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「壊れたら買い替え」はもう古い? 欧州で進む「修理する権利」と、長く使うという選択

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あなたが普段使用する家電製品や日頃使用するデバイス、もしくは大事にしていた物が壊れたら、あなたはどうしますか?「修理する」「新しく買い替える」の2つの選択肢で迷うのではないでしょうか。しかし、いざ修理しようとしても「新品の購入額とほとんど変わらない」「買い替えた方が結果的にお得」だと感じ、買い替えを選択せざるを得なかった経験を持つ方も多いはずです。

本記事では、消費者が買い替えを選択せざるを得ない社会的背景や商品の構造的な問題と、世界で広がるサステナブルなソリューションをご紹介します。

修理が抱える課題

愛用品が壊れたとき、真っ先に頭に浮かぶのは「直せるかな?」ということではないでしょうか。しかし、現代の家電製品やスマートフォンは内部が複雑にブラックボックス化しており、自分で直すことは難しく、メーカーや業者へ「委託」するしかありません。本来なら物を大切に使い続けるための「修理」ですが、実はこの仕組み自体が、私たち消費者を「新品への買い替え」へと誘導するビジネス構造になりつつあるのです。

買い替える本当の理由

皆さんは、携帯電話を買い替えなければいけない「一番の理由」をご存じですか? 実は、最も多い理由は「電池の劣化」です。携帯電話を買い替えたきっかけが「電池の劣化」だった人は2016年には約3割(32.3%)でしたが、2024年には約5割(48.5%)へと増加しています(参照:モバイル社会研究所)。一方で、同年に「新モデルが発売されたから」という理由で買い替えた人はわずか9.5%でした。つまり、多くの人は新しい機能が欲しいからではなく、バッテリーの寿命などの「故障」によって仕方なく買い替えを余儀なくされているのが現状です。

それでは物が故障したタイミングで、なぜ私たちは「修理」を選択しないのでしょうか。そこには、私たちの行動を縛る心理的な作用が関わっている可能性があります。私たちが修理か買い替えかを判断する際、「30%の壁」という無意識の基準を持っているのをご存知ですか?

フランス環境エネルギー管理庁(ADEME)が2015年に実施した調査によると、修理費用が新品価格の30%を超えると、ほとんどの人が修理を躊躇い、買い替えを選択してしまうことが明らかになっています(参照:pivr by we repair, RÉPUBLIQUE FRANÇAISE Liberté Égalité Fraternité)。

また、スマートフォンについての調査でも同様の傾向が見られます。EU法データベース(2018年ドイツ調査)によると、スマートフォンの修理費用が新品価格の30%を超える場合に「修理したい」と答えた人はわずか26%にとどまりました。学生を対象とした調査でも、修理に対して支払ってもよいと考える平均額は新品価格の約27%という結果が出ています。(EUR-Lex)

このように、修理費用が心理的なブレーキとなり、結果的に修理ではなく買い替えを選んでしまうケースは少なくないのではないでしょうか。

「修理」の落とし穴

修理を難しくしているのは、費用の問題だけではありません。「公式ルート」でしか修理できないという構造的な落とし穴もあります。例えばAppleはこれまで、ユーザーのプライバシーやセキュリティを保護する目的で「パーツペアリング」という手法を採用しています。これはデバイス内の部品のシリアル番号をソフトウェアで紐付ける仕組みですが、「世界最大のオンライン修理コミュニティ」を掲げるiFixitなどからは「第三者の修理店での部品交換を著しく難しくしている」と指摘されてきました(参照:IFIXIT)。

しかし、こうした「修理の壁」に対し、消費者の声を反映して企業側も変わり始めています。Appleは2024年から、セキュリティを維持したまま中古の純正部品を使った修理を一部認めるなど、独立系の業者が修理しやすい環境の整備を始めました(参照:Apple Newsroom)。また、Appleの部品を入手できる拠点を増やし、独立系修理店が専用のトレーニングへアクセスできる仕組みも拡大しています。

このように、企業側が「修理しやすい環境」を作り出す動きが、今世界中で重視され始めているのです。

世界各国の多様な取り組み

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EUの「修理する権利(Right to repair)」

2024年6月に採択され、2024年7月30日に発効された「修理する権利」に関するEUの指令は、消費者がより簡単に、かつ妥当な価格で「修理」を選択できるようにするための新しいルールです(参照:Directive on repair of goods)。

メーカーに対して、長持ちし、修理やリサイクルが可能な製品作りを促すインセンティブを与えると同時に、修理サービスに関する情報(料金を含む)を消費者が容易に入手できるようにし予備部品やツールを適正価格で提供することを義務付けています(参照:European Council Council of the European Union)。

修理の普及により、企業の新品売上は減少するものの、消費者全体で見れば15年間で1,765億ユーロ(日本円にして約31兆円 2026年10月時点)もの節約につながると予想されています(参照:EUROPEAN COMMISSION) 。

フランスの修理ボーナス

「修理したいけれど、費用が高すぎる」という消費者のハードルを下げるため、フランスでは「修理ボーナス」を導入しています。

保証期間を過ぎた製品であっても、認定業者で修理を行えば、修理費用から2〜65ユーロ(日本円にして約350円〜11500円。2026年10月時点)が店頭で直接補助される、フランスの公的制度です。大型・小型家電(洗濯機・ケトル 等)や電子機器(スマホ・PC等)をはじめ、衣類・スポーツ用品・自転車など多岐にわたる日常製品が対象となっています(参照:Republique francaise)。

