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グラフィックで考える 森の現在地 日本の森林を守るために私たちができること

掲載日:2024年10月31日

最近、「山地災害」が多いと感じませんか?

写真:ロイター/アフロ
大雨により林地荒廃が発生(秋田県)

出典:林野庁「山地災害の発生状況」
https://www.rinya.maff.go.jp/j/saigai/saigai/con_2.html

写真:ロイター/アフロ
地震耐えられず崩れる山肌(福島県)

出典:林野庁「山地災害の実態」
https://www.rinya.maff.go.jp/j/tisan/tisan/attach/pdf/itakutyousa-3.pdf

最近5か年間(令和元年〜令和5年)に発生した山地災害による被害は、年平均で約1,600カ所、被害額約581億円となっています。 令和5年においては、5月から7月の梅雨前線豪雨等により、激甚な山地災害が発生しました。

詳細は林野庁のページをご覧ください。
https://www.rinya.maff.go.jp/j/saigai/saigai/con_2.html

山地災害の要因としては、日本に多い急峻(きゅうしゅん)な地形に加え集中豪雨の増加や地震が主なところですが、適切な森林管理が行き届いていない状況も重なって、被害が甚大化しやすくなっています。

日本は森林が多く身近にある国です。
森林を健康な状態で守っていくことが、
私たちの暮らしの安心にもつながっていきます。

まずは日本の森について学びましょう

グラフで見る、日本の森

日本は国土の約7割が森林(先進国で第3位)

森林率

参考:OECD※加盟国森林率上位10カ国,2020年

フィンランド 73.7% スウェーデン 68.7% 日本 68.4% 韓国 64.5% スロベニア 61.5% エストニア 56.1% ラトビア 54.9% コロンビア 53.3% オーストリア 47.3% スロバキア 40.1%

2020年7月時点のOECD加盟国37カ国で計算
出典:林野庁「世界森林資源評価(FRA)2020メインレポート 概要」を元に当社作成
https://www.rinya.maff.go.jp/j/kaigai/attach/pdf/index-5.pdf

日本の森林率は国土の約7割で、OECD加盟国では3番目の高さです。全世界でみると、森林面積は陸地面積の約3割に留まっているので、日本は森林が多い国といえます。

※ OECD(経済協力開発機構):ヨーロッパ諸国を中心に日・米を含む先進国が加盟する国際機関

森林面積は横ばいで森林蓄積が増え続けている

※ 森林蓄積:森林を構成する樹木の幹の体積

人工林・天然林別の、森林面積と森林蓄積の推移

出典:林野庁「森林資源の現況」について 別添2 森林面積・蓄積の推移
https://www.rinya.maff.go.jp/j/keikaku/genkyou/r4/attach/pdf/2-2.pdf

森林を構成する樹木の幹の体積を森林蓄積といい、森林資源量の目安を表しています。森林蓄積が増えてきているというのは、木材として活用できる木が増加していることを示しています。

人工林の約半分が樹齢50年を超えてきている

人工林・天然林 合計の樹齢構成

単位:千ha 1〜5年 89 6〜10年 146 11〜15年 155 16〜20年 181 21〜25年 247 26〜30年 353 31〜35年 535 36〜40年 826 41〜45年 1,080 46〜50年 1,438 51〜55年 2,057 56〜60年 2,377 61〜65年 2,595 66〜70年 2,173 71〜75年 1,354 76〜80年 1,360 81〜85年 728 86〜90年 576 91〜95年 429 96〜100年 396 101年〜 4,446

出典:林野庁「森林資源の現況」について 別添3 齢級構成
https://www.rinya.maff.go.jp/j/press/keikaku/attach/pdf/231013-4.pdf

