私はあざとい、ぶりっ子、男性に色目を使っているなどで、同性に嫌われます。ルッキズム反対を主張する女性から怒りをぶつけらることもあり、困惑しています。【ライムスター宇多丸のお悩み相談室】
「日本を代表するヒップホップグループ「RHYMESTER(ライムスター)」のラッパーである宇多丸さんが、日常的なお悩みから社会問題まで回答してくれます。(聞き手・F30プロジェクト代表 小林奈巳)。」
✳️今週のお悩み✳️
宇多丸さん、こばなみさん、こんにちは。私は、あざとい、ぶりっ子、お嬢様で苦労知らず、男性に色目を使っているなどと同性に嫌われます。夫の転勤に帯同しているので3年ごとに職場は変わりますが、どこにいっても女性に受け入れられません。初対面にもかかわらず嫌味をぶつけられたり、無視されることもあります。フェミニンな顔立ち、ウェーブ骨格のため、ふわふわ系や女性らしい服装、巻き髪ヘアスタイルが似合うし、自分でも好きなので勤務先の規定内で目立たない程度にやってます。おっとりした性格ですが、仕事が好きでなんでもそつなくこなせます。なので、男性の特に上司に声をかけられることが多いです。ただ、そつがないのは、今まで嫌がらせやマウントをされてきて、あげ足を取られないよう気をつけてきたからであり、それに、3年で退職するので、後ろ指をさされないように努力してきた結果です。
ところが、今までは元来の図太さで気にもしなかったことが、50代に入り、身にこたえるようになってきました。昔の出来事を思い出して悲しくなったり、あのときちゃんと言い返せばよかったのかと悶々とする日々です。最近はルッキズムという言葉が浸透してきたように感じますが、声高にルッキズム反対を主張する女性から怒りをぶつけられることもあり困惑します。毎日を心地よくいたい自分と、心地よさを捨てて周りに溶け込むように生きたほうがいいかもと考える自分とで悩んでいます。
(メロンパン・52歳・パート・アルバイト・大分県)
宇多丸
世のルッキズムのせいで嫌な思いをしてきた人が、怒りを感じること自体はもちろん、当然の話なんだけども......。
その矛先が、なんでメロンパンさんに向かっちゃうの?って話ですよね。
本来ここで責められるべきは、見た目によって接し方を露骨に変えたりしている第三者、たとえばメロンパンさんのことはチヤホヤしてそのほかの人はぞんざいに扱ってたりするのかもしれない職場の人々......おそらくは主に男性たちでしょうけども、あくまで彼ら、あるいはそういう風潮を再生産し許容し続けているこの社会全体であって、明らかに。
メロンパンさんに怒りをぶつけるのはどう考えても八つ当たりだし......どっちも悪くないばずの、なんならホントはどちらもルッキズムの被害者と言える女性同士が、本質的な敵は放置したままわざわざ憎み合うなんて、まさにこういう社会の思うツボ、という感じじゃないですかね。
メロンパンさんだって、見た目だけで判断されてきたからこそ、こうなっちゃってるわけでさ。
そりゃいいかげんガックリもしちゃいますよね。
なのでメロンパンさんは、お門違いの怒りをぶつけられた時点で、もしできるなら、「気持ちはわかるけど、矛先が違うでしょ」ってことを、はっきり言い返していいはずなんだよね、本当は。
ただまぁ、メロンパンさん側から出るそういう正論は、あんまり聞いてもらえない可能性も、あるはあるよね......またぞろ「いい気なもんだ」論がやっぱり出てきかねない匂いも、たしかにするはする。
なんでそうなっちゃうかと言うと、たぶん、ルッキズムで嫌な思いをしてる人自身のなかにも、ルッキズムはあるからですよね。
見た目で不公平に扱われることを、自分でも動かしようがない何かだと思い込んでしまっている、その論理を内面化してしまっている......だから、実際に外見差別をしている側じゃなくて、それで利益を得ているように少なくともハタからは見えるほうに、怒りが行ってしまいがち、という。
まずはそうなっちゃう気持ちそのものは、理解できなくもないですが。
たしかにもちろん、言うまでもなく、ルッキズムは誰の心のなかにもあり得るものなんだけども......ただ、だからこそそれを、まぁ言っちゃえば人間の知性と理性で、少なくとも公の場とか職場などのコミュニケーションにおいては、強く意識してでも抑制して振る舞うべき、という話ですよね、現代の社会的良識として。
にもかかわらず、おそらくメロンパンさんの職場の男性たちは、そのへんかなり無頓着なんでしょうね、今どき、まだ......。
なのでとにかく、まず一番悪いのは、そいつらですよ!
