「任せる」と決めたのについ口出し......。空回り上司を卒業する、部下の"見極め"とマネジメントの極意【ライムスター宇多丸のお悩み相談室】
「日本を代表するヒップホップグループ「RHYMESTER(ライムスター)」のラッパーである宇多丸さんが、日常的なお悩みから社会問題まで回答してくれます。(聞き手・F30プロジェクト代表 小林奈巳)。」
✳️今週のお悩み✳️
私はWeb制作会社で管理職をしています。部下にどんどん仕事を振っていき、部下の成長のためにも、自分の成長や責任のためにも、制作仕事は「任せる」と決めたのに、つい口出しをしてしまう自分がいます。やり方や対応の早さについてです。どこまで口出ししていいのか、どこから「任せる」べきなのか? 私自身が空回りしている気がしてなりません。任せる勇気を持つにはどうしたらいいでしょうか。
(うちかわ・43歳・会社員・東京都)
宇多丸
こばなみ自身は上司として、つい口出ししちゃうほうか、ちゃんと任せられるほうか?
こばなみ
任せられるようにはだんだんなってきたとは思います。
うちかわさんも書いていますけども、30代のときは「自分の成長のために」という思いがけっこうありました。今までできたこととは違うことをやりたかったから、ある程度は後輩に任せて、というのをやらないと進めなかったといいますか。
そう思いながら、後輩に仕事を振り分けていたと思います。それで任せて失敗したら、サポートしたりとか謝りに行けばいいと思ってやっていました。
だけど、そうやってみては!と同僚に伝えても「とはいっても任せられない......!」と、あまりこのやり方は支持されてなかったかもしれないです。
宇多丸
いやいや、そんなことないからこそ出世したんだろうし!
こばなみは間違いなく上手くできてるほうの上司なんだと思いますよ。
まぁでも世の中には確実に、他人に仕事を振ったりするのが、あまり得意じゃない人もいるでしょうからね。
こばなみ
仕事の全体像を見ながら分解していく、のような感じでしょうか。たしかにそれが向いてない人もいて、そういう人は管理職ではなく、ひとりのプレイヤーのほうが活躍するので、そういう配置にしたり、ですかね。
宇多丸
でもさ、会社って、大きいところほどそうかもしれないけど、そこまで細やかに適材適所の配置、してくれなかったりするじゃない?
例えば今言ってたような完全プレイヤータイプの人も、単に長く働いているし順番だからって感じで、半自動的に管理職に回されちゃって、結果あんまり誰の得にもなってないとかいうパターン、よく聞くんだけども。
こばなみ
そうですね。
宇多丸
あと、うちかわさんからしたら、振った先の部下が、やっぱり見るからにできてねぇ!みたいのはあるんだと思うんですよ。
当然できるべきレベルのことができてない、要は任せるに足る存在になってない、みたいな現実もあるんじゃないですかね。
こばなみ
ありそうですね。うちかわさんのまたさらに上司に共有したいところですが。
宇多丸
失敗から学ばせるべき的な原則も、もちろんうちかわさんだってわかってはいるんだろうけど、ひょっとしたらそういうレベルですらないというか、現実問題このまま放っておくわけにもいかない、みたいな局面があったりもするんじゃないかしら、と......。
こばなみ
そうですよね。
部下がそんなに超できてなかったらもうダメだと思いますけど、そこまでてんでダメ!という人はさすがに私のまわりにはいなかったので......。
もちろん最初はひととおり一緒にやって、そのあとは仕事を区切りながら「ここまでやってみて」とか言いながら進めて行ったり。
私はけっこう性善説というか、わりと「できるよ!」と信じちゃうほうだから、そうしちゃってました。
制作していた時代、つまり中間管理職時代は、例えば部下ができない場合は、自分がなんとかカバーしてやったりというのもあるけど、もうそれは仕方がないなみたいな感じで覚悟してたというか。
自分も若い頃は先輩にカバーしてもらったことも多々あったので。
最近は制作の仕事だけでなくなったので、その場合はまたちょっと違って、けっこうチェックすることを重視しています。できてるのか?できてないのか?やってないのか?なぜやらないのか?わからないのか?とかそういうチェック魔です。
宇多丸
性善説は絶対にそれがいいだろうと僕も思うし、対処の仕方も参考になりそうですね。
ただ、そこまで引いたスタンスでいられる余裕がないような状況も、ときにはきっとあり得るんじゃないかなと......教わるべきことを教わらないままここに来ちゃってるな、このままだと確実にやらかすぞ、って感じの部下なり後輩なりを目の前にしたとき、じゃあ今ここで誰が教えるの? 私でしょ!ってことに、やっぱなるしかないんじゃないかとも思うんですよね。
こばなみ
教えるにしても、「これやって」「あれやって」というのでなく、まずは「目的はこれだから、第一段階でここまでやるにはどうしたらいいか自分で考えてみて?」みたいに、細切れにやりながら寄り添っていくとか?
