この夏は森に入ってみよう! アサヒの森で見つける、森と生き物の仕組み
夏休み。どこに行こうか迷ったら、「森」に出かけてみませんか?
キャンプやアウトドアも楽しいですが、森のおもしろさは、そこに多様な生き物が暮らしていて、学びの機会にあふれていること。
たとえば木々が二酸化炭素(CO2)を吸収し、地球温暖化をおさえる役割があるように、草木や鳥、虫が一緒に生きる森は、空気や水を循環させて、私たちの暮らしを守る大きな役割を果たしてくれています。
今回は「アサヒの森」をフィールドに、森の詳しい働きについて探っていきましょう!
アサヒの森は、この森にかかわり続けて15年以上になる松岡洋一郎さんが案内人です。
アサヒの森とは?
広島県庄原市と三次市にまたがる「アサヒの森」は、アサヒグループが約80年にわたり守り育ててきた広大な森です。人工林と自然林のバランスを考えながら管理された森には、多様な生き物が暮らしています。
アサヒの森公式サイト
企業が「森」を持つ選択。アサヒグループが約80年守り続けてきた「アサヒの森」の物語
提供:アサヒグループジャパン株式会社
700種の生き物が暮らす、「アサヒの森」へようこそ
日本の森林率は国土の約7割で、先進38カ国からなるOECD加盟国では3番目の高さです。全世界で見ると、森林面積は陸地面積の約3割に止まっているので、日本は森林が多い国といえるでしょう。
最初に、日本の森にある代表的なヒノキ、スギ、ブナについて紹介します。
ヒノキは昔から神社やお寺の建築にも使われてきた木で、ほのかに香るさわやかな香りが特徴です。また、スギは近年「スギ花粉症」で有名ですが、元々日本でとてもなじみの深い木で、家の柱や家具、学校の机など身のまわりの木製品にもよく使われています。
そしてもうひとつは落葉広葉樹のブナ。ブナの森は、その保水力の高さから「緑のダム」とも呼ばれ、大雨や台風による洪水を防ぐ役割を担っていて、森の生きものたちにとっても大切な場所になっているのです。
このように、人々は森の恵みを受けながら生活し、木の文化を築いてきました。
松岡さん
これ、何の木かわかりますか? ホワイトオークといって、お酒のウイスキーを熟成する際の樽(たる)に使われています。
アサヒの森では、主にヒノキやスギ、そしてブナといった木々が中心に構成されていますが、ホワイトオークや漆の木など、人の生活に使えるさまざまな木も植え、育てています。
遠くから見ればひとかたまりの森も、近づいてみれば、そこにはさまざまな命があることに気づきます。
20年ほど前、アサヒの森の生態系に関するモニタリングを行いました。3年にわたる調査でわかったのは、この森に668種の植物と、60種の鳥類が生息していること。そのうち植物4種、鳥類12種は重要種(※1)にも指定されています。特に鳥類の数の多さは、専門家の方にも評価されています。
森にはどんな生き物がいるの? 生態系や「森の断面図」を学ぼう
草を虫が食べ、虫を小動物が食べ、小動物をより大きな動物が食べる。生態系の頂点にいる生き物が、健やかに暮らしていることは、その森が心地よく循環している証でもあります。
ピラミッドのように食物連鎖でつながる動物たち。森ではどんなところに住んでいるのでしょうか? それぞれの暮らしを「断面図」にしてみると、その様子はわかりやすくなります。
上のイラストのように、森の中は一見すると木々が生い茂っているだけのように見えますが、実は高さごとにいろんな「層」に分かれています。
この中で見落とされがちなのが、地面の下の「土壌(どじょう)」です。落ち葉や枯れ木を分解する菌類やミミズ、微生物たちが暮らし、森全体の栄養を循環させる大切な役割を担っています。森では、こうしてさまざまな生き物が、命を支え合って生きているのです。
森にお手入れが必要なのはなぜ?
