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病院の待ち時間はなぜ長い? 医療従事者と受診者、双方がハッピーな医療のために

from VOICE

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医療機関向けソフトウェアを開発するInazmaは、病院の「長い待ち時間」を解消する事業を展開する

待ち時間の長い場所として、多くの人が"覚悟して"臨む病院。役所や銀行のように予約なしで行くのならまだしも、なぜ予約をしても待ち時間が生じてしまうのか。医療機関向けソフトウェアを開発する株式会社Inazma代表で、医師の古賀俊介さんに、待ち時間が発生する理由と、待ち時間を短縮するために必要な考え方について伺った。

"ワクワク"するサステナブルのヒントを教えてくれた人

古賀 俊介さん

古賀 俊介さん

医師、株式会社Inazma代表取締役。医療機関向けソフトウェアの開発、スマートクリニックのマネジメントを行う株式会社Inazmaを2019年10月に設立。2021年4月1日に、「ゼロマチクリニック天神」をオープン。

診療の舞台裏で起こっていること

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古賀さんは、福岡市天神の駅ビル「ゼロマチクリニック天神」で医師を務める

もちろん一概にはいえないが、「待ち時間が長い場所」というイメージが強い、病院やクリニックなどの医療機関。しかも特別な検査や診察ではなく、定期的な検診や薬をもらうだけの場合でも、待ち時間が発生することは少なくない。

「おっしゃるように、予約をしても30分から1時間ほどの待ち時間が発生することはよくありますよね。この要因は、医療機関側や受診者側、あるいは国の制度など、さまざまな観点から考えることができるでしょう」

明快な口調でこう答えてくれたのは、福岡の「ゼロマチクリニック天神」の医師であり、IT・ソフトウェア開発を行う株式会社Inazmaの代表でもある、古賀俊介さん。待ち時間が生じる主な理由として、古賀さんは飲食店を引き合いに出し、キャパシティに対する考え方の違いを指摘する。

「たとえば10席しかない飲食店を効率的に回転させるには、時間制にして2時間後に次のお客さんを入れるなど、先が見積もれるようにしますよね。しかし医療機関の場合は、そういったキャパシティを考えずに、とりあえず予約を受け付けることが多い。さらに急病や初診の患者さんの対応が入ると、もともとの予約時間がずれていきますので、待ち時間はどんどん長くなってしまうんです」

そもそも医療機関における予約の在り方からして、待ち時間が生じざるを得ない仕組みになっていると古賀さんは続ける。

「予約と一言で言っても、その人が来る目的を把握できている予約と、ただ枠を設定して整理券を配る"順番待ち"の予約の2種類があり、多くの医療機関で導入されているのは、後者の整理券型です。これをまた飲食店に置き換えて考えてみると、ラーメン屋さんならばメニューにそれほど大差はないので整理券型が成り立つ。しかしラーメンのようにサクッと食べられるものと、時間のかかるフルコースのような料理を両方提供しようとすると、長く待つ人が生じることは間違いありません。つまりさまざまな目的の人が訪れる場合は、整理券型の予約だと待ち時間が発生するのは当然なのです」

受診者の立場に立つと、病院で診察を受けるという一連の行為においては、大きく分けて5つのステップがある。医療機関に出向く前の予約段階、受付をして診察が始まるまで、診察、会計を終えるまで、そして薬局で薬をもらうまで。仮に診察自体は短くても、その他のステップでそれぞれ待ち時間やロスが生じていることも大きいようだ。

「たとえば診察後の会計のタイミングで見るならば、事務スタッフが診療内容をチェックして会計を行うのが一般的なわけですが、その際に医師に対して何らかの確認が必要になることも少なくありません。スタッフは医師の診察が終わるまで待つ必要があり、受診者もその分、待ち時間が長くなるわけです」

待ち時間を可能な限り短縮したクリニック

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Webアプリケーション「ゼロマチ」を活用することで、事務手続きの大幅な削減につながる

こうした待ち時間を可能な限りなくすことを一つのコンセプトに、2021年4月、福岡市天神の駅ビルに開業したのが、古賀さんが医師を務める「ゼロマチクリニック天神」だ。駅ナカに位置する約10坪のコンパクトなクリニックは、「ゼロマチ」という名前の通り、待ち時間を極力ゼロにするシステムで注目されている。それを可能にしているのが、Inazmaが開発したWebアプリケーション「ゼロマチ」だ。

「ゼロマチでは、受診希望者がスマートフォンで予約を入れ、受診目的を自ら詳しく記入します。一般的な医療機関の場合、症状を医師に伝える行程は来院後に行われますが、受診目的を事前に把握することによって、カルテの作成を進められるだけでなく、診察にかかる時間の見通しを立てられるようになる。また、診察券ではなく、メールで届くQRコードでやりとりをすることで、不要な事務手続きの時間も削減しています」

診察後は医師の古賀さんが自ら会計まで行っていて、事務スタッフは決まった金額を徴収するだけで手間もかからない。さらに予約の際にクレジットカードを登録しておけば、受診者は後払い決済により領収書を受け取ってすぐに帰宅できる。

「定期的な薬の処方であれば、来院して最短5分以内に帰ることも可能です。初診の場合は症状を詳しく聞く必要があるので、どうしても時間がかかりますが、来院前に受診目的を細かく記入してもらうことで、かなりの時間短縮になっています。私たちは、待ち時間の短縮は仕組みで解決できると考えていますので、これからも"受診者ファースト"を意識して、一連の医療体験が良くなるような工夫をしていきたいです」

ユーザーフレンドリーな医療体験を

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IT関連の業務経験をもとに、古賀さんは一連の医療体験の改善を目指す事業を立ち上げた

古賀さんは医学部在学中から起業してIT関連の仕事を行っていたが、医師として働くようになって感じた疑問や課題を解決するために、2019年にInazmaを創業した。

「基本的にITの世界では"ユーザーファースト"が徹底されていて、ユーザー体験を向上させる配慮が至るところでなされています。ですが大学を卒業して医者として働き始めた時、無駄な事務手続きが多かったり待ち時間が長かったりと、病院を受診する側も医療現場で働く側もアンハッピーだと感じるようになって。そこで、こうした一連の医療体験を改善していく仕組みをつくろうと考え、会社を立ち上げました」

現在ゼロマチのシステムを導入しているのは「ゼロマチクリニック天神」のみだが、リリース以降、全国から問い合わせが殺到。ゆくゆくは他の医療機関での展開も視野に入れている。

「事務手続きにかかる人員を減らしたり、広い待合スペースを設ける必要がなくなったりと、このシステムを使う医療機関側のメリットは大きいと思います。また、感染症の流行時には三密を避けられるため感染リスクも抑えられます。今後は、このシステムを少しでも多くの医療機関で使っていただけるように力を入れていきたいですね」

「病院では待って当たり前」という現状を疑い、改善のための新しい仕組みやシステムを見出すことによって、受診者はもちろん、医療機関側の負担も軽減される。新しい仕組みによって、病院がさまざまな意味で健全、快適になることはきっと、私たちの健康で豊かな暮らしにとって必要なことだ。

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「ワクワクするサステナブルを、ここから。」をキャッチコピーに掲げ、三菱電機社員が社会の皆さまと共に学び、共に考えながら、その先にある"ワクワクする"社会を創るべく活動しています。オウンドメディアとして、日常にある身近な疑問"VOICE"から次なる時代のチャンスを探していく「from VOICE」を企画・運営しています。最新情報はインスタグラムで配信中です。

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