「1位から5位まで、投票したい人を選んで」新たな選挙のあり方を模索するアメリカ
選挙のとき、街中の選挙ポスター掲示板にずらっと並ぶ、候補者の顔。それを見て、「この中から、投票する人を1人だけ選ぶのは難しい」と思ったことはないだろうか。
アメリカでは近年、「優先順位付投票制(Ranked Choice Voting)」と呼ばれる、1人ではなく、複数の候補者をランク付けして投票する方式がさまざまな地域で採用されている。2022年12月現在、アラスカ州やメイン州など、約60もの区域で採用されているという。
2021年には、ニューヨーク市の選挙でもこの方法が採用されて話題となった。同市の場合、候補者の中から最大5人を選んで、1位から5位までランク付けする。もちろん、5人も選ばずに1人だけを選ぶことも可能だ。
投票者の過半数が、ある候補者を1位にランク付けした場合、その人が当選する。誰も過半数を獲得しなかった場合は、最も得票数が少ない候補者が落選。自分が1位にランク付けした人が落選した場合、その票は、自分が2位にランク付けした人に入る。
この流れを、候補者が2人残るまで繰り返し、最終的に最も多く票を集めた人が当選する仕組みだ。
優先順位付投票制のメリットとしては、自分が1位にランク付けした候補者が当選しなくても、2位~5位を選んでおくと、選挙結果に影響を与えられる点が挙げられる。また、ニューヨーク市によると、優先順位付投票制を導入した市では、有色人種の女性など多様な人材が多く当選しているという。
候補者は、たとえ1位にランク付けされなくても、2位~5位に選ばれたいので、より多様な有権者からの支持獲得を目指すモチベーションが高まる。選挙運動の際、他の候補者の欠点を指摘して自分が優位に立とうとする、ネガティブキャンペーンが減るかもしれない。
「ランク付けをするのも、それはそれで難しい」と思うかもしれないが、推したい候補者が複数いる場合、その意見を政治に反映できるのは良さそうだ。
各候補者の特徴や強みを、細かく見たうえで投票する──まだこの投票方式が採用されていない国や地域においても、一人ひとりが心がけていきたいことだ。そんな変化から、社会は少しずつ変わっていくのではないだろうか。
元記事は こちら
【参照サイト】Ranked Choice Voting
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木村つぐみ
木村 つぐみ(きむら つぐみ)。大学卒業後しばらく経ってから日英の翻訳を始める。そして翻訳にとどまらず自分で文章を作り上げてみたいと思いライターも始める。学生時代に海外生活の経験あり。好きな文筆家はよしもとばなな、ナンシー関など。好きな言葉は「花鳥風月」。