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ビジネスにおける生物多様性戦略とは? -世界の事例から学ぶサステナブル経営-

ニューロマジック

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環境問題への関心が高まり、サステナビリティが求められる現代において、世界的な企業は生物多様性と自社の収益との本質的な結びつきを強く認識するようになっています。今月は、そんな「生物多様性」にまつわる戦略の概念を掘り下げ、ユニリーバ、ネスレ、ノバルティスなどの事例からそのメリットを明らかにし、生物多様性を事業に取り入れるためのトピックスを紹介します。

そもそも、生物多様性とは?

国連環境開発会議(UNCED、地球サミット)で調印され、1993年に発効した国際条約である「Convention on Biological Diversity(生物多様性に関する条約)」(※1)によると「生物多様性」とは「すべての生物(陸上生態系、海洋その他の水界生態系、これらが複合した生態系その他生息又は生育の場のいかんを問わない)の間の変異性を示し、種内の多様性、種間の多様性及び生態系の多様性を含む」とのこと。つまりは地球上の生命、動植物=生物の多様性と可変性のことだとわかります。生物多様性は生態系が健全に機能していくために極めて重要な役割を担っています。気候変動、生息地の消失、天然資源の枯渇が人類の課題である今、生物多様性戦略の策定は、長期的な繁栄を目指す企業にとって重要な課題であり、死活問題ともいえるでしょう。

ビジネスにおける生物多様性戦略とは?

生物多様性戦略とは、利益や効率だけを重視するのではなく、企業の事業、製品、サービスに生物多様性の保全と強化までを見据えていく包括的なアプローチを指します。単なる規制や法令の遵守にとどまらず、生態系、生物種、遺伝的多様性を保護すると同時に、持続可能な事業成長を促進するための積極的な対策や施策が含まれます。また概念だけではなく、企業が生物多様性に与える影響を評価し、明確な目標を設定し、的を絞った取り組みを実施し、長期的に進捗を測定することまでが含まれます。

ケーススタディ、ユニリーバの戦略

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イギリス、ロンドンに本拠を置く世界有数の一般消費財メーカー、ユニリーバは、「原材料の持続可能な調達」にフォーカスした生物多様性戦略を採用しています。持続可能な方法で調達している作物には、パーム油、紙・板紙、大豆、砂糖、紅茶などがあり、農家や地域社会と協力して責任ある農業の実践を推進し、生態系と生活の両方を守りながら必要不可欠な原材料の供給を確保しています。ユニリーバは環境スチュワードシップ(※2)を推進しながらサプライチェーンの持続可能性を確保し、主要農業原料の79%を持続可能な方法で調達しています。(※3)
※2:環境スチュワードシップ/地域の保全団体が地域住民や事業者、市町村、専門家など多様なパートナーと 協働で保全対策(外来生物駆除を含む)を行う制度 

ネスレの "花粉媒介者"に優しい農場

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世界的な食品・飲料会社であるネスレは、農業における花粉媒介者(ポリネーター)の重要性を認識しています。花粉媒介者(ポリネーター)とは、蜜蜂や蝶などの昆虫類や鳥など植物の花粉を媒介し受粉させる生き物のことで、送粉者とも呼ばれています。ネスレは生物多様性戦略のひとつとして、花粉媒介者(ポリネーター)に優しい農法をヨーロッパで支援しています。この農法により、農業サプライチェーンの継続的な生産性を確保し、事業利益のみならず生態系全体の健全性にも貢献しています。一例として、ネスレのハーゲンダッツブランドは、アーモンドやイチゴなどのアイスクリームの原料を供給する農場に花粉媒介者(ポリネーター)の生息地を作っています。これらの生息地は、作物の生産と生態系のバランスに不可欠なミツバチやその他の花粉媒介者(ポリネーター)に餌と住処を提供しています。ほかにもネスレは酪農家と協力し、牛や飼料の生産から排出される温室効果ガスを削減しています。