たくさんの命が息づく森ですが、じつはふたつの種類があるそう。その違いはどんなところにあるのでしょうか。
ひとつ目は人の手によって木が植えられ、育てられてきた『人工林』。基本的にはスギやヒノキなどの針葉樹(しんようじゅ)で構成されていて、まっすぐに生え、木材として幅広い用途に活用しやすい木の森です。
針葉樹の大半は『常緑樹(じょうりょくじゅ)』で、一年を通じて緑色の景色が広がります。
もうひとつは、人の手を借りることなく、自然に育ってきた森林。一般的にはブナなどの広葉樹がメインの「天然林」。広葉樹の中でも『落葉樹』は、秋には紅葉し、冬には葉を落とします。そのため森の風景は季節ごとに大きく変化します。
アサヒの森の「人工林」は、定期的に間伐を行うことで、木が育ちやすい環境を作っています。スギやヒノキの間伐材は、建築材としても使われています。
一方、アサヒの森では、ブナやコナラの広葉樹の中に針葉樹のアカマツが自生する『自然林』が特徴です。人の手を入れずに、自然にまかせることで、その土地にあった木が再生されるような森づくりを目指しています。
森の管理には、その場所にあった木を植えることも大切だという松岡さん。たとえば水気の多い、標高の低い土地には杉が、山頂の尾根の部分には、栄養分の少ない痩せた土地でも育ちやすいマツなどが向いています。
その土地の地質、勾配や高さにあった木を選ぶかどうかで、同じ木でもいい状態に育つこともあれば、その逆にもなるのです。
アサヒの森の中を歩いていると、空気が澄んでいて、風が木々の間を通り抜け、木漏れ日がやわらかく差し込んでくることに気づきました。そんな風に森に入ると、「気持ちがいい」と感じられるのは、人の手による適切な管理とちょうどよい葉っぱの量だからこそ生まれているのです。
100年、200年続く「いい森」を目指す
そんなアサヒの森は、専門家にも「いい森」だと評価されています。
松岡さん
アサヒの森の場合は、人工林が全体の76%。割合としては多いですが、人工林にこれだけの生物多様性が実現できるのは、人の手による丁寧な管理と自然の力が合わさっているからこそだと感じています。(※2)
アサヒの森では、『いい木材』をつくるためだけの森にはせず、『気持ちいい』という感覚も大切にしながら、まずは毎日、森をきちんと手入れしているとのことです。毎日の積み重ねにより、生物多様性や環境の守られた『いい森』となり、評価される森となっています。
松岡さん
よくチームのみんなと話しているのは、シンプルに100年、200年続く森にしたいねということです。そのことが、森の経済的な価値だけではなく、社会的な価値を高めていくことにもつながるはず。そのためにはまず、森への理解を広げていくことが第一歩ですね。
今がベストシーズン! 家族や友だちと身近な「森」を感じに行こう
森に出かけるには、まさに今がベストシーズン、特に春から夏にかけての森は、緑が多く鳥や虫の活動もさかんです。
松岡さん
まず森へ持っていってほしいのは、みんなの "感性"。
あとは、緑が濃い今の時期は、虫も多いので、肌の見えない長袖長ズボンで行くと安心です。
必ずしも晴れの日じゃなくても、雨の日には雨の日のよさがあります。雨具などの適切な装備をして、急な荒天などには注意しながら予定を立ててみてください。
森に入るには「わざわざ遠くまで行かないといけない.....」と思っている方も多いかもしれませんが、東京にも森に入るチャンスはあるそうです。
松岡さん
東京って、実は森の多い場所なのですよ。日比谷公園や、井の頭公園にも、いい緑がいっぱいあります。人工林ですが、明治神宮の木々も素晴らしいです。
遠くに足を伸ばすのもいいですが、みなさんの住んでいるそばでも、きっと緑の多い場所は見つけられますし、そこで感じることもたくさんあるはず。
実際に取材チームがアサヒの森を訪れた際も、楽しみ方は人それぞれ。足元に生える山菜に目を凝らす人もいれば、樹木に抱きついて、そのパワーを感じる人もいる。いちばん好きな木はどれ?と尋ねる人がいれば、森と山の違いってなんだろう?と会話が生まれ、そのどれもが森との新しい接点。
そうやって一人一人が森とのつながりを増やしていくことこそ、「いい森」が増えるための第一歩なのかもしれません。
今度のお休みには、家族や友だちを誘って近くの森へ行ってみませんか。「これはなんの木?」「身近な何かに使われているのかな?」とおしゃべりしながら自然をじっくり見る時間は、特別な体験になるはずです。
●関連リンク
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取材 長谷川琢也
X(旧Twitter):@hasetaku
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取材 株式会社Huuuu
Web:Huuuu
取材・執筆 瀬谷薫子
Instagram:@seyakaoruko
撮影 山元裕人
Instagram:@genyama
イラスト杉本 陽次郎


