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豊かな未来のきっかけを届ける

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カップラーメンくらいしか作れない大学生が初めて魚を捌いてみた

Gyoppy! 編集部

かつお捌いてみた

皆さん、魚って捌けますか?

僕はまったくできません。大学生という身分に甘えて、料理を一切しないで生きてきました。自分で作れるのはせいぜいカップラーメン。包丁を最後に触ったのは......おそらく高校の調理実習......

しかし、他ならぬ海メディア・Gyoppy!でライターをしているのにそんなことでいいのか。

なんとかして自分で魚を捌き、食し、海を感じてみたい!

というわけで、こちらのイベントに参加してきました。

「シェフスキル」主催イベント「和包丁で丸魚を捌く!」

シェフスキル」主催、「和包丁で丸魚を捌く!」

宮城県の食材を扱う居酒屋「魚谷屋」(東京・中野)の厨房に入り、なんと店主直々の手ほどきを受けながらカツオを1匹捌けるイベントです。

作るのは「カツオの藁焼き」。

魚谷浩さん
捌き方などを教えてくれた店主の魚谷浩さん

一人だと不安だけど、プロに教えてもらいながらであれば大丈夫! きっとできる! そんな自信と共に、約4年ぶりに包丁を手にしたのでした。

和包丁って何?

まずは、今回使う道具の説明を受けます。イベントのタイトルにもあった「和包丁」って一体どういうものなんでしょう。「日本製の包丁」なのはわかるけど......?

魚谷さん
包丁にはそもそも「両刃」と「片刃」があって、和包丁はだいたい片刃です。その名の通り、両刃は両面に刃がついていますが、片刃は片方にしか刃がついていません。
様々な大きさの和包丁
魚谷さん
主に洋食で使う両刃の包丁は、「押しながら」切るんです。だから洋食のコックさんはトントンと切る方が多い。逆に和食に多い和包丁は「引きながら」切ります。魚を一刀両断で切る感覚ですね。

和包丁の「出刃包丁」は主に魚を解体するためのもので、今日はこれを使いましょう。片方の面が厚みを帯びていることによって、魚を引いたとき、包丁に身がくっついて形が崩れることがありません。

そして、包丁の形を作る上で非常に大事なのが砥石です。最初は目の粗い砥石で形を整えて、徐々にきめ細かい砥石を使って仕上げていきます。
粗さの異なる砥石と砥石を研ぐための砥石
魚谷さん
ちなみに両刃のときは両面同じ回数ずつ研ぐんですが、片刃の和包丁は基本的に片面だけ磨きます。厚みのあるほうは20~30回ずつで、平らなほうは1回整えるくらいでOKです。

いざ、カツオに包丁を入れる

道具への理解が深まったところで、いよいよカツオとご対面。

かつお
魚の脂には保湿性があるので、魚を素手で捌いていると手荒れしにくくなるそうです

今回のカツオは宮城県・気仙沼産。気仙沼市は23年連続で、生のカツオの水揚げ量日本一とのこと!

魚谷さん
カツオ産地として知られる静岡県や宮崎県は、船上でカツオを急速冷凍することが多くて、主に鰹節などの需要に応えています。それに対して「生のカツオ」は気仙沼産の場合が多いですね。

今の時期(10月初頭)のカツオは「戻りガツオ」。そもそもカツオはまず春から夏にかけて太平洋を北上するんですが、このときの「初ガツオ」は脂をあまり蓄えていないので、刺身がおすすめです。そのあと南へ戻って「戻りガツオ」になります。この時期は栄養をたっぷり蓄えていて、放卵の準備をして身に脂が乗っているのでたたきがおすすめです。
これから捌くカツオ
この個体は2.5~3kgくらいだそうです。お腹の黒い縞模様は、新鮮なほどハッキリ見えるとのことで、この日のカツオは鮮度バツグン!

