ウルトラファストファッションの誘惑に揺れるZ世代。 環境への悪影響を知りながらつい購入してしまう「ごめんね消費」の現実とその背景を調査
目次
- Z世代の74%が購入経験がある"ウルトラファストファッション"
⚪︎ウルトラファストファッションとは?
⚪︎Z世代の4人に3人がウルトラファストファッションの購入経験あり - 環境に悪いと知りながらつい購入してしまう「ごめんね消費」
⚪︎罪悪感を抱えながらも約半数が購入
⚪︎なぜ「ごめんね消費」をしてしまうのか?
⚪︎購入しない選択をしている25%のZ世代の共通点 - まとめ
<調査概要>
調査主体 :Earth hacks株式会社、株式会社seamint.
調査方法 :LINEリサーチ プラットフォーム利用による調査
調査対象者 :東京大阪在住の18〜27歳
有効回答数 :300名
調査期間 :2024年7月12日〜7月16日
その他、座談会を開催し、Z世代3名から意見を収集
なお、今回の調査では1996年生まれから2006年生まれのZ世代を対象として実施しました。
近年、環境問題に対する意識が急速に高まる中で、Z世代はその先頭に立っているといわれています。しかし、環境に優しい選択を意識しながらも、日々の消費行動で矛盾を感じる瞬間があるのも事実です。
今回の調査では、特にZ世代が抱える「ごめんね消費」の実態に焦点を当て、その背後にある心理や社会的要因を探りました。
Z世代の74%が購入経験がある"ウルトラファストファッション"
ウルトラファストファッションとは?
Z世代は他の世代に比べて環境意識が高いと言われていますが、同時にウルトラファストファッションが人気であることも事実です。
ウルトラファストファッションとは、オンラインで購入できる1着1,000円程度の安価なブランドを指し、特に「安くて可愛い商品がたくさんある」としてZ世代から注目を集めています。
しかしその一方で、有害化学物質の使用、工場の過酷な労働環境、プラスチック素材の使用など、環境への悪影響が懸念されています。
Z世代の4人に3人がウルトラファストファッションの購入経験あり
デカボLabが行った調査によると、Z世代のうち、74%がウルトラファストファッションの購入経験があることが分かりました。さらに、そのうち15.4%は月に1回以上購入しているという結果が出ています。
ウルトラファストファッションの中には環境に悪い商品もあることはZ世代の間でも広く認知されており、約55%が「知っている」と回答しています。X(旧Twitter)やInstagram、YouTube、テレビなど、幅広いメディアから環境に悪いという情報が発信され、以前と比べてZ世代にとって環境問題が身近なものとなりました。
環境に悪いと知りながらつい購入してしまう「ごめんね消費」
罪悪感を抱えながらも約半数が購入
Z世代のウルトラファストファッション購入において、環境への悪影響がどのように影響しているか調査したところ、約77%が「環境への悪影響が購入に影響する」と回答しました。
Z世代を対象に行われた座談会では、「環境への悪影響は頭にあるが、安くてデザインが豊富なため、『ごめんね』と思いながらも購入せざるを得ない」という意見も見受けられました。
調査によると、52.3%が環境に悪いと知りながらも購入してしまう「ごめんね消費」を行っていることも明らかになりました。反対に、環境への悪影響を理由に購入を避けている人はわずか24.8%にとどまっています。
なぜ「ごめんね消費」をしてしまうのか?
