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1年で5億個の荷物が再配達。日本の宅配システムを維持し続けるには

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今年も残すところわずかとなり、街はクリスマスや年末セールの活気に包まれています。この時期、パーティーや大掃除、贈り物の準備などで、ギフトや食品、日用品といった品々をオンラインで注文する人も多いでしょう。

コロナ禍を機にECが急激に拡大し、「欲しいものがすぐに届く世界」は、もはや私たちの日常となりました。しかし、この利便性の裏側で、宅配業界が抱える環境負荷は深刻さを増しています。直近のデータによると、日本のCO2排出量のうち、運輸部門は19.2%を占めています。さらに運輸部門の約4割、国全体の7.4%ものCO2を排出しているのが、私たちの物流を支える貨物自動車です(参照:国土交通省)。

これは業界だけの問題ではなく、消費者の意識や行動が密接に関係しています。本記事では、宅配業界が直面する課題を掘り下げます。また、効率性と持続可能性の両立を目指し、世界の企業で進む革新的な取り組みをご紹介します。そして、私たち一人ひとりがすぐに実践できる具体的な行動のヒントを提案し、これからの宅配のあり方を考えます。

拡大する利用者のニーズと現場の課題

EC市場が成長するなかで、日本国内の宅配便取扱個数は、2024年度には50億3147万個に達し、10年連続で過去最多を更新しています(参照:国土交通省)。さらに、消費者や企業の需要に伴い、多頻度・小ロットでの配達が増加しています。

さらに、2024年度からの時間外労働の上限規制でドライバーの働きやすさは改善されましたが、働ける総労働時間が減ったことに加え、高齢化も重なり、人手不足の深刻さが増しています。特に、人口の少ない地方部の物流ネットワーク維持が危ぶまれています。

物流ネットワーク維持

拡大する配達ニーズに加え、現場の労働環境・生産性の課題に直面する宅配業界は、環境負荷をなかなか抑えられていないのが現状です。その原因として、EV車の導入がスムーズに進んでいないということが挙げられます。EV車は一般的な車両と比較してCO2の排出を抑えることができますが、高額な車両価格や、充電インフラの整備といったコスト面の問題から、普及が遅れています。

そして、私たちの行動が直結する原因に、再配達率の高さがあります。日本の再配達率は10%前後となっており、これは国際的に見て高い数字です。再配達のために走行する車両から排出されるCO2は年間約25.4万トンにのぼります(参照:国土交通省)。さまざまな事情で荷物を受け取れないことはあっても、その結果生じる再配達は、環境に代償を強いているのは無視できない問題です。

加えて、宅配の増加によって、大量の梱包資材が消費されています。宅配の荷物が届いたときに、過剰な包装に驚いたことがある人も多いのではないでしょうか。リサイクルが困難なプラスチック素材のものも多く、それらは「ごみ」として廃棄され、環境負荷の一因となっています。

国内外の先進的な取り組み

ラストワンマイルでのゼロエミッション配達の実施

ラストワンマイルとは、「最終拠点から顧客にモノ・サービスが到達するまでの最後の区間」を指します。この区間は、顧客と配達業者の唯一の接点であるため、顧客の利便性のニーズが高まり、結果として環境負荷が最も集中する区間となっています。ラストワンマイルでの排気ガスを削減すべく、配達手段を転換する動きが活発に進んでいます。

DHLの電動自転車

ドイツに本社を置く国際物流サービス企業DHLでは、集配に使用されている車両の37.6%がEV車であり、2030年までにこの割合を60%に引き上げることを目指しています。EV車のほかにも、同社は大型で積載量が大きい「Cubicycle」や、小型で狭い都市中心部に適した「Parcycle」といった電動自転車を活用しています。

さらに、電動バイクの導入も世界各地で進められています。日本においても、すでに東京と大阪の拠点で合計10台が運用中です。電動自転車やバイクは、その小型性を活かし、これまで車では難しかった細い路地や駐車困難な地区でのスムーズな配達を実現できます。地域の特性に合わせた配達手段を用いることで、環境負荷を削減しながら、ラストワンマイルでの配達効率を大幅に向上させています。

