データで知る日本のジェンダーギャップ
2021年7月1日公開
「ジェンダー後進国」と言われる日本。
世界各国が男女格差の問題に取り組む中、
完全に取り残されているのが現状だ。
では、実際に日本が抱えている
具体的な課題は?
さまざまなデータから浮き彫りにし、
ジェンダー平等について考えてみよう。
2021年に話題になったジェンダー問題
東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の森喜朗元会長による女性蔑視発言(2月)や、テレビ朝日「報道ステーション」のCM動画の炎上(3月)など、深刻な問題が立て続いた。
"女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる"
"『ジェンダー平等』(中略)何それ時代遅れって感じ"
ジェンダーに関する
認識の甘さが露呈した日本。
具体的な課題をデータから見ていこう。
ジェンダーギャップ指数と日本の課題
世界各国の男女格差を数値化して比較したとき、日本の「位置」がよくわかる。メディアでもよく取り上げられる「ジェンダーギャップ指数」から、課題を紐解いていこう。
2021年ジェンダーギャップ指数
ランキング
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1位アイスランド
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2位フィンランド
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3位ノルウェー
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11位ドイツ
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30位アメリカ
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102位韓国
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107位中国
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120位日本
出典:世界経済フォーラム「Global Gender Gap Report 2021」
日本は156カ国中120位、
G7で最下位という結果に。
上位は軒並み北欧勢が占める。
こうした国々と
日本の違いはどこにあるのか。
アイスランドと日本の
ジェンダーギャップ比較
出典:世界経済フォーラム「Global Gender Gap Report 2021」
日本の課題は「政治」「経済」
「教育」「健康」分野の評価に比べ、
「政治」「経済」分野で大きなギャップがある。
この2つの分野について、さらに詳しく見ていこう。
課題1 政治のジェンダーギャップ
世界と比較すると、日本では女性の政治参加が極端に低い。世界全体で女性議員の割合が25.5%なのに対して、日本は9.9%と低迷している。
国会議員に占める
女性の割合国際比較
出典:IPU「各国議会の女性進出に関する2020年版報告」
この40年間で諸外国の女性の政治参画は加速。
日本はこの10年あまり伸び悩み、G7で最低。
政治リーダーの女性比率
20人のうち、上川陽子氏(法務大臣)と
丸川珠代氏(オリパラ担当大臣)の2人。
2021年6月現在
47人のうち、吉村美栄子氏(山形県)と
小池百合子氏(東京都)の2人。
2021年6月現在
意思決定の「場」にいない女性
具体的な対応策は?
海外の事例
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クオータ制発祥の国
(ノルウェー)
- クオータ制を最初に導入したノルウェーでは、1988年に改正された男女平等法で「公的な決定の場で一方の性が40%以下であってはならない」と定められた。2004年には上場企業においても、取締役について同様のクオータ制が導入され、2008年に達成した。
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女性議員比率世界No.1
(ルワンダ)
- 女性議員の比率が約6割と世界トップのルワンダは、憲法によって、国の指導的機関の地位の30%以上を女性が占めるよう定められている。クオータ制導入後に初めて実施された2003年の選挙で、国会議員の女性割合が約25%から約50%まで上昇し、世界1位となった。
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独自の制度「パリテ」
(フランス)
- 候補者クオータ制を導入しているのがフランス。2000年に制定された「パリテ法」は、各政党に対して男女同数50%ずつの候補者擁立を義務づけている。これによって、1990年代後半に10%程度だった女性割合は4倍近く向上した。
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候補者クオータ制を導入
(メキシコ)
- 国会議員の48.2%が女性のメキシコ。1990年代前半は10%前後だったが、2002年に候補者の30%を女性にすることを法律で義務化。その後も、法改正で40%(2008年)、50%(2014年)と割合を増やし、流れを加速させた。
日本での新たな動き
五輪組織委員会をめぐる
女性理事の登用
東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の森喜朗元会長による女性蔑視発言を受けて、委員会の女性理事比率の低さが指摘されたのは2021年2月のこと。その後、橋本聖子新会長のもと、理事の構成が変更。当初7人だった女性理事に加え、新たに12人の理事が任命され女性比率が約20%から約40%に引き上げられた。世の中の指摘に急遽対応した形ではあるが、クオータ制に近い考え方による変更である。
超党派の女性議員らによる勉強会
クオータ制の実現を目指す動きは、永田町でも強まりつつある。2021年5月12日には、超党派の女性議員による勉強会が発足。メンバーは、自民党の野田聖子幹事長代行や立憲民主党の辻元清美副代表ら7党の女性議員である。
勉強会のテーマのひとつは、「政治分野における男女共同参画推進法」(2018年制定)。同法は、フランスのパリテ法と同じように、各政党に男女同数の候補者擁立を努力義務として課していることから「日本版パリテ法」と呼ばれるが、本家と違って「義務化」していないため、男女比率は改善していないのが実情だ。
課題2 経済のジェンダーギャップ
日本では、女性が活躍するための「就業機会」は整えられてきたが、それが正当なキャリアアップにつながっていない――という実態が大きな課題になっている。
働く女性と管理的立場の女性の割合
出典:内閣府「就業者及び管理的職業従事者に占める女性の割合(国際比較)」
働いている女性の割合は世界各国と大きな差はないが、管理的立場(企業の課長職以上など)の女性は14.8%と諸外国の半分以下。同じアジアのフィリピンでは50%を超えている。
民間企業の女性役職者の割合
出典:内閣府「階級別役職者に占める女性の割合の推移」
日本においても、民間企業の女性役職者は増加傾向にある。
ただし、そのボリュームゾーンは係長クラスで、課長以上は10%以下にとどまる。
圧倒的に少ない女性起業家
出典:総務省統計局「平成 29 年就業構造基本調査」
国内の起業者(自営業主、会社などの役員)のうち女性の割合は約2割。
しかも個人で比較的小規模な起業が多い。
「経済」のジェンダー平等が進むと、
日本の企業はどう変わる?
ジェンダー平等を推進する企業
「なでしこ銘柄」の株価がよい
※2015年〜2020年(2月、8月の数値)/2021年(2月の数値)
出典:経済産業省・東京証券取引所「令和2年度なでしこ銘柄」
東証株価指数(TOPIX)との比較(注1)で、
女性の活躍を推進する上場企業「なでしこ銘柄」企業の株価は中長期で上振れ。
営業利益率でも、東証一部上場企業の平均値を上回っている。
(注1)令和2年度「なでしこ銘柄」の選定企業45社について、指数を試算。平成23年2月の終値(調整後)を100とした時の推移をTOPIXと比較。
経団連と連携する
「30% Club Japan」の活動
「30% Club
Japan」は、企業の女性役員の割合を高める運動としてイギリスで始まったキャンペーンの日本版で、2019年に発足。
TOPIX100の取締役会に占める女性比率を、2030年末までに30%まで引き上げることを目標に掲げている。さらにキャンペーンに賛同した機関投資家などがグループとなって、投資先企業に女性活躍推進の取り組みを促すなど"投資判断"への影響力も強めている。2019年12月には日本企業における女性活躍とダイバーシティの推進について、経団連とお互いに協力するための覚書を締結。経団連も、会員企業の役員の女性比率を2030年までに30%
以上にするとの目標を発表している。
「意思決定層」に女性が圧倒的に少ない
まとめ
世界のジェンダー推進国と決定的に違うのは――政治や経済の意思決定の場に女性がいないこと