きのこが革製品に? 地下駐車場できのこ栽培! きのこにまつわるサステナブルな取り組み5選
気温がぐっと下がり、やっと「食欲の秋」を感じられる季節になりました。秋には、果物や野菜をはじめ、旬の食材が豊富に揃い、食卓を華やかに彩ります。そのなかでも「きのこ」は風味豊かな味わいと高い栄養価を備え、多くの人々に愛される秋の定番食材です。
しかし、きのこの魅力はそのおいしさだけではありません。きのこは、環境負荷が低く再生可能な資源として注目されています。本記事では持続可能な未来を切り開くきのこを活かした国内外のさまざまなサステナブルな取り組みを紹介します。
国内外で注目される "きのこ"を使ったサステナブルな取り組み
1. 革新のファッション素材 - マッシュルームレザーmuscho
きのこの菌糸体由来のレザーライクなサステナブル新素材「マッシュルームレザー」に特化した国内初のブランド「mushco(ムシュコ)」。自然との調和を尊重し、きのこという素材を通じ、次世代のライフスタイルを創造するブランドです。一つ一つ柄が違うユニークでサステナブルな新しいきのこ由来素材の可能性を通してサステナブル・ウェルビーイングをテーマに新しい社会の在り方を提案しています。
マッシュルームレザーは、きのこの菌糸体から作られる新しい皮素材で、従来の動物性レザーに代わる環境に優しい選択肢です。菌糸体とは、きのこの根のような部分で、土壌中で栄養を吸収する役割を担っています。マッシュルームレザーの製造には、この菌糸体を培養し、加工する工程が含まれ、菌糸体は、適切な環境下で培養すると、互いに絡み合い、革のような構造を形成します。この構造は、柔軟性と耐久性に優れ、従来の革と同様の質感や外観を実現することができます。マッシュルームレザーは自然素材ならではの独特な柄が特徴的で、きのこが育つ過程で生じる色の濃淡や凹凸がレザーごとにランダムに発生し、自分だけのオンリーワンの製品を楽しめるのです。
2. 都市空間を再活用 - Cycloponicsの地下駐車場農場
フランスの都市パリでは、地下駐車場がオーガニックきのこのアーバンファームに生まれ変わりました。アーバンファーミング企業Cycloponicsは、都市部の使われなくなった空間を活用し、環境負荷の少ない農業を実践しています。地下の温度や湿度はきのこ栽培に適しており、エネルギー消費を抑えながら新鮮なきのこを供給できる点が評価されています。こうしたアプローチは、都市の食料自給率向上と廃棄空間の再利用という二重の利点をもたらします。広い土地が少ない東京もこの取り組みから学べることがあるかもしれません。
3. 農業廃棄物を削減 - 土壌改良材としての菌糸体
菌糸体は、農業廃棄物を分解し、栄養豊富なコンポストに変える力を持っています。これにより、化学肥料の使用を減らし、持続可能な農業の実現に貢献します。さらに、きのこを栽培したあとの菌床は牛や豚の飼料としても利用でき、フードサイクル全体の無駄を最小限に抑えます。
4. 環境浄化に挑む - 環境省も注目のバイオレメディエーション
菌糸体には、有害物質を吸収・分解する能力があり、土壌汚染や水質汚染の除去に活用されています。微生物によるバイオレメディエーションは将来の主要技術として環境省も注目している分野です(参照元:環境省)。重金属や農薬の除去を目的とした実験も進行中で、今後さらに注目される分野です。
5.伝統工芸もよりサステナブルな時代へ - MycoDaruma
微生物との共生社会実現のために都市開発を行うスタートアップ、菌糸のプロダクト設計・建築可能性を探るデザインスタジオ、社員に動物を迎え入れ地域の新たな生態系を構築するデンキ工事会社、そして日本の伝統工芸「高崎だるま」を守りつつ革新を生み出す店。この偶然の出会いから誕生したのが「MycoDaruma」です。
従来、だるまの最期は寺院での「お焚き上げ」によって天に還すことが一般的でした。一方、土壌分解性を持つ菌糸で作られたMycoDarumaは、土に還すという新しい選択肢を提供します。菌糸によって生み出された創造物は、微生物によって分解され再び地球の循環に組み込まれることで、新たな命へと繋がっていく可能性を秘めています。
高崎だるまは、元来、天然痘の厄除けとして生まれましたが、時代とともにその意味や形を変容させてきました。MycoDarumaは、持続可能性や循環型社会、微生物多様性への意識啓発という現代的な意味を帯び、人々の環境意識を穏やかに変える力を持っています。この取り組みを契機に、菌糸と工芸品が融合した新たなバリューチェーンの創出も期待されます。
きのこが拓く未来の可能性
きのこは、ただの食材にとどまらず、パッケージ、レザー、都市農業、土壌改良、環境浄化、そして工芸品やアートまでとあらゆる分野でサステナビリティの解決策を提供しています。この秋、きのこ料理を楽しむときには、その背後にあるサステナブルな価値にも目を向けてみませんか? 私たちの選ぶ食材や製品が、未来の地球環境を左右する一助となるかもしれません。
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