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その寄付、誰に届く? 「支援金」「義援金」の違いと使われ方のリアル

令和8年熊本地震により倒壊した家屋の様子(提供: ピースボート災害支援センター(PBV))
令和8年熊本地震により倒壊した家屋の様子(提供: ピースボート災害支援センター(PBV))

この記事のPOINT!

  • 「義援金」とは、被災者へ「現金」として直接届くお見舞い金。公平に配るため、手元に届くまで時間がかかる
  • 「支援金」とは、NPOやボランティアの「今すぐ命や生活を守る活動」に使うお金。形を変えて迅速に被災地に届く
  • 支援金、義援金の違いと、支援活動に必要な「コスト」の内訳を理解することが、善意を確実に届ける第一歩

取材:日本財団ジャーナル編集部

2026年7月28日、再び熊本を襲った大きな令和8年熊本地震、8月13日の千葉豪雨、台風25号による水害など、日本各地で大規模な災害が発生し、多くの人々が生活や住まいを失っています。

連日報道される過酷な状況に胸を痛め、「今すぐ何か力になりたい」と寄付するための窓口を探している人も多いことでしょう。

そのとき、あなたは無意識のうちに「このお金は、今すぐ被災した方の手元に、直接現金として届くはずだ」と想像していませんか?

実は、その感覚と「実際の寄付の仕組み」とのズレが、近年のネットやSNSなどで見られる「寄付金が中抜きされている」「怪しい」といった不信感の引き金になっています。

災害時の寄付には大きく分けて「義援金」と「支援金」の2種類があり、お金の使われ方も、現地に届くスピードも全く異なります。どちらが良い・悪いではなく、「役割」が違うのです。

災害大国・日本において、「誰かを助けたい」という思いは、私たちが守るべき大切な文化です。だからこそ、あなたの大切なお金がどのような道筋をたどり、誰の助けになっているのか、その「本当の仕組み」を確かめてみませんか。

この記事では、支援金と義援金の違いから、誤解されがちな「中抜き(間接費)」の本当の役割までを紹介します。いざという時に納得のいく選択をするための「寄付のガイド」としてお役立てください。

支援金と義援金、あなたのお金はどこへ行く?

災害時の寄付には大きく2つのルートがあります(※1)。それぞれの役割を正しく知ることが、寄付の第一歩です。

「現金」として被災者に直接届く「義援金」

義援金は、被災地の人々に直接配分される「お見舞い金」です。

  • 使い道:被災者が生活再建や家財の購入など、自由に使える「現金」です。
  • 届くまでの時間:数カ月〜半年以上かかることがあります。
  • 仕組み:日本赤十字社や共同募金会を通じて集められ、自治体の「配分委員会(※2)」に預けられます。被害状況(全壊・半壊など)を正確に把握し、1円単位まで公平・平等に配る必要があるため、どうしても時間がかかってしまいます。

「命と生活」を今すぐ守る「支援金」

支援金は、被災地で救助・復旧活動を行うNPOやボランティア団体に託す「活動資金」です。

  • 使い道:炊き出し、医療チーム派遣、重機でのがれき撤去、仮設トイレ設置など、「今、目の前で困っていること」の解決に使われます。
  • 届くまでの時間:迅速(すぐに活用されます)。
  • 仕組み:被災者に直接「現金」が渡るわけではありません。しかし、そのお金は支援という「形」に変わって、いち早く被災地に届きます。
支援金と義援金の違い。出典:日本財団
支援金と義援金の違い。出典:日本財団

なぜ「中抜きだ」「怪しい」と言われるのか

災害が発生するたびに、被災地を支援しようと多くの寄付が寄せられます。しかし、寄付金の一部がNPOやボランティア団体などの活動にかかる「間接費」として充てられることに対し、「中抜きではないか」「不透明だ」といった声が上がることがあります。

なぜこうした疑問が生まれるのでしょうか?

今回は、寄付や社会的投資が広がる社会を目指して資金調達(ファンドレイジング)の専門人材の育成や寄付文化の普及に取り組む、認定NPO法人日本ファンドレイジング協会の宮下真美(みやした・まみ)さんにお話を伺いました。

取材に応じていただいた日本ファンドレイジング協会の宮下真美さん
取材に応じていただいた日本ファンドレイジング協会の宮下真美さん

──なぜ、間接費に対し「怪しい」という声が上がるのでしょうか。

宮下さん(以下、敬称略)

間接費に対する疑問の声は、決して誰かの悪意から生まれているわけではありません。根底にあるのは、寄付をする方々の「困っている被災者に、少しでも多くのお金を直接届けてほしい」という純粋な願いです。