宇多丸
自分のやり方の押し付けではなく、自発性を生かしながら、って感じですかね。
こばなみ
そうです。
宇多丸
つまりそれって、研修期間的なことじゃないですか。
まずはやってみ?で、適宜指導が入る、みたいな。
だから、完全に任すとかの前に、本来はそういう中間的な段階が絶対に要る、ってことだと思うんですよ。
でも、実際の職場にはわりとよくあることだろうと思うけど、そういうの抜きでいきなり押し付けられるように人材が回ってきちゃったときに、そこまですべてを急に任せられるかっつったら......そりゃあどうしたって「口出し」したくもなるようなこと、山ほど起きるだろ!って気もするんですよね。
例えばですけど、クライアント宛メールの文面が、ちょっとお前これこのまま送る気か?みたいなのだったら、どうするか。
こばなみ
ああ、なるほど。
宇多丸
そんなふうに直接的な関与もせざるを得ないような切迫した状況が、ときにはやっぱり、どうしても出てきちゃうと思うんですよ。
僕だったら、例えばラジオ生放送のパーソナリティとして、企画や台本など、基本的なことはもちろんスタッフに任せている部分が大きいんだけども、同時に、最終的なアウトプットには結局一番責任を持たなきゃいけない立場でもあるわけで......上司であり下請け、みたいな(笑)。
そうすると、たま~にやっぱり、いやこれ日本語としておかしいしこのままじゃ出せないよ、とか、この表現はちょっと失礼だと思うよ、みたいな事態が、ギリになって判明したりもするわけよ。
そしたらもう、とりあえずここは僕がなんとかしときますから!みたいに、ならざるを得ないじゃない?
で、同じようなことがあまりに何度も続くと、もうちょっと前の段階で誰かもっとちゃんと指導するなりコントロールするなりしといてくんないかな?とか愚痴りたくも、ついついなってきちゃう。
もちろんあんまり感じ悪くならないよう、重々気をつけてはいますけどもね......。
だから僕は、うちかわさんの気持ちが、ある意味すごくよくわかるんですよ。
こっちとしたって、そりゃあもちろんホントなら自主性に任せたいけど、今この瞬間はそうも言ってらんないじゃん、このままこれを出すわけにいかないじゃん、みたいなことは、現実にあると思う。
こばなみ
ありがとうございます。具体的でよくわかりました。管理職、改めて大変ですね。
宇多丸
だからこそ皆さん、管理職になるとだいたい、めちゃくちゃ悩んでるよね。
ただまぁ、とは言えいち会社員ならば、言われたとおりやるだけやって、あとは知ったことか!で、ぜんぜんいいんじゃないの?って気も、ちょっとしますけど。
口出して怒られるなら、じゃあ出さねぇよ勝手にしろ!っていう(笑)。
こばなみ
ただ、例えば商品やサービスを作っているとしたら、そのクオリティには支障をきたしかねない、ですよね。
結局そのあとのフォローはめちゃ大変、それを見て成長してくれればいいけど、ごくたま~に聞く話だと「やってくれてラッキー!」という人もいるそうです(苦笑)。うーん......。
宇多丸
まぁね、そっちの気分も、わからないじゃないけど(笑)。
僕が特に大変だなぁと思うのは、仕事って結局なんでも「文章」じゃん?
だから、そこの基礎力がまったくない感じの人とか、ぶっちゃけそれって付け焼き刃の指導ぐらいじゃどうにもなんないことだし、今さら本読めっつったってしょうがないし(笑)、どうしたもんかなと思いますよ、ホントに。
なんでこんなん採用したんだよ!みたいなの、どこでもよく聞くよね。
なんで現場の人に直接選ばせないんだろう、とは素朴に思いますけど。
こばなみ
この前、採用支援会社の人が言ってましたよ。現場と人事の乖離(かいり)がひどいって。
宇多丸
やっぱそこ、プロにも問題視されてんだ!
