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その服、30回着る? オランダ発の「サーキュラーエコノミー・ジーンズ」メーカーが伝えたいメッセージ

MUD Jeansは世界初の「サーキュラーエコノミー・ジーンズ」を掲げ、2012年にオランダで創業した。(画像提供:Ethical Japan Group)
MUD Jeansは世界初の「サーキュラーエコノミー・ジーンズ」を掲げ、2012年にオランダで創業した。(画像提供:Ethical Japan Group)

気がつくと同じような系統の服ばかりを買っていたり、購入したものの「着回しにくい」などの理由で、一度も袖を通していない服がクローゼットに眠っていたりする人は少なくないはず。そこで、三菱電機イベントスクエアMEToA Ginzaのfrom VOICE編集部が、オランダ発のサステナブルなジーンズメーカー「MUD Jeans」(マッドジーンズ)のブランド展開を担当する、Ethical Japan Groupのディーン・ニューコムさんと伊井美結さんに、三菱電機イベントスクエアMEToA Ginza 「from VOICE」編集部が話を伺った。

"ワクワク"するサステナブルのヒントを教えてくれた人

ディーン・ニューコムさん

ディーン・ニューコムさん

Ethical Japan Group代表取締役。イギリス出身。来日から10年以上モデルとして最前線で活躍し、日本にてエシカルファッションの先駆け的存在となったPeople Tree にてアンバサダーモデルを務める。2020年にEthical Japan Groupを立ち上げ、日本人にエシカルという価値観を届ける信念を持って活動している。

伊井 美結さん

伊井 美結さん

2023年よりEthical Japan Groupマーケティング・デザイン・営業担当。慶応義塾大学経済学部3年生、環境経済学専攻。中学・高校時代を過ごしたインドとタイで、ゴミの山を目の当たりにしたことから環境問題に関心を持つ。大学の講義でMUD Jeansを知ったことをきっかけに、フリーランスとしてEthical Japan Groupで勤務する。

「30回着る?」を基準に服を選ぶ

従来のアパレルシステムは、持続可能性の観点から課題が多いと、Ethical Japan Group代表のディーンさんは語る。(画像提供:Ethical Japan Group)
従来のアパレルシステムは、持続可能性の観点から課題が多いと、Ethical Japan Group代表のディーンさんは語る。(画像提供:Ethical Japan Group)

季節やトレンド、年齢や好みに合わせてファッションを楽しむ中で、「新しい服が欲しい」という気持ちは自然と湧いてくるもの。しかし、いつの間にか着ていない服が溜まり、時間が経つとその存在さえ忘れてしまうこともある。

「私も昔は同じような経験がありましたし、新しい服が欲しいというのは当然の欲求だとも思います。ただ、必要以上に服を購入したり、ほとんど着ずに捨ててしまう問題の根幹には、私たち消費者の無意識で無責任な行動があると考えています」

自戒の思いを込めながらVOICEについてこう語るのは、Ethical Japan Groupの伊井さん。同社は、世界初の「サーキュラーエコノミー・ジーンズ」を掲げて2012年にオランダで創業した「MUD Jeans」の日本代理店として、ブランド展開やマーケティングを行っている。服がどのような素材で、誰によってどのようにつくられているのか。消費者は義務として、服を選ぶ際にこうした点を意識する必要があると伊井さんは語る。商品を手に取る際にそこまでの責任感を持つのはやや荷が重く感じるが、「それではいつまでも変わらない」と、Ethical Japan Groupのディーンさんは消費者が意識を変える重要性を強調する。

「2020年頃にチリの砂漠に服が大量に廃棄されているというニュースが報じられ、多くの方が衝撃を覚えました。最近では世界中の企業や消費者が、ファストファッションを筆頭に、従来のアパレルシステムがどれだけ持続可能ではなかったのかに気づき始めています。服の大量生産・大量消費は地球環境に大きな負担をかけ、異常気象の発生にもつながっている。これまでのシステムを維持することは、もはや不可能な段階に来ています」

それでは、私たち消費者の心構えとして、まずは適切な量の服を購入するようになるためにはどうすればいいのか。ディーンさんはすぐに取り入れられるアクションとして、「30回ルール」を提案する。

「服を購入する前に、その服を少なくとも30回着るかどうかを自分に問いかけてみてください。こうした小さな工夫が、服を大切に選んで着ることにつながり、今回のVOICEのような問題も軽減されるはずです」

ブランドのファンを増やしながら、エシカルファッションの輪を広げる

一般的なジーンズは生産過程で大量の水を必要とし、環境負荷が大きい。(画像提供:Ethical Japan Group)
一般的なジーンズは生産過程で大量の水を必要とし、環境負荷が大きい。(画像提供:Ethical Japan Group)

