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地球が、音楽ストリーミングの公式アーティストに。自然音再生の収益を環境保全へ

    

IDEAS FOR GOOD

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波が打ち寄せる音、風が木の葉をなでていく音、鳥たちのさえずり......自然の音は、いつだって私たちを癒してくれる。仕事中やリラックスタイム、寝る前など、日常的に自然音をBGMにしている人は多いのではないだろうか。

それでは、その音を作り出している「地球」を、"アーティスト"と捉えたことがあるだろうか。

音楽ストリーミングでは、好きなアーティストの音楽を聞けば聞くほど、そのアーティストに再生回数に応じた収益が入る仕組みになっている。一方で、私たちは自然の音を日常的に聴きながら、音の"クリエイター"である地球に、何も支払っていない。もし、これが人間のアーティストだったら──誰もがその関係を「搾取的だ」と感じるだろう。

そんな考え方を反映し、音楽ストリーミング上で地球を「公式アーティスト」とすることで、自然音から得ている恩恵を地球に還元するプロジェクトが、国連の関連組織であるUN Liveから生まれた。その名も、「Sounds Right」だ。

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Sounds Rightには、大きく2つのプロジェクトがある。ひとつめは、「NATURE」という名の「公式アーティスト」が、プロジェクトを主導する団体が録音したサウンドスケープを配信するというもの。ここでは、冒頭で触れたような、いわゆる"自然そのもの"の音を聴くことができる。

「NATURE」のページには、例えば「ニカラグアの真夜中の自然」「バイーア・ソラノの海の音」など、個性豊かなトラックが並ぶ。2024年4月末時点ですでに2,000人近くのフォロワーがいる。

ふたつめは、国籍もジャンルも多様な15組の有名アーティストが、自身の既存曲や新曲に自然音を組み合わせることで地球とコラボレーションする曲を集めたプレイリスト、「feat.NATURE」だ。こちらでは、ロック、ポップス、ラテンミュージックなどさまざまなジャンルの音楽に自然音を取り込まれており、それぞれに独特な音世界が展開されている。参加アーティストには、Brian Eno(ブライアン・イーノ)、AURORA(オーロラ)、UMIなどが名を連ねる。

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これらの音楽は、Apple MusicやSpotifyといったメジャーなストリーミングサービスで聴くことができ、「NATURE」の63%、「feat.NATURE」の50%の収益が生物多様性の保全や環境の再生プロジェクトに使われるという。さらに、リスナーは「NATURE」のページにあるリンクから、任意の額を寄付することもできる。

プロジェクトの構成メンバーと意思決定のプロセスにも着目したい。Sounds Rightプロジェクトは、UN Liveと40人を超えるコロンビアの多様なミュージシャンや環境活動家たちが、自然の保全プログラムに人々を巻き込むクリエイティブな方法を話し合うところから始まった。このため、プロジェクトのメンバーにもグローバルサウス出身者が多く含まれる。

「NATURE」の収益の配分も、グローバルサウス出身の環境活動家や先住民族の代表者などを含む4人の専門家グループにより決定される。その意思決定プロセスの詳細について、プロジェクトディレクターのGabriel Smales氏はGood Good Goodの取材に対し、こう語る。

「地球は、自身のお金を何に使うでしょうか?まず、生物多様性と固有種のレベルが最も高い生態系の保全と復元を優先するでしょう」

「次に、地球はお金が最も効果的で倫理的な方法で使われることを望むでしょう」

「最後に、地球自身は話すことができないため、その最も重要な守護者である先住民(自然界を保護するために最も大きな負担を負っている人たち)、また保全科学者や実践者たちに代表されたいと思うでしょう」

Good Good Goodの取材記事より、Gabriel Smales氏のコメント

Sounds Rightを通した収益が発生するまでには少し時間がかかるが、プロジェクト主導者は公開後の4年間で6億人以上のリスナーを獲得し、4,000万ドル以上の保護費用を生み出せると見積もっている。

生物多様性や環境の保全を資本主義経済の原理に組み込んで推進することは、見方によっては非常に「人間本意」な行為かもしれない。だが、Sounds Rightの本質は、私たちが地球から何を享受しているのかを改めて思い起こさせることにあるのではないだろうか。

そう考えてみると、口にする食物をはじめ、日常を豊かにしてくれる香りや家具、自然をインスピレーションとするアートまで、私たちの周りには地球からの"おくりもの"で溢れている。そんな地球に恩返しをするときが、来ているのではないだろうか。


元記事は こちら

【参照サイト】Earth (yes, the planet) will now receive streaming royalties when you listen to nature sounds on Spotify, Apple Music
【参照サイト】Sounds Right: Nature inspired music initiative aims to raise $40m for conservation
【参照サイト】SOUNDS RIGHT
【参照サイト】feat.NATURE
【参照サイト】VozTerra
【参照サイト】Sounds Right(UN Live)
【参照サイト】Sounds Right x EarthPercent Fund for NATURE

能勢奈那 (のせなな)

相馬素美(そうまもとみ)

横浜で生まれ、大学ではクラシック音楽を専門に学ぶ。 ヨーロッパのサステナブルな取り組みや、サーキュラーエコノミーへの関心が特に高い。 また、ソーシャルグッドな音楽ビジネスの可能性を研究中。 好きなものは、音楽全般、アート、ファッション、北海道、アボカド、チョコレート、日本酒。

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