ノバルティスの生物多様性キャンパス

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スイスのバーゼルに設立されたノバルティスの生物多様性キャンパスは、ライフサイエンス分野における新しいアイデアと可能性を育むキャンパスです。世界中から著名な建築家が携わり(日本からは安藤忠雄が建築の一部に携わっています)革新的な研究室やオフィススペースのほか、庭園、レストラン、アートインスタレーションなどの公共エリアがあります。ノバルティスは、2040年までにネット・ゼロ・エミッションを達成するという全体目標を掲げています。この目標を達成するため、2025年までに事業活動におけるカーボンニュートラル、2030年までにバリューチェーン全体でのカーボンニュートラルを目指し、2030年までにプラスチックニュートラルと水の持続可能性についてもコミットメントしています。また自社のみならずサプライヤーに対しても、環境サステナビリティ基準に従うことを求めています。

生物多様性戦略のメリット

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リスクの軽減:生物多様性の損失は、サプライチェーンを混乱させ、企業の評判を傷つける可能性があります。(例えば森林伐採、土壌浸食、花粉媒介者の絶滅は、食糧生産と安全保障を脅かす可能性があります。)しっかりとした生物多様性戦略は、これらのリスクを特定&軽減し、長期的なビジネスの持続や回復力を確保することができます。

イノベーション:生物多様性はイノベーションのための豊かなインスピレーションの源でもあります。例えば、マジックテープの開発は、バリが動物の毛皮にくっつく様子からヒントを得たもので、世界中で使用される汎用性の高い留め具につながりました。自然から解決策を見つけ、学び、研究することで、サステナブルな製品、プロセス、技術を開発することができます。

競争優位性:しっかりとした生物多様性戦略を持つ企業は、市場で差別化を図り、環境意識の高い消費者やサステナビリティを優先する投資家にアピールすることができます。環境問題に対する消費者の意識が高まる中、生物多様性の保全とコミットメントを示すことは、売上とブランド・ロイヤルティの向上につながります。

コスト削減:生物多様性対策の実施は、資源消費、廃棄物発生、運営コストの削減につながります。例えば、ソーラーパネルと一体化した緑化屋根、バイオソーラルーフは野生生物の生息地を提供し、都市のヒートアイランド現象を緩和し、ソーラーパネルの効率を高めることで、都市の発電量と生物多様性を高めています。

ステークホルダーの参画:しっかりとした生物多様性戦略をもち、積極的に取り組んでいく姿勢は、地域社会、政府、NGO、その他のステークホルダーとの関係を強化します。地域の自然保護プロジェクトの支援、環境教育イニシアティブへの資金提供、生息地の回復活動への関与などの協働的な取り組みは、企業が事業を展開する地域社会に積極的に貢献することで促進されます。

おわりに

世界全体が差し迫った環境課題に取り組んでいる今、企業規模に関わらず、世界中の全ての企業が重要な役割を担っています。欧州の 事例でもわかるように、生物多様性への配慮をビジネスに組み込むことでイノベーションを推進し、リスクを軽減し、ステークホルダーの関心を高めることができます。 また、利用可能なリソースを活用し有意義な変化に取り組むことで、進化し続ける市場の中でも自社を存続しながら環境に良い影響を与えることができます。EUは2030年までに欧州の生物多様性を回復に向かわせ、人々、気候、地球に利益をもたらすことを目指しており、さまざまな施策やアイデアが展開されています。(ニューロマジックのブログで紹介中です)ビジネスにおける生物多様性戦略はSDGsを始めとするサステナブルな目標と一致するだけでなく、様々な面で企業に利益をもたらします。 私たちがサステナブルな未来を目指して団結する上でも生物多様性戦略は希望の光であり、経済成長と環境保全が密接に関わりあい、両立できることを示しています。

元記事は こちら

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ニューロマジック(Neuromagic)SXグループ

サステナビリティの転換期にある今、ニューロマジックのSX(サステナビリティ・トランスフォメーション)グループは、サービスデザインとリサーチの専門知識を活かしてSXへの第一歩を支援いたします。私たちは、持続的かつサステナブルな影響力を生み出すために、リサーチ、目標設定、パートナーシップの促進、戦略の共創を行います。

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