ねぶた祭りも、オクトーバーフェストもエコに。伝統も環境も守るための取り組み
日本では、年間を通じて数十万もの祭りが各地で開催されています。華やかな装飾や人々で賑わう屋台、さらには伝統的な儀式を通して、祭りは私たちに非日常的な体験を与えてくれます。
しかし、祭りは今新たな転換点を迎えています。環境負荷への懸念が指摘される一方で、気候変動や環境保全への関心が社会全体で高まるなか、祭りのあり方も見直され始めています。来場者の増加に伴う大量の廃棄物やエネルギー消費など、祭りがもたらす環境負荷が課題として指摘されるようになってきました。
地域の経済、文化、そして環境と深く結びついているからこそ、その盛り上がりを一過性の消費で終わらせるのではなく、地域の資源の再生や新たな価値を生み出す仕組みへと発展させることが求められているのです。本記事では、国内外の祭りを参考にしながら、サステナブルな祭りを実現するための運営施策と、私たち一人ひとりにできるアクションについて考えていきます。
持続可能な祭り運営のポイントと日本での実践
祭りを持続可能なものにするには、どのような運営体制がポイントとなるのでしょうか。「ISO20121(イベントの持続可能性に関するマネジメントシステム)」や「イベント・MICE関係者のための使いやすいサステナビリティガイドブック」などの国内外の既存の指針を踏まえると、次の4つの条件が主に挙げられます。
1. 資源とエネルギーが循環する仕組みがある
ゴミを単に捨てるのではなく、資源として何度も循環させる仕組みを作ることが重要です。たとえば、使い捨てのプラスチック容器を廃止してリユース容器を導入したり、生ごみを堆肥化したりすることで、廃棄物を減らします。また、再生可能エネルギーの活用や、排出されるCO2の算定、カーボンオフセットを通じて、気候変動への具体的な対策を講じます。
2. 誰もが排除されず、安全に楽しめる
参加者はもちろん、運営に関わるスタッフや地域住民も含めた、すべての人の人権と安全が守られている状態です。どんな人でも問題なく参加できるように、誰一人として排除されない空間をつくります。同時に、スタッフやボランティアが、心身ともに健康で安全に働ける環境を整えることも不可欠です。
3. 祭りの開催が地域の「資産」になる
一過性のイベントで終わらずに、地域に経済的、そして精神的な豊かさを残すことが求められます。祭りが終わった後も、地域の自然環境が守られたり、人と人のつながりが深まったりするような価値を地域に残し、未来にポジティブな影響を与え続ける状態です。
4. 透明性が高く、アップデートし続ける運営体制
見せかけの取り組みにならないよう、明確な方針を掲げ、目標の数値化や評価、改善を繰り返す体制が必要です。実態の伴わない情報発信を避け、ステークホルダーとの対話を通じて信頼性を高めることが重要です。
国内外の祭りで広がる環境への取り組み
国内外の伝統的な祭りにおいても、「伝統を守ること」と「環境を守ること」を両立させる取り組みが始まっています。
日本:青森ねぶた祭
そのうちの一つが、青森県の「青森ねぶた祭」です。従来、巨大なねぶたを照らすためには、台車にディーゼル発電機を搭載していました。ディーゼル発電機は、効率的に安定した電力を供給する一方、燃料燃焼による大気汚染物質や温室効果ガスの排出が懸念されます。しかし近年では、これらを再生可能エネルギー由来の蓄電池へと切り替える試みが一部で進められています。
また、2025年には青森ねぶた祭では初となるカーボンオフセットが実施されました。この取り組みでは、ねぶたの運行団体が発電に伴って排出したCO2相当量を、青森県有林が吸収したCO2を活用したクレジット購入で相殺します。購入されたクレジットは、青森県における持続可能な森林管理と地球温暖化防止活動に活用されます。
このように、祭りの運営においては、昔ながらの手法を踏襲するだけでなく、時代の要請に応じて柔軟に変化していく姿勢が求められています。伝統を守りながらも、新しい技術や価値観を取り入れることで、文化を次世代へと継承していくことが可能となるでしょう。
タイ:ロイクラトン祭り
毎年11月にタイ全土で開催される「ロイクラトン祭り」は、タイで最も美しく幻想的な伝統行事の一つと言われています。この祭りでは、灯籠(クラトン)を川や湖に流して、水の女神への感謝と自らの罪の浄化を祈ります。
かつては安くて丈夫、かつ見た目が華やかなプラスチック製のクラトンが人気でしたが、近年は環境配慮への移行が進み、バナナの葉や幹といった自然由来の素材で作られる伝統的なものに注目が高まっています。2023年の報告によると、首都バンコクで使用されるクラトンの約96%が生分解性素材で作られています(参照元:Bangkok Post)。また、クラトンの総数を減らすために、家族や友人で一つのクラトンを共有する動きも広がっています。
さらに、プロジェクションマッピングを用いた「デジタルクラトン」も導入され始めています。これは、参加者が紙やスマートフォンに描いたクラトンのデザインをスキャンし、運河の水面に投影する仕組みです。物理的なクラトンを流さずに祭りに参加できるこの方法は、環境負荷を減らす革新的な取り組みとして注目されています。オンラインでも参加できるサービスも登場し、幅広い人々がイベントを楽しめるようになっています。
ドイツ:オクトーバーフェスト
ドイツ・ミュンヘンのオクトーバーフェストは、世界各地から600万人以上が訪れる世界最大級のビール祭りです。この祭りでは、1990年代から環境に配慮した多様な施策を導入しています。
1991年には使い捨て容器の使用が全面的に禁止され、リユース可能な容器のみが許可されるようになりました。ドリンクは返却可能なボトルでのみ提供され、缶入り飲料の販売は禁止されています(参照元:Landeshauptstadt München)。
エネルギー面では、すべての公共エリアと施設が再生可能エネルギー由来の電力で運営され、2012年からは出店者全員にグリーン電力が供給されています。出店者の選定においても「エコポイント」制度が導入され、太陽光発電の設置や電気自動車の使用、地域産・有機栽培製品の販売などの取り組みが出店希望者ごとに評価されます。
こうした取り組みに加え、より安全で包括的な開催に向けた取り組みも実施されており、大規模イベントのサステナビリティモデルとして注目されています。
最後に:私たちができるアクション
環境や社会への配慮は、祭りの楽しさを制限するものではありません。むしろ、地域の資源を守り、人々の結びつきをより強くするために不可欠なものです。
参加者が意識を変えることで、現状を改善できることもたくさんあります。例えば、公共交通機関を利用して来場することや、ゴミを正しく分別すること、あるいはクラウドファンディングを通じて祭り自体を支援することもできるかもしれません。一人ひとりの小さな選択が祭りの持続可能性を支えています。これから祭りに足を運ぶ際は、イベントを楽しみつつ、自分にできることから実践してみてはいかがでしょうか。
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ニューロマジック(Neuromagic)SusSolグループ
ニューロマジックのSusSol(サステナビリティソリューションズグループ)は、デジタルデザイン、戦略、サステナビリティの豊富な経験を活かし、企業のサステナビリティ戦略統合を支援します。コンサルティング、リサーチ、ワークショップを通して、マテリアリティ評価、KPI設定、ブランド強化、情報開示をサポート。さらに、Neuromagic TokyoとAmsterdamが主導するCSRDコンサルティングを通じて、EUにおける日本企業の子会社が規制遵守と適合を果たせるようサポートします。



