城島リーダーと畑活! TOKIO-BAで体験する、''農''のある暮らし

東北の玄関口「新白河駅」から車で20分の位置にある福島県西郷村(にしごうむら)。そんな村の東京ドーム2個分の土地で2022年に生まれたのが、株式会社TOKIOが手掛けたアウトドアフィールド「TOKIO-BA(トキオバ)」です。

これまで『ザ! 鉄腕! DASH!!(以下、鉄腕DASH)』で農業や漁業、林業に取り組んできたTOKIOの3名が「みんなで一緒に遊ぶ場を作りたい」という思いを込め、鉄腕DASHで縁のあった福島県にオープン。

TOKIO-BAでは一緒に創り上げていく仲間たちを「BA-ddy(バディ)」と呼び、農業体験やマルシェなど共に様々な体験ができ、次世代へと教えや学びを継承する場の開拓を行っています。


そんな中、TOKIOで最年長かつ「リーダー」の愛称で親しまれてきた城島茂さんは、TOKIO-BAで「農業」に挑戦中。

TOKIO-BA内で「ヤサイBAたけ」と名付けた畑を作り、農業に興味がある人たちを一般公募。一緒に野菜を育てる「みんなでつくる畑企画」を開始しました。農業未経験者が地元の農家の方と協力しながら更地だった土地を耕し、数種類の野菜を栽培するという長期プロジェクトです。


「鉄腕DASH」の出演を通じて、農家の思いや野菜の魅力、日本の農業の持つ課題などに関心を持っていったという城島さん。城島さんがTOKIO-BAの畑から伝えたいメッセージ、そして農業にかける想いとは。TOKIO-BAの秋のマルシェ会場でお話を伺いました。

TOKIO-BAで畑づくりを始めた理由

── 先ほど「ヤサイBAたけ」を見学させていただいたのですが、聞いたことのない野菜の品種や、その種類の多さに驚きました。そもそも、どうして城島さんはTOKIO-BAで畑をすることになったのでしょうか?

元々「TOKIO-BA」はアウトドア好きの国分が発案したプロジェクトだったんですけど、初めてこの場所を訪れた時は水も電気もなく、「ここで何をしよう?」と全く想像できませんでした。だけど、国分はキャンプ、松岡はサウナ、僕は農業と3人はそれぞれ好きなものが違っていたこともあり、自然と僕がTOKIO-BAの畑を担当することになりました。

そこで、ただ野菜を作るだけでなく、多くの人と協力して行いたいと思い「1年間一緒に畑をやりませんか?」とTOKIO-BAの公式アプリで募集をかけたところ、全国から予想以上の応募者が集まって。その中の約40名の方たちが畑づくりのメンバーとなって、福島県郡山市にある「ニッケイファーム」の大竹秀世さんに協力してもらい、畑づくりが始まりました。


城島さんと畑を見学するニッケイファームの大竹さん。大竹さんの農場では年間約100種類の作物を無農薬で栽培している

── 畑づくりはどのように進められたのでしょうか?

BA-ddyの中には農業未経験者から家庭菜園の経験者まで様々な人が集まったんですけど、あれこれ説明するよりもまずは最初に鍬を渡して、畑を耕してもらいました。そうすると、特に初心者の人なんかは次の日は筋肉痛だし、「畑を耕すだけでこんなに大変とは......」と思う(笑)。ですが、農業ではこの経験がとても大切で。

なぜなら普段、野菜をスーパーで買う時って「この野菜は誰がどんな風に育てているんだろう?」といったことはなかなか考えないですよね。それこそ今回は農家さんの大変さを肌で感じてほしかったので、あえて最初は固い土の上で力任せに鍬を動かしてもらいました。その後、「こうやると楽ですよ!」って正しい持ち方を教えると、それが体に染み付くんですよね。そこからが農業の物語の始まりなんですよ。

── 手取り足取り教えるのではなく、まずは自分でやってみて、間違いに気づくことが大切なんですね。

そうなんです。みんな最初は大変そうでしたけど、草抜きを率先してやってくれたり、毎週オンライン会議を開いたりと、どんどん農業に夢中になっていって。中には僕よりも農業に詳しくなっている方もいて驚きました。


