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「産前からカップルで学び、話し合う大切さ」〜産後の心と体とパートナーシップ〜産前産後の過ごし方

    

フェムテック推進 EXPO

NPO法人マドレボニータ
認定産後セルフケアインストラクター
桐原 沙織、竹原 瑠衣

https://www.madrebonita.com/

視聴URL: https://online-event.dmm.com/main/page/femtech2210/venue/schedule_detail.php?uid=63228258d699a

はじめまして、こんにちは。
認定NPO法人マドレボニータ・産後セルフケアインストラクターの竹原るいです。桐原沙織です。私たちマドレボニータは「すべての家族に産後ケア」というスローガンを掲げ、全国各地で産後ケア教室や産後のバランスボール教室、オンラインでの産前産後のセルフケアオンライン教室といった、妊娠中や産後の女性が心身のリハビリに取り組む場を提供しています。

今日この時間では、少しでも多くの家族が心身ともに健やかに、出産・産後を迎えられるよう、産前産後の過ごし方についてお伝えしたいと思います。

マドレボニータが社会課題として解決に取り組む「産後の三大危機」

妊娠出産はとても幸せなことですが、実は出産を起点に様々な問題が起こっています。

日本は世界的に見ても新生児死亡率が最も低く、安全に出産できる国として評価されていますが、産後の問題は「母体の危機」「夫婦の危機」「赤ちゃんの危機」といったものが挙げられます。これらを産後の三大危機として、私たちマドレボニータではこの解決に取り組んでいます。

これらは産後、家庭内で起こるものの、個人的な問題にとどまらず、産後うつや乳児虐待、夫婦不和など、産後が起点となる社会問題に発展していきます。

家庭内で起こる問題だからこそ、家族以外に助けを求めることや、逆に外からは家庭内の様子が見えづらく、何かが起きる前に介入することが難しいのです。

当事者であるカップルだけでなく、社会全体で産前産後の状況を理解し、向き合い、取り組んでいく必要があります。

ここで、それぞれの危機について詳しく見ていきます。

「母体の危機」に関わる産後うつ。性別にかかわらず夫婦で向き合うべき課題

まず「母体の危機」。

産後うつについては、厚生労働省が平成25年に発表した「11人に1人が産後うつを患っている」というデータが広く知られています。

マドレボニータは2021年に行った調査によると、「診断はされていないが産後うつだったと思う」とか、「産後うつの一歩手前だった」と回答した人が42%いました。出産して周りからは幸せそうに見えても、何かしら精神的にしんどい思いをしながら子育てしている人も多いことがわかります。私も、自分の産後を振り返ると産後うつ一歩手前だったなぁと思います。

コロナ禍で人と関わる機会が減ったことで孤独を感じたり、実際に孤立してしまう人も増えていると思います。男性も在宅勤務等が増えていたり、産後を夫婦で乗り越えたなんていうポジティブな声もありますが、逆に男性の産後うつが増えているというデータもあります。やはり産後は性別にかかわらず、夫婦で向き合うべき問題ですね。

「夫婦の危機」約3割の女性が産後に「離婚」という2文字が頭をよぎったことがあるというデータも

次に「夫婦の危機」。

結局2人が向き合うことができていないと夫婦の危機、つまり夫婦不和が起こってしまいます。産後クライシスという言葉が広く知られている通り、産後は夫婦間の問題が起きやすく、子どものいる家庭の離婚は産後2年以内が1番多い(34.2%)という厚生労働省のデータがあります。

私たちの調査でも、34%の女性が「産後に離婚という2文字が頭をよぎったことがある」と回答しています。

また、夫と妻、お互いへの愛情を実感している人の比率を、妊娠中と産後で比較した結果、「夫への愛情を実感する妻」というのは妊娠中は74.3%。でも産後1年で36.8%と、約半数になってしまうというデータもあります。

実際、私も第一子の産後は常に夫にイライラしていて、「こうやって人は離婚するのか」と思ったことがあります。出産したことは幸せだけど、産前とは生活が大きく変化して女性は戸惑いも大きいですよね。

