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牛の尿からできた消臭液!? 地球の健康を見つめる会社から生まれた消臭液「きえ〜る」とは?

エールマーケット

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生ゴミやタバコ、トイレ、洗いにくい衣類についた臭いなど...。春になり、気温が上がり始めると、暮らしのなかの「臭いの悩み」はさらに大きくなります。
市販の消臭剤を使ってみても臭いが完全に消えなかったり、むしろ香料と混ざってさらに変な臭いになったりして、困ってしまうこともしばしば。さらに、子どもやペットと暮らしていると、使えるものも限られますよね。

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そんな悩みに寄り添ってくれるのが、この消臭液「きえ〜る」。スプレーで吹きかけると、不思議と柔軟剤や部屋の香りは残したまま、悪臭だけが消えていきます。もちろん、無色透明で、天然成分100%。これだけ聞いても「そんな魔法のような、都合のいい商品なんてあるのか?」とにわかに信じ難いですよね。しかも原料は、牛の尿なのだとか...。

牛の尿からどうやって作られているのか、そもそも、尿から開発された液体が悪臭だけを消臭できるのはなぜ...? 考えれば考えるほど疑問が尽きない、消臭液「きえ〜る」への疑問。

この疑問に包まれた商品を開発・販売しているのは、北海道北見市にある環境大善株式会社。その代表・窪之内誠さんに、「きえ〜る」の開発背景やこれまでの歩み、嫌な臭いだけを消す仕組みについてお伺いしました。

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今回ご紹介する現場

環境大善株式会社
北海道北見市に本社を構え、牛尿から作り出した善玉活性水を中心とした商品を展開。代表商品である「きえ〜る」をさまざまな用途で展開し、「地球の健康を見つめる」をコーポレートスローガンとして事業を推進している。
環境大善のきえ〜る

きっかけは、北見市が抱えていた地域の悩み

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「きえ〜る」が誕生したのは1998年。その背景には、北海道北見市の土地柄と、酪農家が長年抱えていた悩みがありました。

北見市は北海道の東にあり、全国でも4番目に広い市。オホーツク海や常呂川などがあり自然豊かな一面も持ちつつ、オホーツク地域の商業の中心にもなっており、自然と人間がうまくバランスをとりながら、共生している地域です。

「北見市は畑も牛も多く、第一次産業が活発な地域です。それゆえに地域の悩みも共通していて、それは牛の"尿処理"。悪臭が発生し、処分するにも費用がかかる牛の尿は、当時から酪農家さんたちの悩みの種でした。そんななか、あるとき親戚の酪農家さんが、『牛の尿を乳酸菌で分解した液』を持ってきたんです」

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「臭いが消えている」というその液体を半信半疑で嗅いでみると、なぜか尿特有のアンモニア臭がまったくしませんでした。また、試しに生ゴミやペットの糞尿、排水溝などの水回りにその液体を使用してみると、驚いたことにあらゆる悪臭を消していったのです。

「これがちゃんとした商品となり、お客様に買っていただけるものになったら、今までにない消臭剤も生み出せるし、酪農家さんの悩みも解決するかもしれない」。当時、地元の北見市でホームセンターの店長をしていた環境大善の創業者・窪之内覚さん。ちょうど、お客様からの「ペットの糞尿臭が消える消臭剤はないのか?」と相談されていました。仕入れのためにいろいろ試してみても「これは!」という商品になかなか巡り会えず、頭を抱えていたところに、この液体と奇跡の出会いを果たします。

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開発によって無臭なだけでなく、無色透明にすることに成功。衣服にも安心して使用できる

「ただ、お客様へ販売するためには、"商品"にする必要がある。そのためにこの液体の安全性の確認と仕組みを解明し、販売しやすいよう見た目も改良を重ねました。また、原料は『牛の尿』です。人間が一人一人違うように、牛も一頭一頭違うわけで、原料から一定のクオリティで安定的に商品を生み出せるようになるまで、かなりの時間と、努力を重ねてきました」

