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亡き人に手紙を届ける。英国の少女が考えた「天国ポスト」

IDEAS FOR GOOD

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人との別れは突然だ。

いつも親身になって相談に乗ってくれた人、一緒に泣いてくれた人、喜びを分かち合った人......愛する人を亡くす悲しみは計り知れない。近しい誰かを亡くしたとき、しばらく心に穴のあいたまま、もとの日常生活に戻ることが難しい人も多いだろう。

そんな人々の悲しみを癒すため、英国で暮らす10歳の少女があるアイデアを思いついた。それが「天国への郵便ポスト」だ。

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Image via Good News Network

少女の名は、マチルダ・ハンディ。マチルダは5年前に祖父母を亡くし、そんな祖父母に手紙を書きたいとこのポストのアイデアを思い付いたそうだ。そして彼女の母親が2022年に、ノッティンガムのゲドリング火葬場にこのアイデアを持ち込み、白と金色に塗られた郵便ポストがそこに設置されることになった。この取り組みは多くの人々に広がり、現在ではイギリス中(イングランド、スコットランド、ウェールズ)の40ヶ所のほか、オーストラリアでも展開されているという。

マチルダは2022年12月、最初の郵便ポストに初めて手紙を投函した。彼女が手紙を送った祖母は郵便局で働いていたそうで、もし「天国への郵便ポスト」を知ったとしたら、孫のあたたかな発想になおさら感動したことだろう。設置後はマチルダのあとに続いて「天国への郵便ポスト」にあわせて3,000通以上の手紙が投函された。

イギリスのワーリントンという地区では、手紙は生分解性の野花の種が入った紙に書かれ、その後庭に植えられる。一方、オックスフォードやファリンドンでは、天国ポストがいっぱいになったあと、プロジェクトを管理するチームが手紙を開かないまま、墓地に埋葬されるという​。

この郵便ポストが、特に多くの人々の心を支えるのがクリスマスのホリデーシーズンだ。イギリスをはじめとする国々では、家族や友人にクリスマスカードを送り合う習慣がある。年の瀬に改めてお世話になった人々に想いを馳せる時間。しかし、ある人が亡くなるとその習慣は途絶え、クリスマスカードはかえって「あの人が亡くなったこと」をまざまざと実感するきっかけにもなる。「天国への郵便ポスト」はそんなホリデーシーズンに、残された人々を慰める。

日本でも東日本大震災のあと、岩手県大槌町に「風の電話」と呼ばれる電話ボックスが設置された。亡くなった人と再び「会話」をするために、そこを訪れる人が絶えなかったという。また福島県いわき市には、近親者だけではなく、愛犬や愛猫にも手紙が書ける「天国ポスト」が設置されている。

手紙を書いているときや電話をかけているときは、その人との思い出に浸ることができる。混乱した心の中を整理し、感謝を伝えることもできるかもしれない。そうした行為をつうじて、私たちは亡くなった人々とずっとつながっていられるのだ。

こうした死別をはじめとする「喪失」による悲しみや苦しみを抱きながら、生きる人を支える「グリーフケア」は、世界中で注目されつつある。イギリスでマチルダが祖父母を想って生み出したこのアイデアは、今後も多くの人の心を包み込んでいくだろう。

元記事は こちら

【参照サイト】 10-Year-old Girl's Idea for a 'Postbox to Heaven' is Rolled Out Nationally Across Cemeteries in UK
【参照サイト】 見えない、聞こえない、それでも亡き人を感じる 大槌町「風の電話」に人絶えず
【関連記事】 グリーフケアとは・意味

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Megumi

京都生まれ、東京育ち。ロンドン在住。大学院までは都市社会学を専攻、シンガポールを対象にフィールドワークを実施する。大都市での人々の生活と緑の関わりを引き続き探求中。好物は、コーヒー、広東料理、香りもの。

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