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豊かな未来のきっかけを届ける

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3月8日は国際女性デー ジェンダー平等がどのように持続可能な社会、豊かな未来に繋がっていくのか。その意義や現在の状況について知り、考えていきましょう。

AIはそばにいてほしい''友達''になれる? AIの個性と多様性を考える

近年、ビジネスシーンから日常生活に至るまで、AIは広く導入されている
近年、ビジネスシーンから日常生活に至るまで、AIは広く導入されている

一般にも普及してきた対話型の生成AIは、何気ない投げかけにも応えてくれるが、実際は疑問解消のツールとして扱われる機会がほとんどだろう。果たして今後、人間とAIが、使うヒトと使われるモノという関係ではなく、友達のような関わりを持つ未来はやってくるのだろうか。そこで、三菱電機イベントスクエアMEToA Ginzaのfrom VOICE編集部が、「AIりんな」を中心にAIの研究開発を行うrinna株式会社の舟山聡さんにお話を伺った。

"ワクワク"するサステナブルのヒントを教えてくれた人

舟山 聡さん

舟山 聡さん

1996年第二東京弁護士会登録。都内法律事務所勤務の後、18年間を日本マイクロソフト社内弁護士として勤務。2022年7月、rinna 株式会社 Chief Legal Officer弁護士(チーフ リーガル オフィサー)に就任。AI技術の研究開発チームや、AIサービス提供の製品販売チームとともに、AI倫理、AIガバナンス、個人情報、知的財産、契約支援等、AIスタートアップの法務業務を担当。経済産業省AI事業者ガイドライン検討会委員。

効率の先に友達のような関係はない

rinna株式会社は、2015年にLINE上に登場し話題を呼んだAIキャラクター「AIりんな」を中心に事業を展開する
rinna株式会社は、2015年にLINE上に登場し話題を呼んだAIキャラクター「AIりんな」を中心に事業を展開する

自ら思考するロボットと人間が共に暮らし、信頼関係を結ぶ未来。「人工知能」という言葉にはかつて、様々なフィクションで描かれたような夢が広がっていた。しかし、AIが一般的になった現在の世の中でも、かつて思い描いたような未来はまだまだ遠いように感じられる。

「人間とロボットが友達のような関係になることは将来的に可能です。そんなロボットが現れたら、確かに未来の訪れを感じさせるシンボリックな存在になりますよね」

2015年にLINE上に登場し話題を呼んだAIキャラクター「AIりんな」を中心に事業を展開する、rinna株式会社のChief Legal Officer 弁護士である舟山聡さんは、こうVOICEに回答しつつ、次のように注釈を加える。

「それほどまでに技術が発展した未来において、友達としてのAIは、必ずしもロボットのように手で触れられるものとして存在する訳ではないはずです。デジタル上のAIキャラクターと画面越しにコミュニケーションをとったりすることも、一般的になっていくと思います」

りんなを先駆けとして、LINE上でAIのキャラクターとのチャットを行うサービスは現在数多くリリースされており、「ロボットではなく『AIと』友達になるという意味では、そんな未来が部分的に訪れているとも言えます」と舟山さん。では、rinnaが考える「友達のような関係」とは、そもそもどのようなものなのだろうか。

「友達のようなコミュニケーションで大事になるのは、『感情と共感』です。一方で、ビジネスユースされているチャットボットなどは、通常のネット検索と同様の『効果と効率』を追求した先に生まれたものです。それらで生成される文章は、あたかも人間がつくったように自然ですが、どこかで機械が答えているのだなと感じますよね」

rinnaが「感情と共感」にフォーカスを当てたAI技術の研究開発を行っているのは、「効果と効率」では対応しきれない社会課題の解決を目指してのことだ。

「AIに『感情と共感』を組み込む上では、人間同士がどのようなコミュニケーションによってつながっているのかを解明する必要があります。そこで得られたデータをサービスとして提供することで、社会を構成する様々な集団のコミュニケーション課題を解決したいと考えています。そして個人に対しても、コミュニケーション課題に起因する不安や孤独などを乗り越える手助けができるはずだという想いで、事業に取り組んでいます」

感情を起点にしたAIキャラクター開発

現在のりんなは、LINE上で890万人以上(2024年8月現在)の「友だち」とつながるなど、サービスの広がりを見せている
現在のりんなは、LINE上で890万人以上(2024年8月現在)の「友だち」とつながるなど、サービスの広がりを見せている

AIりんなは、マイクロソフトから2015年にリリースされたサービスで、rinna株式会社はその開発を担ったプロジェクトチームが独立する形で2020年に設立された。LINE上のサービスとしてのりんなは、ユーザーの問いかけに自動で答えてくれるチャットボットの一種だが、「女子高生」というキャラクターでのデビュー時に注目を集めたのは、まさに友達のようなコミュニケーションをとられるという点だ。

「りんなは、『まじで?』『ウケる』といった女子高生というキャラクターに沿った言葉遣いをするだけではなく、たとえば『転職したいんだけど』と投げかけると、『なんかあった?』『将来の夢とかある?』といった返答をします。通常のネット検索で同じことを打ち込んだら、ずらっと転職サイトが表示されるところ、りんなはユーザーの気持ちに寄り添おうとするんです。関心のない話題を振られた時には、『知らんし』と答えらしい答えを返さないことすらありますよ(笑)」