「牛の尿」を原材料とする開発事業なんて前代未聞。当初は後ろ指を指されることもあったそうです。しかし、そんな周囲の反応も覆し、今では北見市から全国、全世界へと、知名度を広げています。

キーワードは「善玉活性水」

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そんな「きえ〜る」は、どんな過程で牛の尿から消臭液へと変貌を遂げているのでしょうか。

「きえ〜るの原料となる液体は、途中まで酪農家さんが作っています。牛の尿を微生物で発酵・培養し、弊社独自の試験をクリアする状態にしてもらったら買取り、自社工場で品質最終調整・品質テスト後商品化するという流れです。
牛の尿を『きえ〜る』として生まれ変わらせることで、私たちは商品を販売できる。酪農家さんは悩みを解決し、経営も救うことができます。一緒にいいものを作ろうと、日々奮闘しています」

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環境大善の社内にある貯水プール

両者が力を合わせて作る「きえ〜る」の原料は酵素、ミネラル、乳酸菌が含まれた「善玉活性水」。商品の大きな特徴である、いい匂いは残したまま、悪臭だけを消す効果は、この「善玉活性水」の働きによるものだそうです。

「善玉活性水はヨーグルトに似ているんじゃないかなと思います。ヨーグルトは、食べることで腸内の悪玉菌よりも善玉菌を優勢にする働きがあります。

「きえ〜る」を使うと、その抗菌効果で悪臭を発生させる一部の微生物、いわゆる悪玉菌の増殖を抑えることで、臭いの元から消臭することができていると考えています。また、善玉活性水からできた土壌改良材「液体たい肥 土いきかえる」を植物の栽培に使うことで、植物がより大きく育つことがわかってきています。」

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「善玉活性水」を農業用に発展させ、生まれた地球に優しい製品

微生物によって作り出された、まるで魔法のような効果が生まれる「善玉活性水」。とはいえ、まだまだ未知の分野のため、これから解明されていく部分も多いそうです。

「手探りでも、研究は進めていかなくてはいけません。私たちのほかに牛の尿の研究をしている人はあまりいないし、世界的に見ても論文も少ないんです。頭を抱えることも多いのですが、その分これから見えてくるであろう世界に、ワクワクもしていますね」

「地球の健康を見つめる」ことを忘れない

「きえ〜る」が生まれてから約20年。その長い月日の中で、事業の輪は少しずつ大きくなっています。

「この事業は、環境大善と酪農家さんが中心となってできたものでした。しかし、現在はさらに多くの力を借りて成り立っています。たとえば、契約している酪農家さんの数が増えると、何トンもの尿を輸送しなければいけません。なので、地域の運送屋さんにわざわざ液体を運ぶ専用の車を手配していただき、手伝ってもらっています。

また、最近『きえ〜る』をリニューアルして、納品量が一時的に増えたときがあったんです。生産量が増えると、比例して人手も必要になりますよね。困り果てて地域の社会福祉法人さんに相談したところ、快くお力を貸してくれました。今ではラベル貼りの7割以上を業務委託しています。

商品の研究も、弊社だけでは研究環境を整えきれません。なので、以前からお世話になっていた北見工業大学と一緒に共同研究講座を開設し、メカニズムの解明や、技術開発をさせてもらっているんです」

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北見工業大学での研究施設。5年間提携し、研究を行っている。

事業が大きくなるにつれて新たな仕事が生まれ、働ける場が増える。地域でお互いが助け合いながら、自然と人の輪も大きくなる。現在進行形で活躍の場を広げている環境大善ですが、根本的な人との関わり合いかたは、酪農家との助けあいによって始まった開発当時から、今も変わっていません。

