Yahoo! JAPAN SDGs

豊かな未来のきっかけを届ける

豊かな未来のきっかけを届ける

変化は怖くない。あらゆる課題に向き合い、変革を巻き起こす#豊かな未来を創る人

Yahoo! JAPAN SDGs編集部

001

LINEヤフー株式会社代表取締役会長の川邊健太郎が聞き手となって、政治の担い手にインタビューをするシリーズ。今回は、衆議院議員(神奈川17区)の牧島かれんさんに話を聞きました。

「イノシシから宇宙まで」を掲げ、幅広い政策テーマと向き合っている牧島さん。まだまだ政治の世界では数少ない女性議員でもあり、ジェンダーの社会課題にも積極的な姿勢を示します。デジタルや性別といったテーマから二人の対話を通じ、これからの日本の社会について考えます。

牧島かれん(まきしま・かれん)

自民党
1976年11月1日神奈川県生まれ。国際基督教大学教養学部社会科学科卒業、米国ジョージ・ワシントン大学ポリティカルマネージメント大学院修了(修士号取得)、国際基督教大学大学院行政学研究科博士後期課程修了(博士号取得)。2012年衆議院選挙において初当選。内閣府大臣政務官(地方創生・金融・防災担当)、自由民主党青年局長、同党デジタル社会推進特別委員会事務局長などを歴任。2021年10月にデジタル大臣、行政改革担当大臣、内閣府特命担当大臣(規制改革)に就任。その後も幅広い政策テーマに精力的に取り組む。

川邊健太郎(かわべ・けんたろう)

LINEヤフー株式会社代表取締役会長
1974年、東京都出身。青山学院大学法学部卒業。大学在学中にベンチャー企業電脳隊を設立。2000年にヤフーへ入社し、「Yahoo!モバイル」担当プロデューサーや社会貢献事業担当プロデューサーなどを歴任。2006年にYahoo! JAPAN 10周年記念非営利事業として「Yahoo!みんなの政治」を立ち上げた後、「Yahoo!ニュース」などの責任者に就任。2018年ヤフーの代表取締役社長CEOに就任。LINEとの経営統合を行い、2021年Zホールディングス代表取締役社長Co-CEOに就任。同年6月にソフトバンクグループの取締役に就任。2023年4月Zホールディングス代表取締役会長に就任。同年10月グループ内再編に伴いLINEヤフー代表取締役会長。日本IT団体連盟会長。

あの日あの場所にいた意味。転機となった911

── はじめに、牧島さんはどのような経緯で政治家となったのか教えてください。

川邊

もともとお父様が政治家をされていましたよね。牧島さんが政治家を目指したことにもやはり関係しているのでしょうか。

牧島

父が地方議会議員だったので、地域で暮らしている中でのお困り事をご相談に来られる方たちと一緒に解決策を考えていくというプロセスに触れて育ちました。その中で、「政治は人の役に立つんだ」と思って育つことができたことは、政治に関わるキャリアを選んだきっかけの一つにはなったと思います。

002

── では、幼少期や学生の頃から国政に関わることを見据えていらっしゃったのでしょうか?

牧島

実はそうではなく、転機となったのは2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ事件(以下、911)だったんです。私は国際基督教大学を卒業後、米国ジョージ・ワシントン大学の大学院へ通うためにペンタゴンにほど近いバージニア州に暮らしており、自分のアパートでその日を迎えました。

当時、ワシントンD.C.の下院議員のオフィスでインターンをさせてもらっていて、ホワイトハウスでもペンタゴンでも研修を受けていたんですよ。それで、どちらの方がセキュリティレベルが高かったかと言ったら、ペンタゴンだったんです。そんな場所でも、空からの攻撃にこんなにも脆弱だったのかと衝撃を受けました。

それならば、自分の母国である日本は万が一の時の体制はどうなっているのだろう。そんなことを考えるようになったんです。それから、学問や報じるための政治ではなく、自らたすきをかけて引っ張っていく場としての政治を意識するようになりました。

だから、911がなければそのまま研究者になっていた未来や、出る側ではなく政策提言の側に回っていた未来もあったと思います。

川邊

でも、911は世界中の人が目にして、多かれ少なかれ皆が何かしらの影響を受けたわけですよね。その後のアフガニスタン戦争とイラク戦争も含めて。それで議員にならなかった人もたくさんいるわけで。牧島さんの中で何に火がついて、どういう気持ちで議員になろうと思ったのでしょうか。

003

牧島

その当時はジョージ・W・ブッシュ氏が米国大統領でした。彼はすごく人気が高くて選ばれたような大統領ではなかったのですが、その彼の言葉によってアメリカ国民が一つになろうとしている。国家的な危機の中で、民主主義における政治家の言葉と行動というものが、2億8千万人もの国民を動かすのかと思いました。

