたいです。

平田

時代の流れとともに社会を取り巻く課題も変わってきましたが、サラヤは、「ビジネスを通じて、社会課題を解決する」ということを一貫して続けています。

たとえば、戦後間もない日本では、赤痢などの伝染病が多発していました。そういった環境において誰もが平等に病気の脅威から逃れる手段として、感染予防の基本である「手洗い」に着目しました。そして、固形の石けんをみんなで回して使うより、一人ひとりが毎回、綺麗な石けんで手洗いができたほうがいいと考え、液体の石けんとその石けん液のディスペンサー(容器)をつくりました。同時に「何故、手を洗う必要があるのか」を啓発するため、標語と共に普及するなど手洗いを広める仕組みもつくりました。

それから、1971年に誕生したヤシノミ洗剤。高度経済成長期は人々の生活が豊かになりましたが、家庭での洗剤使用量も増え、また原料にコスト優先の石油系洗浄成分が使われた結果、地球環境への影響も出てきました。そこで「生分解性が高い植物系の洗剤を開発しよう」と掲げて生まれたのが、ヤシの油を原料とするヤシノミ洗剤だったんです。

平田善彦氏

長谷川

「衛生を守ることで、戦後日本の経済成長を支えてきた人たちがいるんだ」と思い知らされます。人口が増えて経済活動が活発に行われるとその分、衛生上の問題も発生し、それが成長を止めてしまうリスクがある。そうならないよう下支えしてくれる誰かがいなかったら、この発展はあり得なかったと思うんです。

まさに現代は、経済成長と環境保全、そして人々のwell-being、それらをどう共存させていくかを多くの起業家が考えていますが、サラヤさんには創業期からそういったことに向き合っていくDNAが流れ続けているんだなと思いました。

長谷川琢也氏

平田

創業からで言うと、「スマイル」も常に意識されていることです。サラヤの商品は家庭用、業務用、医療用、福祉用と幅広く展開されているのですが、共通しているのは「お客様に喜んでもらいたい」という想い。手洗い剤ひとつとっても、病院用はニオイがキツくならないようにし、家庭用は精油で香りをつけて手を洗うことの喜びを味わえるようにするなど、工夫しています。

「常にお客さんの顔を思い浮かべる」サラヤの研究開発

── 平田さん自身のことも教えてください。1997年にサラヤに入社されたのは、どういったきっかけだったのでしょうか。

平田

大学在学時から、100度を超える噴火口や深海など、生き物がいるとは思えないほど厳しい環境に存在している微生物に、ロマンを感じていました。そういった場所に存在する生物は、人間が想像できない変わった成分を生み出します。僕はそれらを社会実装する研究室で、洗剤をつくる微生物の研究をしていました。

もともと、どちらかというと菌を殺すよりも、生かす仕事が性に合っていたんです。在学時には、洗剤を生成し、いろんな企業にお渡しして性能を見つけてもらう、ということをやっていました。その一社がサラヤだったんです。

ソホロの液体「SOFORO® A-30」
ソホロの液体「SOFORO® A-30」

長谷川

現在は、商品開発本部の本部長、取締役でもありますが、研究者の方がこういったポジションを担うのも、珍しい気がします。

平田

僕が入社したての頃は、まだ商品開発本部はありませんでした。なので、営業から「これをつくってほしい」と言われたら、研究者たちはそれをつくって渡したり、お客さまに説明しにいくときには一緒について行って、時には商品を使って洗って見せたり。

長谷川

つくる人と使う人との距離が近い。

平田

そこがサラヤの強みだと思います。今も、研究者たちがお客様を置き去りにしないよう「顔を思い浮かべてくださいね」と、研究所に行くたびに言うようにしています。

第3の界面活性剤・ソホロは「生分解性の高さと、生物への毒性の低さ」で海も守る

平田善彦氏

── サラヤの「ハッピーエレファント」や、「アラウ.ベビー」などに配合されている天然酵母由来の界面活性剤「ソホロ」の、開発の経緯についてもお聞きしたいです。

平田

まず、前提として私たちが使っている身の回りのものの多くには界面活性剤が含まれています。界面活性剤とは水と油のような混ざり合わないもの同士をつなぐ物質で、洗剤、シャンプーやボディソープ、化粧品、食品など、あらゆるものに使われているんです。

