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使わなくなったおもちゃ、捨てないで!モノの思い出を引き継ぐ、ロンドンの「おさがりハブ」訪問記

おもちゃや洋服などの「おさがり」を兄姉や近所の人からもらった経験がある人はどのくらいいるだろうか。

日本のおもちゃの廃棄量は年間約6万トン(※)。半数以上のおもちゃが1年間のうちに手放され、そのうち6割は捨てられている。核家族が増え、親戚や近所との関係が希薄になりつつある現代で、おさがりを渡したり、もらったりする機会も減っているのではないだろうか。そしてそれは少子化が進む日本以外の国々でも同様だ。

まだ使える思い出いっぱいのおもちゃを、別の誰かに楽しんでもらうきっかけに──そんな想いを叶える場所がイギリスのロンドンにある。それが「The TOY Project」(以下、トイ・プロジェクト)だ。彼らは、おもちゃを循環する仕組みや地域のコミュニティづくりの場を提供している非営利団体である。

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筆者撮影

トイ・プロジェクトは、2013年にジェーン・ガーフィールド氏とアンジェラ・ドノバン氏によって設立された。不要になったおもちゃを集め、必要とするイギリス国内外の子どもたちや病院や学校に提供している。

活動を始めたきっかけは、ジェーン氏が小学校教員として働く中で、各家庭の子どもたちが持つおもちゃの数の格差を実感したことだった。さらに、それを是正するためにまずは学校で多くのおもちゃを確保できるようにしようとしているのにもかかわらず、資金不足によりうまく機能していない現状があった。

設立当初、不要になったおもちゃを地域から集め始めたところ、彼女の活動に賛同した地元の人たちから大きな反響があり、すぐに保管スペースが足りなくなったという。現在、ロンドン市の北に位置するイズリントン地域に常設の店舗をオープンし、寄付されたおもちゃの一部を販売することで団体の活動費を集めている。

筆者は、実際にこのイズリントン地区アーチウェイ駅近くにあるトイ・プロジェクトの店舗を訪れた。到着するとすぐにスタッフが明るい笑顔で迎えてくれた。誰でも気軽に立ち寄れるアットホームさが心地よい。

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筆者撮影
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筆者撮影

寄付によって集められたおもちゃや絵本が所狭しと並び、今では販売されていない希少なものから新品のものまで、まるで宝探しをしているようなわくわく感に溢れている。

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筆者撮影

さらに店舗の数軒隣には「THE PLAY ROOM」と名付けられたトイ・プロジェクトのコミュニティスペースがある。ここでは子どもから大人まで、対象年齢別でレゴクラブを毎週定期的に開催しており、予約をすれば誰でも無料で参加することができる。

レゴを組み立てたり、レゴについて話したり......レゴでの遊びを通して、コミュニケーションやグループワークスキルを伸ばすことを目的に、子どもを対象とした「レゴプレイセラピー」も実施している。

子どもたちがもっと気軽におもちゃに触れる機会をつくるため、トイ・プロジェクトは近隣の学校におもちゃ図書館も開設している。このおもちゃ図書館では本の図書館と同じようにラベルのついたおもちゃを1週間借りることができ、家に持ち帰ることもできるという。

トイ・プロジェクトの活動はおもちゃの寄付や貸出だけにとどまらず、アーティストによる病院の小児病棟麻酔室の壁画の制作や、屋外でフェイスペインティングなどを提供するイベントの開催など多岐にわたる。

子どもたちは遊びによってコミュニケーションスキルや社会性を身につけ、それは心や身体の発育にも大きく影響する。あなたが手放したおもちゃが、世界のどこかで誰かの人生を変えるほどのインパクトを与えることができたらどんなに素敵なことだろう。

トイ・プロジェクトは、おもちゃだけではない、世界中の子どもたちの「ありがとう」をつなぐハブとしての役割を担っているのだ。

元記事は こちら

株式会社トラーナ「おもちゃの購入・廃棄」に関する意識調査
【参照サイト】 The TOY Project
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武田 貴恵

武田 貴恵(たけだ きえ)。子どもの頃から好きだったファッションに関わる仕事がしたい、と婦人服の販売からキャリアをスタート。その後外資系アパレル企業にてMD、VMD、在庫管理などの業務に携わる中で、ファッション産業の現状や課題について興味を持つ。オーストラリアやイギリスでの生活をきっかけに「旅するように働く」生活を実践中。関心テーマはサステナビリティ、ファッション、メンタルヘルス。好きなことは旅行とヨガ。

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