樹齢50年を超える人工林は木材として活用するための伐採適期を迎えています。しかし、国産木材の活用は森林蓄積の増加ほど進んでいない状況です。

本来、森が持つ役割を見ていきましょう

森は多面的な役割もっています

多様な生物を守る役割

地球温暖化を防ぐ役割

快適な環境を作る役割

豊かな資源を生み出す役割

安らぎを与えてくれる役割

文化伝承・教育の場として

特に知ってほしい

あと2つの役割

山崩れや台風などの災害から守る役割

森林 2t/年・ha 耕地 15t/年・ha 裸地(荒廃地) 307t/年・ha

土壌の流出量の比較
出典:丸山岩三「森林水文」実践林業大学(1970)より作成

森林の樹木は地中にしっかりと根を張り巡らせることで、土壌や石をつなぎとめ、土砂の崩壊や流出を防いでいます。これにより、大雨が降ったときでも土石流などの災害を防ぐことができます。さらに、森林の低木や草花、落ち葉は地表の浸食を抑え、土壌の流出を防ぐ役割も果たしています。

多くの水を浸透させて貯留・浄化する役割

森林 浸透能258mm/h 耕地 浸透能128mm/h 裸地(荒廃地) 浸透能79mm/h

出典:村井宏・岩崎勇作
「林地の水および土壌保全機能に関する研究」1975より作成

森林の土壌は、スポンジのような構造をしており、雨水を効率的に地中に浸透させる能力があります。これにより、降った雨の多くが地下にしみ込み、ゆっくりと河川に流れ出るため、洪水や渇水を防ぎ、川の流量を安定させます。また、雨水が土壌を通過する過程で自然に浄化され、飲み水として利用できるほどきれいになります。

森があると...

森林があると、土壌表層が安定し、雨水の動きを調節します。また、樹木に加え低木や草花、落ち葉が地表の浸食を抑え、森林の土壌は降雨を吸収して洪水や渇水を緩和します。

ゆっくり 雨の水を受け止めて、洪水や土砂崩れを防いでくれるよ

森がないと...

森林がないと、土壌浸食を受けやすくなり、雨水の動きを調節する機能が低下し、大雨の際に土石流が発生しやすくなります。また多様な植物や落ち葉が少なくなり、地表の浸食が進み、洪水や渇水が発生しやすくなります。

裸地 雨水がそのまま地面の土と一緒に流れ出しちゃうよー

出典:林野庁「森林の水源涵養機能に係る解説資料」
https://www.rinya.maff.go.jp/j/suigen/suigen/attach/pdf/index-23.pdf
および「マンガで知ろう!森林の働き・イラスト編」を元に当社作成
https://www.rinya.maff.go.jp/j/kouhou/kouhousitu/attach/pdf/manga-2.pdf

多面的な役割のために
大切なこと

間伐などの森林整備

太陽の光が届かない

間伐ができていない場合、森林は暗くなり太陽の光が下まで届きません。樹木は細く倒れやすくなり、下草も生えず土が流れてしまいます。狭い空間で樹木は太く成長できず、木材としても利用されにくくなります。雨水は流れてしまい貯水能力が低下し、木の根も十分に張れず土をしっかりとつかむことができません。

適切なタイミングで間伐をすると...

太陽の光も雨もいっぱい吸収できる

森林が適切に間伐されている場合、木々は太陽の光を十分に浴びることができ、それによりCO2を多く吸収することができます。木々はしっかりと立ち、下草も生えるため土壌の流出が防がれます。樹木は太く成長し、立派な木材となり、雨水をためる力も高まります。また、木の根がしっかりと張り、土をしっかりとつかむことができます。加えてさまざまな生物の生息場所にもなります。

出典:林野庁「森林が持つ表層崩壊防止機能を高めるための森林施業の計画に関するガイドライン(案)」
https://www.rinya.maff.go.jp/j/suigen/suigen/attach/pdf/index-25.pdf
および「マンガで知ろう!森林の働き・イラスト編」を元に当社作成
https://www.rinya.maff.go.jp/j/kouhou/kouhousitu/attach/pdf/manga-2.pdf

大切な森林を守ってくれる林業の状況はどうなってる?

