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国土の1/4が海面より低い、オランダに学ぶ「都市」と「水」の共生

オランダに学ぶ「都市」と「水」の共生 TOP画像

近年の地球規模の気候変動は、記録的な豪雨や干ばつの長期化、そして海面上昇といったかたちで、水との共生を根底から揺るがしています。それに伴い、洪水や深刻な水資源の枯渇によって、もはや従来のインフラや生活様式だけでは対応しきれない課題が顕在化しています。

このような状況のなかで、長年にわたり水との共生を追求してきた国であるオランダでは、本来の自然の循環や私たちの生活に適応するような水管理モデルを組み込むことで、水を次世代へとつなぐソリューションを構築しています。

水と共に築かれた国、オランダが目指す水管理モデル

オランダ語での国名「Nederland」の語源を辿ると、その意味は「低地の国」です。同国はデルタ地帯に位置しており、国土の約4分の1が海抜0m以下となっています。オランダといえば風車を思い浮かべる人も多いかと思いますが、風車は古くから洪水を防いだり、低地を干拓するために水を排出したりする役割を果たしてきました。(参照元:ニホン・ドレン株式会社

このような背景から、オランダは長年に渡って水害による影響を受けており、水害に備えるための高度な水の管理システムを発展させてきました。オランダ政府はそうした歴史のなかで培われた知見を活かし、2050年までにオランダが気候変動への耐性を持ち、水に関して頑健な国へと進歩することを目指しています。そして、近年では「デルタプログラム」という計画のもと、「洪水リスク管理・淡水供給の確保・空間適応」を3つの柱として、気候変動から受ける影響を縮小するための策を講じています。具体的には、堤防や水門の大規模改修、淡水の確保から配分までのプロセスの見直し、そして各地域の気候耐性の強化に向けた関係者どうしの連携などが挙げられます。

2025年度の計画では、今後数世紀にわたって影響が残り続けるであろう気候変動の問題に対して、私たちがその影響の抑制に向けて努力することに加え、適応の姿勢を持つことの重要性が明言されています。そのため、水管理においては従来のような堤防の強化や水の使用の規制といった部分的な問題解決だけではなく、水の使い方や都市空間のあり方そのものを見直し、水との共生に向けて社会全体が適応していく姿勢が求められているのです。(参照元:National Delta Programme 2025

オランダでの先進的な取り組み4選

オランダでは国家レベルの政策にとどまらず、自治体や企業、個人が、水資源とのよりよい関係を模索しながら、空間や暮らしのあり方を柔軟に適応させていく取り組みを進めています。ここでは、そのなかでも注目されている事例を4つ紹介します。

1.Room for the River

Room for the River

「Room for the River」は、オランダ政府が推進する洪水リスク軽減のための国家プロジェクトです。従来のように、増水時に堤防で水をせき止めるのではなく、河川周辺に水が流れ込むための空間を確保することで、河川の水位上昇を抑えるという仕組みです。洪水の原因となる河川の流れをなるべくありのままの状態に維持することで、洪水対策における効率的で柔軟な対応を実現させています。

また、洪水リスクの軽減に加え、整備されたエリアは水位が低下したことでさまざまな生物の生息地となり、生物多様性が向上するほか、ハイキングなどのレクリエーションのための空間が創出され、治水・環境・地域の暮らしを同時に支える取り組みとなっています。

2.Amsterdam Weerproof

アムステルダム市とアムステルダムの水道会社Waternet社が主導する「Amsterdam Weerproof」は、気候変動によって増加する豪雨や猛暑、洪水、干ばつなどの問題に対し、アムステルダムの街が柔軟に適応できるよう、都市環境を整備することを目的とした取り組みです。具体的には、自宅でできる緑化や雨水の貯蔵方法など、気候変動に適応するための実践的なアプローチを市民向けに紹介しています。こうした施策を地域全体へ広げるために、市民や専門家が集い、気候変動に関する情報交換やソリューションの検討を行うワークショップや、ボランティアと協力して街の緑化を進める活動も実施されています。

この取り組みは、市民、企業、教育機関、行政といった多様なセクターをパートナーとして結びつけ、ネットワークを構築することで進められています。このような協働により、それぞれの知見を活かしながら、水との共生に向けた持続可能なまちづくりが地域全体で推進されています。

3.Schoonschip

Schoonschip

オランダでは1950年代から住宅不足の解消を目的に、住居としてボートの活用が進み、人々が水上での暮らしを実践していました。そして近年では、環境に配慮した循環型の都市のあり方を実験する場として水上施設が注目されています。

アムステルダム北部の運河に浮かぶ「Schoonschip」は、持続可能な暮らしを追求する、先進的な水上住宅コミュニティです。現在140人以上が生活するこの場では、電力、熱、水などの資源をできる限り自給・循環する暮らしが実践されています。水資源についても、環境への負荷を抑えながら効率的に使用するための独自の工夫が凝らされています。具体的には、雨水を浄化して、住民の生活用水や各建物の屋上庭園の灌漑用水として活用することや、運河の水から熱を抽出するヒートポンプを用いた暖房システムの導入などが行われています。

また、ここでは住民自らがコミュニティの運営を担いながら、水上というユニークな環境に適応した持続可能な暮らしをかたちづくっています。

4.Hydraloop

Hydraloop

水との持続可能な関係を築くためには、私たちの日常に潜む水資源の廃棄を見直すことも欠かせません。「Hydraloop」は水の再利用を家庭レベルで実現する、オランダ発の革新的な生活排水リサイクルシステムです。このシステムでは、シャワー、浴槽、洗濯機、空調機器などの使用済みの水を浄化・消毒し、トイレの洗浄、洗濯、庭の水やりなどの飲料水以外の用途で再利用することができます。スタイリッシュなデザインに加え、目詰まりするフィルターや有害な化学薬品を用いない独自の処理技術を採用しているため、家庭にも安心して導入できる点が高く評価されています。

「Hydraloop」を活用することを通じて、個人や企業は水資源の廃棄を25〜45%削減することが可能になり、同時に水の使用に付随するカーボンフットプリントの削減にも貢献することができます。

最後に

オランダの取り組みから見えてくるのは、水資源を単なる管理対象とするのではなく、社会の一部として捉え、積極的に共に生きる道を探ろうとする姿勢です。環境の変化に対して「適応する」という考えを軸として水資源との関わり方を見直し、仕組みや暮らし方を根本から柔軟に転換することは、持続可能な都市のあり方を考えるうえで重要な視点ではないでしょうか。こうしたオランダの知見と実践は、私たちが暮らす地域においても、水資源にまつわる仕組みや人々の意識を刷新するうえで、新たなアプローチを考えるきっかけとなるでしょう。

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