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豊かな未来のきっかけを届ける

豊かな未来のきっかけを届ける

日本独自のビニール傘文化が生んだごみ問題をデザインで解決する

elove by zozo

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梅雨の時期は特に出番が多くなる傘。日本では、年間に1.2億本以上の傘が消費され、その数は毎年ほとんど変わりません。つまり壊れたら廃棄されているのです。そんな傘に対する意識を根本から変えるべく、ビニール傘問題と向き合い続け、新たな価値や意識を生み出し続けているブランドがあります。それが、長年にわたって傘を中心にアパレルも展開してきた「Ca Et La(サエラ)」です。問題視され続けているビニール傘の使い捨てとどのように向き合い、取り組みをしているのか。代表取締役社長の山本 健さん、広報の吉浦 聖子さん、デザイナーの白曼 麻莉香さん、ワークショップインストラクターの西山 雄馬さんにお話をお伺いしました。

「使い捨て」という消費価値が生み出した、日本における傘の廃棄問題

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代表取締役社長の山本 健さん

── はじめに、日本の傘の廃棄問題について教えてください。

山本

近年、日本で消費されている傘は年間約1.2億本〜1.3億本(※1)、一人あたりの平均所有数は全国平均で4.2本。そのうちビニール傘は1.6本(※2)です。ビニール傘が多く存在する今の日本では、「雨をしのぐ」という需要が満たされると、その価値は終わってしまうという哀しい現実があります。鉄とプラスチックという複合素材でできているビニール傘はリサイクルもされにくく、廃棄された傘の多くは埋め捨てられ続けています。

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ものづくりの背景には作り手の思いや苦労があるのにもかかわらず、消費者は自分の需要を満たすだけの消費価値を求めるため、作り手と消費者の間に乖離した感情が生まれてしまっているのです。SDGsが採択された2015年頃から世界的に環境に対する意識が高まりはじめ、ようやく「モノを大切にしなければ」という意識が広まりつつありますが、まだまだ利益優先の市場が台頭しているのが現実です。

── こうした傘の現状を、「Ca Et La(サエラ)」ではどのように捉えていますか?

山本

安価な傘を生産するために、工場や材料メーカーは品質を犠牲にしたり、環境に配慮しない廃棄方法をとっているというのが現状です。他にも、長時間労働や児童労働も深刻な問題となっています。安価な商品を大量に作っていく背景には、環境破壊という大きな矛盾が存在しているのです。

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さらに、インターネット調査によると約60%以上の人たちが傘を盗まれた経験があるようです(※3)。驚くべきことに、このような犯罪行為が傘の場合はあたりまえのようにおこなわれているのです。作り手に対する敬意を含め、傘を使い捨てることや安価な傘であれば盗ってもよいというような消費者の意識を変えていく必要があると思っています。

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大雨や台風のあとに路上に残ったビニール傘をみて、なんとか解決できないかと考えられた「+TICシリーズ」。柔軟で耐久性のあるオールプラスチック製の傘で、傘生地部分は交換可能。

── 「サステナブルな傘」を作ろうと思った理由を教えてください

山本

我々は傘を作り、販売する立場として、起きている問題を知りながら胸を張って売ることはできません。傘屋として永く続けていくためには、根本から変えなければならないと思ったんです。

わたしたちが展開する「+TIC」は、オールプラスチックで作られたリサイクル可能な傘です。プラスチック製なので錆びる心配もなく、風速15メートルの強風にも耐えられる丈夫さが特徴です。万が一壊れてしまった場合でも、生地や部材を取り替え、修理しながら永く使用することができます。この新しいサステナブルな傘を通じて、少しずつでも起きている社会問題が解決に向かうことを祈っています。

まずは知ることが大切。共同作業で、傘に対する愛着を持ってもらいたい

── 傘作りのワークショップも展開されていますね。

西山

「Ca Et La」で展開している+TICの構造を使用した手作り傘キット「SORAKASA KIT」のワークショップを開催しています。このワークショップでは、ビニール傘の社会問題について考え、傘の構造について学ぶことができます。

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+TIC(プラスチック)の構造を使用した手作り傘キット「SORAKASA KIT」。組み立てながら傘の構造を知ることができる。

実際に自分の手で傘を作ることで、モノの仕組みや、壊れても修理してまた使うという感覚を育むことができます。そして、世界で1本の「My First Umbrella」を作ることによって、社会問題について考えるきっかけが生まれ、愛着心が育まれることを目指しています。親子で一緒に参加していただくことで、子供達が親の姿を見て学び、ものを大切にする意識が生まれていけばと思っています。

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ワークショップインストラクターの西山 雄馬さん

西山

また、まずは知ってもらうことが大切だという考えから、この社会問題をクイズ形式で出題しています。日本のビニール傘廃棄量が世界1位であることや、年間1億本以上と言われる消費量を知った参加者の皆さんからは驚きの声が多く上がり、ワークショップを通じてものへの意識の変化が生まれていると感じています。傘に限らず、身の回りのものに愛着を持って大切に使う気持ちを持ち続けてほしいと願っています。

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自分達で傘を組み立て、好きなシールを貼ってオリジナルの傘となる。ものづくりのよろこびから愛着を知るきっかけとなっている。

後編では、梅雨シーズンでも心弾むサステナブルな傘をご紹介します。

参考サイト
※1 日本洋傘振興協議会|洋傘の国内年間消費量は?
※2 ウェザーニュース|傘調査2022年「あなたは傘を全部で何本持っていますか?」
※3 オールアバウト|アンケート調査「傘を盗まれたことはありますか?」


サエラ

Ca Et La(サエラ)

1991年の創業以来30年以上にわたり、傘及びレインウェアを取り扱う。メーカーとして傘のゴミ問題や、これからの傘の消費について向き合い、風に強い傘や張り替えできるビニール傘など、エコでサステナブルなオリジナリティ溢れる傘を展開。人や地球にもやさしい循環型の傘メーカー。
公式:Ca Et La(サエラ) Instagram:caetla_umbrella Facebook:Caetla Twitter:caetlashop

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