ワカメから「だし」は取れるの? 昆布と似ているけど違いはある?
料理本のレシピに何気なく書いてある「だし1カップ(200ml)」。かつお節や煮干しなどの素材から旨味成分を抽出した食材のことですね。
だしの素材として、古来蝦夷から伝わったとされるものに昆布があります。昆布だしの歴史は古く、精進料理に用いられていたといいます。昆布に含まれる旨味成分のグルタミン酸が抽出されただしは、魚の煮付けやお味噌汁、炊き込みご飯など、いろいろな料理に幅広く使用されています。
さて、この昆布と姿かたちがよく似た海藻類がワカメ。昆布同様、ワカメからもだしが取れるのでしょうか。
ワカメはだしに不向き?
昆布と同じくコンブ目のワカメは、チガイソ科に属する褐藻類です。ワカメにも昆布にも旨味成分の1つであるグルタミン酸は多く含まれています。
しかし、昆布とワカメを同じ方法でだしをとったところ、昆布だしだけがグルタミン酸を抽出できました。
昆布だし・ワカメだし:水に対して2%量の乾燥昆布、ワカメを一晩漬け置きし、その後80℃まで加熱抽出したそれぞれの液をアミノ酸分析計で分析しました。この分析結果では、どちらも昆布、ワカメそれぞれの風味豊かな香りは感じとれましたが、昆布だしだけがグルタミン酸を抽出しました。この結果から、ワカメは、だしの素材には向いていないことがわかりました。古来よりワカメは、藻体そのものを食べてきましたが、理にかなった行為だったわけです。
また、どちらにも多く含まれているのがカルシウムや食物繊維など。海藻類には様々な栄養が詰まっています。
ワカメ特有の芽かぶ
私たちが「ワカメ」として食するのは、主に葉の部分です。湯通しするとワカメの褐色の色素が壊れて鮮やかな緑色へと変化。いろどり鮮やかなワカメは、酢の物やサラダなどにも用いられています。
葉の部分以外にも、中央を走る茎に相当する「茎ワカメ」や、茎と根の間の生殖細胞が凝縮した「芽かぶ」があります。歯ごたえのよい茎ワカメは、煮物や漬物に加工されます。また芽かぶはヌメリ成分のアルギン酸やフコイダンを多く含むことから、健康食材としても注目されています。芽かぶを刻むとトロロ状になり、酢の物として食されることも。
一方昆布も根、茎、葉に区別されますが、根や茎に相当する部分が非常に短いのが特徴。食べるのはもっぱら葉の部分です。
昆布ならではの多彩な料理法
栄養価の高い昆布は乾燥して出荷されますが、加工の仕方によって名称が異なります。昆布の葉を平たく干して多数束ねたのが「元ぞろえ昆布」、伸ばした昆布を乾燥し一定の長さに折りたたむと「折り昆布」と称されます。
栄養価の高い昆布はだしとして用いられるだけでなく、昆布巻きやとろろ昆布など多彩な食べ方があります。とろろ昆布は酢に漬けて柔らかくした昆布を薄く削って加工した製品のことをいい、一般的には真昆布や利尻昆布などの昆布が使われています。
こちらは昆布で細工した籠です。江戸時代に細工昆布が京都御所へ献上されていたそうです。現在でも懐石料理の盛りつけなどに使う細工昆布は、お吸い物に浮かべたり、付き出しに使われるなど、料理に風情を与えます。
昆布もワカメも同じコンブ目の海藻。どちらも美味しく手軽に食べてゆきたいですね。
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