急な大雨、どう動く? 豪雨から命を守るために、中高生が身につけたい防災の知識
この記事のPOINT!
- 日本では極端な大雨が増えており、強い雨ほど増加率が高くなっている
- 豪雨の危険は雨の最中だけでなく、やんだ後の土砂災害や氾濫にも及ぶ
- 空や雲から天気を読む方法「観天望気(かんてんぼうき)」が身を守る
取材:日本財団ジャーナル
中高生が専門家の知見を借りながら、身近な社会課題について自ら調べ、考えるのを助ける連載企画「探究ジャーナル」。今回のテーマは「豪雨と防災」です。
学校からの帰り道、突然バケツをひっくり返したような雨に降られて、ずぶ濡れになってしまった。そんな経験はありませんか。
文部科学省と気象庁が公表した報告書「日本の気候変動2025(※1)」によると、日本では極端な大雨の発生回数が統計的にも増えており、しかも強い雨ほど増加率が高くなっています。つまり、以前よりも豪雨による災害が起こりやすくなっているのです。
いざというときに適切な行動をとるため、まずは空で何が起きているのかを学ぶことが、自分と大切な人の命を守るための「防災」になります。
今回は、フリーアナウンサーで気象予報士・防災士の三上萌々(みかみ もも)さんに、お話を聞きました。
日本の雨は、確実に変わってきている
──最近「ゲリラ豪雨」という言葉をよく聞きますが、雨の降り方は以前と比べて変わってきているのでしょうか。
三上さん(以下、敬称略)
日本国内の集中豪雨と1時間の短時間大雨、どちらの発生数も増えており、特に梅雨の時期の豪雨が増加しています。その一方で、雨が降らない日数も増えているんです。降るときは激しく降り、降らないときはまったく降らない、といったように、雨の降り方が極端になってきている傾向があります。
これは地球の気候変動(温暖化)とも関係があります。産業革命(18世紀後半)よりも前の時代と比べると、100年に1回しか起きない確率の極端な大雨は20世紀末の時点で1.5倍に増えたといわれています。
──地球の気温が上がって暑くなると、なぜ大雨が増えるのでしょう。
三上
気温が高くなるほど、空気が含むことのできる水蒸気の量が増えるんです。この、空気が含むことのできる水蒸気の最大量を「飽和水蒸気量(ほうわすいじょうきりょう)」といいます。気温が1度上昇するごとに、飽和水蒸気量は7パーセント増えるといわれており、含むことのできる水蒸気が増えれば、それだけ降る雨の量も増える可能性がある、ということです。
例えば、世界の平均気温が産業革命以前と比べて4度上がったとすると、「100年に1回の大雨」が降る頻度は全国平均でおよそ5.3倍になり、そのときに降る雨の量も全国平均で32パーセント増える、と計算されています。
豪雨は、どんな災害を引き起こすのか
──豪雨が増えることで、どんな危険がありますか。
三上
大雨にともなって発生する災害の例には、以下のようなものがあります。危険は、雨が降っている時間だけに集中しているわけではありません。降り出す前も、やんだ後も続きます。
三上
積乱雲の接近や大雨にともなって起こるかもしれない出来事を、実際にイメージしてみましょう。
[Aさんの事例]
夏の午後、学校のグラウンドで部活動をしていました。さっきまで晴れていたのに、空がみるみる黒い雲に覆われ始め、ゴロゴロと雷の音も聞こえてきます。雨宿りしなければと、校庭のすみにある木の下に走り込もうとすると、先生に「雷が落ちるといけない。建物のなかに入りなさい」と注意され、体育館の中で雨宿りしました。
三上
晴れた夏の午後は急に天気が崩れることがあります。これは、日中の気温上昇などで大気の状態が不安定になり、大雨や雷をもたらす積乱雲(せきらんうん)が発生し、また発達しやすいためです。
突然、雷をともなう雨に見舞われたとき、木の下で雨宿りするのは本当に危険です。というのも、「側撃雷(そくげきらい)」といって、木に落ちた雷が人間に伝わってしまうことがあるからです。雨をしのぐなら建物の中に避難するのが一番安全です。