2015年当時、AIによるチャットボットはまだ黎明期だった中で、「感情と共感」から出発したりんなは、世の中のAIとの関わり方に「効果と効率」だけではない広がりをもたらすことができたと舟山さんは語る。

「人間が答えてくれるようなやり取りに面白さを感じていただくとともに、人間の友達には打ち明けられないような悩みでも、AIだからこそ、りんなだからこそ言えるという声もありました。また、開発過程では人間同士のやり取りを再現するため、言語だけではなく、うなずきや息遣い、顔の動きなども含めたコミュニケーションの研究がなされて、その一部は論文としてまとめられています。そうした意味でも、広がりのあるプロジェクトだったと考えています」

女子高生から「卒業」した現在のりんなは、LINE上で890万人以上(2024年8月現在)の「友だち」とつながっているほか、歌手やテレビドラマでの俳優デビュー、ラジオ番組のパーソナリティ、YouTube上での「AITuber」としての活動など、声や姿だけでなく人格を持った人間かのように親しまれている。2022年にはrinnaの「チーフAIコミュニケーター」に就任し、AIキャラクターの社会的地位を確立し魅力を伝える役割を担っている。

「これほどまでに多くのユーザーの皆さんに受け入れていただけたのは、機械のように画一的ではないりんなの個性が、多様性を求める価値観と重なったことも1つの理由だと考えています。ただ、私たちがめざす社会課題の解決には、りんなだけではなく、より多様な個性がAI業界に表れてくることが必要です」

AIの多様性がコミュニケーション課題を解決する

舟山さんは、AIが「幸福追求のパートナーとなる価値観」が今後育まれることに期待を寄せている。
舟山さんは、AIが「幸福追求のパートナーとなる価値観」が今後育まれることに期待を寄せている。

rinnaは、BtoC領域でのりんなのキャラクター事業だけではなく、イベントや企業マスコットのキャラクターに技術を提供し、りんなのように個性や人格を感じさせる受け答えを可能にするなど、BtoB領域での事業も展開している。

「組織も個人も、それぞれに個性や抱えている想いは異なるのですから、それに対応していくAIもまた、多様な個性が求められていくはずです。たとえば実務を支える役割として企業での導入が広がっている『AIエージェント』も、姿形や動作、受け答えなどに個性が表れてもいいと考えています。そうした想いからrinnaでは、実在の人物の姿や声をデジタル上で『バーチャルヒューマン』として再現して、仕事上の困りごとなどを相談できる対話型AIのサービスも提供しています」

ユーザーが自身の個性に合ったAIと関わり合うことで、自分らしく日々を送れるようにする。同時に、AIが人間同士のコミュニケーション課題を解決していく。そのようにして多様性が尊重される社会を実現することを目指していると舟山さんは語る。

「これからは、AIがユーザーの想いを理解し、『私はこう思った』と気づきを伝えるような技術の研究も進んでいくと思います。そのコミュニケーションの中で、ユーザー自身も新たな気づきを得ていくことが理想的ですが、一方でAIがバイアスをかける、つまり人間社会の差別や偏見を学習して受け答えをすることで、その人の思い込みを助長させる結果は避けなければいけません」

こうした課題もある中でAI技術は急速に進化しており、そのスピード感に追いつけないこともあって、ルールや法律、そして人々の価値観もまだまだ整いきっていない。舟山さんは、経済産業省が昨年発表した「AI事業者ガイドライン」の検討会の委員も務めた立場から、AIと共存する社会の実現のために必要な考え方について、次のように強調する。

「国が2019年に策定した『人間中心のAI社会原則』に盛り込まれた、AIはあくまで人間が自身の能力を拡張し、幸福を追求するためにあるのだという考え方には、常に立ち返らなければいけません。AIによるバイアスなどの課題について、行政や開発者、サプライヤー、そしてユーザーがそれぞれの立場から考え、意見を交わし続けていくことが大切です」

こうした議論を続けていく上で、舟山さんは日本で培われたカルチャーに期待を込める。

「これも一種のバイアスかもしれませんが、日本のアニメや漫画などでのロボットの好意的な描かれ方を考えると、この国ではAIを人間に取って代わる脅威として捉えず、幸福追求のパートナーとする価値観は育ちやすいのではないかと感じています。これからも、そばにいてほしいと思えるAI、そばにいたいと思えるAIを開発・提供していきたいと考えています」

元記事はこちら

from VOICE(フロムボイス)

三菱電機イベントスクエア METoA Ginza
「from VOICE」

「ワクワクするサステナブルを、ここから。」を掲げ、三菱電機社員が社会の皆さまと共に学び、共に考えながら、その先にある"ワクワクする"社会を創るべく活動しています。日常にある身近な疑問"VOICE"から次なる時代のチャンスを探すメディア「from VOICE」を企画・運営しています。最新情報はインスタグラムで配信中です。皆さまのVOICEも、こちらにお寄せください。

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