最高の一杯は、「捨てない一杯」だ。コーヒーの街・メルボルンで始まった堆肥化プロジェクト
世界でも有数のコーヒーの街として知られるメルボルン。イタリアからの移民が持ち込んだコーヒー習慣が定着し、今では2万店舗を超える個人経営のカフェが建ち並ぶ。人々の日常にコーヒーは欠かせない存在で、独自のカフェ文化が根付く街だ。世界中から「最高の一杯」を求めてメルボルンを訪れる人も多い。
そんなメルボルンでは毎日大量のコーヒーかすが廃棄される。オーストラリアのほとんどのカフェ、ロースタリー、オフィスそして家庭で、コーヒーかすは一般ごみとして廃棄されるため、結果的に埋め立て処分されることになる。埋め立てごみは、車の排出ガスのおよそ20〜40倍も有害と言われるメタンガスを発生させ、環境に大きな負荷を与えている。
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そこで立ち上がったのが、メルボルン初のコーヒーかす回収プロジェクト「Reground」だ。地元のカフェでバリスタとして働いていたニンナ・ラーセン氏の小さなアクションから始まったこのプロジェクト。現在250以上のカフェや企業と連携し、使用済みコーヒーかすを回収・堆肥化し、農家やコミュニティガーデンなどの地域社会に還元している。
1日に何千杯分ものコーヒーかすが埋め立て処分されるのを知りながらも、みんなが一般ごみとして廃棄している現状に疑問を持ったラーセン氏。なにか良い使い道はないだろうかと考え、自分でコーヒーかすを持ち帰り、地域のコミュニティガーデンに届けることから始めたのだという。
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廃棄物を資源に変えることをミッションに掲げ、今ではコーヒーかすを堆肥化するだけでなく、カフェで梱包用によく使われているプラスチック袋なども回収してリサイクルする取り組みや、企業や自治体と連携し、廃棄物削減を支援するためのコンサルティング業にも力を入れている。
筆者がバリスタとして勤務しているカフェでもRegroundのサービスを利用している。用意された回収ボックスが満杯になるほど、毎日大量にでるコーヒーかすを入れて集めるだけで、埋立地に運ばれ、メタンガスが排出されるのを妨げていると思うと気持ちが良い。さらにそれが肥料となり、必要としている人々や農家へと渡り、地域に循環する。良いことだらけだ。
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創業者のラーセン氏はTimeOutのインタビューにて、「私たちは、地域コミュニティによって成り立っている。カフェのオーナー、バリスタ、コーヒーを飲む人、近所の人々、家庭菜園家や農家など、一見バラバラに見えるコーヒーを取り巻くコミュニティをつなぐための、プラットフォームの役割を果たせたらいい。現在の廃棄物システムを革新し、政府に変化を求めるためには、個人や企業として働くのではなく、地域内でつながりを構築し協力し合うことでより強く、大きな力になると信じている」と話している。
日常的にカフェを利用する国民が多いオーストラリア。カフェでの社会的な取り組みは、人々の日常に小さな行動の変化を起こすきっかけになるのではないか。
元記事は こちら
【参照サイト】
Reground
【参照サイト】
Future Shapers: Ninna Larsen, who is changing the way we deal with waste
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澤田 美咲
澤田 美咲(さわだ みさき)。大学在学中に、コーヒー産業におけるフェアトレードや国際協力の分野に関心を持ち、オーストラリア・メルボルンにコーヒー留学へ。卒業後は地元島根に戻り、自然との距離が近い生活や自給自足生活の経験から、自然環境の良さを改めて再認識する。現在は再びメルボルンでサステナブル・マネジメントを勉強中。関心テーマは、サーキュラーエコノミー、森林再生、地方創生、先住民族、伝統文化など。