早速カツオを持ってみました。身が詰まっていてズッシリ重い! 今からこれを調理するのかと思うと、嬉しさ半分、「本当にできるのか?」という不安半分......。

調理前の注意点として、海の魚は真水に触れてしまうと魚は劣化が早くなるので、極力触れないようにします。表面が濡れている場合はなるべく布巾で拭くなどして、鮮度を保つとのこと。

まずは表面のウロコを剥ぐ作業から。

魚谷さん
お腹のところは敵に狙われるリスクが少ないので、ウロコはないです。一方、側面のヒレのところから背ビレあたりは、速く泳ぐため、そして敵から身を守るために固くなっています。
カツオのヒレを持ち上げて説明中
魚谷さん
とても固いので、切るというよりは、削ぐような感じで包丁を動かします。このへんが残っているとたたきにしたときウロコが残るので、なるべく全部取りましょう。

さあ、いよいよ包丁を入れます。

包丁をいれていく

......ちょっと刃を深く入れすぎました。おいしそうな身の部分まで剥いでしまった。本当はもう少し薄く、刃先を当てるような感覚でやるといいですね。

皮を削いでいく

反対側もこんな感じで。

剥きかけのバナナの皮のような状態のカツオ

これらのウロコは、最終的に頭を取るときに一緒に取れるので、剥きかけのバナナの皮のように止めておいてOKです。

魚谷さん
次はヒレを落とします。「裏包丁」と呼んでいるんですが、包丁をひっくり返して、反対側の向きにしてスーッと切れ目を入れていきましょう。あとで3枚におろしやすくするための仕掛けです。

う、裏包丁? 序盤から難しそうな技名が出てきました。

裏包丁で捌く
おそるおそる切り込んでいきます
魚谷さん
では今度は、背中のヒレのところに包丁を当てて、力を入れてガッガッと削ってください。切るというよりは剥がす感じですね。
魚を立てて背びれを落としていく

またもや若干、身まで切っちゃってる。

豪快に落とす。身も落ちた。

「勇気出して全部落としちゃって」とのアドバイスに従い、やってみました。

取れました

右手に背ビレ。なんだか「料理してる感」が出てきました。

頭を取って、いよいよ身をおろしてみる

魚谷さん
では、頭を取りましょう。頭のほうを持ちながら、思い切って包丁をググっと入れます。そして反対側も同様にしたあとで、最初に包丁を入れておいたところをこうやって......バキッと。
お手本のカツオ
本当にバキッという音がした!

とりあえず見よう見まね。胸ビレのあたりから包丁を斜めに入れ、固いところに当たったら反対側も包丁を入れる......さらにカツオを立てて、腹ビレのところを落とします。そして、頭をもぎ取る。

「頭......あっ、頭、とれた???」
魚谷さん
ここで確認してほしいんですが、取れた頭の中にカツオの心臓があります。これは漁師さんたちがエネルギー源として摂っているものなので、あとで食べましょう。

あ、頭の中に心臓......!? と思いながら捜索すると......

カツオの心臓
ありました。手が血にまみれた
魚谷さん
さらに、お腹のほうをまっすぐ切ると中が開けるので、内臓を引っ張り出せます。この内臓は手で取っちゃいましょう。
腹を開いてみる

すでに手が血まみれなので、「内臓気持ち悪っ!」とか思うこともなく内臓を除去。

そのあとは布巾でカツオをきれいに拭いて、まな板についた血も洗います。「先にまな板を綺麗にすることでこのあとの味が決まってくる」とのこと。まな板も気にしなきゃいけないんですね。

そして、ここで大事な行程。上の写真は他の参加者さんのカツオですが、この左手が触れているハラス(お腹)のあたりに白い寄生虫がいるので、ハラスを切り落とします。

魚谷さん
戻りガツオの腹はめちゃくちゃ脂が乗ってておいしいんですが、生で食べられるのは一本釣りしたばかりの新鮮なものに限ります。アニサキスなどの寄生虫は、加熱する、もしくはマイナス20度以下の冷凍で24時間置くことによって死滅するので、寄生虫のリスクがあるときは必ず対策を行ってください。
左の銀色のトレーに乗っているのがハラス。この部位は塩を振って焼いたり、ハラスカツにするのがおすすめだそうです

さて、いよいよ三枚におろします。頭がついていたほうを右側、背中を手前にして......

魚谷さん
背中のほうから上身に沿って、スーッと包丁を尾っぽのほうに入れます。必ず、引いた包丁は戻さない。引いたら引き切る。刃先が中骨に当たっているコツコツ感を確認しながらやると、きれいにできます。

「引いた包丁は戻さない」のルールにのっとり、ためらわずに包丁を動かすしかありません。背中側が終わったら今度は頭を左側にして、腹側にも包丁を入れます。

半身を卸したところ

なんとかできました!

