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豊かな未来のきっかけを届ける

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デザインの力で環境問題を解決する。NOSIGNER代表・太刀川 英輔さんの考え方

elove by zozo

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デザインの奥深さをご存じですか?普段何気なく目にしている広告や標識、商品のような形あるものだけでなく、環境や社会の隠れた問題を可視化して伝えることも、その役割の一つなんです。地域伝統工芸品のリブランディングや、廃材を再利用したオフィス設計などを通して未来に希望をつなぐ、NOSIGNER代表の太刀川 英輔さんにお話をお伺いしました。

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NOSIGNER代表 太刀川 英輔さん

── デザイナーを目指したきっかけは何だったのでしょうか。

僕は元々、建築家を志していたんです。でもいざ目指してみたら、デザインにも興味が沸いてしまいました。巨匠と呼ばれる建築家達の多くは、一般的な建築という領域に縛られず、様々な分野のデザイナーとしても活躍していました。考えてみれば非常口のサインや看板、ドアノブなどのデザインも建築の一部、結局デザインだと捉えられると思ったんです。そうして僕自身も色々な領域を横断するデザイナーになりたいと思い、大学院生の時に起業。その頃からデザイナーとして社会課題問題をデザインの力で解決したいと思うようになり、活動を続けて20年近く経ちました。

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太刀川さんが手掛けたデザインの数々

── サステナビリティの分野に興味を持ったのはいつからでしょうか。

サステナビリティという言葉を知らなかった子どもの頃から、処分されている家電などを「まだ使えそうなのにもったいない。なぜ捨てるんだろう?」と思って、少しきれいにしたり直して使っていましたね。

「古いもの、長く使えるものが好きで、自分でカスタマイズして使うんです」と太刀川さん。

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1970年製造の5スポーツ スピードタイマー ラリーメーター。
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すでに廃盤になったearth watchをスマートウォッチと合体した特製の時計。
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釣り糸を張ってレギュラーチューニングにしたギタレレ

さらに高校時代にアルバイト先で出会った環境問題や哲学に詳しい大人たちの影響で、サステナビリティの本を少しずつ読むようになり、それからは自分でも興味のあることは調べるようになりました。

── デザインと環境問題は一見関係のないトピックのように見えますが......。

デザインと環境問題は、実は深く関わり合っているんですよ。衣類や食べ物などの生活必需品はすべて元々何らかの自然環境から生まれたものですよね。製造し、消費者に届けるために輸送するのにも膨大な汚水やCO2を排出します。生産背景や労働環境など、商品を見ただけでは伝わりづらい問題を可視化して見せることで意識してもらうのもデザインの役割ではないでしょうか。問題が何なのかを正しく理解した上でその解決のためにデザインで何ができるか。そのためには対象をよく観察すること、そして工夫することが重要です。廃棄物をそのまま建材にしたNOSIGNERのオフィスデザインもその一例です。

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洗練されたNOSIGNERのオフィス天井にも廃材がデザインの一部として活用されている。

── 今、太刀川さんが力を入れて取り組んでいるサービスや、解決しようと試みている問題は何ですか。

「e.CYCLE」(※)というサービスを始めました。気候変動を食い止めるためには、再生可能エネルギーの普及を急ぐ必要があります。しかし再エネ発電所は地域の自然エネルギーを使うにも関わらず、発電所が置かれている地域住民には何も恩恵がないことが多い。そこで、売上手数料の75%をエネルギー発電所のある地域に還元し、地域住民の方々と発電所の双方にとって良い循環を生み出す「e.CYCLE」というサービスを進めています。「e.CYCLE」のようなサービスをもっとデザインしていくことで、人にも環境にも配慮したサステナブルな取り組みが実現していくのではないかと思っています。

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身近なアイテムにも環境への配慮をデザインに取り入れる太刀川さん。使い捨てタイプのペーパー・インソール「SUASI」はパッケージをなくし、全てインソールとして使用できるようにデザイン。従来品と比較して1足当たりのパッケージ重量を92%削減した。

── 環境問題に対して、危機に気づきアクションを起こすために「観察」が必要だと分かりました。情報社会の中でより本質的な情報をキャッチするには、どのような行動が重要でしょうか。

ぜひ読書をしていただきたいです。インターネット上で表層的に触れられる情報よりもずっと深い情報が本の中にあると僕は思います。ものすごく速いスピードで膨大な量の情報が日々流れている時代ですが、表面上の情報だけではわからないことって多いのではないでしょうか。

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名著コレクション。ダーウィンのA Naturalist's Voyage Round the World。

興味のあることは、読書をして理解を深めていきましょう。「どんな本を読んでいいか分からない」という人は、AIを活用して、「サステナビリティについて、どんな本を読めばいいですか?」と聞いてみれば、素晴らしい読書リストを教えてくれますよ。

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「目の前の問題に対して、自分に入る余地がないと思わずに行動する人だけが、社会全体を良い方向にデザインできるのだと思う」と話す太刀川さん。私たちが地球のためにまずできることは、「自分1人の力が地球の未来につながる」と意識し、問題についてよく観察し、知ること。そして一人ひとりの行動する力が、結果的にサステナブルな未来へとつながるのではないでしょうか。

元記事はこちら

太刀川 英輔

太刀川 英輔(タチカワ エイスケ)

1981年生まれ。2006年にNOSIGNERを創業。JIDA理事長。WDO理事。 建築・グラフィック・プロダクト等のデザインへの深い見識を活かし、明日に役立つデザイン戦略を手がけるデザインストラテジスト。 Design for Asia Award大賞、PENTAWARDS PLATINUM、SDA最優秀賞、DSA空間デザイン優秀賞など多数受賞する。著書に『進化思考』(海士の風、2021年・増補改訂版2023年)『デザインと革新』(パイ インターナショナル、2016年)がある。

参考サイト
NOSIGNER

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