[Bさんの事例]
大雨の朝、家族の車で学校まで送ってもらうことにしました。途中、線路の下をくぐるアンダーパスに差しかかると、道が低くなっているせいで水がたまっています。車なら通り抜けられるかな、と思っていましたが、想像していたよりも水たまりが深く、途中で車が動かなくなってしまいました。
三上
鉄道や別の道路の下をくぐる形で道路が低くなっているアンダーパスの冠水も、大雨による水害の1つです。もしエンジンの吸気口から水が入ってしまうと、車が止まってしまうことがあります。
水の深さは見た目では分かりません。冠水した道路には入らないことが原則です。万が一、車が動かなくなったときに備えて、車内に脱出用のハンマーを置いておくことも、家の人に伝えておきたい備えです。
──大雨の危険は、身近なところにあるのですね。
三上
ほかにも家の近くや登下校の道が、浸水や氾濫の想定区域であることがあります。大雨で川の水位が上がったり、氾濫したりすると、水害に巻き込まれる危険があります。また、地震などで地盤の緩みがあると、少しの雨でも土砂災害が発生することもあるんです。
大雨をもたらす雲について学んでみよう
──大雨から身を守るために、まず何を知っておくべきか教えてください。
三上
まずは、大雨を引き起こす雲について知っておきましょう。正体が分かれば、空を見上げたときに「これは危ないかもしれない」と気づけるようになります。
晴れた空によく浮かんでいる「積雲(せきうん/別名:わた雲)」が大きく成長すると「雄大積雲(ゆうだいせきうん/別名:入道雲)」になります。この雄大積雲が上昇気流によって上へ上へと発達し、発達できる限界まで背が高くなって雲の頭が平らになったものが「積乱雲(せきらんうん/別名:かみなり雲)」です。
雄大積雲も強い雨を降らすことがありますが、積乱雲は雷をもたらし、ときにひょうも降らすのが特徴です。
──大雨のニュースで「線状降水帯」という言葉が使われることがあります。これはどういうものですか?
三上
「線状降水帯」は、集中豪雨をもたらす典型的な現象です。いわゆる「ゲリラ雷雨」は、積乱雲によって強い雨が短時間で降る現象です。それに対して「線状降水帯」は、積乱雲が風上側で繰り返し発生して、狭い範囲に列をなして雨を降らせ続けるため、雨の量が桁違いに多くなります。
三上
しかも「線状降水帯」は急に発生することがあります。急激に多くの雨が降ると、災害の危険性が一気に高まるおそれがあるのです。
──「線状降水帯」が来ることは、事前に分かるのでしょうか。
三上
「線状降水帯」の発生メカニズム自体は、未解明な部分も多く、今まさに研究が進められています。そうしたなか、2026年5月からは気象庁による「線状降水帯予測マップ(※2)」の公開が始まりました。「線状降水帯」が発生する2、3時間前に「直前予測」が発表されます。この的中率について気象庁は2回に1回としています。先に始まっていた「半日前予測」の的中率が7回に1回程度(令和7年実績)だったのに比べると、比較的信頼性の高い情報です。
ただし、「線状降水帯」 という現象にならなかったとしても大雨が降る場合はあります。線状降水帯にならないから安心できる、というものではないんです。
──では、ゲリラ豪雨を呼ぶ積乱雲の発生は予測できるのでしょうか。
三上
「積乱雲がここにできます」というピンポイントの予測は、現代の技術をもってしても難しいといわれています。天気予報をチェックすることに加えて、自分が今いる場所の空の変化について、自分で気づく方法を知っておくことも豪雨から身を守る助けになります。
危険を予告してくれる、「空のサイン」
三上
天気予報がなかった時代からある「観天望気(かんてんぼうき)」という方法があります。これは空や風などのサインから天気を予想するもので、現代でも役立ちます。
まずは豪雨と関わりの深い、積乱雲の登場に関する2種類のサインを覚えておきましょう。前もって教えてくれるサインと、間近に迫っているサイン。後者のほうが、緊急度は高くなります。