こばなみ
「今までは元来の図太さで気にもしなかったことが、50代に入り、身にこたえるようになってきました」ってことですけども。
宇多丸
大人になったらいいかげんそういうのもなくなるかと思ったんだけど、まだあるんかい?ってことですかね。
ちなみに、「男性の特に上司に声をかけられることが多い」って部分はそもそも、ちょっとハラスメントのニュアンスも感じなくもないですけども......。
それでも今はまだ、それこそ「ルッキズム」という概念とかフェミニズム的な考え方が、以前にくらべればだいぶ知られてはきているぶん、社会も多少は進歩している、とも言えるだろうけども......メロンパンさんは50代ということで、よりゴリゴリの性差別的ルッキズムが別に批判もされないような時代を、若い頃からなんとか生き抜いてきた世代、でもあるわけですよね。
さぞかし不快な思いを、さんざんされてきたことでしょう......だからメロンパンさんは、周りの女性たちが思うようなルッキズムの受益者では、全然ないんだと思いますよ、やっぱり。
こばなみ
「毎日を心地よくいたい自分と、心地よさを捨てて周りに溶け込むように生きたほうがいいかもと考える自分とで悩んでいます」ってありますけども、心地もよく周りともうまくいく方法ってないんですかね?
宇多丸
もしもですけど、周囲に目をつけられないよう、たとえばおしゃれを控えたほうがいいのかな、みたいなことを考えてらっしゃるのだとしたら、そんな理不尽なことを、できれば推奨はしたくないですね、僕としては。
ただ同時に、メロンパンさんは、さっき言ったようにその場ではっきり言い返したりするようなタイプでも、どうやら明らかになさそうですもんね......。
こばなみ
おっとりした性格ですがって書いてありますしね。
宇多丸
当然それ自体は悪いことじゃないし、実際たぶん、人当たりもいいんでしょうね。
とにかくはっきりしてるのは、メロンパンさんは何も悪くないってことですよ。
だから、周りに気を遣って自分を曲げる必要はないと思うし、少なくともそれを勧めたくはないなぁ......。
理想はやっぱり、たとえば仕事仲間からなんか言われたら、自分だってルッキズムは嫌だと思ってるし実質被害も被ってる、悪いのは性差別的な彼らのほうなんだから、我々がここで対立するのはやめません?とか、正論でビシッと言い返す、ということだろうけども。
ただ、性格や立場的に、現実にはそれも難しいし、って感じなのだとしたら......表面的には波風立てずにどうするか?っつったらもう、内心「憐れむ」しかないんじゃないですかね。
こばなみ
職場の女性たちを?
宇多丸
そうだねぇ。
「私はもちろんビタイチ悪くないけど、それもわかんなくなっちゃうくらい、嫌な目に遭い続けて視野が狭くなってしまったんだね可哀想に......」って。あくまで内心でよ?