ファッションアイテムの中でも、ジーンズは環境負荷の高いアイテムだ。通常、ジーンズを1本生産するのに7,000リットル以上の水が必要とされる。世界中で年間12億本を超えるジーンズが販売されていることを考えると、ジーンズが地球環境にいかに影響を与えているかは想像に難くないだろう。

そこでMUD Jeansは、環境や人に配慮した方法でジーンズを生産、販売、流通している。同社は廃棄されたジーンズなどのリサイクル素材およそ40%と、オーガニックコットンからできた糸を使用してジーンズを生産。従来の生産方法に比べ、水の使用量は72%削減、CO2排出量は41%の削減を達成している。また、履き終わったジーンズはリサイクルのために回収しており、主な販売地域である欧州の近くに生産・修理拠点を構えることで、輸送コストの削減にも努めている。これまでに世界29の国や地域で、300店舗とオンラインストアを通じて、10万本以上のジーンズを販売してきた。MUD Jeansは2021年に、アジアで初めて日本で商品販売を開始。ディーンさんは日本でのブランド展開についてこう語る。

「私たちはジーンズの生産、販売、そして流通やリサイクルのすべてのプロセスにおいて、地球環境や人に配慮する姿を伝えることで、アパレル業界におけるサステナビリティの重要性を日本の皆さんに理解していただくことを目指しています。そのために、まずはブランドのファン、そしてエシカルファッションのファンを増やしていくことが大切だと考えています」

日本では企業やインフルエンサーと協業して事業を展開することで、ブランドの知名度や信頼性の向上に注力。また、OEM事業も積極的に行い、ユニフォームやポーチなど、環境負荷の少ないデニム素材を活かした商品開発を進めている。

地球に無理なくファッションを楽しめるあり方を

MUD Jeansは、ファッションを楽しむことと地球環境を守ることは両立できると発信している。
MUD Jeansは、ファッションを楽しむことと地球環境を守ることは両立できると発信している。

MUD Jeansは環境に配慮したジーンズの流通方法として、オランダや欧州でサブスクリプションサービスを展開している。利用者は月額の使用料を支払うと好きなジーンズがレンタルでき、1年後に商品を買い取って所有するか、別のジーンズに交換するか、あるいは返却するかを選択できる。ディーンさんはオランダでこのサービスが広く受け入れられている背景をこう説明する。

「オランダでは建設現場で建築材を再利用したり、インテリア業界でサブスクリプションサービスが広がっていたりと、様々な業界で責任を持って資源を利用する動きが広がっています。オランダは資源が限られた小さな国であり、環境問題の影響を受けやすいことから、多くの人が環境問題に敏感です。また、サーキュラーエコノミーの実現につながる事業が、しっかりと利益を上げるビジネスになっていることも大きいでしょう」

一方で、日本では地球環境やエシカルを意識した活動がボランティアベースで行われていることが多いと伊井さんは指摘する。

「日本では、社会貢献の活動は無償で行わなければならないという暗黙の了解があるように感じます。もちろん、サステナブルな活動に関心を寄せる人が国内で増えていることは事実ですが、行動を変えるまでには至っていないのではないでしょうか」

ディーンさんはその理由を分析し、MUD Jeansの可能性を語る。

「廃棄された服が砂漠に山積みになっていたり、劣悪な労働環境のもとで服を生産している人がいるという問題が日本で直接的に発生してないため、想像することが難しいのだと思います。また、日本は島国であることから、こうした情報にアクセスしにくいというのもあるでしょう。だからこそ私たちは、MUD Jeansというブランドを通じて、ファッション業界のサステナビリティに関する情報を日本でも積極的に発信し、消費者の皆さんにサーキュラーエコノミーの輪の一部になることの楽しさや面白さを実感していただきたいと思っています。そのために今後は日本でもジーンズのサブスクリプションサービスを導入し、成功させていきたいです」

お気に入りのジーンズを長く履き続けながら、別の新しい商品も試せる機会を提供しているMUD Jeansは、ファッションを楽しむことと地球環境を守ることが両立できると教えてくれる。そして、ファションという多くの人にとって身近なテーマからサーキュラーエコノミーの輪に参加することができれば、その輪を広げていくために行動を変える人は自然と増えていくはずだ。

元記事はこちら

from VOICE(フロムボイス)

三菱電機イベントスクエア METoA Ginza
「from VOICE」

「ワクワクするサステナブルを、ここから。」を掲げ、三菱電機社員が社会の皆さまと共に学び、共に考えながら、その先にある"ワクワクする"社会を創るべく活動しています。日常にある身近な疑問"VOICE"から次なる時代のチャンスを探すメディア「from VOICE」を企画・運営しています。最新情報はインスタグラムで配信中です。皆さまのVOICEも、こちらにお寄せください。

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