いやホント、人事部から降りてくるものが各部署の実態とまったく噛み合ってないとか、めちゃくちゃよく聞く話だもんね。
大企業は特にそうだな。
そんなふうに人事の裁量も何もないなか、ただ決まった人にあとは任せなさいとかって言われても、そりゃそうも行かなくて当たり前だろ、って気もする。
こばなみの会社は適度に小さいから、なんとかなるんだろうと思うんだけども。
こばなみ
小さいし、採用は私がやってますから。
宇多丸
それはつまり、根本のところではやっぱりしっかりコントロールしてる、ってことだよね。
まぁだから、「口出し」全般がダメってよりは、部下たちの資質をそれぞれ見極めて、この人はこれが苦手、これは得意というのを踏まえてそれぞれ仕事を振って、ときに必要な指導や示唆はしっかり与えつつ、経験を積ませてゆく......ま、普通にそれが管理職だろ!ってことかもしれないけど(笑)。
要は、直接的に自ら干渉しなきゃなんないところまで行っちゃう前に、誰にどんな仕事を振るか、っていう采配の段階から、可能な限りの適材適所を心がけることで、全体の質をなんとか担保する、っていうことはできるんじゃないかと。
例えば、さっき言ったような文章が苦手な人には、また違った活躍の場を用意するとか......なんなら人事部とも改めて話し合ってさ。
こばなみ
おまとめ、ありがとうございます!
宇多丸
やっぱね、いろんな人がいるのが会社だし。
こばなみ
みんな自分とも違いますからね。
宇多丸
でも、それを見極めるのも、一番近くで見てる中間管理職の仕事なんだろうしね。
こばなみ
「見極める」、これができてればけっこう何でもできそうな気がする。
宇多丸
例えば将棋だってさ、どの駒がどう動くのか把握していないと、そもそも勝負しようもないじゃん?
斜めに行けっつったって、行けない駒もあんのよ!(笑)
上司って、そういう意味では将棋指しのごとく、全体を俯瞰して、チームメンバーをより効果的に動かすことを考えるべき立場、と言えますよね。
だから、口を出そうが出すまいが、コントロールは結局してるし、しなきゃいけないんですよ、やっぱり。
そして、ときにはやっぱり、どうしても直接介入せざるを得ないこともあるかもしれない......将棋例えを続けるなら、歩の駒が一個足りません!ってことに急遽なっちゃって、じゃあしょうがない、今日だけ自分、盤面に立ちつつ指示出します!みたいな(笑)。
そしたらひょっとして、現場に立ったら立ったで、やっぱすごいですね、さすがです!的に、むしろ現場の現役世代からの株が上がってくれちゃったりして......ほとんど『トップガン マーヴェリック』級に都合よすぎな話ですけど(笑)。
こばなみ
いいですね! ただ、何回もやっちゃって盤面(現場)から戻れなくなるのには気をつけたいですね。
俯瞰で見る人がいなくなって、盤面全体が崩れて、そもそも将棋ができなくなってしまうのは避けたい......!
いかがでしたでしょうか。
いろいろ話していきましたが、うまいことうちかわさん流のマネジメント方法が見つかることを心より祈っております! がんばってください~!!
元記事はこちら
ライムスター・宇多丸
日本を代表するヒップホップグループ「RHYMESTER(ライムスター) 」のラッパー。TBSラジオ「アフター6ジャンクション2」(毎週月曜日から木曜日20:00-22:00の生放送)をはじめ、さまざまなメディアで切れたトークとマルチな知識で活躍中。
こばなみ
2010年、iPhoneの使い方がわからなかった自身と世の中の女子に向けた簡単解説本「はじめまして。iPhone」を発行し、「iPhone女子部」を結成。2015年からは「女子部JAPAN」として、Webでのコンテンツ発信とイベントを企画・実施。2022年からは「F30プロジェクト 」と題して、リーダーとして働く女性の生声を取材し、noteで発信。女性活躍推進など、"女性"という枕詞がなくなる世の中を目指している。
「2030年、もう"女性活躍"とは言わせない」を合言葉に、私たちは組織の女性ミドルマネジメントが抱える「課題」と「ストーリー」を記事化し、彼女たちやそれに続く人たちが、ときに一緒に泣いて怒って笑って、元気が出る発信をnoteでしています。日本や世界の働く女性の現状を知り、多くの方に周知するため、専門家や企業への取材も行っています。