日本の森を支える 林業の現状

国土面積の約7割を森林が占める世界有数の森林大国である日本の、木とともに歩んだ林業にまつわる歴史を見ていきましょう。

提供:アフロ

提供:アフロ

古代から戦前まで

飛鳥時代から江戸時代、明治にかけて、日本では寺院や城の建立、西洋文化の流入などにより木材の需要が大きくなりました。その都度、伐採規制と植栽を行う制度が制定され、持続的な森林利用が推進されてきました。

戦後の拡大造林政策
(1950年代~)

戦後の復興に伴う木材需要の急増に対処するため、政府は「拡大造林政策」を実施しました。天然林を伐採し、スギやヒノキなどの針葉樹の人工林に置き換えることで、大規模な人工林が造林されました。

木材の輸入自由化と
林業の衰退
(1960年代〜)

昭和30年代以降、安価な外材の大量輸入により国産材の価格が低迷し、日本の林業は苦境に立たされました。これに伴い、林業従事者の減少や高齢化が進み、地域の活力の低下などの問題が発生しました。

多面的な森林活用と
持続可能な経営の課題(2000年代〜)

2000年代以降、森林の役割は木材生産だけでなく、環境保全や生物多様性保全、レクリエーションなど多面的な機能にシフトしました。政府は持続可能な森林経営を推進していますが、林業従事者の高齢化や担い手不足は依然として大きな課題として残っています。

森林の多面的な機能を維持し
次世代に豊かな森林資源を
引き継いでいくアクションが求められています。

大切な森を、未来に残すためには?

森林保全に向けて
私たちができること

1

国産材や間伐材を使った商品を選ぼう

国産材や間伐材を選ぶことは、定期的な伐採・植林による災害防止や、輸入材の輸送にかかるCO2の削減、林業の発展、地域の活性化などにつながります。たとえば、本来捨てられるはずだった国産の間伐材を「割り箸」として有効活用することは、国内の林業を支え、森林を守ることにつながります。

木づかいサイクルマーク

国産材を使った商品につけられるマーク。

間伐材マーク

間伐材を使った商品につけられるマーク。

2

認証商品を選ぼう

違法伐採された木材や木材製品を買わず、第三者機関が認証した、適切に管理された森林で作られた商品を選びましょう。日々の買い物で適切な製品や企業を選ぶことで、その製品や企業が正当に評価されるようになれば、持続可能な木材や木材製品の扱いが広がり、森林の保全につながっていきます。

FSC®(Forest Stewardship Council®:森林管理協議会)認証

適切に管理された森林からの木材や、適格だと認められたリサイクル資源から作られた商品に付けられるマーク。

PEFC森林認証(認証管理団体:PEFC評議会)

世界最大規模の森林認証制度。持続可能に管理されている森林から生産された木材や紙製品などにつけられるマーク。

SGEC森林認証(認証管理団体:一般社団法人 緑の循環認証会議(SGEC/PEFCジャパン))

PEFC森林認証との相互承認のもと、日本の森林の自然的・社会的条件に基づき、持続可能に管理されている森林から生産された木材や製品などにつけられるマーク。

※PEFC森林認証、SGEC森林認証のロゴの使用には、SGEC/PEFCジャパンの承認を受けています。

3

森とふれあい、日本の森に関心を持とう

森は景観、音、香り、触感、味覚を通じて五感を楽しませ、私たちの心や体を癒やしてくれたり、遊び場を提供してくれたりするという大切な役割もあります。
まずは森に行って森林浴でリフレッシュしたり、身近な公園で木々に触れたりしながら、森への想像力を広げてみませんか。

ここでご紹介した以外にも、
森林保全を行う団体への寄付やボランティアなども、選択肢の一つになります。日々の暮らしの中でできることから、森を守る行動を取り入れてみませんか?

今回のSDGs目標

15.陸の豊かさも守ろう

陸の豊かさも守ろう

持続可能な森林管理、土地劣化の阻止と回復、生物多様性の損失の阻止などを目指す

【監修者】渋谷正人(しぶやまさと)​
北海道大学農学研究院 特任教授​

1985年北海道大学修士課程を修了、北海道職員として勤務の後、北海道大学農学部・農学研究院教員、行政機関の各種委員会歴任。北海道生まれ。学位:博士(農学)(北海道大学)​

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サストモは、未来に関心を持つすべての人へ、サステナビリティに関するニュースやアイデアを届けるプロジェクトです。メディア、ビジネス、テクノロジーなどを通じて、だれかの声を社会の力に変えていきます。