[積乱雲の登場を前もって知らせる空のサイン]
頭巾雲(ずきんぐも):入道雲が防災頭巾のようなものをかぶった状態。入道雲がこれから積乱雲になるかもしれないサイン
かなとこ雲:雲の頭が水平方向に平らに広がっている状態。積乱雲が発達の限界まで来ているサイン
乳房雲(ちぶさぐも):積乱雲の進行方向に現れることのある、こぶ状の雲。これが見えたら、その後ろに積乱雲がいるかもしれない、というサイン
三上
空のサインに気づいたら、気象庁のウェブサイト「雨雲の動き(※3)」を見てみましょう。もし、今いる場所に積乱雲が近づいてくる予想になっていたら、安全な屋内に避難しておきましょう。
[積乱雲が間近に迫っているサイン]
・晴れていたのに、急に空が暗くなる
・冷たい風がびゅーっと吹いてくる
・雷の音がゴロゴロと聞こえる
積乱雲がすぐそばまで迫っている場合、予報を確認している余裕はありません。急いで安全なところに避難をしましょう。
──天気予報を使って、豪雨の危険を避ける方法についても教えてください。
三上
大前提として、台風や前線にともなって発生する、ある程度予測のできる豪雨については、必ず気象庁から事前情報が出されます。5日前になると「早期注意情報」、前日になると「時系列情報(明日までの警報等の見通し)」が段階的に発表されます。当日は、「警報」や「注意報」といった速報が出されます。
まずは週間天気予報で「この日は雨だな」と思ったら、前日に「時系列情報」をチェックしてどんな警報が出そうか見ておきましょう。当日は速報が出ていないかを確認すると、身を守ることにつながります。
また、その日の天気予報で次のキーワードが使われていたら、積乱雲登場の予告です。
・ところにより雷
・竜巻などの突風
・大気の状態が不安定
空のサインと気象庁のウェブサイトを一緒に活用するほか、防災アプリで警報アラートが届くように設定しておくのもいいと思います。
豪雨から身を守るためにできること
──豪雨が近づいてきたのがわかったら、どんな行動をすればいいでしょうか。
三上
自治体や気象庁などから発表される5段階の「警戒レベル」に合わせた防災情報が行動の1つの目安になるので、注意しておきましょう。
三上
危険な場所からは全員避難を完了してください、という位置づけとなるのが「レベル4」です。気をつけたいのは「レベル5」の場合。ここまで来ると、すでに道路が冠水していたり、夜間だと足元が見えなかったりして、外に避難することがかえって危険な場合があります。
──「避難する」というのは、避難所に行けばいいのですか。
三上
避難は「難を避ける」と書きます。避難所に行くより、自宅にいたほうが安全な場合もあるんです。気象庁の情報ページ「キキクル(※5)」では、大雨による災害発生の危険度が地図上に色分けで示してあります。 まずは、いま自分のいる場所がどのくらい危険かを確認し、危険な場所にいるなら避難所や安全な屋内へ。安全な場所であるなら移動の危険を冒さずに、そこに留まるようにしましょう。
──大雨のとき外にいた場合、注意すべきことについて教えてください。
三上
水のあるところと、急斜面から離れることを意識しましょう。
河川や用水路、田んぼや畑に近づかない
増水して水があふれる可能性があります。水が濁っていると足元を取られることもあるので、とにかく近寄らない、行かないというのが鉄則です。河川の状況が知りたいときは、国土交通省や自治体のウェブサイトにある河川カメラ(※6)で確認してください。
崖や急斜面に近づかない
土砂災害は急激に状況が悪化し、短時間で発生することがあるので、やはり近づかないことが大切です。
三上
また、雨がやんだから安全なわけではありません。降った雨が上流から流れ込んでくるまでには時間がかかるので、雨の規模が大きいほど、やんだ後になって河川の水位が上がっていくことがあります。土砂にゆっくり染み込んでいった雨水によって、後から土砂災害が襲ってくることもあります。気象現象のピークと、実際の洪水や土砂災害の発生には時差が生まれる場合があるのです。