ウルトラファストファッションには、「価格が安い」「デザインが豊富」という特徴があります。特に、日々数千着もの新しいアイテムが発売されるブランドもあり、これがZ世代の消費を後押しする大きな要因となっています。
調査によると、Z世代はウルトラファストファッションに「価格が安い」「気軽に購入できる」「失敗してもいい」という印象を持つ方が多いことが分かりました。また、「なんとなく危ない」「環境に配慮していない」などのネガティブな印象を持っている人も目立ちました。
ウルトラファストファッションを購入するタイミングは、ハロウィンやお揃いコーデをしたいなど特定の場面で急遽必要になった場合が多いです。価格が安く、デザインが豊富なウルトラファストファッションは、その時だけ必要なアイテムを手軽に購入できるため、とても便利です。
座談会では、次のような意見が出ました。
まず、安価なため「失敗してもいい」という安心感があるという点が挙げられました。たとえば300円程度のイヤリングなど、なくしてもダメージが少ないアイテムを気軽に購入できる点が魅力だという声がありました。
一方で、「デザインがパクリのものが多い」という懸念も話題になりました。参加者の中には、本家のブランドアイテムが欲しいものの、偽ブランドや模倣品は避けたいという意見がありました。
また、インフルエンサーによるコーデ紹介動画や大量購入動画が、ウルトラファストファッションアイテムの購買につながるケースも多いようです。
XやYouTube、TikTokなどのSNSでウルトラファストファッションのコーデ紹介動画や投稿を見たことがある人は8割以上にのぼり、そのうち3人に1人が実際に購入に繋がっていることがわかりました。
デカボLabの所長であり、Z世代の専門家である朝比奈ひかりは以下のように述べています。
ファッション系のインフルエンサーに話を伺ったところ、これらの動画や投稿の多くが広告として行われている一方で、特にウルトラファストファッション関連の投稿が反響を得やすいことが広く知られているとのことです。そのため、フォロワーを増やしたいインフルエンサーがこうした投稿を行うことも少なくありません。
また、これらの投稿には「品番を教えてください」といったコメントが多く寄せられ、ウルトラファストファッションアイテムの人気をさらに後押しする要因となっています。
購入しない選択をしている25%のZ世代の共通点
Z世代の52.3%が「ごめんね消費」を行う一方で、24.8%は実際に購入しない選択を取ることができています。座談会の意見では、実際に行動を移せる人々の共通点として「知人や友人からウルトラファストファッションには環境に悪い商品もあることを知ると、購入を躊躇する」という声が挙がりました。
また、座談会に参加したZ世代からは、「ごめんね消費の存在は理解できるが、自分はサステナブルファッションが必ずしも高額で手の届かないものだとは思わない。工夫次第で状況は変えられるのではないか」という意見も出ました。このように、意識せずとも自然にサステナブルファッションを生活に取り入れているZ世代もいます。
まとめ
・環境意識の高いZ世代にも人気の"ウルトラファストファッション"
Z世代は環境意識が高い一方、ウルトラファストファッションが人気。
安価で可愛い商品が多いが、環境への悪影響が懸念されています。
・Z世代の4人に3人がウルトラファストファッションの購入経験あり
74%がウルトラファストファッションを購入した経験があると回答。
その中でも、55%が環境への悪影響を意識しつつも、SNSやメディアからの情報で影響を受けています。
・約半数が環境に悪いと知りながらつい購入してしまう「ごめんね消費」を行っている
悪影響を意識しながらも、52.3%が「ごめんね消費」を行っています。
一方で、24.8%は購入を避ける行動を選んでいます。
・ウルトラファストファッションの「安価」「豊富なデザイン」がZ世代の消費を後押し
座談会では、罪悪感を抱きながらも購入するという意見も見受けられました。
購入しない選択をしている25%のZ世代の共通点
「友人や知人からの影響で購入を控える」という座談会の意見も。
周囲の行動や風潮が、Z世代の消費行動を左右しています。
Z世代とサステナブルな未来をつなぐ「デカボLab」
デカボLabは、Z世代の生活者に焦点を当て、彼らのサステナブルな取り組みや行動、トレンドに関する深いインサイトを提供する情報発信のプラットフォームです。
私たちは、Z世代が持続可能な未来に向けて、実際にアクションを起こすためのきっかけを提供し、彼らが楽しく取り組めるような内容を発信していきます。
リサーチャーからのコメント
Z世代のサステナブルに関するインサイト・ ⾏動・トレンドをリサーチするために、リアルなZ世代の動向を把握する多様なリサーチャーをテーマ毎に迎え、定性・定量の観点から研究活動を展開します。
今回のリサーチ結果について、リサーチャーからのコメントを掲載します。
株式会社Gab 代表取締役 CEO ⼭内萌⽃
SNSネイティブであるZ世代は、個別最適化された情報のシャワーを浴びることにより、価値観の多様化が顕著です。その点、1人1人の好みに合わせたデザインを揃えられるプラットフォームは重宝されます。一方で、環境に配慮された商品は、ゴミを減らす等の観点から、どうしてもシンプルなデザインに収束しがちです。価格の問題よりも、選択肢が少ない問題の方が、Z世代の「ごめんね消費」を促す要因だと考えています。
Mpraeso合同会社 代表取締役 CEO ⽥⼝愛
ウルトラファストファッションは生産現場だけでなく、廃棄も問題となっています。私の活動地ガーナでは、世界中から毎週約1500万着の古着が届いていますが、その半数以上は再利用されず廃棄されていると言われています。
ウルトラファストファッションは安いというイメージですが、実際生地の質が低くワンシーズン着たら着れなくなるというものも多く存在します。長期的に見て丈夫なものを購入するように心がけることは、結果的に財布と地球を守ることに繋がるかもしれません。
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