また、社会には「非営利活動やボランティアは、無償で行われるべきもの」というイメージが根強くあります。そのため、支援を「プロフェッショナルな活動」として捉え、そこに組織運営のためのコストが発生することに対して違和感を覚える方が多いのも自然なことです。

実は、この「間接費のジレンマ」は日本特有のものではなく、寄付文化が発展しているアメリカでも同様に議論され続けてきた歴史があります(※3)。寄付者の温かい思いと、支援団体が抱える現実的なコストの間に生じる「悪意なき認知のギャップ」が、こうした誤解を生んでいると言えます。

──被災地支援におけるNPOの重要性について、どのようにお考えですか。

宮下

発災直後から、消防や警察、自衛隊、自治体などの公的機関が人命救助や避難支援にあたる一方で、NPOも早い段階から現場に入り、それぞれの専門性を生かした支援を開始します。

公的機関には、広範な住民を対象に、公平性を確保しながら組織的に支援を届ける重要な役割があります。方や、NPOには、現場で生まれる多様なニーズを捉え、制度や組織の枠だけでは対応しにくい課題にも、柔軟かつ機動的に対応できる強みがあります。

特に災害支援を専門とするNPOのなかには、平時から訓練や備えを重ね、発災後早期に現地へ向かい、救助・医療活動や物資支援などを開始できる団体もあります。

例えば、空飛ぶ捜索医療団"ARROWS"(※4)を例にあげると、医師やレスキュー隊員らが航空機などを駆使し、いち早く被災地で救命・医療活動を行う民間組織です。

平時からの訓練や寄付による備えにより発災3時間以内の出動体制を目標とし、今回の熊本地震においても陸路と空路を駆使して当日の深夜には現地入りし、被害の全容がつかめないなか、被災者の捜索救助活動にあたりました。

また、NPOの役割は初動支援だけにとどまりません。多様な専門性を持つ団体が、子どもたちの心のケア、高齢者の孤立防止、ペットの保護など、長期間にわたるサポートを行います。公的な制度の狭間に落ちてしまいがちな少数派(マイノリティ)の人々にも寄り添い続けることができるのは、民間ならではの強みです。

──では、実際に間接費はどのようなものに使われているのでしょうか。

宮下

それは、支援活動を安全かつ確実に行うための「土台」となる費用として使われます。目的は多岐にわたりますが、例えば次のようなものが挙げられます。

・機材の維持・管理:炊き出しの設備や救助用の重機などを平時から整え、適切にメンテナンスする費用
・専門人材の育成:もしもの時に備え、平時よりスタッフが災害対応の専門知識や技術を身につけるためのトレーニング費用
・組織のバックオフィス:寄付者の大切な資金を厳格に管理するシステムや、セキュリティ対策、オフィス維持などの運営費用

これらは一般の企業活動と何ら変わりません。質の高い支援を被災地に届けるためには、こうした目に見えにくい部分でのコストが必要不可欠なのです(※5)。

──もし「間接費」がなかったら、被災地の復旧・復興にどのような影響を及ぼすのでしょうか。

宮下

まず、平時からの備えやスタッフの訓練ができなくなるため、いざ災害が起きた際の「迅速な対応」が失われます。また、経験豊富な専門スタッフを雇用し続けることができず、中長期的な心のケアや、複雑な課題を抱える人々へのきめ細やかな支援が立ち行かなくなります。

結果として、公的な支援だけではカバーしきれない被災者の方々が取り残されてしまうリスクが高まります。

間接費は、支援団体が自らの利益にするためのものではなく、「支援を必要とする人へ、確実に、そして継続的にサポートを届けるための必要経費」です。

寄付をする側がこうした構造を知り、間接費の意義を理解すること。そして、支援団体側も「何にいくら必要なのか」を、透明性をもって丁寧に説明していくこと。これらの歩み寄りが不可欠です。双方が対等な関係を築くことで、私たちの寄付はより大きな力となり、被災地の未来を力強く支えていくはずです。

能登半島地震の被災地で復興支援に取り組むプロの災害ボランティア
能登半島地震の被災地で復興支援に取り組むプロの災害ボランティア
全国の消防士を対象にした救助技術研修会の様子。プロのボランティアたちは被災地の命と生活を守るために、平時から知識や技術の研鑽を積んでいる
全国の消防士を対象にした救助技術研修会の様子。プロのボランティアたちは被災地の命と生活を守るために、平時から知識や技術の研鑽を積んでいる