それをちゃんと言葉で伝えて、夫婦で協力できれば良いのですが、とにかく余裕がなくて話す時間も気力もない。そうするうちに男性側はどうしていいのかわからず、下手に手を出すこともできず、すれ違ってしまうんですよね。だからこそ、マドレボニータでもオリジナルの両親学級を開催していますが、妊娠中から夫婦で準備することが大事なのだと思います。

「赤ちゃんの危機」が「母体の危機」へ。母と子が社会から孤立してしまい、乳児虐待につながる可能性も

そして最後が「赤ちゃんの危機」です。

1つ目に挙げた「母体の危機」が「赤ちゃんの危機」にもつながります。

まだまだ女性が1人で育児をしている時間が長いという方も多いと思います。産後は密室状態で、母と子が社会から孤立してしまい、それが乳児虐待につながる可能性があります。

心中以外の虐待によって死亡した子どもの年齢は「0歳児」が43.1%。これは全体の半数近くに上る数です。また、0歳児の虐待死に占める0ヶ月児、いわゆる新生児の割合は4割、虐待死の加害者の約6割が実の母親というデータもあります。しかも事件になってしまうような虐待でなくても、一歩手前の状況が多く存在します。

こちらもマドレボニータが行った調査の結果ですが、「虐待はしてないけども、してしまいそうになる不安を感じたことがある」と回答した人が49%。虐待のリスクというのは、想像以上に身近なところにあります。

産後は心身ともに大きな変化が。妊娠中から、夫婦や家族で準備することが大切

子育てって本当に思うようにいかないんですよね。赤ちゃんは決まった時間に起きて決まった時間にミルクを飲んでくれるわけでもないし、泣いても何を訴えているのかわからなかったり。私も突然涙が出たり、何をしても泣き止まない赤ちゃんを前にぼう然とした経験があります。赤ちゃんは可愛いし、出産して幸せなのはもちろんですが、産後は心身ともに大きな変化があり、想像以上に大変なんですね。

実は産後の女性の体は、骨盤や子宮の状態から全治2ヶ月の傷を負っている状態と例えられます。でも、体の中で起きていることは目に見えないので、周りの人もそこまで大変な状態だとわかりません。

本人も産後ハイのような状態になり、「全然大丈夫!」とか、「お母さんになったのだから私がやらなきゃ」と、養生せず無理して動いてしまいがちです。また妊娠、出産、産後にかけて、女性ホルモンの数値が急激に変化します。そうすると産前産後は情緒不安定になって、涙もろくなったり、音に敏感になったり、出産を経験された方は体感する人も多いですよね。

加えて、出産を境に日々の生活や自分を取り巻く環境が大きく変化します。授乳とオムツ替えで1日が終わり、気づくと今日誰とも話してないなんていう日もあります。ちょっと1人でのんびりしたいなぁと思ってもそれができなかったり、何か心配なことがあっても、誰にも相談できずに抱え込んでしまったり。なかなか夫と話す時間や余裕もなくて、赤ちゃんと2人きりで過ごす時間が長くなると、先行きが不安になります。

このほかにも、体力の低下、睡眠不足、肩こりなど、本当にいろいろなことが起こります。産後は尿漏れや痔で悩む人も多いですが、本人が隠せばパートナーさえ知らなくて、人知れず悩みがちです。精神的にも妙にイライラしたり、赤ちゃんのこととなると、ささいなことでも心配になったり、自分でコントロールできないくらい不安定になります。だからこそ問題が起きてから対処するのではなく、妊娠中から夫婦や家族で、準備することが必要なのです。

出産により家族が強いものになるかは、産前産後の過ごし方が肝ともいえる

私たちは、妊娠前、妊娠中、産褥期、リハビリ期、社会復帰準備期というふうに分けて考えていますが、それぞれの時期に必要なケアは違います。

例えば、産褥期の「受けるケア」で、しっかり休養をとり体が回復しないと、その次のリハビリ期の「取り組むケア」で心身のリハビリに取り組むこともできません。体が回復していないと、運動したり人と話をする余裕もないし、そもそも外に出ようという気持ちにもなれないですよね。