IKEAのEV車

スウェーデン発祥のホームファニッシングカンパニーIKEAでは、2028年までに世界中の配達の90%以上にEV車を使用することを掲げています。同社ではこの目標に向けて、現在までに世界20都市で完全なゼロエミッション配達を達成し、合計2500台以上のEV車が稼働しています。2022年には、オランダのデルフトにある店舗で太陽光発電式カーゴバイクを用いた商品配達の実証実験が行われました。このプロジェクトの成功を収めたことで、同社は電動カーゴバイクの導入拡大にも強い意欲を示しています。

サステナブルな容器包装の導入

EC市場の拡大と同様に、フードデリバリー市場も成長傾向にあり、大量の使い捨てプラスチック容器が消費されています。このような状況下で、環境負荷を低減するサステナブルな容器包装への転換に取り組む企業が現れています。

Uber Eats Japanは2024年、環境保全団体のWWF(世界自然保護基金)ジャパンの監修のもと、国内初となる加盟店に向けた「持続可能性に配慮した容器包装等基準」ガイドラインを発表しました。リユース容器や再生プラスチックなどの推奨素材や、容器として使用を禁止する素材を明示し、加盟店は公式ポータルサイトで基準に準拠した容器包装を調達することができます。2030年までに世界中のUber Eatsで行われるすべての注文において、使い捨てプラスチック容器を持続可能な素材へ転換する目標の基盤となる取り組みです。

私たちが実践できる工夫

以下に、私たちがEC利用時に実践できる、環境に配慮する工夫をご紹介します。

  • 「その場で受け取れない」をなくす工夫で再配達を減らす

最も手軽な工夫としては、荷物を玄関先や指定場所に置いてもらう「置き配」の活用が挙げられます。長野県諏訪市での実験では、置き配バッグの活用によるCO2削減効果が実証されています(参照:諏訪市)。また、スマートロッカーやコンビニ受け取りを利用したり、確実に在宅している時間を設定して日時指定を活用したりすることも、再配達の必要を減らせます。

  • 商品の購入の仕方を見直す

少量の注文を複数回に分けるのではなく、必要なものの「まとめ買い」を意識することで、配達回数を削減できます。また、自宅からの買い物圏内で手に入るものは、実店舗で購入する選択を増やすことも大切です。

  • 梱包に対する環境アクション

梱包に再生素材を使用するショップを選んでみるなど、環境を意識したブランド選びをすることで、企業のポジティブな取り組みを後押しする力になります。また、届いた段ボールを丁寧に処理して資源回収に出したり、緩衝材を再利用したりすることも意識してみてはいかがでしょうか。

最後に

クリスマスや年末年始を控え、ショッピングの機会が増えるこの時期だからこそ、宅配の利用方法について、消費者が考え直してみることが重要です。もちろん、配達業者や企業によるシステムや技術のアップデート、行政のインフラの整備も重要ですが、それらを有効活用するためには消費者の協力が不可欠です。本記事でご紹介したような工夫を一人ひとりが取り入れることで、宅配業界を取り巻く課題は少しずつ改善していくでしょう。

便利さだけを追求するのではなく、サステナブルな物流を支える一員としての意識を持ってみませんか?

元記事はこちら

ニューロマジック

ニューロマジック(Neuromagic)SusSolグループ

ニューロマジックのSusSol(サステナビリティソリューションズグループ)は、デジタルデザイン、戦略、サステナビリティの豊富な経験を活かし、企業のサステナビリティ戦略統合を支援します。コンサルティング、リサーチ、ワークショップを通して、マテリアリティ評価、KPI設定、ブランド強化、情報開示をサポート。さらに、Neuromagic TokyoとAmsterdamが主導するCSRDコンサルティングを通じて、EUにおける日本企業の子会社が規制遵守と適合を果たせるようサポートします。

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