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「防災疲れ」しない災害対策。日常時と非常時をつなぐフェーズフリーな防災

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みなさんは災害に備えて、どのような対策をされていますか?
いつ発生するか予測できない巨大地震に加えて、近年では気候変動による洪水や干ばつ、森林火災といった災害の増加も、私たちの生活を脅かしています。世界的に見ても、2000年以降に記録された洪水に関連する災害の件数は、それ以前の20年間と比較して134%増加しています。(参照元:UNDRR

しかし、「備えなければ」と日々意識し続けることは精神的な負担となり、「防災疲れ」を生むこともあります。そこで注目されているのが、日常の暮らしに自然に防災の要素を組み込む「フェーズフリー」という考え方です。

本記事では、フェーズフリーの考え方や実践方法を紹介したうえで、災害に強いまちづくりに向けた取り組みにも触れていきます。

フェーズフリーとは?

フェーズフリーとは、「日常時」と「非常時」の区切りをなくし、日常的に使うものを非常時にも活かすという防災の考え方です。フェーズフリーな防災は日常生活で使い慣れているものを活用するため、混乱する災害時の不安を軽減してくれます。

フェーズフリーには指針となる以下の5原則があります。

1. 常活性:どのような状況においても利用できること
2. 日常性:日常から使えること、日常の感性に合っていること
3. 直感性:使い方、使用限界、利用限界がわかりやすいこと
4. 触発性:気付き、意識、災害に対するイメージを生むこと
5. 普及性:誰でも気軽に利用、参加できること

防災というと、「普段の生活とは切り離して、特別な準備をしなければならない」と考える方も多いのではないでしょうか。しかし、非常時専用の備えは、備蓄品の点検を怠ると、いざというときに非常食の消費期限が切れているといった事態を招く恐れがあります。

また、特に子育て世代や高齢者世代にとって、使い慣れていない防災用品を非常時に使用することは、身体的・精神的に大きな負担となりかねません。そうした課題を解決するうえで、フェーズフリーの考え方はとても有効です。

フェーズフリーな防災の実践方法とポイント

以下に、具体的なフェーズフリーな防災の方法を紹介します。

  • 災害時に役立つグッズを普段から使用する
  • モバイル充電器や撥水性のあるトートバッグ、風呂敷などは、日常的に便利に使える一方で、停電や避難時にもそのまま活躍します。普段から使い慣れておけば、非常時にも迷わず使える安心感につながります。

  • ローリングストック
  • ローリングストックとは、普段よく使う食料や日用品を少し多めに買っておき、使った分を補充していくことで常に一定量を備蓄できる方法です。缶詰やレトルト食品を日常の食事に取り入れながら補充すれば、自然と防災につながります。

  • アウトドア用品を活用する
  • モバイルバッテリー付きLEDランタンやカセットコンロ、寝袋など、普段はアウトドアや旅行に使えるものが災害時にも役立ちます。一つのアイテムで多用途に使えるものも多く、省スペースで効率的に備えられるのが魅力です。

  • 地域とのつながりを育む
  • 日頃から地域の人と挨拶や会話を交わしたり、地域行事に参加したりすることも、防災において大切な行動です。普段の関係づくりが災害時の「共助」につながります。
ローリングストックや多用途グッズを日常に取り入れることで、消費期限切れによる食品の廃棄を減らし、用途ごとに新しいモノを買い揃える必要も少なくなります。結果として資源のロスを防げるため、こうした工夫は個人の防災力を強化するだけでなく、暮らしそのものをよりサステナブルな方向へと導いてくれます。


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まちのレジリエンスを高める取り組み

ここまで個人で実践可能な防災の1つとして、フェーズフリーを取り上げてきましたが、都市においてもこの考え方は応用できます。人々がこの先も安心・安全に暮らすために、災害から回復する力(レジリエンス)を高める動きが世界各地で進んでいます。

国連防災機関(UNDRR)では、世界の都市が「災害に強いまちづくり」を進めるための国際的なパートナーシップである「Making Cities Resilient 2030(MCR2030)」を推進しています。この枠組みでは、防災や気候変動対策において優れた取り組みを実践している世界各地の自治体を「レジリエンス・ハブ」として選定しています。

「レジリエンス・ハブ」に選定された都市は、災害に強いというだけでなく、その経験や知見を他の都市と共有し、支援する役割を担うことも重視されています。具体的には、地域の災害対策に関する現地視察の受け入れをしたり、他の都市のレジリエンス戦略の策定をサポートしたりすることで、都市間の連携と相互支援を強化しています。

日本からは、2024年に宮城県仙台市が国内唯一の「レジリエンス・ハブ」に選定されています。同市は、「仙台防災枠組」が採択された第3回国連防災世界会議の開催地としての信頼に加え、震災復興を踏まえた「防災環境都市づくり」の実績と発信力が評価されています。

また、国際的なネットワークや政策のほかにも、都市空間のデザインに工夫を凝らすことでレジリエンスを高める事例もあります。その一例として、オランダ・ロッテルダムにある世界初の水の広場「Benthemplein」が挙げられます。

世界初の水の広場

「Benthemplein」の特徴は、公共空間と雨水貯留施設を兼ねているということです。普段は多目的オープンスペースとして、市民がバスケットボールやスケートボードを楽しめる場となっています。しかし、豪雨の際には貯水池に転換する設計がされており、一時的に雨水を貯めて市街地の浸水を防ぎます。

この広場は、貯水施設の機能を目に見えるかたちで、かつ楽しめるように活用するため、広場周辺の関係者との協議を重ねて設計されました。その結果、広場は日常と非常時の機能を見事に両立しています。このような広場の仕組みは、フェーズフリーの考え方をより大きなスケールで実現した事例といえます。

最後に

日常と非常時の境界をなくし、暮らしから防災を考えるフェーズフリーな心構えは、私たち個人のレジリエンスを高めるうえで非常に重要です。

この心構えを持つことで、私たちは日々の生活や自然との関わり方を見つめ直すことができ、自然災害に対してもより冷静に対処できるようになるでしょう、また、そうした実践を通じて得た学びや体験を周囲と共有することで、あなたの大切な人や地域全体のレジリエンスを高めることにも貢献できます。まずはできることからフェーズフリーな防災習慣を取り入れてみてはいかがでしょうか。

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