界面活性剤には昔からある石けん、石油や植物を原料に合成された合成洗剤、そしてソホロのような天然由来があり、合計3,000〜4,000種類になります。天然由来の界面活性剤を社会実装することに着手したのは、1998年に研究所の所長から「やってみるか?」と声がかかったことから。

界面活性剤は何千種類もありますが、一般的に家庭で使われるのは合成洗剤か石けん。現状にはこの二択しかないと気づき、「天然の界面活性剤(バイオサーファクタント)が第3の選択肢になりうるなら、研究者としてそれを急ぐべき」と、研究を始めました。人々の生活の質を守りながら代替となる選択肢を増やす、それを実現したいと思ったんです。ソホロは、10種類ほどある天然の界面活性剤の中のひとつです。

ソホロは大阪大学と産学連携で進める再生医療研究にも応用され、現在は細胞保存液の試薬が売られている
ソホロは大阪大学と産学連携で進める再生医療研究にも応用され、現在は細胞保存液の試薬が売られている

── そうして誕生したソホロは、合成洗剤に引けを取らない高い洗浄力で、生分解性も高い。さらに人体への毒性も低く、サラヤのサステナブルコスメにも使われています

平田

生分解性の高さが、海を守ることにつながります。石油系合成界面活性剤は、ひとたび海や川などに流れると、マイクロプラスチックのように回収できません。分解されるまで待つしかないんです。現代はプラスチックが世界で年間800万トンほど流れていると言われていますが、界面活性剤の消費量もおおよそ1500万トンの試算です。仮に、それらがすべて流れているとすれば、目に見えないだけで実は大きな問題になっている可能性もある。実際、海の中の弱い生き物は、そこからダメージを受けてしまうんです。

ソホロは水に流れると、微生物に食べられて彼らの栄養になるか、水と二酸化炭素に分解されるかのどちらかです。また、生分解性が高いだけでなく、水生生物に対しての毒性が低いこともわかっています。

青い海を次世代につなげるため、何ができるか考え続ける

長谷川琢也氏

── サラヤは、アジアからのプラスチック海洋漂着物が日本で最も多い対馬市と協働して「対馬モデル」を開発したり、昆布藻場を再生させ生態系を保全するために「SARAYA海の森を守るプロジェクト」を実施したりなど、さまざまな海の課題に取り組まれています。こういった取り組みの意義を、どのように感じられていますか?

平田

衛星などテクノロジーの発達によって、マイクロプラスチックなど、一昔前までは見えなかったものが可視化される時代になりました。そこで「見て見ぬふりをしない」のがサラヤの姿勢なので、漂流・漂着ゴミに対しても、自分たちができることに取り組んでいます。たとえば、プラスチック使用量を減らした容器の開発や漂流・漂着ゴミを、僕らが開発しているプラスチックのディスペンサーの一部に置き換える、というチャレンジをしています。

藻場については、やはり磯焼け(藻場が著しく減少する現象)が激しいですよね。対馬に足を運んだとき漁師さんから、「昔だったらスクリューが回らないくらい藻場が豊かだったけれど、そういったことはなくなった」と聞きました。海域が広い日本においては、藻場の再生は本当に必要な取り組みだと思います。

藻場が豊かになってくると、藻類からエネルギーや化学製品の原料をつくることができるようになります。僕らは既に、海藻からソホロを生成する技術の開発に成功しているんです。

長谷川

そこまで発展すると、「藻場にとっていい洗剤」とかも、ありえそうですよね。だってソホロはもう、食品成分としての安全性も確認されているわけですから。今、世界的にもさまざまな理由で海藻が減っていて、その理由のひとつは、山からの栄養が供給不足だからとも言われています。こういったことも踏まえると、微生物の力を使って枯れてしまった海の森を元気にする洗剤をつくれる可能性だってあるかもしれない。

── 夢が膨らみますね。最後に、サラヤがパビリオンパートナーとして支援している大阪・関西万博のパビリオン「BLUE OCEAN DOME」への想いも、聞かせてください。

平田

来場された方々には、水の豊かさや、生命の神秘さを感じてもらいたい。「青い海を次世代につなげるために、今、僕らが何をしなければいけないのか」「僕らはどういう未来をつくりたいのか」。そういったことを考えるきっかけになればと思っています。

平田善彦氏と長谷川琢也氏

●関連リンク
サラヤ「サステナビリティ」
サラヤ「天然酵母由来のソホロって何?」
サラヤ「SDGs SOLUTION」
サラヤYahoo!ショッピング店

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