それをあの地で目の当たりにしてから、言葉の力とその説得力を持つ議員として国の発展のために尽くすことが、自分があの日あの場所にいた意味なのかもしれないと感じたんです。

それで議員になることを決め、とはいえすぐに衆議院候補者になるわけではないので、研究者をやったり、非常勤講師として大学で教えたり、メディアのお手伝いをしたりしながら、いずれ自分で「ここだ」と思うときがあったらすぐに出発できるような準備を進めていました。

「どんな球でも打てる」地元で選ばれる議員を目指して

── 牧島さんは第2代目のデジタル大臣を務められました。さまざまな政策テーマと向き合われている中で、なぜデジタルだったのでしょうか?

川邊

デジタルと言えば牧島さんのイメージが強いですね。デジタル大臣になる前、自民党のIT戦略特別委員会で事務局長を務めていらっしゃいましたが、なぜその委員会へ?

牧島

私の地元の課題があまりに広すぎて。農業の担い手はいない、林も守らなければならない、産業も稼げるようにしなければならない、インバウンドも受け入れなければいけない。でも、それを従来通りのやり方ではできないと。それならば、新たにそこへ「デジタル」の要素を土台として取り入れることで、従来の課題との掛け合わせによるアプローチができるのではないかと考えたのです。それで、デジタル庁ができる前、IT戦略特命委員会へ入りました。

ただ、その当時は本当にデジタル関連の政策に関心のある人しか集まっていなかったんですよ。だから、「ちょっと独特な委員会」みたいな雰囲気があったように思います。私が事務局長として入ってからは、デジタル単体ではなく「教育×デジタル」や「防災×デジタル」のようにテーマを広く取って取り組みを始めました。それにより「デジタルを何と掛け算して生かすか」を考える土台ができ、他の議員も入りやすくなって、本部にまで発展してとても盛況な委員会になりました。

また、データ戦略や統計も好きだったんだと思います。ジョージ・ワシントン大学の大学院では、行政や政治に関わる人は倫理と統計が必修科目だったので私も学んでおり、科学的に政策や政治を考える習慣を地元の地方議員の皆さんと共有したいという気持ちがありました。それとデジタルの親和性が高かったのだとも思いますね。

004

川邊

確かに、牧島さんはこれまでにデジタルのことだけでなく、幅広い領域で取り組まれてきたような印象を持っています。それは、牧島さんの中で何か政策テーマや信条があるのでしょうか。

牧島

議員の中でもいろいろなタイプがいると思いますが、私はどんな球が来ても打てる自分でありたいタイプなんですね。なので、一期生の頃から食わず嫌いせずに、あらゆる政策の議論が行われる場所に出て行くようにしていました。

そうして今は、「イノシシから宇宙まで」というテーマを設定しています。今や、イノシシによる被害対策であろうと、宇宙の話であろうとデジタルの活用が必要になっている時代ですから。いろいろな政策を実現するうえで、それが何であろうと「デジタル×○○」であることから、私自身の特長として大事にしたいテーマです。

── 「どんな球が来ても打てる自分でありたい」というのはどこから来ている思いなのですか。

牧島

やはり大きいのは選挙制度ですね。小選挙区制度は1人しか選ぶことができないので、地元の声を代弁する立場としてはあらゆる課題に応えられる代議士でなければなりません。「それは自分の専門分野じゃないんで」なんて言うわけにはいきません。

また特に、私自身の選挙区である神奈川県17区(小田原市・秦野市・南足柄市・足柄上郡・足柄下郡・中郡二宮町)は、神奈川県の中でも都市部と地方部の両方の特徴を持っている地域です。基幹産業である観光業から、農業、ものづくりと、あらゆる産業がある地域なので、「農林水産業しかわかりません」なんて言っているようでは、役目を果たせません。

リベラルの担い手。数少ない女性議員として目指すこと

── 女性の政治家として、今の政治の世界の男女バランスをどのように感じていますか。もしそこに課題を感じていらっしゃるのであれば、どのようなことに取り組まなければならないと考えていますか。

牧島

やっぱり女性は少ないですよね。ジェンダーギャップ指数で日本の順位が上がらないのも、政治の現場における女性の少なさが理由の一つであることは間違いありません。自民党は与党として議席数をたくさんいただいているので、まずはその中で女性比率を上げる責任があり、私たちの責任は重たいと思っています。

そのために党改革実行本部のもとで、2023年に「女性議員の育成、登用に関する基本計画」を定めました。その中で、自民党の女性国会議員比率を10年で30%に引き上げるという目標を掲げています。

