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男もつらいよ|排他的な「男らしさの価値観」に苦しむ男性たち

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先日、職場におけるアンコンシャス・バイアスやDE&Iに関する課題に取り組む団体、「Consciously Unbiased」主催のオンラインセミナー「State of Men 2025」(※1)が開催されました。テーマは、「マスキュリニティ(Masculinity:男らしさ)」とは何か。そして、男性同士の人間関係や、男性社会に根強く残る「パトリアーキー(Patriarchy:男性優位の価値観)」の影響について語られました。パトリアーキーとは、本来「父権制」を意味し、家族において父や最年長の男性が権威を持ち、血統も男性側で受け継がれる仕組みを指します。転じて現代では、社会全体に根付く男性優位の価値観を表す言葉としても使われるようになりました。

このセミナーで特に印象的だったのは、登壇者たちが口々に「男性には他者とのつながりがもっと必要だ」と繰り返し強調していた点です。男性社会では、女性との恋愛や性的関係だけが価値ある人間関係のように強調される(※2)一方で、男性同士の友情(※3)や心を許せる親しい間柄については軽視されがちです。そのため、パートナーに恵まれなかったり、友人関係を長く続けることが苦手な男性は、誰ともつながれずに孤立してしまうのです。

男性像に縛られ孤独に陥る男性たち

パトリアーキーという価値観は、女性に対して抑圧的であるだけでなく、男性自身をも苦しめる一面を持っています。それはパトリアーキーの中に、男性同士の友情をタブー視(※4)し、否定する考え方が存在するためです。こうした背景により、男性は信頼できる仲間を作ったり、感情を素直に表現したりすることがなかなか出来ず、社会的に孤立してしまいます。昔から「男は泣かないもの」「男らしくあるべき」などとよく言われ、強い男性としての理想像が作り上げられてきました。また、自分の気持ちを正直に打ち明けたり弱みを見せたりするのは「ゲイっぽい」男性がすることと揶揄する向きもあります。一般的に、パトリアーキーに根ざした理想的な男らしさには、女性蔑視や人種差別、同性愛への嫌悪、障がい者への差別といった、マイノリティに対する排他的な面(※5)があります。その結果、理想像から外れた男性は、自分の多様な側面を認めてもらえず、不当な扱い(※6)を受けてしまうのです。

このウェビナーでは、職場の「ボーイズクラブ」についても議論が行われました。ボーイズクラブとは、男性が派閥のように結束する社内グループで、一つの組織に複数存在するケースも多々あります。こうしたグループは、価値観や趣味、経歴が似た人同士で固まりやすく、そのグループのリーダーに気に入られない人は次第に疎外されていく傾向があります。しばしば会社の意思決定にも大きな影響(※7)を及ぼし、たとえば昇格候補の選抜では、その人物の能力や適性に関わらず、ボーイズクラブのメンバーが優先されることもあります。このような理不尽な状況が繰り返されるうち、組織の中で置き去りとなった社員たちは疎外感を覚え、不満を募らせる事態となります。

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「パトリアーキー文化」がジェンダー格差に影響を与えるサイクル
Giovanna Galizzi, Karen McBride, Benedetta Siboni, CC BY 4.0, via Science Direct

職場での人とのつながりが人と組織の成長を育む

男性社会におけるこのような閉鎖的な文化を変える有効な手段のひとつに「スポンサーシップ」があります。メンターシップがメンティーとなる対象社員の成長そのものに焦点を当てるのに対し、スポンサーシップ(※8)はスポンサーが自らの地位や影響力を活かして、支援する社員のキャリアを後押しするものです。通常、役員層や上級管理職が若手社員のスポンサーとなり、会社のミッションに沿って若手のキャリア形成を支援します。これが効果的に機能すると(※9)、自分を過小評価してしまうインポスター症候群を克服する手助けにもなります。この制度はスポンサー側にも支援される側にもメリットがあり、有能な人材が育つことで、組織全体の発展にも貢献します。

男性が多い組織や業界において、異なる背景を持つ人と長期的にスポンサーシップの関係を築くことには大きな意義があります。個々人のキャリア形成だけにとどまらず、不平等な評価が蔓延り、優秀な人材が逃げ、組織のイノベーションが起こりづらい排他的な価値観を打ち破ることにもつながります。インクルーシブな人間関係の構築は、まずは男性たちが、これまでの古い価値観や慣習を捨てることから始まります。

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大企業における社員の昇進スピード満足度
Data via Center for Talent Innovation

心を許すつながりの重要性

パトリアーキーは、特定の人々だけが得をし、その他の人々を排除することで成り立つ価値観です。しかし、他者とのつながりを不要と考える男性は、実は自分自身の成長や可能性に制限をかけてしまっているのです。男性たちの状況を本当に改善しようとするならば、まずはこの考え方を手放し、人とのつながりの重要性を改めて見直すことが必要なのです。

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  • 執筆 M. Chaza   翻訳・編集 K. Tanabe

元記事はこちら
オリジナル英語版はこちら

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