信頼できる寄付先をどう見極める? 3つのチェックポイント

では、本当に信頼できる寄付先をどのように選べばよいのでしょうか。

1.「誰を・何を応援したいか」で選択する

今すぐ現場で人命救助や炊き出しなどの支援を望むなら、NPOや、その活動資金を支える国・自治体、民間の助成財団や企業への「支援金」を。被災地の人たちに長期的な生活再建のための現金を届けたいなら、日本赤十字社や赤い羽根共同募金、地方自治体や金融機関の窓口で受け付けている「義援金」を選ぶとよいでしょう。

2.透明性のカギは「監査」と「情報公開」

「支援金」を選ぶ場合は、活動にかかった経費の内訳を隠さず、ウェブサイトや印刷物などで「活動報告」や「会計報告」を定期的に公開している団体を選ぶと安心です。

3.助成財団や企業など「大規模機関」の審査・公開の仕組みを知る

寄付先のNPOが信頼できるかどうかを、個人ですべて見極めるのは難しい場合もあります。その際、1つの指標となるのが「助成財団や企業の支援プログラムを経由しているか」という点です。

一般的な助成財団や企業の社会貢献部門では、集まった資金を現場のNPOに託す際、次のような厳格なプロセスを設けています。

  • 事前審査:団体の財務状況、過去の活動実績、支援計画の妥当性を専門家がチェックする
  • 事後評価と使途報告:領収書の提出や詳細な活動報告を義務付け、適切に資金が使われたかを確認し、ウェブサイトや印刷物などで公開する
  • 監査:外部の専門家や独立した部門によって、資金の流れに不正や無駄がないかを厳しくチェックする

こうしたスキームによって、多くの助成機関が透明性を担保しています。

重要なのは、「第三者の厳しい目(審査・監査)が入り、その結果が公開される仕組みを持っている機関」を寄付の窓口として選ぶことです。それが、不確かな情報に惑わされず、あなたのお金を最も確実な形で被災地へ届けるための手段になります。

もしも自分が被災したら?

「寄付をする側」ではなく、ご自身が「被災した側」になったときのことも知っておきましょう。

万が一被災して避難所生活になった場合、真っ先に駆けつけて命や生活環境を守ってくれるのは、「支援金」によって動いているNPOやボランティア団体です。一方で、生活を立て直すための「義援金」を受け取るためには、自治体が発行する「罹災(りさい)証明書」の申請手続きが必要になります。

詳しくは日本財団ジャーナルの記事「地震、水害、火災──もしも自宅が被災したら。生活再建で使える公的支援と申請の流れ」で確認できます。

いざというとき、自分を助けてくれる資金がどこから、どのような形でやってくるのかを知っておくことは、とても心強い防災知識でもあります。ぜひ、参考にしてください。

災害寄付の「よくある疑問(Q&A)」

ここでは、あらためてよくある疑問と回答をまとめました。

Q. 支援金は被災者に直接届かないのですか?
A. 「現金」としては届きませんが、炊き出し、仮設お風呂、医療支援といった「形を変えた支援」として、被災直後の最も苦しい時期に直接的な助けとなります。

Q. NPOへの寄付は中抜きされていると聞いて不安です。
A. 不正な搾取(本当の意味での中抜き)は論外ですが、多くの場合「中抜き」と誤解されているのは、現地へ赴くための交通費やプロのボランティアの人件費といった「活動に必要な経費(間接費)」です。会計報告をしっかり公開している団体を選べば心配ありません。

Q. 結局、義援金と支援金どちらに寄付すればいいですか?
A. どちらも被災地には欠かせないお金です。今すぐ被災地の人々の命と生活を助けたいなら「支援金」、長期的な生活再建のための現金を贈りたいなら「義援金」をおすすめします。迷った場合は、自分の「こう使ってほしい」という想いに近い方を選んでみてください。

まとめ

災害が起きるたび、ネット上ではさまざまな情報が飛び交います。なかには寄付を批判する声もありますが、その根底にあるのは「お金を正しく使ってほしい」という願いのはずです。

支援金と義援金の違いを知り、目に見えない「コスト」の重要性を理解することは、その願いを最も効果的な形で被災地へ届けるための第一歩。この記事が、あなたの温かい善意を迷いなく送り出すための後押しになることを願います。

【関連リンク】 令和8年熊本地震への対応とご寄付のお願い
【関連リンク】 災害対策事業

元記事はこちら

日本財団ジャーナル

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毎年のように起こる自然災害、世界で広がる教育格差、海を脅かすプラスチックごみ...。日本財団ジャーナルは、そんな複雑で困難な社会課題に立ち向かう人々のチャレンジを伝えるウエブメディアです。解決に向けて、一人ひとりができるアクションを見つけるヒントが散りばめられています。日本財団独自のネットワークと現場視点を生かした情報を発信し「みんなが、みんなを支える社会」を目指します。

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