卸したカツオをもってカメラ目線
ちょっと不格好でも、自分でおろせると気持ちがいいですね

火を操れ! 藁焼きに挑戦

このカツオを焼くための準備として、まずは「串打ち」をします。

カツオに串をさすお手本

先ほどおろしたものを、さらに4分の1くらいに切り、真ん中に1本の串を打ちます。

これを基準に、扇状になるように4本の串を刺していきます。扇状にするのは、片手で持って作業をできるようにするためだそう。

藁をせっとする様子

たくさんの稲藁をセットして......

藁が一気に燃え上がる

ガスバーナーで着火! 炙ることで殺菌され、保存食としても使えるようになります。

魚谷さん
焼き加減としては、皮面と身のほう、それぞれ7:3くらいで時間を使います。藁焼きは、煙でいぶすので香りが豊かになるのと、火で一気にあぶれるのが良いところですね。これはガス台ではなかなかできません。
おそるおそる魚を火に近づける

火の勢いを保つために藁の量を調節したり、空気を送ったり。

片手で持てるように扇形にしてあるのに、ビビって両手で持っている図
片手で持てるように扇形にしてあるのに、ビビって両手で持っている図

うまく火を操りながら炙ること数分......

試食用に端を少し切る

このくらいの色になればOKです。端っこを切って出来たてを先にちょっとだけいただきます。

うまっ!
なかなか味わえない、炙りたてのカツオ。おいしい!!

ちょこっと味見したあとは、冷蔵庫で急速に冷やします。

カツオを平造りで

30分ほど冷やして取り出したものがこちら。切るときは皮の面を下にして、山(盛り上がっているところ)を奥にすると切りやすいです。

ネギやショウガを添えて

そしてお皿に乗せて、ネギやショウガを盛り付けて......

完成

完成!!

ホヤ、松茸ごはん、そしてカツオの中骨を炙ってだしを取った汁物も一緒に。贅沢すぎる。

自分で捌くとやっぱり美味しい

いただきます

いただきます。「自分で捌いて調理した魚を食べる」という初の体験です。

これは......

うま!

......

うまうま!

うま~~~!!!

そもそも包丁を握るのすら数年ぶり。そんな状態で魚を捌けるんだろうか? 派手に失敗して企画倒れになるのでは? 包丁で指が吹っ飛ぶのでは......? と心配していましたが、杞憂に終わりました。魚谷さんに丁寧に指導していただけたおかげです。

魚谷屋の厨房

自分なりに心掛けたのは、ひとつひとつの手順ごとに魚谷さんの手つきをよく見て、イメージトレーニングをしながら進めていったこと。

これはYouTubeで動画を観ながら捌くときの感覚に近いんだと思います。「取り返しのつかない失敗」なんてそうないにせよ、初心者なので、注意深く......。

慎重にさえやっていれば、あとは「意外とできた!」の連続でした。

(とはいえ、「魚谷さんはあんなに簡単そうにやってたのに!」の連続でもありました)

ちなみに、カツオは魚屋さんで買えますし、ネット通販でも買えちゃいます! お腹の縞模様がはっきりとしたものを選びましょう。模様がぼやけているものは鮮度が良くないです。

日本酒が合うご飯

そして「自分で作ったごはんを食べる」ことの嬉しさも思い出しました。調理実習以来の衝撃です。

最後に、魚を捌くときのアドバイスと心構えを魚谷さんに聞いてみました。

魚谷さん
うまく魚を捌けるようになるにはとにかく数をこなすこと。慣れると骨のつき方や繊維の向きが見えてくるようになりますから、少しずつ慣れていきましょう。

道具に関しては、しっかり研いである包丁を使うことと、砥石の面を整えること。そして捌くときの心構えとしては、弱気とためらいは捨てて刃物に集中することです。

「弱気とためらいは捨てる」

たしかに今回、始まる前は不安と緊張でいっぱいでしたが、いざやってみたら何とか捌き切ることができました。不格好でもまずはやってみることが大事ですね。

これを機に、家でも包丁を持ってみようかと思います。これからの時代、自炊力を高めても損はないはず!

もしこれを読んでいる料理初心者の方がいたら、ぜひ一緒にがんばりましょうね。

\ さっそくアクションしよう /

ひとりでも多くの人に、海のイマを知ってもらうことが、海の豊かさを守ることにつながります。

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