──大雨に備えて、ふだんからやっておけることはありますか。
三上
いざというときの準備は、災害が起こる前にしかできません。次の2点について、豪雨に遭遇する前に取り組んでみてください。
自分のいる場所の危険を知る
自治体や国土交通省が提供する「ハザードマップ(※7)」で、家、学校、通学路などふだんよく行く場所を確認しておきましょう。浸水、川の氾濫、土砂災害など、どんな危険があるのか頭に入れておくと避難の判断がしやすくなります。
家族でルールを決める
避難するタイミングと場所、一人で外にいるときの行動について話し合っておきましょう。避難にかかる時間は家族構成によって変わります。「レベル4が出たら避難を終わらせておこう」といった具体的な形で、避難のタイミングを決めておくのが大切です。避難所にペットを連れていけるかどうかは自治体によって違うため、早めに確認しておきましょう。
また、家族が揃っているときに豪雨災害が起こるとは限りません。登下校や部活動中など、外出先にいるときにどうするかについても、合わせて話しておいてください。
──危険の話が続きましたが、空を見ることが楽しくなる方法もぜひ教えてください。
三上
偶然でしか出会えないイメージがある「虹」ですが、先ほどお話したウェブサイト「雨雲の動き」を使うと高い確率で見つけることができます。というのも、虹は必ず太陽と反対側の空に出るものです。自分のいる場所を通り過ぎた雨雲がどちらへ向かったかレーダーで確かめたら、太陽を背にしてまだ雨が降っているほうの空を見上げると、虹に出会いやすくなります。
そうやって使ううち、雨雲の動きや気象情報に慣れ、それがそのまま豪雨の備えになります。空を身近に感じることが、自分の身を守ること、大切な人を守ることにつながっていくのではないでしょうか。
取材から学んだこと
なんとなく見上げていた一つ一つの雲も、段階を追ってその形を変えていることを改めて意識しました。空に浮かぶ雲の形も、急に吹く冷たい風も、その意味を知って初めて活用できる情報になります。
気象庁の情報やハザードマップも含めて、まずは「知る」ことが、備えの第一歩になると実感しました。
中高生のみなさんへ
- 今日から、空の様子をどんなふうに見上げてみますか?
- 通学路に、川や用水路、崖、アンダーパスなど豪雨のときに危なそうな場所はありますか?
- 自分の家や学校がある場所を、ハザードマップで調べたことはありますか?
- 災害のときにどう避難するかについて、家の人と話し合ったことはありますか?
無償でダウンロードできるワークシート(別タブで開く)を活用して、自分の住む場所の危険を調べ、友だちとも意見を交わしながら、「自分なりの避難ルール」を作ってみましょう。
撮影:永西永実
三上萌々(みかみ・もも)
慶應義塾大学理工学部応用化学科卒業。損害保険会社に勤務していた当時、豪雨災害の被災地を担当。その苦難を目の当たりにし、災害が起こる前に呼びかけられる仕事に携わりたいとアナウンサーを志す。2021年、テレビ高知に入社、夕方のニュース番組『からふる』のメインキャスターなどを担当。2023年より『TBS NEWS』キャスターを務める。能登半島地震の報道を通じて防災を学び直す必要を感じ、2025年に気象予報士試験に合格。現在は気象予報士・防災士として、防災・減災に関する発信にも取り組む。。
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元記事はこちら
毎年のように起こる自然災害、世界で広がる教育格差、海を脅かすプラスチックごみ...。日本財団ジャーナルは、そんな複雑で困難な社会課題に立ち向かう人々のチャレンジを伝えるウエブメディアです。解決に向けて、一人ひとりができるアクションを見つけるヒントが散りばめられています。日本財団独自のネットワークと現場視点を生かした情報を発信し「みんなが、みんなを支える社会」を目指します。








