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男性の大学進学率に減少傾向|学力不足と学歴不要論が生む悪循環

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世界中の大学で今、興味深い変化が起きています。地域差はあるものの、大学に進学する男性が減少する一方で、女性の学位取得者数が過去最多を記録する傾向が世界中の大学に広がっているのです。この男女の進学率の差は、将来の働き方や家庭生活、さらには社会のあり方にまで影響を及ぼす可能性があり、さまざまな懸念を呼んでいます。

教育に対する女性と男性の価値観の違い

長い歴史の中で、女性は高等教育を受けたくても受けられない時代が続きました。そのため、今日の女性の大学進学率の上昇は、女性自身が勝ち取った紛れもない成果といえるでしょう。かつて女性に教育は必要ないと考えられていたその価値観が、現代において逆転したのです。高等教育は女性にとって「安全な生活と経済的自立への道」(※1)として重視されるようになり、このような教育への考え方が次世代へと受け継がれてきました。

一方、男性は教育の機会を制限された歴史がない上に、高等教育を受けなくても安定した収入を得られてきました。女性には門戸が開かれていなかった、専門職や技能職など高収入の職業に進む道も男性には存在しました。このような背景により、男性は学びへの動機づけが十分に形成されず(※2)、大学への進学意欲が女性と比べて低くなる状況が生まれたと考えられます。現在は、女性の大学進学率が上がる一方で、男性の割合は着実に低下しています。オーストラリアでは男子大学生の比率がすでに40%を下回っています。そして、多くの大学では女性が男性を数で上回る(※3)だけでなく、これまで男性中心だった分野への進出を目指し、奨学金などの支援も受けています。同様の傾向はヨーロッパ(※4)やアメリカ(※5)でも見られ、女性の進学率は高水準で推移し続けています。

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18-24歳の大学生のうち男子学生の割合(アメリカ)
Credit: Fewer young men are in college, especially at 4-year schools, Pew Research Center, Washington, D.C. (December 18, 2023)

大学進学に魅力を感じられない男子学生たち

長期的に見ると、この男女差は私たちの将来に大きな影響を及ぼすと見られます。大学で学位を取得することは、生涯賃金(※6)の水準や雇用の安定、キャリアの選択肢の広さと強く結びついています。逆に言えば、学位がなければ低賃金の仕事に就かざるを得ず、失業や社会的孤立のリスクが高まるということです。現在の進学率の偏りが今後も拡大すれば、男性は経済的に遅れを取り、男女間の不平等が今とは別の形で広がる可能性が出てきます。さらに、医療や教育などの現場、研究分野など、学位が必要な専門職に男性が不足すれば、社会の重要な機能に支障が生じることも考えられます。

こうした男女間の差は、実は幼少期から存在します。調査によると、男子生徒は女子生徒より相対的に成績が悪く、校則違反などで処分を受ける(※7)ことも多く、高校卒業率も女子より低い傾向があります。これらの要因が成長の過程で積み重なることで、男子にとって高等教育は「手の届かないもの」「魅力を感じにくいもの」となってしまうのです。さらには、それぞれの家庭環境や経済状況も影響します。学習習慣や意欲、そしてそれを支える学習環境の有無が、大きな差となって現れます。学費の高騰や学生ローンの負担を考えると、男子学生にとって大学進学のメリットをあまり感じられなくなっている(※8)のです。むしろ水道や電気工事、建設業などの技能職は安定した収入が見込めるうえ、学位取得のためのローンもなく始められる、魅力的で現実的な選択肢として映ります。

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性別・学歴別の生涯推定収入(単位:百万ドル)
Credit: Demography, Duke Press via the Social Security Administration

性別に関わらず自分のために選択できる教育を

この男女格差の対策として、単に大学に入学する男子学生を増やしても、問題は解決しません。それよりも、大学進学以前の段階で、男子がつまずきやすい障壁を取り除くことが重要です。具体策としては、実践中心の授業や柔軟な学習スタイルを取り入れたり、技術者や専門職に必要な知識と技術を習得する職業訓練への道を広げるなど、子ども一人ひとりを支える(※9)教育の工夫が考えられます。また、教師の給与を引き上げ、より多くの男性が教育現場に参画するようになれば、男子学生にとっても多様なロールモデルを示すことができ、教育に携わる学生も増え(※10)、勉学に意義を持たせる効果が期待できます。

男子の大学進学率の低下は複雑な問題であり、一朝一夕に解決できるものではありません。私たちが目指すべきは、性別に関係なく、すべての学生が自らの関心や人生目標に合った教育を選べるよう、その機会と選択肢を広げることです。そこで初めて、多様な人材がさまざまな形で活躍できる、インクルーシブな社会が実現できるのです。

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  • 執筆 A. Orui   翻訳・編集 K. Tanabe

元記事はこちら
オリジナル英語版はこちら

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