出産によって家族が強いものになるか、もしくはそのバランスが崩れてしまうかは、産前産後の過ごし方に左右されるといっても過言ではありません。

だからこそ、私たちは妊娠中からの準備や家族で産後ケアに取り組むことの大切さを、すべての家族に届けていきたいと考えています。

産後ケアや準備ができて いる/いない 場合別の産後の状況の違い

では、この産後ケアに取り組めるか否か、準備できていたかいなかったかで、状況がどれほど変わるのでしょうか。

まずはBさん出産準備、赤ちゃんのお世話の準備は万全ですが、産後の知識は全くない状態。しかもお母さん1人で全部準備をしています。見るからに幸せそうで、こういう人を見て何か言う人はあまりいないですよね。でもそうすると、産後の知識がないまま出産を迎えてしまうことになります。

一方で、Aさんは産後について1人ではなく夫婦で学んだことで知識があり、協力して準備をしています。産後の知識があれば、どういう産後を過ごすことができるのでしょうか。

産後はどんなことが起きるのかをパートナーも理解し、どんな準備が必要なのかをきちんと話し合うことができていると、産後すぐから6〜8週くらいまでの産褥期、しっかり養生して体の回復に専念することができます。自分だけが「養生が大事」と理解しているだけではダメなんです。お互い、この時期はどんな状態でどう過ごすべきか共通認識があるからこそ、しっかり身体を休めることができるのです。

もちろん、その分の家事や育児を全てパートナーが担う必要はありません。親などの家族、友人、産後ドゥーラさんといったヘルパーさんなど、産婦自身がやらなくていい体制を、妊娠中からぜひ整えておきましょう。

こんなふうに産後の回復に専念できると、産後2ヶ月以降はしっかりとリハビリに取り組むことができます。産後ケアの教室や、講座に参加して体を動かし、励まし合える仲間とつながり、社会復帰への自信を得るというのが、私たちが描いている理想の産後です。

では逆に、産後の知識がないとどうなるのでしょうか。

出産前は幸せそうだったBさん。でも1人であれもこれも「私がやらなきゃ」とがんばりすぎてしまうと、パートナーは自分の出番がなく何をしていいのかわかりません。結果的に、家事も育児も一人で頑張ってしまって、養生が必要な産褥期にしっかり休むことができずに、体調がどんどん悪化してしまうというケースもあります。それでも「赤ちゃんのお世話をしなきゃ」とか「家事もやらなきゃ」と動き続けることでさらに追い詰められて、その頃にはパートナーとコミュニケーションをとる余裕もなく、イライラやモヤモヤ、戸惑い、苦しみ、責任感といったしんどさを一人で抱え込んでしまい、精神的にも不安定になります。そうすると、本来ならば産後のリハビリに取り組む時期に、体調も戻らないので外出もままならない。ずっと赤ちゃんと家にこもっているとストレスも溜まり、夫婦関係もぎくしゃくしたままで、いつもイライラしているし、そんな状況をパートナーにも理解してもらえないというようなすれ違いが起きてしまいます。

家族の健康な生活の土台となる、母となった女性の心身の健康

「産後」は妊娠中からつながっていますので、長い期間、サポートが必要だといえます。私たちマドレボニータでは、オンライン両親学級や、産前のセルフケアオンライン教室など、妊娠中から産婦さんの心身のケアや、産後の準備をサポートする講座を開催しています。

そして産後に通っていただく教室では、対面の場合はバランスボールを使い、オンラインはストレッチで体を動かし、まずは体を整えます。

体を動かすことって想像以上にリフレッシュになりますし、その状態で同じ境遇にある仲間たちと会話することで、自分を客観視することができますよね。

このコロナ禍、妊娠中から外出を控えていたという方も多くいますが、やはり外に出ること、体動かすこと、家族以外の大人と話をすることは、純粋に楽しいし、気分転換にもなります。

母となった女性が、心身ともに健康に過ごせることは、その家族の健康な生活の土台となります。どうしても産後は赤ちゃんのことが最優先で、自分の事は後回しになりがちですが、まずは産後女性の心身をケアすること、そしてパートナーシップに向き合うことも大事にしてみてください。

\ さっそくアクションしよう /

ひとりでも多くの人に、地球環境や持続可能性について知ってもらうことが、豊かな未来をつくることにつながります。

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