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「私たちの会社は、『地球の健康を見つめる』というコーポレートスローガンを掲げています。なんだか壮大なテーマのように聞こえますが、地球の環境に対して、私たちなりに何ができるのかを常に意識するということです。たとえば、『東京に会社を作らないのですか?』という質問を時おりいただきます。しかし、近くに牛はおらず、原料が手に入りにくい。原料を運ぼうとすると輸送距離が伸び、運搬時に二酸化炭素の排出やコストがかかってしまいます。果たしてそれは、『地球の健康を見つめる』という弊社の理念に沿った行動なのだろうか?と思うのです」

ただ事業を拡大していくのではなく、地球環境のためになる行動とは何かを本質的に考え、道を選択する。その姿勢が、多くの人の共感を呼び、自然と人の輪を広げているようです。

「きえ〜る」と目指す、これからの未来

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開発から研究・改良を重ね、「きえ〜る」は、2つの価値を兼ね備えた商品となりました。一つは悪臭のみを消し去るという機能的価値。そして二つ目は、商品を使用することで、自然環境に対して消費者自身も行動を起こせる情緒的価値。地球の健康を真摯に見つめる会社だからこそ、この2つの価値を、高いレベルで保つことができています。

「最近、やっと私たちが目指しているクオリティで『きえ〜る』を安定的に生み出すことができるようになりました。ようやくスタートラインに立ったところです。やることは山ほどあり、まだまだ道半ばを歩んでいるのです」

冒険は始まったばかりだとでも言うように、目を輝かせながらこれからの展望を話す窪之内さん。その先に見据えている未来は、まだまだ広がっているようです。

「私たちの商品はまだまだ知られていないので、もっと多くの人に使っていただけるように奮闘しています。たとえば、今までは曖昧だったターゲット層を明確にしたり、売り場に合わせてパッケージも細かく変えたりして、そのおかげでより多くの人の手に取っていただけるようになりました」

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「また、コロナ禍によって在宅する時間が増えたこともあり、ペットと暮らす方が近年増えています。最近いただいたお客様の声だと、『うさぎをきえ〜るで拭きあげたら、臭いが消えました』というものがありました。うさぎって、水が苦手なので、お風呂に入れられないそうなんです。想像してなかったニーズを知り、驚きましたね」

室内用の消臭剤によく使用されるハッカやアロマは、動物によっては健康を害する場合があり、使用することができないことも。動物に使用できる消臭製品は意外と多くないなか、生き物自体から生み出されている「きえ~る」は、ペットと暮らす人たちも安心して使うことができます。

「きえ〜るを使用してくださっている方は、動物と暮らしている方が多かったり、SNSのアイコンが猫の画像の方も多かったりするんですよ」

事業が広がっていくにつれて、思いがけないコミュニティで話題になっていることも。自然にも動物にも優しい商品だからこそ、利用できるシーンも広がります。

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洗濯用のラインナップも。洗剤だけでは取れないにおいを消臭、抗菌もしてくれる

「この事業を始めたときは、家族や親戚からまったく興味を持たれていませんでした。こうして少しずつ話題になり、ようやく『なんだかすごいことをやってるんだね』と言われるようになって。 これからも私たちがやっていることや、考えていることを丁寧に話して、少しずつでも多くの人に伝わっていけばいいなと思っています。そして、今環境大善で働いている仲間が、自分たちの会社を誇りに思ってくれると嬉しいですね」

そう笑いながら話してくれた窪之内さん。「地球の健康を見つめる」という理念の本質を捉えながらも、北見市から世界へ環境大善の試みは広がっています。

"牛の尿から生まれた消臭液"というインパクトの裏側には、優しく丁寧に、地球を見続ける人たちの物語がありました。

  • 取材・文はるまきもえ

    画像提供環境大善株式会社

\ さっそくアクションしよう /

「きえ〜る」はアンモニアや腐敗などの悪臭だけに反応し、他の匂いは消しません。天然成分100%のため、肌にかかっても安全です。

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