お米のサステナブルな未来:世界で広がる「おいしい」と「やさしい」の両立

2025年、日本の食卓を支える「米」の価格が大きく上昇しました。天候不順や供給不足、インバウンド需要の増加に加え、農業従事者の高齢化・人手不足といった構造的課題も重なり、多くの家庭が「主食の価格にまで悩む時代」に直面。しかし、そんな今だからこそ注目したいのが、"未来の地球にもやさしい"米の選択肢です。サステナブルな稲作にはどんなものがあるのでしょうか。
「毎日のごはん」が地球に与える影響って?
米づくりは、実は環境負荷の大きい農業の一つ。2023年版Nature Reviewsによると、稲作(水田)は「作物由来の温室効果ガス(GHG)排出の約48%を占める」と分析されています(参照元:Nature Reviews)。水を張った田んぼの土の中では、生育に酸素を必要としない細菌(嫌気性菌)が活動し、メタンを発生させます。生成されたメタンの大部分は、稲の根を通って吸収され、最終的に空気中へと放出されてしまうのです。これが、稲作が温室効果ガスの排出源とされる理由のひとつです(参照元:東京経済オンライン)。
そこで、水を張らずに乾いた田んぼ(土の状態のまま)に直接イネの種をまく「乾田直播」が注目を浴びています。水を張らないことで水田からのメタン排出を大幅に抑制でき、従来の方法と比べて最大87%も削減されるだけでなく、田植えや苗の育成が不要なため作業工程が大幅に減り、省力化によって農業者の負担を軽減。苗の購入費や人件費を抑えることで生産コストの削減にもつながります。以前から存在していた手法ですが、省力化やサステナビリティの観点から再び導入が広がりつつあります。
他にも、「AWD(間断灌漑)」が注目されています。AWDとは、一定期間水を落として土壌を乾燥させた後、再び水を張ることを繰り返す水管理技術です。常時湛水と比べて水の使用量を抑えられるだけでなく、土壌内の嫌気的(酸素を含まない状態)な環境を減少させることで、メタンガスの発生を約3割削減し、温室効果ガスの排出抑制にもつながります。特にASEAN地域では、水資源の保全や気候変動対策の観点から、AWDの導入が有望視されています(参照元:農林水産省)。

"買うだけ"じゃない!今日から始めるサステナブル米アクション
日々ニュースで米の問題を目にするようになった今だからこそ、これをきっかけにエシカルでサステナブルな米の消費について考えてみるのもありかもしれません。
①ラベルで見抜く!「やさしいお米」の証とは?
化学農薬・化学肥料を使用していない有機栽培のお米かどうかを「有機JASマーク」で確認したり、海外の米を買う際は生産者に適正な報酬が支払われ、労働環境にも配慮されているかどうか「フェアトレード認証」で確認することもできます。
②「誰がどう作ったか」を知る。見えるお米で安心と応援を
生産地・生産方法・生産者が明記されているかどうかを確認することも大切です。前述したような乾田直播やAWDのようなメタン排出量を抑える農法や、省農薬や無農薬栽培など、土壌や水資源に優しい農法で育てられた米を積極的に購入するのもサステナブルへの貢献となります。
③お米を無駄にしない、賢い保存とおいしい食べ方
スーパーで米が品切れになっていることも珍しくない今だからこそ、必要な量だけ購入し、無駄にしないことを意識するのが重要ではないでしょうか。少量パックや量り売りの利用、冷蔵・冷凍保存での長持ち対策なども効果的。古米を使ったレシピや炊き込みご飯、米粉にして使うなどの工夫もできます。「食べきること」もサステナブルな選択のひとつです。
④棚田の未来に関わる。"買う"から"一緒に育てる"へ
購入や食べる際に気をつけるだけでなくもう一歩踏み込みたい! そんな方は、都市住民に直接耕作に関わってもらいながら棚田を保全していく方法をとる「棚田オーナー制度」や農家の高齢化や人手不足を解消するため、地域住民などが農作業を手伝う「農家サポーター制度」など、消費者が栽培や保全活動に関わる仕組みも各地にあります。買うだけでなく、「関わる・知る」ことも行動の一つです。
最後に
価格の高騰に直面すると、「少しでも安いものを」と考えがちです。でも、地球環境や生産者に配慮された米を選ぶことで、長期的には「おいしさ」も「持続可能性」も手に入れることができるかもしれません。次にスーパーでお米を手に取るとき、ちょっとだけラベルを見てみませんか?
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