畑づくり「BA-ddy」一期生のみなさん。みんな年齢層や職種はバラバラで、中には畑のためだけに東京から通う人もいた

やっぱりスマホ一台あれば何でも用が足りる時代に、わざわざここまで来て土に触ることに意味があって。BA-ddyのみんなはたった数ヶ月の畑づくりの経験で、年齢関係なく、ものの見方が180度変わったと思いますよ。ケータイのアンテナが「バリ3」から「バリ5」になるみたいな感じかな。ちょっと例えが古いか(笑)。

先人たちの恩恵を次世代につなげていくために

── 城島さんはこれまでテレビ番組などを通じて、長年農業経験を積まれてきましたが、「農業って面白い!」と思うようになったのはいつ頃だったのでしょうか?

最初は面白いというよりも、大変なことの連続でした。僕は29歳の時に、初めて鉄腕DASHで農業を体験したんです。大勢の前でライブをした次の日に山奥で畑を耕している時は「あれ、昨日まで武道館でギター弾いてたよな?」と、そのギャップについていけませんでした。

── 以前の取材で、国分さんも同じことを話されていました(笑)。

だけど、ぜえぜえ言っている僕らを前に、福島のじいちゃんたちが息ひとつ切らず畑を耕している様子を見ると、同じオス同士として悔しくて(笑)。それに、僕らは当時まだ血気盛んな20代。農業のやり方を巡って師匠や生産者さんたちとぶつかることもありましたが、その度に師匠たちは話を聞いてくれたり、色々な解決策を提案してくれたりと真剣に向き合ってくれました。そんな師匠たちとの出会いも、農業に興味を持ったきっかけのひとつだったと思います。


── それこそTOKIO-BAは、農業や森の開拓など、これまでTOKIOのメンバーが師匠たちから学んだことを表現している場なのだなと感じます。

僕は、上の世代から教わったことをどう次の世代に伝えていくのかが人生の課題だと思っていて。自分たちが受け継いできた先人の恩恵は食いつぶすだけではなく、次世代につなげていくことが大事なんですよね。なので、TOKIO-BAもただ存在するだけではなく、テレビ番組ではできないことをどんどんやっていきたいんです。

── 「テレビ番組ではできないこと」ですか。

やっぱりテレビって尺が決まっているので、どうしてもその時間内にやれることは限界がある。でも、TOKIO-BAは自分たちが主催者側なので、ある程度自由が効くんです。その分、維持費はかかるんですけどね(笑)。だけど、そこは株式会社TOKIOの社長でもある僕がしっかりと会社の数字の部分を見つつ、損得抜きでやっていこうと思います。


イベントではヤサイBAたけで育てられた野菜をBA-ddyから購入できるブースも。BA-ddyの方に「畑づくりで一番大変だったことは?」と尋ねると、全員から「草抜き!」との返事が返ってきた
ヤサイBAたけの近くには、「コットンの畑」が

1年目には上手く育たない野菜も。だけど「失敗」ではない

── 「ヤサイBAたけ」では今年たくさんの野菜が収穫できた中で、不作のものもあったそうですね。畑の視察の際、それを見て城島さんが「失敗じゃない」とおっしゃっていたのが印象的でした。

今年は採れる時期が短く、収穫数も少ない「幻の枝豆」と呼ばれる晩生品種枝豆を育てたんですけど、猛暑やカメムシ被害の影響もあって、残念ながら実がなりませんでした。だけど、僕は一切失敗だと思っていなくて。

なぜなら、農業の世界ではよく「ひとつの品種を開発するのに約10年かかる」と言われていて、実際に僕らがつくったTOKIOオリジナルの品種「新男米(しんおとこまい)」も根が安定するまで10年かかったんですよ。なので、今回挑戦した枝豆も数年後に花咲けばいいかな、くらいの気持ちでいました。


晩生品種の枝豆。栽培期間は通常の枝豆に比べて、約2倍ほどかかるため国内でも生産者はごく僅か。一般的な枝豆よりも甘みが強いのが特徴。

── ちなみに、一般的な枝豆ではなく、栽培に時間も手間もかかる晩生品種を選んだのは何か理由があるのでしょうか?

