夏フェス帰りの洗面台。目元のグリッターをそのまま洗い流してはいけない理由
夏は、音楽フェスや花火大会、屋外イベントなど、いつもとは少し違うおしゃれを楽しみたくなる季節です。きらめくグリッターは、その特別感を演出する人気アイテムの一つ。
しかし、 グリッターの多くはプラスチック製。そのまま水に流すと、下水処理をすり抜けて海へ流れ込み、深刻な環境問題を引き起こす原因となる可能性があります。
本記事では、世界で規制が進むコスメのマイクロプラスチック問題の背景を解説するとともに、環境に配慮した自然由来のグリッターを展開するブランドをご紹介します。世界ではどのような製品や取り組みが広がっているのかを通して、サステナブルな選択肢の可能性を探ります。
グリッターの正体は? 海洋汚染を招く「マイクロプラスチック」の現実
光を反射してきらめくラメやグリッターは、メイクやネイル、フェスなどのイベントシーンで人気のアイテムです。しかし、その美しい輝きの多くは、実はプラスチックから作られています。
一度環境中に流出した一般的なプラスチック製品の多くは、海に行き着きます。環境中のプラスチックは、陸上での摩耗、海の波や紫外線の影響を受けることで、5ミリ以下の「マイクロプラスチック」へと姿を変えます。これらは細かく砕けても自然に分解されることはなく、長いものでは数百年にわたって環境中に残り続けると考えられています(参照元:WWF「海洋プラスチック問題について」)。
しかし、プラスチック製のグリッターは、工場で製造されたその瞬間から、すでにマイクロプラスチックのサイズなのです。
では、使い終えたグリッターは、その後どこへ行くのでしょうか。洗顔やシャワー、メイク落としの際に排水口へと流れ出た微細なグリッターは、下水処理場でも完全には除去されず、そのまま川や海へと流れ出ている可能性があります。
海に流れ出たマイクロプラスチックには、元のプラスチック製品に含まれていた添加剤が残留しているだけでなく、海中を漂う有害化学物質を吸着しやすいという特性があります。
それを小魚が食べ、さらにその小魚を大きな魚や海鳥が食べるといった食物連鎖を通じて、有害化学物質が生物の体内に取り込まれ、蓄積されます(参照元:公益財団法人 日本野鳥の会)。
実際、私たちが日常的に口にする食品や飲料水からも、マイクロプラスチックが検出されているという研究報告などもあります(参照元:MDPI)。
世界中で規制が開始。EUではすでに販売禁止へ
「たかがグリッターでしょ?」と思うかもしれませんが、世界はすでに動いています。
環境先進国が集まるEU(欧州連合)では、2023年に5mm未満の合成ポリマー微粒子(synthetic polymer microparticles)が意図的に添加された製品の販売を禁止する規制を採択しました。
規制対象にはグリッターも含まれており、2035年までに段階的に禁止されることが決まっています(参照元:European Commission)。
EUに加え、アメリカやイギリスでも、マイクロプラスチックによる環境汚染への対策が進められています。アメリカではマイクロビーズ禁止法(Microbead-Free Waters Act)が2015年に成立し、2017年からマイクロビーズを含む洗い流す化粧品の製造禁止が始まりました。また、イギリスでも2018年にマイクロビーズを含む洗い流す化粧品の製造・販売が禁止されています(参照元:CONGRESS.GOV, GOV. UK)。
一方、日本にはまだこれらを取り締まる法律はありません。現在は企業団体の自主規制に頼っている状態だからこそ、いま私たち消費者の「選ぶ目」が試されています。
輝きは諦めない。「自然由来」という選択肢
環境へのリスクを知ったからといって、グリッターを使った華やかなメイクを諦める必要はありません。大切なのは、楽しむ心と地球への優しさを心地よく両立させることです。
現在、従来のプラスチックに代わり、植物由来の「セルロース」などを活かした新しいグリッターが登場しています。
なかでも代表的な素材は、英国の企業が開発した「Bioglitter®(バイオグリッター)」です。従来のグリッターと変わらない美しい輝きを放ちながらも、高い生分解性を持ち、EUの厳しいマイクロプラスチック規制もクリアしています。植物由来であることから、メイクからクラフトまで幅広い用途に採用されています。(参照元:Sigmund Lindner)
例えば、ベルリンを拠点とする「Projekt Glitter」は、Bioglitter® を使用した植物由来のグリッターを展開しています。他にも、「Today Glitter™」は、アメリカで初めて「Bioglitter®」の公認リテールパートナーとなった企業です。日本でもおなじみのイギリス発の「LUSH」は、いち早くプラスチックグリッターの全廃に踏み切ったブランドの一つです。現在、バスボムやソープ、ボディパウダー等に使用されている輝きは、すべて天然鉱物をベースにつくられた「合成マイカ(雲母)」によるもので、安心して楽しめます。
次のフェスは「地球にも優しいキラキラ」をまとって
環境に配慮した新しい選択肢を知ることで、これからのイベントがさらに楽しみになった方も多いのではないでしょうか。しかし、私たちはここで、もう一歩踏み込んで考える必要があります。
自然由来や生分解性のグリッターであっても、環境への影響がまったくないわけではありません。研究では、生分解性グリッターも大量に環境へ流出した場合、淡水生態系の生物多様性や生態系機能に影響を及ぼす可能性が報告されています(参照元:SienceDirect)。
「エコ素材だから、どれだけ流しても大丈夫」というわけではないのです。大切なのは、グリッターメイクを完全に諦めることでも、エコ素材を盲信することでもありません。
イベントを楽しんだ後は、「海に流さない工夫」を行うことが大切です。例えば目元であれば、いきなり洗顔するのではなく、リムーバーを含ませたコットンを優しく当ててラメを浮かせ、そっと掃くように拭き取ります。また、髪についたグリッターは、闇雲にシャンプーで洗い流そうとせず、ヘアスプレーを吹きかけたペーパータオルなどで優しく挟んで絡め取ってから洗うのがポイントです。服に付着した場合も同様に、洗濯機に入れる前に衣類用の粘着ローラーなどで落としておきましょう(参照:MOONSHATTER)。
このように、いきなり水で流すのではなく、まずはゴミ箱に捨てることを心がけましょう。その小さなひと手間こそが、海を守る確かな工夫になります。今年の夏は、ほんの少しの思いやりをメイクの習慣に忍ばせて、地球にもあなたにも優しい輝きをまとってみませんか。
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