男ウケのためじゃない|オルタナファッションを着る本音

オルタナティブ系ファッションは、世間の常識にとらわれず、型にはまらない自分らしさを表現する手段(※1)として生まれました。服装は、単なる個人の好みに留まらず、着る人の生き方や美学、価値観そのものを映し出す鏡でもあります。そして、ゴシックやロリータに代表されるオルタナ系ファッションは、世の中の流行に迎合せず、自らの美意識を貫く象徴として支持されてきました。
しかし、SNSが普及し、匿名の発信をしやすくなったことで、こうしたファッションを楽しむ人々が思わぬ注目を集め、ハラスメントやさらに深刻な被害に遭うケースが増えています。実際、女性の91%(※2)が、SNS上で意図しない性的または恋愛的で不快なメッセージを受けた経験があると答えていますが、オルタナ系ファッションを愛好する女性たちも例外ではありません。彼女たちは露出を抑えた清楚な装いであっても、そのスタイルだけを理由に性格や振る舞い、性的嗜好や許容度までを、一方的に決めつけられています。
ミームが拡大する性的ハラスメント
その顕著な例が、黒を基調とした神秘的な雰囲気のゴシック系ファッション、いわゆるゴスファッションです。2018年に「goth gf(ゴス系の彼女)が欲しい」というミームがネット上で拡散し、2024年に再びSNSで流行しました。その結果、ゴスカルチャーを楽しむ女性たち(※3)が過度に性的な対象として扱われるようになり、SNSのコメント欄やDMに性的なメッセージが送りつけられるといったハラスメントが相次ぎました。
同様の現象は、動物の耳やしっぽをモチーフとした「ケモノミミ」ファッションにも見られます。これはTikTokやInstagramなどで人気を集めている新しいサブカルチャーであり、オルタナ系ファッションの一つです。動物の耳やしっぽに加え、リボンやチョーカーなどを組み合わせるスタイルが特徴です。アニメやゲームといったポップカルチャーをフェミニズムの視点から論じるアメリカの作家、T. A. ヌーナンは、猫耳としっぽを付けた「キャットガール」を、雑誌PLAYBOYのバニーガールのように(※4)性的な対象として見られやすい存在だと指摘しています。中にはケモノミミをマニアックな性的嗜好であるペットプレイと一方的に結び付け、ファッション本来の文脈を無視して性的な意味合いを押し付ける層が存在するのが現状です。

Credit: Jon Garland and Moslem Boushehrian, Sophie Lancaster Foundation, via Research Gate
露出がなくても性対象となる女性のファッション
ロリータファッションのように、肌の露出を抑えた服装であっても、性的対象として見られる恐怖から逃れられるわけではありません。ロリータファッションは、社会が求める「標準的な女性像」に違和感を抱く人々(※5)が、少女でも大人でもない、その狭間にある独自の美学に自分らしさを見いだす中で生まれ、発展してきたファッションです。
その象徴である膝丈のベルシルエットドレスは、極めて清楚でクラシカルな仕上がりであり、本質的に性的な要素とは無縁のものです。しかし、このファッションの背景や世界観についてよく知らない人には、その意図に反して艶めかしいものと誤解されることが多々あります。さらに、ロリータという名称は、1955年に出版され大きな論争を呼んだ小説「ロリータ」に由来しています。この作品では、継娘に執拗に性的な欲望を抱く継父が描かれ、そのことが、このサブカルチャーと小児性愛や少女の性的対象化とを不当に結び付ける一因にもなっています。

女性の服装を性的同意と決めつける傲慢さ
これらに共通する本質的な問題は、個人のファッション選択が、本人の意思とは関係なく「性的アプローチを受け入れるサイン」だと勝手に解釈されてしまうことにあります。純粋にさまざまなスタイルのファッションを楽しんでいるだけのはずが、あたかも「誘惑」のように受け取られてしまうのです。どのような服装であっても、それは身体的な接触や性的な関係を求めている合図ではありません。ある研究では、女性がフェミニンやセクシーな服を選ぶ動機(※6)は、自らの魅力と自己肯定感を高めるためであり、誰かの目を引くためではないことが示されています。あくまで自分自身のための選択なのです。
多くの女性は、常に周囲の気配や状況に神経を尖らせています(※7)。その背景には、望まない性的アプローチを拒んだときに(※8)、男性から暴力を受けるかもしれないという恐怖があります。そのため、自分らしいファッションや表現を諦めたり、敢えて目立たないように振る舞う女性もいます。 女性に対する暴力やハラスメントを無くすためには(※9)、男性側が傍観者にとどまらず、積極的にアライ(支援者)となり、主体的に行動することが不可欠です。男性からの不本意な性的な視線や、危害を加えられる恐怖を感じることなく、女性が自由にファッションを楽しみ、服装を通して自分の個性を表現できる社会。そんな未来を実現するために、私たち一人ひとりにもできることがあるはずです。

-
執筆
A. Parks
-
翻訳・編集
K. Tanabe
元記事はこちら
オリジナル英語版はこちら
世界各国を拠点とするローカルメンバーが、最新のDE&I関連ニュースやトピックスをお届けするグローバルメディアです。
私たちは、差別が生じるのは「マイノリティーの存在」ではなく、「マジョリティーが作った構造」が原因と考えており、社会や職場におけるダイバーシティマインドの促進に全力を注いでいます。









