男女間賃金格差の現状
長引くコロナ禍で雇用・収入環境が悪化したが、
特に女性の失業や収入減が続いている。
より顕著になった女性の不安定な雇用や収入。
男性と比較すると、どれくらいの賃金差があるのか?
まずはその現状を見ていこう
月額平均賃金の差
出典:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」
賃金差は月額で平均8.7万円。
年収にすると約104万円の差がある。
男女・学歴別の年収(2021年)
出典:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」
学歴が同じでも年収差があり、年齢の上昇とともに拡大する。
女性大卒者と男性高卒者の年収はほぼ同水準である。
男女別賃金の推移
出典:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」
少しずつ格差は解消している。
しかし現在のペースだと完全平等になるまで76年(※)かかる。
※過去10年の男女間賃金格差の解消率をもとに試算
世界の男女間賃金格差
女性賃金が男性賃金より何%低いかを集計
出典:OECD「男女間賃金格差(Gender wage gap)」より
主要国をピックアップ
日本はOECD主要国のなかでも格差は大きい
日本で男女格差が生まれる原因
文化や宗教などを始め、世界各国でさまざまな根深い原因がある。では日本で大きな問題となっているのは?
【原因①】女性管理職の数が少ない
働く女性と管理的立場の女性の割合
出典:内閣府「就業者及び管理的職業従事者に占める女性の割合
(国際比較)」
女性活躍のための「就業機会」は整えられてきたが、
正当なキャリアアップにはつながっていない日本。
管理的立場(企業の課長職以上など)の女性は14.8%と諸外国の半分以下。
【原因②】女性の非正規比率が高い
正規・非正規雇用の男女別比率
出典:労働力調査(総務省)
働く女性の半数以上が非正規である。
男性と比較すると約2.5倍。
正規・非正規間の賃金に大きな差がある
出典:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」
男女を問わず正規・非正規の間では、
平均すると約11万円の差がある。
【原因③】日本型雇用と性別役割の固定化
男女別の勤続年数と格差
出典:労働政策研究・研修機構「データブック国際労働比較2019」
日本では男性の勤続年数が長く、女性との間に大きな格差が生じている。
この原因のひとつは日本型雇用である。
メンバーシップ型とも呼ばれる日本型雇用とは
年功序列、人材流動性が低いことなどが特徴。
出産・育児で休職する可能性がある女性にとって働きにくい雇用形態である。
そのため男性は仕事、女性は家庭という性別役割の固定化が生まれた。
男女別1日の生活時間の配分
※6歳未満の子を持つ夫婦の場合
出典:平成28 年社会生活基本調査をもとに制作
女性は男性の半分ほどの時間を仕事に当てているが、
家事と育児は5倍以上も担っている。
家事や育児など女性の「無償労働」は男性の何倍か?世界比較
出典:内閣府男女共同参画局
日本は無償労働が女性に偏る傾向が極端に強い。
男性の育児休業取得率の推移
出典:厚生労働省「雇用均等基本調査」
年々、伸びていて2020年には初めて10%を超えた。
しかし、取得義務化が始まったフランスなど欧米に比べると
まだまだ低いのが現状だ。
コロナにより男女格差の縮小が足踏み状態に
コロナウイルスは経済や雇用に大きな影響を与えた。
格差縮小の動きも足踏み状態となり、先行きが不透明なのが実情だ。
緊急事態宣言後(2020年4月)の就業者数の減少
出典:総務省「労働力調査」をもとに制作
女性は男性の約1.8倍も減少している。
緊急事態宣言後(2020年4月)の就業者数の変化
出典:総務省「労働力調査」をもとに制作
休業を余儀なくされた宿泊や飲食などのサービス業は、
女性非正規の割合が多いため、女性全体の就業者数減少につながった。
女性労働力率の推移
出典:総務省「労働力調査」
上昇を続けていたが、2020年からほぼ横ばいの状態となっている。
解決の糸口となり得るものは?
「絶対的な解決方法」はないだろうが
「手がかり」となり得るものはある。
働き方の変化、欧米の例などを挙げて見ていこう。
「ジョブ型」の働き方を推進
業務レベルに応じて賃金が決まるため格差を縮小する方向に寄与。
「仕事」が基準になるため、同一価値労働 同一賃金が浸透しやすくなる。
同一価値労働 同一賃金の浸透
同じ価値の仕事をしている人に対して同じ賃金を支払うという原則。
正規と非正規の不合理な待遇差を解消するために、日本でも法改正が行われ
2020年から段階的に施行
男性の無償労働を増やす
男性の育休取得率が低いため見直しが入り、
2022年4月から段階的に施行されていく。
男性が育児を担う時間を増やすきっかけとして期待されている。
テレワークが与える影響も
コロナによりテレワークをする人が増えた。
働き方が変化することで、男性が無償労働へ参加する機会も増えるなど、
ポジティブな影響を及ぼす可能性がある。
「男女間賃金格差」の公表
中長期にわたって制度の効果を見ていく必要がある。
日本でもその是非を巡って議論を重ねる余地はあるだろう。
まとめ
ジョブ型雇用、同一価値労働 同一賃金、賃金公表制度の導入などが解決の糸口