万博は「通過点」。アサヒの社員たちが見つけた、企業がサステナビリティを推進し続ける理由
いまや企業がサステナビリティに取り組むのは当たり前のこと。しかし、環境や社会への配慮と企業としての利益追求をどう両立させるかは、ときに矛盾もはらむ、難しい課題です。
アサヒグループは大阪・関西万博において、「静けさの森インスタレーション」のゴールドパートナーとして協賛参画するほか、「SMILE ALE」で規格外野菜などを使ったアップサイクルビールを提供。自然との共生や食品ロス削減といった未来に繋がるテーマを来場者に届けています。
こうした活動を支えているのが、アサヒグループジャパン株式会社の「大阪・関西万博室」。グループを横断し、さまざまな部署から集まったメンバーたちが直面したのは、まさに冒頭の問いでした。
「アサヒはなぜ万博に参加し、なぜサステナビリティに取り組んでいる企業であることを伝えなければならないのか?」
万博に向けて努力を重ねてきたメンバーからは、その答えを聞くことができました。
万博を通じて得た学びと、企業としてのサステナビリティへの想いについて、万博室の岡﨑仁美さん、秋田一進さん、子安慎二さん、田村真基さん4名に話を聞きました。
アサヒが大阪・関西万博で届ける新しい価値
── 今回の大阪・関西万博における、アサヒグループの取り組みについて教えてください。
岡﨑さん
会場中央部にある「静けさの森インスタレーション」のゴールドパートナーとして参画しています。甲子園球場のおよそ半分の広さ(約2.3ha)にあたる森では、万博記念公園をはじめ大阪府内の公園などから将来間伐予定だった、約1,500本の樹木が博覧会協会によって移植されています。
森の中には5組のアーティストが手掛けるインスタレーション作品も展示しており、自然と共にアートを鑑賞できるつくりになっています。
岡﨑さん
アサヒグループでは約80年前から広島県にある社有林「アサヒの森」を守り続けてきた背景もあり、「静けさの森インスタレーション」のコンセプト「未来につながる森」に共感してゴールドスポンサード参画を決めました。森の外はパビリオンなどで賑わっているのですが、中央に向かって歩いていくと他の建物が見えなくなり、別世界のような静けさに包まれています。
秋田さん
また、大阪ヘルスケアパビリオン内のキッチンカー「SMILE ALE」では、地元のブルワリーと協力し、廃棄予定だった地域のぶどうやえび芋などの食材を使ったアップサイクルのクラフトビールを販売しています。
こうした活動を支えているのが、2022年にグループを横断して発足した「大阪・関西万博室」です。少人数ながら企画から現場運営まで幅広く担い、アサヒならではのサステナブルな活動の発信をしています。
仕組みを変えずに未来を変える。無理しないサステナブル「CO₂を食べる自販機」から始まるアサヒの未来
提供:アサヒグループジャパン株式会社
万博を通じて、アサヒの新しい一面を伝えることができた
── 実際に万博が始まって約4ヶ月が経ちます。会場にいらっしゃる方の反応はいかがでしょうか?
秋田さん
SMILE ALEは来場者の方から「規格外の野菜や食材でビールが作れるなんて知らなかった」といった声をいただいて、SDGsを学ぶだけでなく、味わう体験として楽しんでいただけているように感じます。
子安さん
「静けさの森インスタレーション」を訪れる方々からは「これってアサヒが協賛していたんだ」や「ゆっくり過ごせて癒された」といった声があり、とても励みになっていますね。
他にも、「アサヒが環境に配慮した事業を積極的に行っていることを知ることができた」といった感想も寄せられていて、来場者の方々にアサヒの新しい一面を伝えられたという実感もあります。
岡﨑さん
私たちの事業は、水や農産物といった様々な自然の恵みや原料を享受することによって成り立っています。だからこそ、環境を守り、育み、次の世代へつないでいくことは、事業を続けるうえでも欠かせないこと。今回の万博を通じて、アサヒが環境に寄り添う企業であると来場者のみなさんに感じてもらえたのであれば、それが一番の成果だと思います。
万博は社員が"サステナビリティ推進企業の一員"と実感する場になってほしい
── そもそも、大阪・関西万博室はどのような経緯で立ち上がったのでしょうか?
岡﨑さん
2021年にアサヒグループが万博への参加を決めたことをきっかけに、社内で大阪・関西万博室が発足し、ビール・飲料・食品と原籍会社だけでなく、営業系や企画系など、さまざまな部署からバックグラウンドの異なるメンバーが集められました。
これまでアサヒビールとして2005年の愛知万博や東京2020オリンピック・パラリンピックに参画した経験はあったのですが、アサヒ飲料やアサヒグループ食品を含むグループ全体として、こうした国家的な事業に関わるのは初めてでした。
── 会社としてもメンバーの皆さんとしても初めての試みの中、特に大変だったことは何ですか?