直すプロセスを地域と楽しむ:リペアカフェ

愛用品が壊れてしまい、自分で修理をしたくても、知識が不足していたり、どのようにして修理をすれば良いかわからないことがあるのではないでしょうか。

そうした悩みを解決する取り組みとして広がりつつあるのが、オランダ発祥の参加型コミュニティ「リペアカフェ」です。家具や家電を、専門知識を持つボランティアから直接アドバイスを受けながら、一緒に修理作業を行うことができるイベントです(参照:repair cafe)。単に物を直すだけでなく、技術を教え合い、会話やカフェタイムを楽しむ地域交流の場として定着しており、現在では世界中で数千箇所以上の拠点が開設されています。

また日本でも、「リペアカフェ京都」をはじめ、広がりはじめています(参照:リペアカフェ京都)。リペアカフェふくちやまでは、家電類、小型農機具、音響機器など幅広い製品の修理実績を上げています(参照:Fukuchiyama city)。

自分で簡単にパーツ交換できる Fairphone

冒頭で紹介した通り、携帯電話の買い替えの理由として、多くの人は「電池の劣化」を挙げています。そこで「修理」を検討しても、修理費用と新品価格を天秤にかけた際、許容できる無意識の「基準」を超えてしまうと、結果的に買い替えを選んでしまうケースが多いのではないでしょうか。

この問題を解決するため、深い知識を持っていなくても誰でも簡単に「修理」できるように設計されたのが、オランダのサステナブルなスマートフォンです。その名も、「Fairphone(フェアフォン)」です。「壊れたら買い替える」ことを前提とせず、長期間使い続けることを目的に設計されているのが最大の特徴です(参照:fairphone)。

本体は最大12個の主要パーツがネジ留め設計になっており、ドライバー1本で誰でも手軽にパーツ交換が可能です(参照:fairphone)。電池やディスプレイ、カメラといった主要なパーツの修理方法については、わかりやすい解説動画が公開されており、あらかじめ故障を見越した手厚いサポート体制が整っています(参照:fairphone)。

さらに、製品のバージョンによって異なる可能性はありますが、最長5年間のハードウェア保証や、8年間のソフトウェアサポートが提供されている点も、安心して長く使い続けられる大きな魅力です(参照:fairphone)。

私たちが今日からできるアクション

世界の法整備や画期的なデバイスの登場など、物を長く使うための環境は整いつつあります。しかし、特別な製品を買わなくても、私たちの毎日のちょっとした心がけで、手元のデバイスの寿命を延ばすことができます。直して使う暮らしへシフトするために、今日からすぐに始められる3つのアクションをご紹介します。

充電方法の見直し

「充電しながらスマホを操作するとバッテリー劣化につながる」と耳にしたことはありませんか? 実は、操作そのものがNGというわけではありません。 バッテリー劣化の大きな要因の一つは、リチウムイオン電池にこもる「熱」です。充電中に負荷の大きいゲームなどを起動すると本体に熱がこもり、劣化を早めてしまいます(参照:SAMSUNG)。一方で、マップの確認や数分程度のウェブ検索であれば、充電中の操作でも問題ありません(参照:ソフトバンクニュース)。

また、バッテリー情報サイト「Battery University」によると、充電を100%〜50%の範囲で行うよりも、85%〜25%の間を保つ方がバッテリーに優しいとされています。さらに、シミュレーション結果では、充電量を25%〜75%の間に保つことで、バッテリーへの負荷を抑え、バッテリー寿命を延ばせる可能性があると示されています(参照:battery university)。

オンラインの修理ガイドを活用

調子が悪いなと感じたとき、すぐに買い替えるのではなく「自分で直せないか?」と調べてみるのも一つの手です。オンラインの修理ガイド(iFixitなど)では、製品の分解マニュアルやパーツ交換手順が公開されており、自分で対処できる故障かどうかを確認できます(参照:iFixit)。スマホや家電から衣類まで幅広い製品が扱われているため、身近なものを自らの手で修理するヒントが見つかるはずです。

ただし、製品や故障の状態によっては、分解や修理に危険を伴うこともあります。自分で直すのが難しい場合は、地域の専門修理店や「リペアカフェ」を活用することで、手頃な費用で解決できるケースもあります。まずは近くに相談できる場所がないか探してみてはいかがでしょうか。

製品を購入するときの意識

新しく物を選ぶ段階で、「これは修理しやすいか?」という視点を持つことも、重要でサステナブルなアクションです。商品を購入する際は、将来の故障を見越して事前に修理費用やパーツの入手性を調べておきましょう。長く愛用するためにも、修理の手軽さや費用の負担が少ない製品を意識して選ぶことが大切です。

最後に

「欧州を中心に「修理する権利」の整備が進み、私たち消費者が主体となって物を長く使える環境が整いつつあります。これまでの「メーカー主導」のサイクルから抜け出し、消費者とメーカーが対等な関係を築くためには、私たち自身の行動が欠かせません。

「修理する権利」を尊重し、消費者に優しい制度を導入しているメーカーの製品を積極的に選ぶことが、より良い市場をつくる一票になります。

購入時のちょっとした確認や、地域のリペアカフェの活用など、まずは身近なところから「直して長く使う」暮らしへとシフトしていきませんか。

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