伝統野菜がどんなものなのか、みんなに味わってもらいたかったんです。例えば、僕が子どもの時ってグレープフルーツは酸っぱくて砂糖をかけて食べていたり、茄子に鋭いトゲがあって扱いづらかったりしたけど、最近は品種改良によって味も形も食べやすくなってますよね。

もちろん品種改良が悪いわけではないんですけど、僕は日本の農家さんが長年栽培と種採りを繰り返し、その土地の特性を活かして育ててきた野菜を守っていきたい。そう思って、TOKIO-BAではあえて栽培の難しい野菜に挑戦しました。


ヤサイBAたけには枝豆の他に、トウモロコシ、サツマイモ、ナス、ピーマンなどが育てられていた

── 農業はその土地や環境の力を借りてでしか生産できないため、たとえ時間がかかってもその土地に合う農法を見つけることが大事なんですよね。

はい。例えば農薬を使うと、最初の年はよくても害虫のほうもだんだん耐性をつけて効かなくなってくるので、長期的に見るといたちごっこ状態になる。だからこそ、僕は置かれた環境で人材と時間をかけて育てていく農業のやり方がベストではないかなと思っていて。

たとえ今年は不作でも、種が採れたら来年に向けてまた植えて、時間をかけてこの土地に合う作物を作っていきたい。そんな風に考えています。それに、もし大豆が収穫できた際には、TOKIO-BAオリジナル味噌や醤油、豆腐なども作っていきたいですね。


TOKIO-BAから共感の「輪」を広げていく

── 今回お話を聞いていて、種を引き継ぐことや師匠から教わった知識を次の世代につなげるなど「継承していくこと」がTOKIO-BAでの城島さんのキーワードなのかなと思いました。

最近、「持続可能」という言葉をよく耳にするんですけど、僕はその本質を見てる人はどのくらいいるんだろうって思うんです。例えば、TOKIO-BAの畑の枝豆もある人から見ると失敗と思われるかもしれないけど、今年は種が一粒でも残り、そこから来年は100粒できれば成功なはず。そんな風に、その土地にあった営みを行うことが持続可能な農業なんだと思います。

だけど、世の中の流れへわかりやすく乗っかることも大事ですよ。ちなみに僕は普段は全然見ていないのに、オリンピックのたびに柔道の試合で大盛り上がりしてます。そんな風に、これだけ「SDGs」や「持続可能」という言葉が広まったからこそ、みんな改めて環境問題を考えるきっかけになりましたよね。

これが一過性で終わらず、日頃から自然とのつながりを感じることが大切だと思います。例えば、これからTOKIO-BAは森だけではなく、海の環境問題についても考える場所にもなってほしいんです。


城島さん
ヤサイBAたけには枝豆の他に、トウモロコシ、サツマイモ、ナス、ピーマンなどが育てられていた

── 森だけではなく、海もですか?

はい。一見、森と海は対極にありそうなイメージですが、昔から「豊かな森は豊かな海を育てる」と言われるほど、森林と海は河川を通じてつながっています。それに近年、世界の海面温度が上昇し続けていることで、とれる魚が変化し、日本の漁業にも大きな影響を与えていて。

でも、海の中って地上に比べて見えないじゃないですか。だから、その変化にも気づきにくい。だけど、例えば台風が通り過ぎたあとの海の中は、実は地上よりも大きな被害が出ていたりするんです。僕たちはDASH海岸などで海のことにも関わっているので、現場でそうした変化を感じています。

海の環境変化は決してひとごとではなくて、巡り巡って森林環境や農業にも影響してくる。海の問題に関心を持ってもらうためにも、TOKIO-BAでは山と海の「循環」を意識した取り組みも行っていく予定です。

── 今後、TOKIO-BAでは温泉やキャンプ場、カフェなど様々なアイデアが計画されています。城島さんはこれからTOKIO-BAがどんな場所になってほしいと思いますか?

今、全国で寝転がって本を読んだり、ボーッとができたりする、いい意味で「何もない場所」が減ってきていますよね。やっぱり誰もがのびのびと遊べる場所は必要だと思うし、その一つがTOKIO-BAになってほしい。そして、僕たちの取り組みが良いモデルケースとなって、全国にこういう場所が増えてほしいですね。

そして、畑づくりに関わったBA-ddyたちが、次はどこかで畑づくりを教える立場になることを期待していて。そんな風にTOKIO-BAに共感してくれた人々が全国広がり、「TOKIO-WA(輪)」になると嬉しいです。


フクシマBAマルシェ

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