── その30%は中間目標のようなイメージでしょうか。

牧島

30%までいけば、その先は出てくると思いたいんですよね。ただ、何にせよまずは30%までやらないと景色が変わっていかない。予算委員会のような期数が多いベテラン議員が多い委員会や、女性の割合が低い委員会はまだまだあるんですね。一方で、参議院は女性議員の比率が高くて、両者で明らかに景色が違っていて、体感も異なるんですよ。ですから、まずはその景色や体感を変えなければならないと考えています。

川邊

とある女性とお話しした際、「日本は、おっさんによるおっさんのためのおっさんの国」だと言っていたんですよ。僕もおっさんですけど、女性の問題やダイバーシティって、権利を奪われるんじゃないかと男性側が抵抗したり押さえつけたりしている側面が強い話なんじゃないかなと思ったんですね。「おっさんの国のままでいたい」みたいな、男性側のわがままがあるんじゃないかなと。

004

牧島

現状維持をするために未来志向でなくなりがちな部分はあると思います。私たち自民党で言えば、「ずっとマジョリティーでいなければならない」「強いのが自民党なんだ」みたいな。そのような思いが、既得権益を守っているように見えてしまうのかもしれませんね。

川邊

その中でも、牧島さんは保守の中でもリベラルの最大の担い手なのではないかと思います。今の女性の話もそうですし、夫婦別姓やマイノリティの配慮などにも熱心に取り組まれていらっしゃいます。牧島さんはどのような自己認識を持って取り組まれているのでしょうか。

牧島

責任は重いと思っています。そして、仲間も増やしていかなければなりません。例えばLGBT理解増進法は、成立するまでに私が初当選した時から10年以上かかった法律で、何度も悔しい思いをしました。10年前は、自民党の議員に「一緒に研究してもらえませんか」と声をかけても、「私の地元には一人もいないから」なんて言われたんですよ。そんなところから始めたので、この10年で社会も政治もだいぶ変わってきたとは思います。

また、選択的夫婦別姓や同性婚も、ちゃんと議論できる場を作っていきたいという立場を明確にしているところですね。

005

川邊

一般人の感覚としては、選択的夫婦別姓なんてやればいいだけじゃんと思うわけですよ。だって選択的なわけですから。生活において便利な選択肢が増えるのに、政治側の価値観によって認められないっていう。

牧島

やっぱり、一般的に皆さんが感じていることと、政治とでずれが生じてはいけないんだと思います。そもそも政治家は国民の代弁者ですから、国民のお困りごとに寄り添って解消しなければならない立場です。でも、それが個人の権利の話になったときに、立ち止まってしまう人たちがいる。この人の権利を拡大しようとすると、誰かの権利が小さくなってしまうと、権利の綱引きのような話になってしまう時があるんです。権利や社会それ自体、パイがあってそれを皆で分配したり取り合ったりするものではなくて、皆がそれぞれに持っているもの、という立場で私はいつも発言をしています。だから、それに賛同してくれる仲間を増やしていきたいですね。

川邊

そういう、国民と政治との感覚のずれが肥大化した時、国民の感覚で言うと「そういう集団は選挙で落とせばいいや」っていうだけだと思うんですよね。一方で、牧島さんはその中に入って、賛同してくれる人を増やそうと頑張られています。そこの信念はどういうところにあるのでしょうか。

牧島

多様な声を代弁する議員の割合を増やしていくことが、きっとこの先の日本の社会を作るのではないかと思っているんです。当選するのはベテランの議員ばかりで、世代も上に偏っている、なんてことになっては、ずっと代弁されないまま宙ぶらりんになっている声が存在してしまうでしょう。だから、議員の多様性を確保することは政治的な何かという以前に、個人の毎日の生活に関わることだと思うんですよね。毎日の生活でみんなが課題だと思っていることや生きづらさを解消していくことをもっと真剣に議論できる人を増やすことが大切だと思っています。ですから、国民の皆さんには選挙の際、政党で候補者を見るのも一つですが、一人一人の候補者をしっかりと見ていただきたいです。

  • 安藤ショウカ

    写真西田優太

\ さっそくアクションしよう /

ひとりでも多くの人に、地球環境や持続可能性について知ってもらうことが、豊かな未来をつくることにつながります。

  • facebookでシェアする
  • X(旧Twitter)でポストする
  • LINEで送る
  • はてなブックマークに追加
  • Feedlyに登録する
  • noteに書く

ABOUT US

Yahoo! JAPAN SDGsは、これからの地球環境や持続可能性について、ひとりでも多くの人に伝え、アクションにつなげていくことで、地球と日本の豊かな未来をつくる、そのきっかけを届けていきます。

TOP