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不当判決とあからさまなLGBTQ差別|インフルエンサーの悲劇

    

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ナイジェリアにおけるLGBTQの権利や地位は、世界全体でもかなり強い迫害レベルにあると見られています。同国の法律では同性愛は犯罪とされ(※1)、同性間で関係を持った場合は最長14年の禁錮刑、同性カップルが公の場で愛情表現を行った場合には最長10年の刑が課されます。こういった法律からも、ナイジェリアの社会全体として、LGBTQコミュニティに対して強い反発と敵意を持っていることがうかがえます。

ナイジェリアLGBTQの象徴、ボブリスキー

このようなナイジェリアの状況下、「ボブリスキー」(本名:イドリス・オクネイエ)(※2)という人物が注目を集めています。ボブリスキーは、ナイジェリアのソーシャルメディアで非常に有名なインフルエンサーであり、常に社会に議論を巻き起こす存在です。彼女の言動は、ナイジェリアにおけるLGBTQ問題(※3)を彼女独自のやり方で世に知らしめ、問題提起を行う役割も担っています。現在の法律や社会的偏見、ナイジェリア社会でLGBTQの人々が直面している厳しい現実が、彼女によって世に認識されるようになりました。

不平等な判決

2024年4月、いつも華やかで注目の的だったボブリスキーが法的問題に巻き込まれ逮捕されることとなり、彼女のファンや批判的な人々すら驚かせる事態となりました。彼女の起訴内容は、LGBTQコミュニティの先駆けや先導者としての罪ではなく、いつもの派手なファッションが問題になったわけでもありません。とあるイベントでナイラ(ナイジェリアの通貨紙幣)をばら撒いたという、ナイジェリアのパーティーシーンではよく見られる一見些細な行為でした。ラゴスの連邦高等裁判所で行われた裁判で、ボブリスキーに言い渡されたのは罰金刑ではなく、6か月の禁錮刑(※4)。起訴内容を考えるとこの判決は不当に重く、意図的な不平等性を感じざるを得ません。というのも、ボブリスキーにこのような厳しい刑が科された一方で、同じ行為で捕まった他の人々は軽い処罰で済んだからです。

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ナイジェリアのボブリスキーが、通貨ナイラ乱用の罪で6か月の禁固刑を受けた件を報じている。

ナイジェリアのクラブやラウンジ経営で有名な、「Cubana Chief Priest(クバナ・チーフ・プリースト)」という人物も「通貨乱用」という同じ罪で起訴されました。「通貨乱用」とは紙幣や硬貨を破損させたり、切り刻んだり、汚したりする行為や、儀式やイベントなどで通貨をばら撒くことなども含まれ、多くの国で罰則の対象となっています。ところが彼は禁固刑とはならず、10億ナイラの差し押さえと(※5)、彼の持つネットワークを通貨乱用防止の国民教育に使うという和解案への合意で済まされました。結局刑務所に行くこともなく、彼のビジネスには何の支障も無かったのです。また、同様の行為でゴンベ(ナイジェリア北東部の州)にて逮捕された他の何名かも(※6)、刑務所に収監されることはありませんでした。このように見ると、やはりボブリスキーへの処罰が明らかに重いものであったことに、疑いの余地はありません。

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ナイジェリアのクバナ・チーフ・プリーストが、通貨乱用の罪で起訴後のメディアへのコメント。同じ通貨乱用の罪を犯したボブリスキーと比較すると軽い処罰であった。

ナイジェリアのLGBTQに対する差別と闘い

しかしなぜボブリスキーだけ、これほどまでに不当に厳しい処罰が課されたのでしょうか。人々の間では、彼女がトランスジェンダー女性である(※7)ことが関係しているのではないか?という声も根強く囁かれています。LGBTQの人々が法的にも社会的にも迫害を受けている国では、この関連性を無視できません。そのためこの事件は、一般的な通貨乱用を超えた問題として、そしてナイジェリアのLGBTQコミュニティ全体に対する「冷酷なメッセージ」として受け取られています。「一線を越えたら、その代償は高くつく」という警告です。

この判決後、巷には様々な意見があふれました。ソーシャルメディア上で反発と支持が入り混じる(※8)中、国際人権団体はこの判決を非難し、ナイジェリアにおけるLGBTQの権利保護を一層強化するよう求めました。ボブリスキーの事件は単なる一個人の問題ではなく、LGBTQの人々の権利をかけた闘いの象徴でもあります。彼女が不当に厳しい刑となった一方で、他の人々が軽い処罰で済んだことは、そこに根深い差別が依然として存在する証です。ナイジェリアのLGBTQコミュニティが求める平等と正義の闘いは今もまだ続いており、この事件は、人権を尊重するすべての人にとって何らかの行動を促す強力なきっかけとなっています。ナイジェリアの社会が、多様性の観点からも今後すべての人々に平等な方向に進むことを、心から願います。

  • 執筆 B. Moses  翻訳・編集 K. Tanabe

元記事はこちら
オリジナル英語版はこちら

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