ワインを楽しみ、地域を豊かに。これからのワインの選び方
11月はボジョレーヌーヴォーが解禁される季節。毎年この時期になると、ワインの新酒を囲みながら人々が集う光景が広がります。さらに、年末に向けてクリスマスや忘年会といったイベントも増え、親しい人たちとワインを楽しむ機会も一層多くなることでしょう。
しかし、近年の気候変動がブドウの生育や収穫時期に影響を及ぼし、伝統的なワイン産地の個性そのものを脅かしています。実際に、スペイン、イタリア、ギリシャ、南カリフォルニアの沿岸地域と低地地域にある伝統的なワイン産地の約90%が、気候変動に伴う干ばつと熱波によって、今世紀末までに消滅する恐れがあるという報告もあります(参照:国際農研)。このような状況のなかで、消費者が「地域を味わう体験」としてワインを捉え直すことで、新しい価値と地域保全への意識を育むことが注目されています。
本記事では、各地域で行われているサステナブルなワインづくりやワインツーリズムの事例を紹介し、地域の風土や文化を感じながらワインを楽しむ方法を提案します。
地域性が個性となるワイン
ワインに関連する言葉として、「テロワール」という単語を耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。テロワールとは、ワインの味わいに影響を与える、その土地ならではの自然環境や文化的背景のことです。具体的には、土壌の質、気候、地形といった自然条件、さらには伝統的な栽培方法や造り手の想いまでもが含まれ、その土地に特有の条件がそこでつくられるワインの個性となります。そのため、同じ品種のブドウでも、栽培される土地が異なれば味や香りが大きく変わるのです。
EUでは、欧州のワイン文化を保護するためにワイン法が存在します。ワイン法には「ワインの定義」、「原産地呼称」、「ラベル表記の規制」などがあります。具体的には、EU市場内で販売できるワインのブドウ品種や生産工程を明確に規定したり、原産地呼称・地理的表示制度によって、そのワインが持っている地域固有の特徴を審査したりすることで、伝統的なワイン産業を支えています。
ワインの特性は地域ごとに異なるため、各国はEUのワイン法の枠組みのなかで、地域の環境に応じた柔軟な法整備を進めています。近年では、ドイツのワイン法が改正され、どの地域・畑で造られたかという地理的な原産地を基準に品質を評価するシステムが導入されました。従来、ドイツではブドウの糖度によって格付けがされてきましたが、改正によりテロワールがより重視されることになりました。
ワイン産地のサステナブルな取り組み
地域の個性を守り、次世代へと継承していくために、世界各地のワイン産地で、サステナビリティを実現するための取り組みが進められています。ここでは、産業全体で持続可能性に取り組むチリの先進事例と、欧州を中心に注目が高まる土壌の再生を通じて環境を改善するリジェネラティブ農法の実践を紹介します。
チリワインの「サステナビリティ・コード」
世界有数のワイン生産国として知られるチリでは、2007年ごろから持続可能性をワイン産業における最優先課題として捉え、具体的な行動へと移しています。
その一環として、チリのワイン産業を社会的・環境的・品質の側面に基づいた持続可能な方向性へ導くために、「サステナビリティ・コード」と呼ばれる行動指針・認証制度が設けられています。生産者は以下の4つの領域で要件を満たすことで認証の取得が可能です。
- ブドウ園
ブドウ畑の管理に関するすべての事項を含み、かつ労働者に対して適切で安全な労働条件を確保すること。 - 製造プロセス
醸造所や瓶詰め工場といった、ワインの生産に関わるすべての施設に関する要件を満たすこと。 - 社会
企業全体として、労働者・供給業者・消費者・地域社会に対し、倫理的かつ責任ある行動を取ること。 - 持続可能なワインツーリズム(任意取得)
観光サービスの質に加え、環境面・社会面でのサステナビリティに寄与すること。
現在までに、90のワイナリーが認証を受けており、これらのワイナリーが生産するワインは、チリから輸出されるボトルワインの80%以上を占めています。認証されたワインには「Certified Sustainable Wine of Chile」というラベルが付いているため、みなさんがチリワインを選ぶ際には参考にしてみてはいかがでしょうか。
リジェネラティブ農法を用いたワインづくり
サステナブルなブドウ栽培の方法として注目されているのが、「リジェネラティブ農法」です。これは、土壌を維持するだけでなく、積極的に修復・改善しながら自然環境全体の回復を目指す農法です。たとえば、化学肥料に頼らず、土に栄養を与える植物を育てたり、微生物の力を活かすことで、土壌を守ることができます。また、この農法は植物や土壌に炭素を取り込み、長期的に固定する「カーボンシンク」の働きも高めることから、気候変動対策としても有効です。
国際的な非営利団体「Regenerative Viticulture Foundation(RVF)」では、ワインづくりにおける「リジェネラティブ農法」の実践を支援しています。具体的には、世界各地のブドウ栽培者と研究者、そして支援者をつなぎ、知識や経験の共有を促進しています。土壌再生を通じたワインづくりは、豊かなテロワールを次世代へと受け継ぐために重要な手段の一つです。
地域を活性化するワインツーリズム
近年、旅行でワイナリーやブドウ畑を訪れる「ワインツーリズム」の人気が高まっています。
ワインそのものだけでなく、その土地ならではの自然や文化、歴史、そして人々の暮らしに触れられる「ワインツーリズム」は、地域経済に大きな効果をもたらしています。テイスティングやセラー見学、ブドウ畑ツアーといった定番の体験に加え、料理とのペアリングやウェルネス関連のプログラムなども存在し、体験の幅が広がっています。
旅行者は訪れた地域のテロワールを肌で感じることで、そのワインが生まれた土地への理解がより一層深まります。こうした体験は、今後のワインの楽しみ方をより豊かにしてくれます。また、体験を通じて、地域の環境や文化を支える人々への敬意や共感が育まれることで、環境的・社会的にサステナブルな選択に意識を向けるきっかけとなるでしょう。
ワインを楽しむ際には・・・
ワインを楽しむ方法や選び方は人それぞれですが、そのワインがどのような環境や人々の想いのもとでつくられたかを知ることは、単なる消費を超えた深い意味をもたらします。
サステナブル認証のラベルを参考にしたり、実際にワイナリーを訪れたりすることで、私たちは環境と人にやさしいワインづくりを支える一員となることができます。そうした選択は、ワインをより豊かに味わうための新しい楽しみ方であると同時に、地球の未来を見据えたアクションになります。ぜひ、この年末にワインを楽しむ際の参考にしてみてください。
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