秋田さん
今回の目的は自社の商品やサービスをPRすることではなく、「アサヒグループはサステナブルな活動に取り組んでいる企業である」ということを多くの人達に知ってもらうこと。その思いをどのように社内外へ伝えていくのか、今でも日々考えています。
岡﨑さん
社内で「なぜ今、万博に取り組むべきなのか?」という意識を共有するのは大変でした。やっぱり事業会社というのは、基本的には売上をどう伸ばすかが一番の目標だと思います。社内の協力を求める際には「万博をうまく活用してください」という伝え方を意識してきました。そうした中で、万博室のメンバーの側でもそれぞれ意識の変化があったように思います。
── 皆さんの意識の変化について、詳しく教えてください。
秋田さん
元々、原料資材の削減など、アサヒで環境負荷を抑える取り組みがあることは知っていましたが、「サステナビリティ推進は本社がやること」という意識でしたし、やはり売上と利益を一番に追いかけていたんです。それが万博を通じて、企業のサステナビリティ推進は人任せではなく、社員一人ひとりが意識すべきことだと感じるようになりましたね。
田村さん
私も同じく、今まで売上や利益ばかりを優先して考えていた自分に気付かされました。自分自身がアサヒグループのサステナブルな活動に触れる中で、「こうした情報発信こそが、企業価値の向上に繋がるのでは?」と考え方が変わってきました。
── ちなみに、今後もアサヒでは環境への思いを社内に根づかせ、より多くの人に広げていくために、社内でどのようなことを意識していきたいですか?
田村さん
「サステナビリティ」という言葉はとても広い領域を指すため、「みんなで一緒に取り組みましょう!」と言われても、具体的にどう動けばよいのかピンと来ない人も多いのではないでしょうか。
それよりも、私たちの場合は「アサヒの森の認知を高めよう!」「CO₂を食べる自販機の情報を発信しよう!」といった既存の取り組みを前面に出したほうが、社員にとっても目標を具体的にイメージしやすいと思います。
まずは具体的な活動に触れ、そのうえで「なぜ企業がこうした活動=サステナブルな取り組みを行っているのか」という背景を知ってもらう。この順番のほうが、社員一人ひとりが自分ごととして関心を持ちやすくなるのではないでしょうか。
万博はゴールではなく、通過点。その先の目指す未来とは
── 万博も終盤に差しかかりましたが、皆さんは今回の経験をどのように日々の業務に活かしていきたいですか?
子安さん
会社全体でサステナビリティを自分ごととして捉えてもらうためにも、今回の万博はゴールではなく「通過点」だと捉えています。そのためにもさまざまな企業や団体と協力しながら、アサヒがサステナビリティに取り組む姿勢を社内外へ届けていきたいですね。
田村さん
「アサヒグループのサステナビリティの取り組みの認知が、事業会社の売上にもつながっている」といった定量的なデータがあれば、社内の意識変化にもつながりますし、同じような活動に取り組む企業にとっても大きな励みになると思うんです。
だからこそ、会期が終わったあとも、万博での取り組みがどれくらい事業に寄与したのかは、しっかり検証していきたいと考えています。
── 社会的な意義ばかりを伝えるのではなく、説得力のある結果をちゃんと可視化していくのは企業がサステナビリティへ取り組む際のポイントかもしれませんね。
岡﨑さん
私たちは万博の半年間の開催期間だけでなく、その先も活動を続けていくことを前提に取り組んできました。アサヒが長年続けてきたサステナブルな活動を広く知ってもらい、未来の生活者の選択につなげていくための一つのきっかけが万博だと思っています。
私たちの活動を通じて、一人ひとりが「自分にもできることがある」と気づき、小さな一歩を踏み出していただけるようになることを願っています。その小さな積み重ねが、未来をより明るく、豊かなものにしていくと信じています。
これからも生活者のみなさんが暮らしの中で「自分にも関わっている」と感じられるように伝えること、そして共感や参加のきっかけを生み出すことを大切にしていきたいと考えています。
アサヒのサステナブルな活動を未来につなぎながら、お客様に信頼され、社員が誇りを持てる活動を続けていきたいですね。
●関連リンク
アサヒグループジャパン 2025年大阪・関西万博特設サイト
アサヒの森公式サイト
アサヒグループのサステナビリティ
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取材・執筆 株式会社Huuuu
Web:Huuuu
撮影(室内) 番正しおり
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撮影(万博内) 山元裕人
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