そうやって、自分を慰めるしかないじゃない、本質的な解決に向かわない以上。
あと、もし仮に今度また、男性の同僚や上司がメロンパンさんに対してルッキズムに基づくと思われるイレギュラーなアプローチをしてきたときには、そこだけはわりと意識的に、はっきり抗議や拒絶の意思を示したほうがいいのかもしれないですけどね。
ホントはさ、そこでこそ、共通の敵に対して、女性たちと連帯できるといいんですけどね。
こばなみ
本当にそうですよね。
ちゃんと彼女たちと話せたら、不必要な分断は起きないかもしれないのに。
宇多丸
まぁでも、わかるところもありますよ。
僕も、女性の皆さんほど深刻とは言えないだろうけど、見た目のせいで空気みたいに扱われてんな、みたいなのは、いくらでも味わったことあるし。
こばなみ
あります、あります。
それはつらいし、つらかった。
宇多丸
ただ、じゃあそういう自分も、人を見た目で判断してないかと言うと......。
こばなみ
してますよ。
気をつけていますけど、でもやっちゃってることはあると思います......。
宇多丸
同時にもちろん、ルックス以外の人間の魅力なんてのはほかにいくらでもある、ということも十分わかってるから、自分に関しても、他人に関しても、そこだけで何か決めつけるようなことは、そうそうしないようにしてるわけですけども。
と同時に、世の中全体はまだまだホントに、残酷なまでに無神経なまんまですよね......。
だから、メロンパンさんも同僚の女性たちも、やっぱりみんな同じくルッキズムの被害者で、これまででさんざんボコボコにされて、すでにもう、血まみれなんですよ。
こばなみ
みんな血まみれ!?
宇多丸
それはたぶん僕らも、きっとそうなんだよ。
誰も得なんかしてない。
それと、あえて言えばもういっこ、単に職場のメンツに恵まれてないだけでは?って見方も、できなくもないかもだけど。
だって、同性から「メロンパンさんホント可愛いね~! 仲良くして!」みたいに言われるような関係性だって、普通に全然、考えられるわけじゃん?
ひょっとしたらだけど、お勤めしてきた会社が、そもそもクソセクハラ体質だった、みたいなことはないですかね?
それこそ、メロンパンさん以外の女性たちのことは、日頃からパートのおばさん呼ばわりしたりして、露骨にバカにしてる、とかさ。
こばなみ
それ、ありそう。
宇多丸
だとしたら、そんなところにいる限り、誰だって必然的に嫌な思いはしてしまう、ということなのかもしれないから。
そこはいったん、見直す余地があるのかもしれないですよね。
こばなみ
実際その職場に入ってみないと、どんなメンツがいるのかわからないところもあるかもしれないですが、たとえば次の職場選びでは、面接で「どういう人が評価されていますか?」とか「従業員同士のコミュニケーションの特徴や傾向はありますか?」とか、聞いてみるのもいいかもですね。これまでもすでに聞いていたら、ごめんなさいですが!
ルッキズムについて、私もまたいろいろ考えるところがありました。自戒も含めて、勉強になりました。
メロンパンさんの悶々が少しでも減って、次の職場では心地よく過ごせることを、心より願っております!
元記事はこちら
ライムスター・宇多丸
日本を代表するヒップホップグループ「RHYMESTER(ライムスター) 」のラッパー。TBSラジオ「アフター6ジャンクション2」(毎週月曜日から木曜日20:00-22:00の生放送)をはじめ、さまざまなメディアで切れたトークとマルチな知識で活躍中。
こばなみ
2010年、iPhoneの使い方がわからなかった自身と世の中の女子に向けた簡単解説本「はじめまして。iPhone」を発行し、「iPhone女子部」を結成。2015年からは「女子部JAPAN」として、Webでのコンテンツ発信とイベントを企画・実施。2022年からは「F30プロジェクト 」と題して、リーダーとして働く女性の生声を取材し、noteで発信。女性活躍推進など、"女性"という枕詞がなくなる世の中を目指している。
「2030年、もう"女性活躍"とは言わせない」を合言葉に、私たちは組織の女性ミドルマネジメントが抱える「課題」と「ストーリー」を記事化し、彼女たちやそれに続く人たちが、ときに一緒に泣いて怒って笑って、元気が出る発信をnoteでしています。日本や世界の働く女性の現状を知り、多くの方に周知するため、専門家や企業への取材も行っています。


